ドキュメント鑑賞☆自然信仰を取り戻せ!

テレビでドキュメントを見るのが好き!
1回見ただけでは忘れてしまいそうなので、ここにメモします。
地球環境を改善し、自然に感謝する心を皆で共有してゆきたいです。
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ORDER & DISORDER エネルギーと情報とは何か
今の地球を作るために、人間は何をしただろう?
夜景を見ればエネルギーを巧みに操作し、うまく利用してきたことが一目瞭然。
エネルギーは不可欠、構造物の建設にも、身を守るためにも、輸送や家庭の照明にも使われる。
食料から得るエネルギーがないと、生命すら維持できない。
しかしエネルギーとは?なぜ役立つのだろうか?


科学者たちは一連の原理を導き出した。
エンジンや人間、星などすべてが関係する原理だ。
その結果、日常生活に不可欠な上、宇宙を理解するカギだと分かる。
これは森羅万象の仕組みをどのように発見したかの物語、またエネルギーは崩壊する運命にあることを知る物語でもある。
エネルギーは無秩序になるのだ。
さらに今の環境の創造に宇宙がどう関わったか、その過程を明らかにする。


周囲からエネルギーを抽出する多くの方法を私たちは考えてきた。
例えば果物をもぎ、木を燃やし、風で船を動かしてきた。
しかし約3000年前、大変革が起きる。
大量のエネルギーを作り出す機械が発明され、仕事の能率が上がった。


多くの人々の努力の成果だが、科学史上特に重要な人物、エネルギーの理解に挑んだ人物は・・・
GOTTFRIED LEIBNIZ(1646~1716)
外交官で科学者で哲学者だったライプニッツは、宇宙の仕組みの解明に生涯挑んだ人物。
当時の科学者はこう考えた。
❝私たちを囲む世界は巨大な機械装置であり、神によって創られた。❞
そして機械の仕組みの理解に努める。
それが分かれば宇宙の仕組みや原理も理解できるはずだと考えた。

つまりライプニッツにとって神学や哲学は工学や力学に近いものだった。
哲学と工学が近いと考えた彼は1676年にある研究を始める。
研究課題は一見簡単そうだった。

物体が衝突するとどうなるか・・・例えば球を衝突させると静止していた球が動く。
何かが移ったようだ。
ライプニッツはこれを活力と呼んだ。
衝突時に球の間で何かが交換されたと考えた。
ライプニッツは世界は機械だと考えた。
中には神が創造時に詰めた多くの活力が入っていて、その量は永遠に変わらないというのだ。
つまり世界の活力は一定量に保たれる。

では活力とは何か。
ライプニッツは数学的手法を使って活力を説明した。
さらに別の観点でも見る。
彼が考える活力は、火薬や炎、蒸気からも激しく放出されているというのだ。
活力を利用できれば、人類は莫大な力を得られる。
ライプニッツは活力の抽出法を考え始めた。

彼は若いフランス人科学者のドニ・パパンと文通していた。
2人はやり取りするうちに
❝活力はある状況下で利用できる❞と気づく。
❝熱を活量に変換できるかもしれない❞
実証できるだろうか?パパンは自信満々だった。
彼らの手紙からの抜粋「理論上この発明により人間の力は無限に増大する。
発明の意義はどんどん見つかるはずだ。
誇張なしに言って、実質的に100人分の仕事が1人でできるだろう。」
ライプニッツとパパンが世界を変えたかに思えるが、違った。
見事で壮大な着想だったが、仮説にとどまる。
理論を発展させるには、さらなる改良や無数の熟練職人がに必要だった。
新しい方法で実験することが必要だった。
それは彼らの後の世紀に目覚ましい方法で実現された。

2人のアイディアが生れた150年後に、活量は見事な方法で実用化される。
彼らの夢見た機械が作られたのだ。
19世紀における最先端技術、蒸気機関だ。
蒸気の技術は社会を変えただけではない。
活力という概念の真理を解明して、万物の働きへの新たな見識も生んだ。
ロンドンの下水処理場、産業を支えた荘厳な建物であり、ビクトリア朝の蒸気機関も残っている。
1854年4つの巨大な蒸気機関が作られた。
年間で5000トンの石炭を消費した機械で、47トンのビームを動かす。
建物内のすべてが見る者を圧倒する。

豪華な鉄の装飾に、古代ローマの神殿にあるような柱、まるで豪華客船の内部かと錯覚するような装飾だ。
しかしここは下水処理場だった。
この内装を見たのはわずかにいた労働者のみ。
それでも蒸気機関はイギリスの国力と繁栄の象徴であり、宗教的な敬意すら払われていた。
蒸気機関の発明による恩恵は計り知れない。

しかしその仕組みについては不明な点と謎が多くあった。
どの程度効率的なのか、限界はあるのか。
究極の問いは、蒸気で他に何ができるのか、だった。
疑問が生じた理由は簡単。
蒸気機関の特性やそれを支える宇宙の原理をほとんど誰も知らなかったからだ。
意外だろうが、蒸気機関は宇宙の秘密を隠し持っている。

パリ郊外のヴァンセンヌ城、ここで起きた出来事を機に1人の若者が大志を抱く。
そして蒸気機関の謎に迫り科学の新分野を築いた。
後の熱力学だ。
NICOLAS LEONARD SADI CARNOT(1796~1832)
いたるところで戦いが行われていたナポレオン戦争中の1814年、ロシアなどの連合軍からパリは度々攻撃を受ける。
市民は分散して重要な地区を守った。
この城は戦闘経験の浅い学生が守っていたが、砲兵射撃を受け撤退を強いられる。
その中に優秀な科学者がいた。
ニコラ・レオナール・サディ・カルノーだ。
彼はこの戦いで受けた屈辱感が原動力となり、蒸気機関の詳しい仕組みを解明し始める。
軍人家庭の出身だった彼はフランスが各地で連敗すると国の誇りを取り戻す決意をする。
カルノーの不満は敵国が高い技術を持っていることだった。
特にイギリスは蒸気機関の技術があるため軍事的にも経済的にもけた外れに優位だった。
そこでカルノーは蒸気機関の仕組みを理解し母国に貢献しようと誓う。
弟と質素に暮らしていたカルノーは1824年、画期的な論文を発表する。
「火の原動力に関する省察」
60ページながら熱機関の根本的な仕組みを発展させてまとめた。
彼は熱機関には高温部と低温部が必要だと考える。
そして❝熱は水のように高温から低温へ流れる❞創設を立てた。
しかも高所からの流れる水のように、流れる熱が利用できると説く。
彼の説ではどんな熱機関も効率化が可能だった。
高温部と低温部の温度差を単に拡大すればよいのだ。
この原理は後の200年間応用される。

車のエンジンは蒸気機関より高温になるため効率的。
より高温のジェットエンジンは抜群の効率。
カルノーが示したのは熱機関が精巧なだけでなく、自然の特性も生かしていること。
高温から低温に流れるエネルギーを使っていたのだ。
カルノーは熱機関の特性に気づき、科学の新分野を開拓した。
しかし自説への反響はみないままだった。
1832年パリではコレラが大流行し、死者が19000人にも達した。
病気が流行する仕組みは当時未解明のままだった。
カルノーは危険を顧みずそれを究明しようと決意する。
しかし自信がコレラにかかり亡くなった。
36歳の若さだった。
貴重な研究の資料は伝染を防ぐために燃やされ、彼の研究は灰と化してしまう。
世界は彼より遅れていたようだ。
カルノーは熱力学に対し最初の貢献を果たした。
時がたつにつれ熱や運動、そしてエネルギーの研究に拍車がかかる。
彼の説は深い心理につながると、まもなく認識された。
ライプニッツの❝活力❞と同じように、広範囲にわたり応用ができたのだ。
19世紀の中頃までに各種のエネルギーの比較を科学者たちは行っていた。
異なるエネルギーを作るのに必要なエネルギー量を計測したのだ。

30ミリリットルの水を摂氏1度分だけ上昇させるとする。
それには12.5kgのおもりを1m上げるのと同じエネルギーが必要。
ここが重要な点、機械的な作用と熱は全く異なるように見えて、どちらのエネルギーの1津の側面なのだ。
この理論は後に❝熱力学第1法則❞と呼ばれる。
❝エネルギーは作られたり破壊されたりせず、単に変換される❞という法則だ。
これにより19世紀の科学者は全宇宙の総エネルギーは不変だと悟った。
なんと一定量のエネルギーが単に形を変えていたのだ。
蒸気機関のエネルギーも作られるのでなく、熱から機械的作用に変換されただけ。

第1法則からは多くの疑問も生まれた。
例えば❝変換される時何が起きているのか?❞
そもそも変換される理由は?
ルドルフ・クラウジウスが答えの一部を見つけた。
それを基礎に生まれたのが❝熱力学の第2法則❞。
RUDOLF CLAUSIUS(1822~1888)
物理学を学ぶ優秀な学生だった。
ベルリンで学業を修め、非常に若くして有能な教授になった。
後にスイスのチューリッヒでも新設工科大学で教鞭を執る。
そして1850~60年頃、熱力学に関して初めて理路整然として完成された数学的分析を発表した。
宇宙の総エネルギーは一定であるだけでなく、厳密な法則に基づくとの主張だった。、
すなわちエネルギーは常に一定方向に移動するというのだ。
これは科学で最も大切な理論の1つといえる。
つまり熱は低温の物体から高温の物体へは移らない。
熱い紅茶のカップは必ず冷める。
カップの熱が手に移り、さらに手から胸へと移っていくということ。

当り前に思えるが、当時は重大な新設だった。
熱の流れは一方通行であり、元来宇宙に組み込まれた法則だとの主張だ。
当然物体は温まるが、必ず働きかけねば温まらない。
放っておくと凝縮しているエネルギーが常に拡散してゆくようだ。
生化学者のセント・ジェルジがこう言っている。
❝科学とは誰もが目にする事柄を見て全く新しい思考を行うことだ❞
クラウジウスはまさに、ごく普通の世界に暮らし誰もが見るものを観ていた。
確かに熱は冷たい物から温かい物へと移らず、必ず逆の動いをする。
クラウジウスはそれを当然と思わず熟考したのだ。
彼はエネルギー変換に関するあらゆる理論をまとめ、数学的なこんな式を導き出した。
ds/dt≧0
新たな量、エントロピーを提案したのだ。
式ではsで表している。
この式は何を示すのか?
熱が温かい物から冷たい物へ移ると、エントロピーが必ず増えること。
エントロピーは熱の拡散を測る尺度と言える。
物が冷えるとエントロピーは増大、物質もエネルギーも変わらない環境なら、逆の過程は起こらない。
数学が得意だったクラウジウスは、この不可逆過程が宇宙でも起きていると考えた。
そして宇宙のエントロピーは極大に向けて増大するはずで、それは不可避だと推察する。
❝熱力学の第2法則❞として後に知られる理論だ。
これは彼の理論御中で最も美しく普遍的なものとなった。
熱を放出するすべての物質が何かの形で結合していることも、熱を放出するすべての物質が何かの形で結合していることも、熱力学の第2法則は示した。
熱を出す物質は、そこら中にある不可逆過程の1つなのだ。
つまり拡散の過程であり、エントロピー増大の過程とも言える。
宇宙は紅茶のカップとどうやら同じ運命のようだ。

熱力学が確立する一方で、19世紀半ばには論争と混乱が巻き起こる。
エントロピーの定義と増大する理由に関する論争だ。
答えを得るには思考の飛躍が必要だった。
しかし答えが出るとエネルギーの真理や万物の秩序と無秩序に関する真理がわかった。
エントロピーの概念と格闘した科学者の中でも特に重要な人物がいる。
彼はエントロピーを定義し増大の理由を説明した。
LUDWIG BOLTZMANN(1844~1906)
ボルツマンは1844年生まれ、確実性が重んじられる時代だった。
しかし彼は定説に注意を払わない。
彼にとって物理学は自由に探求できる世界だった。
ボルツマンは型破りな科学者で、偉大な芸術家のような感受性があった。
極めて論理的で鋭く分析する一方、情熱的に研究に打ち込む。
しかし落ち込む時期もあり思考すらできなくなった。

音楽にも情熱的だったボルツマン、特に愛したのは壮大なワーグナーのオペラやベートーヴェンの音楽だった。
ピアノの名手でもあった彼は数学理論と同じように、好きな曲の演奏に何時間も没頭する。
ボルツマンは情熱も才能もある上、数学が自然の神秘を解明できると信じていた。
だから論争を招く衝撃的な新理論を打ち立てられたのだろう。
裸眼では到底見えない小さな世界を彼の新理論は解き明かした。
19世紀後半、一部の科学者がある思索を始める。
極小の世界では万物の働きが日常の世界と全く違うというのだ。
注意深く見ると、万物を構成するのは、絶えず動き回る小さな固い粒子のようだった。
そして原子レベルで考えると熱の謎も解けてきた。
ボルツマンらは熱い物体を原子が激しく動く状態だと考えた。
原子の概念で多くの謎が解けそうだった。
しかしこの説には解決しがたい問題があった。
たとえ少量のガスの中でも原子は膨大な数に上がる。
説明する数式など作りようがない。
何より原子は互いにぶつかり、絶え間なく方向や速度を変える。
証明は不可能に思えた。
しかしボルツマンは成功させた。
彼は気づいていた。
物理学でこの新たな概念を説明するには確実性は追及できない。
すなわち個々の原始の動きは計測しなかった。
代わりにボルツマンは確率論を使うことで、原子の動く速度や方向を説明できると考えた。
そして物体の内部に思いをはせる。
非日常の世界を想像し説明する数式を見つけ出したのだ。
彼が導いた理論は後年エネルギーの謎を解くカギとなった。
しかし当初は猛烈な反発に遭う。

非常に驚くことに、当時多くの科学者たちが、原子の概念に激しく反発した。
物質が極小の粒子、原子からなっていることは、現在では常識。
しかし当時は著名な科学者が受け入れなかった。
誰も原子を見たことがなかったからだ。
信じるのは無理な話。
ウィーンで彼が講演を終えた直後、偉大な物理学者マッハが一言述べた。
❝原子の存在を信じない❞
痛烈で壮大な批判だった。
マッハのような高名な学者からの批判は心を傷つけただろう。
論敵の主張はこうだ。
❝分子や原子は便利な虚構だ。
計算のための道具で存在はしない。
見えないのだから。
ボルツマンは夢想家だ❞
しかしボルツマンこそが誰より心理を見つめていた。
宇宙は原子の存在で説明でき、確率論で理解できると考えた。
19世紀の科学は原子論により根底から覆されたのだ。
原子の世界を見つめるボルツマン、やがて自分の新設によって科学界最大の謎の1つが説明できると気づく。
❝なぜ熱力学第2法則は正しく、自然は不可逆なのか?❞
それも証明できると考えた。
エントロピーの定義や増え続ける理由を原子で説明できるはずだと。
あらゆる物体はごく小さな物質でできているとボルツマンは理解する。
我々が見るすべての物は無数の原子や分子の集まりだったのだ。
それがエントロピーや熱力学の第2法則のカギだった。
熱い物体はなぜ冷えるのか?
その真の理由がボルツマンにはわかった。

一例が熱い金属の塊。
内部の原子は接合している。
しかし物体の表面では机の表面の原子にエネルギーが移る。
移った原子はさらに隣に衝突。
熱エネルギーは自然にゆっくりと拡散してゆく。
物体の全エネルギーは最初は凝集し、秩序立った状態。
それが徐々に無秩序となり、エネルギーが多くの原子に拡散する。
ボルツマンはこの過程を数学的に表した。

↑が彼の方程式、末永く科学に役立つだろう。
彼の墓石にも彫られている。
物質は整然とした状態より無秩序な時の方がずっと多い。
それがこの式の示す本質。
だから万物は放っておくとどんどん散らかる。
物質は秩序だった状態から無秩序へ変化するのだ。
全てに当てはまる法則だ。
落とした水差しから燃え盛る星まで。
そして1杯の紅茶から消耗品の数々まで。
秩序から無秩序へ移行する万物の傾向をゴミとなった消耗品は表している。
無秩序状態は万物の運命なのだ。
クラウジウスはエントロピーなるものが常に増大すると語った。
ボルツマンはその意味を明かす。
エントロピーとは物質の無秩序の尺度だった。
エネルギーは一見したところ消滅する。
第2法則はエントロピーの増大のことで、平たく言えばでたらめさが増すこと。

ボルツマンの情熱と繊細さ、それに数学への信頼が科学史屈指の発見につながる。
しかし彼の激しい正確には暗く自滅的な面もあった。
ボルツマンは深刻な鬱に何度も陥る。
時として彼の理論への批判が引き金になった。
1906年ボルツマンは鬱がひどくなり休暇をとる。
1906年9月にはイタリアのドゥイノを家族と共に訪れた。
そして家族が海岸へ出かけたすきに首をつり、生涯を唐突に終わらせた。

悲しいことに生前批判され、冷笑され続けた彼の理論は、その死から数年のうちに受け入れられた。
しかも科学の新たな常識となる。
エントロピーから逃れるすべはなく、全ては最終的に秩序から崩壊と無秩序へと移るのだ。
ボルツマンの式は万物の❝死❞も網羅する。
水差しから人間の命、そして宇宙まで・・・
変化と劣化の過程は避けられない。
熱力学の第2法則は示す。
宇宙もいつかエントロピーと無秩序が最大になる。
そして宇宙自身も死を迎える。

もし万物が崩壊し無秩序になるのなら、私たちはなぜ存在するのだろう。
宇宙はどのように生命という美しく複雑な構造を作ったのだろうか。
実のところ万物の存在も熱力学の第2法則に基づく。
宇宙の偉大なる無秩序が複雑さを生んだ。
秩序から無秩序への自然の流れが力となり、新たな秩序と構造物が生れる可能性が出てくる。
例えば初期の蒸気機関は理論はさておき利用され、それが世界を変えた。
車も建物も美術品もそして人生も一変した。
車のエンジンは熱力学の第2法則を利用する。
ガソリンはエネルギーの塊で整然とした物質。
ところがエンジンを点火すると体積が2000倍のガスに変わる。
そして熱と音を周囲にまき散らしながら無秩序へと変わる。
拡散するエネルギーを利用できる点が車の賢さ。
ガソリンを吸い出し例えばピストンを駆動するために使う。
つまりエンジンは秩序から無秩序に変わる流れを利用している。
実は同様の原理に基づいて生物の体も進化してきた。
エネルギーが整然と詰まった食品を食べるとする。
私の体は消化によりそのエネルギーを崩し、生きる力にする。

秩序から無秩序へと変わる宇宙の流れを車も人間も動力源としている。
蒸気機関も発電所も地球上の生命も全てが秩序から無秩序への宇宙の流れを利用している。
崩れゆく宇宙のエネルギーを利用する方法を私たちは習得した。
だから地球は今のような姿になったのだ。
一方で人類は進化のため常に新エネルギーが必要だった。
さらなる技術や街や社会を構築するため崩壊させる凝集エネルギーだ。
食料から樹木や化石燃料まで人類は繁栄のために崩壊させるエネルギーを発見してきた。
21世紀の今我々は、究極の凝集エネルギーを利用しようとしている。
太陽を構成する物質、水素だ。
オックスフォードの核融合研究カラムセンターでは、地球王で星を作る試みが進んでいる。
しかし星を生み出すのは容易なことではない。
精巧なテクノロジーと何百人もの知恵が必要。
このトカマクという装置は、凝集エネルギーを抽出するために作られた。

水素原子の秩序あるエネルギーだ。
水素エネルギーは宇宙の初期にできた。
誕生直後だったと言われている。
トカマクを使って水素を融合することで、エネルギーが取り出せる。
トカマクの中には2種類の水素原子、重水素とトリチウムがプラズマ状態で入っている。
このプラズマが達する温度はなんと1億5000万度。
トカマクにある巨大な磁場がプラズマを閉じ込める。
ここで十分高温になると水素原子同士が融合し、ヘリウムと中性子が発生。
中性子はプラズマから飛び出す。
この中性子が持つエネルギーを使って水を熱して蒸気にし発電機を動かす。
この過程で一瞬だけトカマク内部にドーナツ型の小さな星が作られる。
問題はエネルギーを使えるほど融合を長く保つのが至難の業であること。
科学者の奮闘が続いている。
「物理学と工学の中間。
いかにプラズマという高温の状態を維持し、かつ最大限に利用できるかを考えるのだ。
それには衝突の機会が最大になるよう原子を極力長くとどめたい。
限界まで数値を伸ばすためトカマクで挑戦している。
現在の研究が危機の改良にも役立つと思う。」

トカマクは肥沃なビッグバンの灰の中から最初に凝集されたエネルギーを取り出す。
水素は宇宙で最も豊富な物質。
将来核融合反応を長く維持できれば、無限のエネルギーが得られるかもしれない。
蒸気機関に対する疑問から誕生した熱力学は、私たちの生活に多大な影響を与えた。
生きるために凝集エネルギーを使わねばならない理由や宇宙の終焉についても明らかにしている。
夜景を見れば何が現在の地球を形作ったか理解できるだろう。
過去300年にわたり、エネルギーを活用する方法を我々は編み出してきた。
しかしその努力や成果も広い宇宙から見れば些細なものに過ぎない。
私たち人間は崩れゆく宇宙のごく小さな秩序を保とうとしているのだ。
運命からは逃れられない。
しかし物理学の法則はつかの間の美しい時間を人間に与えてくれた。
宇宙をさらに深く理解することで、この時間を何百万年、何十億年と延ばしたいものだ。
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100年の難問はなぜ解けたのか〜天才数学者失踪の謎〜


それは前代未聞の出来事だった。
2006年8月、スペインのマドリードで、1人の数学者にノーベル賞以上の権威があるとされるフィールド賞が授与された。
授賞の理由は、この100年間誰も解くことのできなかったポアンカレ予想という数学の難問を証明したことだった。
しかし受賞者グレゴリ・ペレリアン博士(Grigori Perelman )は、賞金やメダルの受け取りを拒否し、さらに数学の世界から完全に姿を消してしまった。
なぜペレリマン博士は栄誉に背を向け姿を消してしまったのか、そこには100年の難問、ポアンカレ予想が持つ不思議な魔力が潜んでいるという。

ロシア第2の都市、サンクトペテルブルク、失踪したペレリアン博士はここで暮らしているという。
アパートの扉には表札はなく、ノックしても何の反応もない。
住人「彼は滅多に姿を見せません。
この5年で6回程しか彼を見ていません。
最後に見かけたのは2〜3ヶ月前。」
ペレリアン博士が勤めていたステクロワ数学研究所、姿を消す直前に撮影された博士の写真が残っている。

博士が失踪した理由は、親しい同僚にさえ全くわからない。
同僚「ペレリアン博士にとっては数学が全て。
数学は彼の人生そのもの。
彼が数学の世界から身を引いたという噂があるが、とても信じられない。」
ロシアではペレリアン博士の様子を隠しカメラで捉えた映像が繰り返し流されていた。
高校時代の恩師、アレクサンドル・アブラモフさんは、姿を消した博士のことを誰よりも心配していた。
「全くひどい報道だ。
彼に対してはもっと敬意を持って接するべきだと思う。」
アブラモフさんが知るペレリアン博士は、よく笑う明るい青年だった。
もっとも優秀だった教え子の身に、いったい何が起きたのか、博士が姿を消した理由は、アブラモフさんにも全くわからない。
実は数学者の間に伝わる不思議な話がある。
ペレリマン博士が証明したポアンカレ予想という難問には、この100年間数々の数学者の人生を翻弄し、狂わせてきた過去があるという。
博士が姿を消した理由を知るためには、ポアンカレ予想と格闘した数学者たちの足跡を辿る必要があるのだ。
ポアンカレ予想は1904年、パリで誕生した。
アンリ・ポアンカレは、数学だけでなく物理学や哲学など、あらゆる学問をマスターし、レオナルド・ダ・ヴィンチやニュートンに並ぶ知の巨人と称えられた人物。
その知の巨人がよに送りだし、100年以上かかってようやく解き明かされたポアンカレ予想、それはこんな言葉で書かれている。
単連結な三次元閉多様体は三次元球面と同相と言えるか?
何が何だかさっぱりわからない。
ポアンカレの出身高校で、ポアンカレ予想についての特別授業が開かれた。
パリ・オルセー大学名誉教授で数学者のヴァレンティン・ポエナル博士は、ポアンカレ予想とは何かをたった1本のロープで説明した。

「誰かが長いロープを持って、宇宙1周旅行に出かけたとする。
その人物が旅を終え、地球に無事戻ってきたとする。
ポアンカレ予想とはこの宇宙にグルリと廻らせたロープが、こんな風にいつも手元に回収できれば、宇宙の形は丸いといえるはずだという予想。」
ポアンカレ予想とはどうやら宇宙の形と関係がある問題のようだ。
それにしても宇宙の形はいったいどうすれば分るのだろうか。
どんなに科学が発達しても、宇宙の形を外から眺めることはできない。

ポアンカレの考え方をわかりやすくすると・・・
ポアンカレはこんな空想をしていた。
ロケットに長い長いロープを結び付け、宇宙空間に向け飛ばしてみたらどうだろうか。
ロケットはロープを付けたまま、ひたすら自由に宇宙空間を飛び続ける。
ロケットが宇宙を一回りして無事地球に戻ったとする。

今あなたは宇宙に巡らされたとてつもなく巨大な輪っかをつかんでいる。
そしてこれをひたすら引っ張ってロープを全部手元に回収する。

もし長い長いロープが全て回収できたとしたら、宇宙の形についてどんなことが言えるだろう。
ここで現実には不可能だが、仮に宇宙全体を外から眺めることができたらと考えてみよう。
宇宙を一周させたロープがどんな場合でも必ず回収できるならば、宇宙空間は概ね丸いと言えるのではないか、ポアンカレ予想とは、宇宙の形を大まかに知るための問いかけなのだ。
では、もしロープが引っ掛かって回収できない場合があったらどうだろう。
その時には、もしかしたら宇宙には私達には見えない巨大な穴が開いていたりして、ロープが引っ掛かっているのかもしれない。
この場合、宇宙は例えばドーナツのような形なのかもしれない。

ところで概ね丸いとか、ドーナツだとか、ロープを回収するとか、これって本当に数学の話なのか?
どうしてXとかYとか、微分積分とか、難しい記号が出てこないのだろう。
なぜポアンカレ予想は普通の数学と違うのか・・・
20世紀初頭の数学者、特に図形を扱う幾何学の専門家かからみると、世界は微分幾何学の世界に見えたかもしれない。
イギリスの知の巨人・アイザック・ニュートンが生んだ微分積分が、その後図形を扱う数学、微分幾何学へと発展していった。
難しい数式で図形を厳密に捉える、いわば堅い数学だ。

一方、それから200年後に生まれた20世紀の知の巨人・ポアンカレはこう考えた。
微分幾何学では、捉えどころのない宇宙の形は理解できない。
全く違った発想が必要だった。
こうして生み出されたのが位相幾何学(トポロジー)と呼ばれる新しい図形の捉え方だった。
ポアンカレが残したノートや論文には、従来の数学からは考えられない奇妙な図形がぎっしりと並んでいる。
宇宙の形を問いかけるポアンカレ予想には、このくらい斬新な数学が必要だったのだ。

ポエナル「トポロジーでは、ドーナツとティーカップ、この2つは同じ形。
トポロジーでは難しい方程式は使わない。
ものの捉え方が大雑把で、とても軟らかい。
ポアンカレ予想が変わって見えるのは、この新しい数学・トポロジーの分野の問題だからだ。」
トポロジーでは多少の形の違いは気にしない。
トポロジー以前の微分幾何学では、このテーブルの上のものは、それぞれ異なる形だと考えるが、トポロジーの考え方はもっと柔軟。

その訳は・・・
ポエナル「お皿とスプーン、ポットの蓋は粘土細工のように少しずつ単純な形へと変形させると、最後には全部同じ球になった。

ティーカップはドーナツと同じ形になった。
ポアンカレは細い形の違いを気にせず、穴の数が同じならば、同じ図形と見なそうと提唱したのだ。
トポロジーでは穴の数が大切なのだ。」

知の巨人・ポアンカレでさえ、自分が生んだその難問を解くことはできなかった。
ポアンカレの論文は、謎めいた予言で締めくくられている。
この問題は我々を、はるか遠くの世界へと連れてゆくことになるだろう。
難問ポアンカレ予想に挑む数学者たちの闘いは、その後100年、思いもよらぬ展開を見せることになる。

ポアンカレ予想と数学者との闘いは、1950年代プリンストン(アメリカニュージャージー州)で最初のピークを迎えた。
トポロジーの専門家・ウルフガング・ハーケン博士、ポアンカレ予想と出会った時の第1印象は、非常に優しい問題に思えたという。
以来その証明に半生を捧げた。
ハーケン博士には最大のライバルがいた。
ギリシャ出身のクリストス・パパ・モリアコフプーロス博士、パパの愛称で知られていた。
ハーケン博士とパパは、ポアンカレ予想をめぐって激しくしのぎを削ることになる。
パパはポアンカレ予想の魔力に取りつかれた孤高の数学者と言われていた。
毎朝8時に朝食をとり、8:30に研究開始、昼食後12:30〜また研究、夕食後にも研究。
唯一人前に姿を現したのは、午後15:00のティータイムだった。
しかし同僚から食事やパーティーに誘われても、いつも断り、ポアンカレ予想の証明だけに全ての時間を費やした。
この頃ハーケン博士とパパを悩ませていたのは、宇宙を一回りさせたロープを回収しようとすると、いわばそれが複雑に絡み合ってしまうという問題だった。
ロープが絡まないようにうまく回収する方法が見つかれば、ポアンカレ予想の証明に辿りつけるはずだった。
ある時パパが珍しく後輩の数学者を呼び出した。
研究に確かな手ごたえがあったというのだ。
シルベイン・カベル博士「彼はかなり興奮した様子だった。
大きく前進したポアンカレ予想を最後まで証明したわけではないが、限りなくそれに近づいたといった。」
ところがまもなく、その証明に致命的な欠陥が見つかった。
激しいショックを受けたパパは、ますます人前に姿を現さなくなった。
精神のバランスを崩したパパに、医師は映画観賞を勧めた。
しかしパパの頭脳は映画を楽しむどころか、ポアンカレ予想の周りをひたすら駆け廻っていた。
「パパは自分がポアンカレ予想を選んだことで何を失ったのか、よく自覚していた。
彼はある時いった。
昔ギリシャに恋人がいたが結婚をあきらめたと。
もしポアンカレ予想が証明できたら、国に戻って結婚できるかもしれない。
そのためにも早く証明を完成させたいと言っていた。」
そんな中、ライバルのハーケン博士がポアンカレ予想を証明したと宣言する。
それを聞いたパパはそんなことはありえないと取り乱し、まるで人が変わったかのように苛立ちを露にするようになった。
しかしその3日後、ハーケン博士の論文に大きな間違いが見つかった。
このわずか数日間の出来事が、パパの精神をさらにかき乱すことになった。
ところがポアンカレ予想を巡る2人の対決は突然終りを告げる。
パパが癌でこの世を去ったのだ。
自宅からはポアンカレ予想についての膨大な遺稿が見つかった。
しかし肝心な部分はすべて空白のままだった。
カベル「パパはよく行った。
自分の人生はこれでよかったのだと。
数学者は常に日常の生活と数学の世界を行き来している。
数学の世界には永遠の真理があり、それを理解できるものだけに完璧な美しさを見せてくれる。
まるで迷宮に迷い込んでしまったかのように数学者はそれに思わず取りつかれてしまうのだ。」
一方のハーケン博士はパパの死後もポアンカレ予想に取りつかれたままだった。
その終りなき泥沼から救い出してくれたのは家族のさりげない言葉だった。
ハーケン「私の家族は私のことをポアンカレ病患者と呼んだ。
今お父さんはポアンカレ病にかかっているから、話もできないという風に・・・
それがよかった、家族がそうやって茶化さなければ、私はますます追い込まれていただろう。
家族が、お父さんの研究は人類史上とても重要なことなんだ、などと言っていたら最悪だったに違いない。
家族は本気で私を日常の世界へと戻してくれたのだ。」

数学者たちがポアンカレ予想と激しい格闘を続けていた頃、旧ソビエトで1人の少年が誕生した。
1966年生まれのペレリマン少年、愛称はグリーシャ、数学教師をしていた母は、幼い頃から数学の英才教育を受けさせたという。
高校はソビエト国内から優秀な生徒が集まる理数系の名門校だった。(サンクトペテルブルク第239高校)
この学校でペレリマン少年は圧倒的な才能を発揮した。
数々の数学コンクールを勝ち抜き、最年少の16歳で国際数学オリンピックの出場権を獲得した。
校内の壁には、今もペレリマン博士の名前が刻まれている。
国際数学オリンピックでペレリマン博士を指導したアレクサンドル・アブラモフさん、数学オリンピックに出場した子供たちの中でもペレリマン少年はひと際目を引いた。
問題を解くスピードも抜群に速く、解答も驚くほど短く簡潔だったからだ。
「これは当時のグリーシャの答案の下書き、普通の子供が何度も計算をやり直すところを、グリーシャはたった3行で終わらせた。
豊かな想像力がシンプルかつ宇宙区市い解放を生み出している。」
さらにアブラモフさんが鮮明に覚えているのは、いつも笑顔を絶やさないペレリマン少年の明るい性格だった。
「問題を考えている時の彼の仕草はとてもユーモラスだった。
ズボンの膝をこすりながら体を揺らす。
私達はどうしても解けない難しい問題を、死の問題と呼んだ。
しかし死の問題が何問ならんでいようと、グリーシャはケロリと解いてしまった。」
ペレリマン少年にとっては、数学オリンピックで出題されるトップレベルの何問でさえ、簡単に思えた。
いつか誰も解くことのできないほどの難問を解いてみたい、ペレリマン少年の夢はこの頃に固まった。
高校時代の友人・ガラバノスさんは、当時のペレリマン少年は、ポアンカレ予想はもちろん、トポロジーについても全く興味を持っていなかったという。
そしてペレリマン少年は、数学以上に物理学の才能に抜きんでていたという。
ペレリマン少年の、この物理学の才能が、その後世紀の難問ポアンカレ予想を解き明かす最大のカギとなってゆく。
ポアンカレ予想を解き明かす数学者は。1960年代の半ばを過ぎても現れなかった。
しかしポアンカレ予想と共に生み出された新しい数学トポロジーは、アメリカで数学の王者と呼ばれるまでに成長していた。
微分幾何学は時代遅れだ、古い数学なんてぶっとばせ!
この時代フィールズ賞の多くをトポロジーの専門家が獲得した。
それだけではない、トポロジーの発想は、数学以外の研究や実社会へも応用されていった。
まさにトポロジーこそが数学だという時代がやってきた。

60年代を代表するトポロジーのカリスマ、スティーブン・スメール博士(カリフォルニア大学名誉教授)、稀代の天才と謳われた彼はやることなすこと型破りだった。
天才スメールは過去の数学者たちの過ちを避ける方策を探した。
これまでとは違う攻め方ができないかと考えた。
そもそもポアンカレ予想は3次元の空間である宇宙にロープを巡らせ、その輪が回収できれば、宇宙は丸いはずだと言えるという予想だった。
スメール博士はこの予想を証明するための、ある奇抜な廻り道を考えた。
宇宙がもし3次元空間ではなかったとしたらどうだろう?
もし仮に4次元や5次元の空間だったとしたら・・・
3次元に暮らす私達には、そんな世界を想像すらできない。
でも数学者たちは、ありもしない世界を頭の中で作り出すことが大好き。
スメール博士の戦略は、まず宇宙空間が仮に6次元や5次元など、実際よりも高い次元だと考え、その後順番に低い次元へと進み、最後に3次元の宇宙の問題であるポアンカレ予想を攻略しようというものだった。
わざわざ3次元より高い次元のことを考える利点とは何なのか?
その理由は、数々の数学者を悩ませていた、あのロープの絡み合いが、高い次元の宇宙では起きないからだという。
スメール博士の考えを、ジェットコースターを例に説明する。
3次元空間を自由に駆け巡るジェットコースター、まずは地面に映ったレールの影を見てみよう。
レールの影は互いに交差し、複雑に絡み合っている。

でも目線を3次元空間に移してみると、レールはぶつかり合っていない。
2次元ではぶつかり合ってしまうレールも、それより次元が高い3次元空間では、ぶつかりあわないのだ。
同じように3次元の空間の中では、決してほどけなかったロープの絡み合いが、4次元や5次元の空間の中なら簡単にほどけてしまうことを、スメール博士達は証明してみせた。

ポアンカレ予想を高い次元から順に攻めてみようというこの試みは、フィールズ賞に輝いた。
ところがスメール博士の戦略は、大きな挫折を迎えることになる。
4次元や5次元ではうまくいった手法が、現実の3次元の宇宙でのロープの絡みには、なぜか全く通用しなかった。
天才スメールはポアンカレ予想から撤退するという選択をした。

完全に行き詰ったかに見えたポアンカレ予想の研究、しかしマジシャンの異名を持つ数学者ウィリアム・サーストン博士の登場が、誰も予想しなかった新しい道を切り開くことになる。
サーストン博士は過去の数学者達が悩み続けてきたロープの絡みを解こうとする努力はもう諦めるべきだと考えた。
ポアンカレ予想には全く新しいアプローチが必要だと直感したのだ。
ポアンカレ予想はこう言っている。
宇宙にロープを1周させて、その輪が回収できれば、宇宙は丸いと言えるはずだ。
しかしこの問いかけは、もしロープが回収できなかった場合、宇宙が例えばドーナツ型なのか、それとも全く別の形なのか、一切ふれていない。
サーストン博士は悩み続けた。
宇宙が丸くないとすると、他にどんな形があり得るのだろう。
革命的なアプローチへの入り口だった。

サーストン「私はこう考えた。
トポロジーを使って、宇宙がとり得る形を全部調べ上げることはできないかと。」
丸い形以外に、宇宙の形にはどんなものがあり得るのか、サーストン博士は身の周りにある形をヒントに、その分類を始めた。
手にとって見える形を分類するのは簡単、かつてポアンカレがやったように、リンゴは丸い形の代表、それ以外は穴の数で分類することができた。
問題は宇宙のように決して外から眺めることができない形を、どうやって分類すればよいのか、10年以上にわたる試行錯誤のすえ、サーストン博士は驚くべき結論に達した。

1982年に発表されたサーストン博士の論文で、博士はある1つの壮大な予想を述べた。
宇宙が例えどんな形であろうとも、それは必ず最大で8種類の異なる断片から成り立っているはずだ。
この大胆な予想はサーストンの幾何化予想と名付けられた。
3次元閉多様体は一様な幾何構造の断片に分解できるだろう。
ポエナル「数学者はサーストンをマジシャンに例えた。
彼は自分の帽子から魔法のようにすばらしい考え方をいきなり出してみせた。」

サーストンの幾何化予想を万華鏡に例えて説明するとこうなる。
万華鏡の模様は変幻自在、しかしその複雑な模様も、元を辿ればいくつかのビーズが生み出しているにすぎない。
サーストン博士によると、宇宙の形もまた同じ。
宇宙がたとえどんなに複雑な形であったとしても、いわば8種類のビーズが絡み合って出来ているはずだという。
サーストン「つまり有限の数のビーズが、無限に複雑な図形を生み出す。
同じように宇宙がどんな形だったとしても、最大で8つの種類の断片がつながりあって出来ているはず。」

数学者達がもっとも驚いたのは、サーストンの幾何化予想が実はその一部にポアンカレ予想をも含む壮大なる問いかけであるという事実だった。
もしサーストン博士の予想通り、宇宙が最大8種類の断片の組み合わせでできていたとしよう。
サーストン博士によると、その8種類の断片とは、1つは丸い形で、それ以外は数学者でさえ理解するのが難しいほどの丸くない形。
ここでポアンカレのロープを思い出そう。
宇宙の断片の中に1つでも丸くない形が含まれていた場合、ロープがひっかかって回収できないことに数学者達は気付いた。
つまり幾何化予想が正しければ、ポアンカレの予想通り、ロープがひっかからずに回収できた時には宇宙は丸いと言えるのだ。
ポアンカレ予想を攻略するには、サーストンの幾何化予想を証明すればよい、数学者達が立ち向かうべき相手はロープの絡みあいの問題から、宇宙がどんな形であっても必ず8つの断片に分解できることの証明にとってかわった。
ところがサーストン博士自身は、自分が世に問いかけた幾何化予想に対して意外な道を選んだ。
サーストン「もちろん自分の手で証明しようと努力はした。
でもそれ以降はなぜかアイディアが枯れてしまった。
そういう時は引き下がるのが賢明だ。」

数学者達が宇宙の形を8つの断片に分解する試みに一斉に取り組み始めた1990年代、アメリカに1人の青年が降り立った。
これがポアンカレ予想の研究の大きな転換期になる。
笑顔が印象的なグリゴリ・ペレリマン博士、この時26歳になっていた。
アメリカへ渡ったキッカケは、祖国ソビエトの崩壊だった。
これまで閉ざされてきた東西両陣営の数学者の交流が本格化したのだ。
ペレリマン博士の専門分野はトポロジーに王座を奪われたと言われた微分幾何学だった。
新天地のアメリカで、博士は微分幾何学の発展に貢献する。
1994年博士は微分幾何学の問題の1つ、ソウル予想を証明した。
得意満面のプレリマン博士、余りに簡潔な論文を見て、研究室の教授は、もう少し言葉を足して丁寧に書き直すべきだと指導した。
しかし博士はそれを拒否した。
ジェフ・チーガー博士(ニューヨーク大学教授)「彼に書き直しを拒否された時、アマデウスという映画を思い出した。
皇帝がモーツァルトにこう言った。音楽は素晴らしかったが、音符の数が少し多すぎる。
するとモーツァルトは皇帝に、どの音符が余分なのか正確に教えてほしいと噛みついた。
自分の作品には、余分な音符もなければ、足りない音符もないと答えた。」
ところがアメリカにわたって3年目、それまで明るく快活だったペレリマンが突然研究室に閉じこもり、人付き合いを避けるようになった。
キッカケはある論文との出会いだった。
この頃アメリカで話題をさらった研究論文、著者のハミルトン博士は・・・
リッチフローと呼ばれる宇宙の形を巧みに変形させる方程式を利用すれば、宇宙がどんな形であったとしても、8つの断片に分解できるかもしれないと主張していた。
リッチフロー方程式は、元をたどればペレリマン博士が高校時代に親しんだ物理学の方程式だった。
誰も解いたことのない何問をいつか解いてみたい、その目標がサーストンの幾何化予想、そしてポアンカレ予想に定まったのだ。

それから7年後の2002年秋、数学界に奇妙なうわさが流れた。
インターネット上にポアンカレ予想と幾何化予想の証明が出ているというのだ。
ポアンカレ予想を証明したという数学者の早合点は、この頃もしばしば数学界を騒がせていた。
そのインターネットの論文についても、当初ほとんどの数学者が本気にしなかった。
ところが数学者達が詳しく読み進めても、その内容には中々間違いが見つからない。
どこかに論理の飛躍があるはずだ。
数学者達の疑いは消えなかった。
翌2003年アメリカの数学界はインターネットの論文の執筆者を招き解説を求めた。
会場はポアンカレ予想に挑み続けてきた数学者をはじめ、トポロジーの専門家で埋め尽くされた。
壇上に現れたのは、かつて何問が解けるかもしれないと言い残してアメリカを後にした、あのペレリマン博士だった。
数学者達がなにより驚いたのは、ペレリマン博士の証明の進め方だった。
トポロジーの研究者達が使ってきた手法とは似ても似つかないものだった。
ペレリマン博士は自らの専門分野である微分幾何学を駆使し、さらに高校時代に育んだ物理学の知識を導引して、物理学をいわば温めたり膨らませたりしながら、それを8つの断片に分解してみせた。
エネルギーや温度など、本来の数学では使われないはずの物理学の用語を次々と登場させ、トポロジーこそが数学の王者であると信じてきた研究者達の度肝を抜いた。
ペレリマン博士は2002〜2003年にかけ、合計3つの論文を執筆した。
(リッチフローの3次元多様体への応用)

それは数学者達による、足掛4年の研究を経て、正しい証明であることが確認された。
宇宙がどんな形をしていたとしても、それは最大で8種類の断片からなるというサーストンの幾何化予想が証明されたのだ。
それは同時にロープを1周させ、それを回収できる宇宙は丸い宇宙であるという100年の何問、ポアンカレ予想が証明された瞬間でもあった。
ミハイル・グロモフ博士(フランス高等科学研究所)「100年に1度の奇跡を説明するのは実に困難。
しかしペレリマン博士が孤独に耐えたことが成功の理由かもしれない。
孤独の中の研究とは、日常の世界で生きると同時に、めくるめく数学の世界に没入するということ。
人間性を真っ二つに引き裂かれるような厳しい闘いだったに違いない。
ペレリマン博士はそれに最後まで耐えたのだ。」

サンクトペテルブルク、歴史に残る偉業を成し遂げながら、人前から姿を消したペレリマン博士の消息を訪ね、高校時代の恩師アブラモフさんがモスクワからやってきた。
アブラモフさんは明るく快活だった教え子が、人付き合いを避け、孤独な世界に入り込んだ今の状況が、どうしても信じられない。
なぜペレリマン博士は姿をくらましてしまったのか、アフラモフさんは博士の自宅のそばで、彼の帰りを待ち続けた。
5時間後、ようやく電話がつながった。
世紀の難問と闘いを経たペレリマン博士は、恩師の訪問さえ拒絶した。
「彼は全く別人になってしまった。
彼が生きている世界は、私達が生きている世界とはもはや違うようだ。
ポアンカレ予想を証明することは私達には想像すらできない恐ろしい試練だったのかもしれない。
その試練を彼は1人でくぐりぬけた。
しかしその結果、彼は何かを失ってしまったのだ。」
かつて数々の数学者の人生を翻弄してきたポアンカレ予想、その世紀の難問を解き明かすという闘いは、私達の想像をはるかに超えたものだったのかもしれない。
数学の世界では、21世紀に解決されるべきなんもんが、ポアンカレ予想の他に6つあげられている。
数学者達は、今日も青の難問に取り組み、闘い続けている。
いったいなぜ、数学者達は何問に挑み続けるのだろう。
そしてそれはどのような体験なのだろうか?

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歴史を作った頭脳 The Brain 脳の秘密2

ほとんどすべて覚えられる脳もあれば、まったく何も覚えられない脳もある。
Clive Wearingは世界でも稀な重度の健忘症患者。
記憶できるのは長くて30秒。
この日何度も妻のDeborahにあっているが、まるで彼女に会うのが初めてのように迎える。
Deborah Wearing(Clive's Wife)「彼は自分が起きているのか起きていないのかよくわからない中途半端な状態だと私に行った。
どこにいるのか分からないのだ。」
Clive「何も覚えていない。考えも夢もない。毎日同じだ。」

Cliveはウィルス感染により、脳炎を発症する前はイギリスの有名な指揮者兼音楽学者だった。
急性炎症が家事待ったときには脳は重大な損傷を受けていた。
そのためCliveは非常に短い記憶しか持てない。
記憶は脳全体に広がるが、記憶を保持したり取り出したりするために重要な部分が1つある。
大脳辺叡系にある海馬だ。
海馬がなければ新しい記憶が作られない。
David Eagleman(Baylor College of Medicine)「脳の中の記憶には、短期記憶と長期記憶がある。
短期記憶とは、電話を掛ける前に電話番号を数秒間覚えておくような時の記憶。
長期記憶とは、例えば自分がどこで育ち、どこの学校に行き、今日何をしたのかなどの記憶。
Cliveが記憶を保持できる時間は非常に短く、短期記憶から長期記憶に変更することができない。
つまり短期記憶を脳のどこにも保存させることができない。」
Cliveを診察した神経科医は、彼の海馬に深刻な損傷を見つけた。
それによると記憶を保持する妨げられているという。
Erizabeth Phelps(New York University)「Cliveは順行性と逆行性の健忘症。
つまり新しいことを学べないし、昔のことを思い出すのにも苦労する。
そのため自由自在に記憶を引き出すことが妨げられてしまう。」

Cliveの妻が彼に、息子の仕事について聞くと・・・
Deborah「息子のアンソニーがどんな仕事をしているか知ってる?」
Clive「イヤ。」
Deborah「電子技師なのよ。」
Clive「そうか。」
Deborah「何の設計してる?」
Clive「分からない。」
Deborah「車のエンジンよ。電気自動車のエンジン。」
Clive「それはいい考えだ。ガソリンエンジンからでる有毒ガスを止められる。
ガソリンを使ったのが失敗だった。」
Deborah「電気自動車の設計をしている人は誰?」
Clive「知らない。」
Deborah「あなたの息子よ。」
Clive「そうか!」
Deborah「アンソニーが最近何をしているか知ってる?」
Clive「イヤ、覚えているのは学校に行ってた頃のことだけだ。」

Cliveの症例が珍しいとされるのは、彼が家族のことは覚えていないのに、他のことは思い出せるということ。
Eagleman「彼は言葉を覚えていて、うまく話すことができる。
話し方や文の造り方などの手続き記憶は、経験の記憶であるエピソード記憶とは別の場所に保存されているという証拠。」
様々な種類の記憶がいろいろな場所に保存されている、専門家は言語記憶は側頭葉の片方に置かれており、脳の左側に、音や会話に関係する部分があるという。
もっと驚きなのは、Cliveがまだピアノを弾くことができること。
脳の右側にあるピアノを弾くための手続き記憶は損傷を受けていないのだ。
現在のCliveは陽気に見えるが以前は違った。
1988年、健忘症になって3年、イライラし怒っていた。
Deborah「最初の10年間はいくつかの同じ行動をひたすらずっと繰り返す生活をしていた。
自分が置かれた状況への不満、恐れ、恐怖、戦慄が原因だった。」
彼は頭に浮かんだことは何でも書き留めたがった。
Deborah「机は壁など書ける者には何でも書いてしまうほどの脅迫感にとらわれていた。」
彼の日記は心の叫びや取り消された言葉で埋まっている。
しかし次第に彼の怒りは収まってきた。
Deborah「健忘症になってから14〜15年で変わった。
多少記憶力が回復してきて起源もよくなった。」
Deborahはこの変化を信仰と祈りのおかげだと思っているが、神経科学者達の意見は違う。
「脳自体が変化しているのだ。
脳には可塑性という性質があり、神経回路が常に書き直される。
子供の脳は可塑性が高く軟らかいため、より速く言葉を覚え、新しい楽器を演奏できるようになる。」
最近の研究では、大人の脳にも思ったより可塑性があることが分かってきている。
脳に損傷を受けても他の部分の脳に失った機能を移して引き継げるのだ。」
今年DeborahはCliveから日記を離そうと思った。
Deborah「2〜3日前から数ヶ月前までの日記を読み返すと、同じことが繰り返し書かれているのでショックを受けたようだった。
その日記をしまって、欲しがるかどうか様子を見ることにした。」
驚くことに、23年間毎日欠かさず書いていた日記をCliveは欲しがらなかった。
意識がある瞬間に記録したいという脅迫観念は消えたのだ。
神経科学者はCliveから記憶について多くを学んだ。
それに加え人のアイデンティティに関わる脳の働きについても貴重な見解を得た。
Deborah「人は記憶が私達を存在させるのだというが、それは違う。
Cliveの性格は昔からのままで全然変わっていない。
彼は面白いし思いやりもある。
Cliveには自分の記憶はないけれど彼は彼。
何も変わっていない。昔のままの人。」

Bric Ziller(Drexel University)「スポーツのパフォーマンスは脳に影響されるが、ずっとそう思われてきたわけではない。
スポーツの歴史では、脳に無関心の時代の方が長い。
良い筋肉をしていて、よく調整された体をしていれば良い選手だとみなされたものだ。
ここ10年間でスポーツのパフォーマンスの5割が脳の影響を受け、一流の成績をだすためにも脳がもっとも重要な役割を果たしていると考えるようになった。」
Shelley Duncan(New York Yankees)「9割が精神力だ。
厳しい試合になると、自分の心をしっかりコントロールしなければならない。」
スポーツでの成功の秘訣は何か?
Ziller「ほとんどのスポーツは動きの激しいもの。
一瞬一瞬の決断が要求されるうえに判断が少しでもぶれてしまえば短いパッドもはずす。
10分の1秒の差で負ける。
シュートをはずす。
そのわずかな違いが一流選手と二流の選手の差になる。」

基礎レベルでは反射神経と練習量が上達のカギ。
新しいサーカスパフォーマンスを提供するシルクドソレイユのパフォーマー達は練習を欠かさない。
私達は前頭葉を使って運動を学習するが、練習することによって発達するのは小脳という部分。
脳の後ろ側にある。
脳を考える際に時間をかけて新しい部屋を増築した古い家だと思えばわかりやすい。
脳幹は一番初めに進化したので地下室。
次に進化したのが小脳。
小脳は体の中にある1000億個の神経細胞に信号を送り筋肉に運動を命令する。
「前頭葉も運動を監視しているが、ほとんど邪魔しない。
そのため主に小脳が何度も繰り返し練習される運動を監督する全責任を負っている。」
科学者達は単に前頭葉が高度なパフォーマンスに必要な情報処理スピードに追い付けないだけだと考えている。
だから小脳がとってかわるのだ。
これが手続き記憶、Cliveがピアノを弾くときに使う者と同じ。

Ziller「机の引き出しから練習したことのある運動の記憶を取り出すイメージ。」
専門家は上達のために練習が必要だと力説する。
練習すればするほど毎回どの神経と筋肉が動いているのか小脳が理解するようになるからだ。
スポーツ心理学ではプロレベルに到達するために計画的な訓練に1万時間以上時間をかけることを勧めている。
シルクドソレイユの凄いレベルの技は、筋肉そのものの記憶が緊張と弛緩の連続を指揮している結果なのかもしれない。
しかしやはり脳も大切。

Ziller「脳に損傷を受けると動けなくなる。
もちろん健全な体も必要で、適した体格がある。
バスケット選手は背が高いほうがいいし、競馬の騎手は小さいほうがいい。
しかしどのスポーツ選手もそれぞれの種目にあった脳を持っている。」
連取や適した体格以外にも脳にはスポーツにおいて重要な役割がある。
「例えば重量挙げの選手がかなりの重さのバーベルを挙げる時、持ち上げるためには気合が必要。」海軍の訓練では呼吸法で興奮を抑えていたが、スポーツ選手は興奮レベルを上げ下げさせる必要がある。
スポーツ科学者はこれを興奮調整と呼ぶ。
「興奮調整とは脳のボリュームボタンだと考えている。」
大脳辺縁系にある扁桃体が感情をコントロールしている。
扁桃体は勝負のために私達のテンションを挙げる。
初期の人類が狩りに備えるために進化した機能。
しかし扁桃体にはキッカケが必要。

簡単な方法の1つに知覚的な刺激がある。
応援や拍手などだ。
「大きな音を出したり体を叩いたりすることによって、外部からコントロールできる。
なぜなら知覚的な刺激は脳の1階部分にはいってゆくから。
人々はスポーツでこの方法を本能的に使っている。
大声をだして、いいぞいいぞ、そうだ、イケイケイケ〜。
スポーツ選手は試合が始まると自分のポジションに就く必要がある。
興奮の度合いを調整するのだ。
なぜならバスケットボールは接触競技だから。
押しのけたりリバウンドを争ったりする。
ほとんど戦争のようだ。
興奮レベルが上がった状態から下げるのは上げるのと同じくらい難しい。
もっと難しいかもしれない。
急に動きがあがり、フリースローのチャンスとなる。」

選手は数秒で興奮状態から落ち着いて集中する必要がある。
選手の脳の中では前頭葉が素早く扁桃体の反応を抑えねばならない。
感情を落ち着かせ体をリラックスさせ、呼吸をゆっくりして心拍を遅くする。
シュートが成功する可能性を高める。
選手の体は興奮状態になっているため、抑えるのが困難。
失敗することへの恐れなどの緊張感に前頭葉が邪魔されるかもしれない。
そのような感情が強いと、それが大脳辺縁系に伝わり、恐れの反応を生み出す。
そして難易度の高いパフォーマンスに集中するのが非常に困難になる。
これを専門家はアガリと呼ぶ。
Ziller「アガリがパフォーマンスの悪さの大きな原因となる。
成功するスポーツ選手はそれを克服する。」
Graham Rahal(Indycar Driver)「心臓の鼓動を落ち着かせて、すべきことに集中するのは難しい。
混乱した状態だと焦ってしまいたくなるけど、リラックスして冷静になることが必要。」
誤れば命を落とすこともある。
Ziller「集中力を失うと、たいてい事故を起こす。
最高時速は370km/hにもなるから何が起こっても不思議じゃない。
もし壁に衝突すれば大打撃を受ける。」

アガリを理解するにはゴルフがうってつけ。
「ゴルフが人を魅了するのは、世界トップクラスの選手が60cmのパットをはずして何10巻ドルもの賞金を失うこともあるから。
パットでは大きな動きがない。
少ない運動量なので、前頭葉の働きはおそらく上がる。
タイガーウッズがパットをきめるのは経験豊富だからと思われているが、ボールを入れられるかどうかを決めるのは彼の脳なのだ。
研究の結果、脳が成功を助けることも失敗を招くこともあることが分かっている。
タイガーウッズはパットを成功させる秘訣を知っていて、自分の脳の働きを制御できるのだと思う。」
動いているタイガーウッズの脳を検査することはできない。
科学者達は推測するしかない。
「彼はパットの間ほとんど瞬きをしない。
不安はほとんど感じていないようだ。
なぜなら瞬きはたいてい不安と関わっているから。
うとうとしている状態のようにリラックスしている。
そんな状態でもやるべきことに集中することができるのだ。
スポーツ選手はこの特別な感覚を、ゾーン状態と呼ぶ。
意識しなくても自然と体が動く状態だ。
これは小脳が関わっている。
練習と前頭葉が関係する集中と、扁桃体が生む不安が少ないという最高の組み合わせによるものだ。

Duncan「ゾーン状態になるのはすごく難しい。
呼吸をコントロールして、できるだけ深い息をすることができれば、心臓の鼓動が遅くなり、それができると完全に意識を自分の思い通りにして五感を最大限に働かせることができる。」
専門家は脳が集中すると、関係のない情報を遮断したり無視したりすることができるという。
脳と体が完全に1つになるのだ。
「スポーツ選手だけでなく誰もがここ一番の時には無心になりたがる。
目の前にあることだけに集中することには特別な何かがある。
そうする時、素晴らしいことが起こり得る。
考えや自分の意志が明確になる。」
Duncan「ゾーン状態では時間がゆっくりと動き、自分が考えたり見たり、脳に浮かんだ考えをコントロールできる。
そうするとうまくいく確率が高くなる。」

ゾーンとは脳が体を完全に掌握している状態のようだ。
しかしそれ以上の能力を持っていると主張する人がいる。
脳には第六感があるという考えだ。
私達の五感は脳と外の世界をつなぐための入口。
信号を皮膚、目、鼻、舌、耳から受ける。
脳の別々の部分で触覚、視覚、嗅覚、味覚、聴覚などの近く情報を解釈する。
もし6つめの感覚があるとしたら、私達の脳が他の人の心を読んだりできごとを予期したり、死者からのメッセージを伝えられるのだろうか。
アメリカ人の4人に1人は超能力を信じているが、信じている科学者はわずか。
Dean Radin(Noetic Institute)は霊的現象を研究している。
彼の理論は、誰もが超感覚的な能力を持っているというもの。
そのような力には違う呼び方もある。
Radin「普段の会話にでてくるものに直感がある。
運転中に感じられることが多いようだ。
この角は何か変だ、よくない感じがするなと思うとたいていは向こう側から車が来ている。
それ以降私は直感に注意している。
数秒後の未来に意識が飛ぶような感じ。
他には頻繁に報告されている、見られているという感覚がある。
よくあるケースでは、女性が男性に見られていると感じるようだ。
電話のテレパシーもある。
電話が鳴ると、誰がかけてきたのか携帯電話の表示を見なくても誰からかわかってしまう。
普通はかけてこないような人の電話がこの場合に当てはまる。
いくつか例をあげてみたが、そのような出来事が日常生活でみられる。」
Radin博士は電磁波が遮断された部屋で300人以上のボランティアを調べた。
一連の画像を見せて彼らの反応を測定する。
「ランダムに選ばれた写真を見せる。
穏やかなもの、感動するもの、その中間の写真もある。」
感動するものの方がより強い反応がでる。
Radin博士は写真は無作為に選ばれているのに、写真を見せる前に正確に反応する人が必ずいると気付いた。
彼らは実物を見る前に、どんな写真か見えているようだ。
しかしその霊的能力には差がある。

John Edward(Psychic Mediam)は人気のテレビ霊媒者。
Gary Schwartz(Laboratory for Advances in Conciousness and Health)「科学の歴史上間違いもあった。
地球が平らだと信じられていたが間違いだった。
太陽が地球の周りをまわっているというのも誤りだった。
物体は固形で動かないという理論も違うと分かった。
だから私としては霊媒者やヒーラーだと主張する人がいたら、とにかく会う。
本当か嘘か分からないが見せてもらう。
霊視の典型的なやり方は、霊媒者が小さな情報の断片を得ること。
向こうの世界がバラバラというわけではなく、霊媒者が断片的な情報を拾うことができる。
携帯電話の電波が悪い時の通話と似ている。
情報が途切れ途切れに聞こえる。」
Edward「死者はどこにいるなどとよく聞かれるが、インターネットと同じ。
場所は存在するが実際に行くことはできない。
何らかの伝達手段を使ってどうにかつながらなければならない。
一定の場所に惹かれることもある。
特定の人のところに何が聞こえる時には耳から聞こえない。
外側から聞こえる。
思いが聞こえる。」
Edwardはアリゾナ大学の化学実験を受けることを了承した霊媒者の1人。
もっともうまくいったのは霊媒者とボランティアの頭に脳波計を、胸には心電計をつけてもらった実験だった。
Schwartz「実験の1つの方法としては、霊媒者が被験者の心を読んでいる時、死者の心を聞いている時の霊媒者の脳波をとって、心電計で心拍を記録する。
そして同時に被験者の脳と心臓の動きを記録する。」
霊媒者は被験者には会わない。
彼らは仕切りを隔てて座る。
Edwardや他の霊媒者は被験者の亡くなった家族について、できる限りの情報を得ねばならない。
Edward「実験で何度か何も見えないことがあった。
全く何も感じないのだ。
なぜだかわからないが。」
Schwartz「Edwardが正しい場合がある。
間違いだと思っても後から正しいと気付くこともある。
あるいは被験者が答えを知らないだけで、家に帰って家族や友人に聞いてみるとEdwardが正しかったと分かるのだ。」

Edwardの正解率は平均だいたい80〜90%、計測装置を見ていると。彼の脳波と心拍数は、被験者のものとは似ていなかった。
Schwartz「実験で分かったことは、Edwardの心拍が、被験者のものと外れていることだった。
つまり彼は他のことに注意を向けていることを示している。
研究室でEdwardと行った実験を基に、私ははっきり確信した。
彼は本物の霊媒者。」
彼の著書『あの世の実験』は科学者仲間の間で論議を巻き起こしている。
答の分からないことが多いからなのかもしれない。
「現時点では科学的にEdwardのような霊媒者が持っている能力は解明できていない。
私達の研究所でたてている仮説とは、人間がみんなエネルギーを持っていて、遠い星の光のように輝き続けているということ。
そしてEdwardをはじめとする霊媒者の脳や意識がアンテナやレシーバーのようになって存在している。
信号を察知することができたり、ノイズを低く抑えてわずかな信号を受信できたりするのだ。」
「目に見えないエネルギーの流れの中に私達が存在しているということは、映画『スターウォーズ』に出てくるエネルギーの流れと似ている。
スターウォーズの主人公は突然惑星が爆破された時に起こったエネルギーの乱れを感じる。
彼は時空に流れるエネルギーを通して波動を察知したのだ。
超能力と呼ぶ現象もたぶん、同じような仕組みから生まれたもので、察知能力が高い人なのだろう。」
物理学では、このつながりに名称がある。
“量子のもつれ”と呼ばれている。
現時点では単に電子と分子に応用されている理論だ。
またそれを脳に応用できるかはわかっていない。
我々が思っているより速く、超能力を裏付ける画期的な発見があるかもしれない。
機械を使って一世代で脳を強化し、進化できることができたらどうだろう?

国防総省国防高等研究計画局DARPAから資金援助を受けるプロジェクトの目標は、抜本的な改革。
Jpnathan Moreno(University of Pennsylvania)「彼らの任務は国の安全を確立するために科学の方式を打ち破ること。
今や常識となっている驚くべき技術を開発した。
インターネットやコンピューターのマウス、ステルス爆撃機などだ。
DARPAは国中から優れた科学者達を集め、現在の科学技術を30年40年先まで進めるよう依頼するのだ。」
DARPAはコロンビア大学の飛躍的な研究に資金援助している。
Paul Sajda(Colimbia University)たちは脳が光の速さで視覚情報を処理するのを助けるプログラムを開発している。
Sajda「現代社会では、私達の周りで情報があふれている。
テレビからの映像、インターネットの映像、仕事の情報などに圧倒されている。
どれが本当に必要な情報で、どれが無視できるののなのか判断する必要がある。」
大脳皮質の働きを組み込んだコンピューターによる画像認識システムのアイディアは、コンピューターのスピードによって人間の脳の多機能性を高めようというもの。

韓国ソウルの航空写真の画像、画像分析者は、ヘリポートを探している。
古いやり方ではヘリポートに印をつけるのに、何千枚もの写真を1枚1枚順番に探す必要があった。
新しい方法では、分析者が脳波計付きの帽子をかぶる。
何10個もの電極で頭蓋骨のすぐ下で起こる脳の電気活動を検知することができる。
通常の脳の働きでは、視覚野がある光景から細部を抜き出す。
そして情報は意思決定のために前頭葉に送られる。
その後運動皮質で反応が作られ、マウスで動かしたり目を動かしたりする。
試作プログラムは信号を受信し、不要な脳の活動を除外し、ヘリポートを見つけた時に、あったともう潜在意識に集中する。
画像分析者は数秒間で数千枚もの画像を調べられる。
意識的には気付いていないかもしれないが、脳はヘリポートがある写真を非常に正確に見つけるので、あとで印をつければよい。

この視覚技術のおかげで、画像分析者が最大4倍の速度で作業できるようになる。
戦闘機パイロットが一瞬でより正しい判断ができるよう応用したり、警察官や警備員が監視カメラの映像をより速く確認できるようになるかもしれない。
そして国防省や諜報機関の枠を超えるこtもしれない。
「情報を処理する場面が多い場で利用できる可能性がある。
株式市場でトレーダーは情報を様々なスクリーンから取り入れるため、目には留まってもその瞬間すぐに行動できないかもしれない。
だからトレーダーが興味を持った情報に印をつけておいて、他の人がその部分の処理をすればよい。」
医学の研究でもこの装置に興味があるかもしれない。
またマーケティングに携わる人は、商品や広告キャンペーンの第1印象の記録に使えるだろう。

カリフォルニアにあるビデオゲームメーカーはすでにコントローラーを捨て、脳の力を選んだ。
脳波計に似たヘッドホンで、脳の電気信号や顔の筋肉の収縮データを収集する。
データを画面上での命令に変えられる。
プレーヤーはクリックするのではなく、考えることで岩を持ち上げ、敵を消す。

またPDAと呼ばれる携帯情報端末を脳に埋め込むという可能性には度肝を抜かれる。
「年をとって名前や顔を覚えられなくなることは心配。
自然と衰えてゆく記憶を補う方法を見つけたい。
なので究極的には頭の中に顔写真と名前を埋め込むことになると思う。
そうなるとどこからどこまでが自分の脳で、どこからが機械なのかが分からなくなるだろう。」
ノースカロライナ州リューク大学の神経科学者達は、すでに次の段階に進んでいる。
猿の脳の中に電極を埋め込み、歩くための脳の信号を取り出した。
最近の実験では、猿がルームランナーの上で歩く間に、その脳の信号がインターネットを通じて日本に送られ、身長150cmの人間型ロボットが瞬時に歩き出した。
その猿はご褒美にレーズンをもらった。
その後ルームランナーはとめられたが、もっとレーズンがもらいたいという欲望で、猿はロボットを続けて歩かせた。
考えることによってだ。
同じような実験がペンシルバニア州ピッツバーグ大学でも行われた。
脳に小さなセンターをつけた猿が、ロボットアームをコントロールしておやつを食べることを覚えた。
医学にも大きな影響を与えるだろう。
切断手術を受けた人や、手足に麻痺が会う人に、人工的な手足を動かす能力を与えることによって、彼らが今までできなかったこと、周りとつながることができるようになる。
Cliveのように脳の損傷により、新しい記憶が作れない人にとっても、将来の望みになるだろうか。
現在ラットで実験中だが、いつか人間用の人工海馬を作れるかもしれない。
「もしそれができれば、コンピューターのチップに保存するのと同じように、新しい記憶を瞬時に取り込むことができるようになるはず。
新しい言語を覚えるのに何か月もかける代わりに、基本辞書をダウンロードできたらどうだろうか。
または行きたい都市や見たい場所の基本的な地図を脳にダウンロードできれば便利。」

副作用なしに2〜3日起きていることができる薬が、戦闘部隊のために開発されている。
アンパカインという新薬は、疲れた脳の神経伝達物質グルタミン酸塩の働きを助け、記憶、学習、認知を改善する。
ゆくゆくは日常的に使われることになるかもしれない。
科学者達は近い将来携帯型の脳スキャナーを怪異性させるつもり。
ヘッドバンドに取り付けられた発行ダイオードが前頭葉の中に光を反射させ、脳の働きを感知する。
その情報はトランプの箱ほどの装置の送り込まれる。
大きなMRIの中でじっと横になるのではなく、着用者はスポーツをしながら脳の検査をできるかもしれない。
Ziller「超一流選手の脳を調べることができるだろう。
彼らは解剖学上で必ずしも異なるわけではないが、情報処理の観点では機能的に優れている。
2つ目の応用としては、この新技術をスポーツ選手のパフォーマンスを向上させるのに使えるかもしれない。」
脳の画像技術はまだ開発途上、広く使われるようになってから20年も経っていない。
100年以上経っているレントゲンと比べれば、もと進歩するはず。
人が欲しがっているのはもっときめ細かく鮮明に脳の奥の奥まで分子レベルで見える画像。
それを実現するのがこれからの課題。
脳についてだいぶわかってきたが、まだまだ知らないことがたくさんある。
Eagleman「記憶はどのように保存され、再生されるのか、なぜ脳は夢を見るのか、知能とは何か、なぜ人にはいろいろな能力や才能があるのか、どのように世界を捉え、時間を認識しているのか、意識とは何か。」
次の世代まで時間をかけてその疑問に答えても、それが脳にとってどんな意味があるのだろうか。
脳は非常に精密な機関だが、しばしば原始的な本能に動かされてもいる。
私達は現在の世界とは全く違う世界で進化してきた。
時代に合わせて脳も変わるべきだ。
21世紀とその先の未来に、人間の脳をどう適応させたらよいのか、それが脳科学における最大の謎。

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歴史を作った頭脳 The Brain 脳の秘密1

人間の脳は最後の未開拓領域、この5年のうちに、過去5000年を上回る発見があった。
脳は私達の生活を支配している。
人間の進化と共に2倍の大きさになった。
およそ1300gだが、身体が摂取する全エネルギーの20%を消費する。
電球を点灯させるほどのエネルギー量になる。
Bric Zillmer(Drexel University)「脳の進化を考えるとき、古い家の増築を思い浮かべよう。
部屋が追加され、階段や通路でつながれている。」
もっとも古い地下室の部分は脳幹と呼ばれ、爬虫類や人間以外の哺乳類にもある。
脳幹は心拍や呼吸、消化や血圧など、私達の生命に関わる重要な機能を司っている。
無意識な状態でも働く。
「その地下室の上、1階にあるのは比較的新しく、数10万年後に出来上がった大脳辺縁系(The Limbic System)、感情を処理するのに非常に重要。」
大脳辺縁系には扁桃体という2つの神経細胞の塊が左右に1つずつある。
指の爪ほどの小さなサイズだが、感情をコントロールする脳の中枢機関。

単純で強い感情の中に、恐怖心がある。
誰もが持つ基本的な感情だ。
恐怖心が脳に与える影響を知るのに最適な場所はカリフォルニア州サンディエゴの海軍訓練所、Seal特殊部隊だろう。
志願者は恐怖に対する脳の反応を鍛え上げるために、特別なトレーニングを受けている。
Roger Herbert(Commanding Officer,Navy Seals)「ここでは初日から訓練生たちを容赦なく混乱させる。
そして彼らは奮闘する。
戦場での歴史的失敗はほとんど必ずといって、恐怖心やパニックが関係している。
そのような感情をコントロールする能力を育てることが非常に重要。」
毎回140名の志願者のうち、最後まで残るのは平均たった36名。
晴れて入隊できた者は脳をうまく任務に適応させたからだ。
身体的に優れた者がこの訓練に耐えられるとは限らない。
脱落したオリンピック選手もいる。
逆に体重63kgの海を見たことがなかったネブラスカ州の若者が終了した。なぜだろう?
この問いに答えるために、海軍は神経科学に目を向けた。
恐怖に直面すると、扁桃体が感覚器官からの情報に反応し、本能的に体内のパニックボタンを押す。
扁桃体は脳の中で他の部分への連絡機能を果たしているので、脳幹に緊急信号を送って異常な身体反応を促す。
汗をかいたり心拍があがったり、しばらく動けなくなったり、逃げだしたりすることもある。

クローズ・クォーター・ディフェンス・システム社が提供する目隠しボックス訓練、入隊に必要な条件の1つ、扁桃体からの信号を制御するためのもの。
訓練生は何も見えないし聞こえない。
その後どうなるか、教官がシナリオを考える。
目隠しボックスが取られ、訓練生は対応する。
Peter Chamis(Seal Candidates)「目隠しボックスの中にいる間は心を落ち着かせてどんなことが起こるのか想定する。」
素早く攻撃的な反応が正しいケースもある。
有効的な反応もある。
Kelly Dejarnete(Navy Seal)「迅速な決断を迫られる場面を日々模擬体験している。
ほんの一瞬で危険な状況になるから。」
訓練を積み重ねることで、パニックがだんだん減って起こらなくなってゆく。
何度も恐ろしい体験をして、志願者は恐怖心を抑えることを学ぶ。
パニック状態ではまともな対応がとれず、死につながることもあるのだ。
ではどうしたらよいのか。

人間の進化の過程で大脳皮質という脳の別の部分も恐怖心の処理に関わるようになったことを科学者達は発見した。
扁桃体が脳の1階だとすると、大脳皮質は2階にあたる。
しわの多い薄い外側の層で、4つの葉という領域に分けられる。
猿の大脳皮質を広げると、ちょうど紙1枚のサイズになる。
人間の場合はだいたいその4倍くらいの大きさで、頭がい骨に納まるように押しつぶされているからシワが多い。
前頭葉は目のちょうど上の辺りにあり、脳の中でもっとも新しい部屋。
人間が進化するにつれ、意識や理性的な思考を処理する場所となった。
問題解決のための機関。
前頭葉は脳の指揮者の役割を果たしている。
あらゆる活動を同時進行させる。

科学者達は恐怖心に関する研究で、大発見をした。
感覚からの情報が、扁桃体に届く速さは前頭葉に届く速度より、およそ2倍速いことが分かった。
つまり扁桃体が恐怖にどう反応するかを本能的に知っていない限り、思考が停止し、前頭葉からの指示を待つことになる。
恐怖やパニックに直面すると、どうしていいかわからなくなり、道路で立ち往生する鹿のように動きを止めてしまう。
扁桃体は早く恐怖に関する信号を受けとれるかもしれないが、それが間違った情報ですぐに怖がる必要はないと気付くこともある。
なので扁桃体からの速い信号は、前頭葉が上からコントロールできるようになっている。
そこでSealのトレーニングの出番、判断の遅れを最小限にして、迅速に正確に反応できるようにするトレーニング。
特殊部隊への出動要請が増える中、海軍は脳のトレーニング方法を開発し、入隊できる志願者が増えるよう努めている。
脳の研究が進むにつれ、多くのことが分かってきている。
その構成や機能についてだ。
脳科学の進歩は海軍での訓練の質を向上させるのに役立っている。
特別な訓練を積めば、戦場での恐怖に対する脳の反応を改善できる。
しかし最高レベルの恐怖も克服しなければならない。
例えば溺れる恐怖。

水中に閉じ込められる恐怖は脳にもともと植え付けられているものだと専門家は言う。
酸素を求めて水面に上がろうとする非常に強い衝動を抑えることは、ほぼ不可能。
そのため志願者たちはプール能力テストに合格するのに悪戦苦闘する。
William Guid(Master Chief Petty Officer,Navy Seals)「このテストは海軍での出世を左右する重要な試験で、水中での恐怖に対する能力を試す。
厳しいマニュアルに基づき教官が訓練生に困るような行動をして反応を見る。」
教官から繰り返し呼吸装置を外されることに耐えながら水中に最長20分いなければならない。
半分の時間は息ができない状態。
エアーが止められたり、ホースをタンクに巻きつけられて、なかなか取れないので、訓練生は緊急対応手順に基づき臨機応変に対応する必要がある。
訓練生は前もってホースを元に戻すための手順を頭の中に入れている。
手順通りに行わねばならない。
しかし実際にはうまくできない。
空気がなくなると訓練生の脳の扁桃体がパニックボタンを押し、水面に急いで上がるよう駆り立てる。
自制心を保つためには前頭葉が扁桃体との戦いに勝たねばならない。
やっとのことでホースを元に戻しても、その後何度も教官に攻撃される。
このテストで落ちてSealに入隊できない志願者がもっとも多い。
それはなぜなのか、脳の中で何か起こるのかを、海軍は知りたかったのだ。

呼吸ができないことほど怖いことはない。
かなりのストレス反応を引き起こす。
大量のストレスホルモンが分泌され、考えて行動することがより難しくなる。
通常脳は弱い電気信号を使って体と連絡を取っている。
時速430km/hのスピードで脳の神経細胞から他の神経細胞へと電気信号を送る。
脳が体に指令を送る方法のうちの1つだ。
極度な恐怖感によって、脳波ホルモン物質を放出する。
脳の1部、1つまり扁桃体が恐怖を感じると、連鎖反応を引き起こし、アドレナリンとコルチゾールホルモンが血液中に放出される。
これらのストレスホルモンは、まるで特別機動隊チームのように素早く臨戦態勢を整える。
呼吸数や心拍数が増え、血圧が上がる。
また感覚が鋭くなり記憶力もよくなる。
一方痛みに鈍感になる。
そんな厳戒態勢にも関わらず、多くの訓練生がプール能力テストに苦戦する。
他の仲間が試験に受かったり落ちたりするのが見えて不安になり、注意力が散漫になる。
余計なことを考えず精神を集中することが鍵。
訓練生は課題を終えるとプールの底をタッチして水面に上がり、教官から試験結果を聞くことができる。

1回目のテストで合格できる志願者はほとんどいない。
チャンスは4回、1回ごとにだんだん後がなくなる。
プール能力テストに合格できない最大の原因はパニック。
水中で冷静さを失ってしまう。
海軍は合格ラインギリギリで受かる見込みのある訓練生をなんとか助けたかったのだ。
専門家の意見を基に、画期的な精神力強化方法を見出した。
恐怖心を克服する能力を高めるための一連のテクニックだ。
極限状態でも適応できる。
Eric Potterat(Command Psychologost,Navy Seals)「もっとも興味深いのは4大攻略法、目標設定、イメージトレーニング、独り言、興奮抑制。」
神経科学者は目標設定により、前頭葉を助けると考えている。
脳の司令官である前頭葉は、理性と計画を司っている。
具体的な目標に集中することは、脳を混乱させ感情の中枢である扁桃体の働きを抑制する。
Chuck Pfarrer(Former Navy Seals)「毎朝起きたら言う。
朝食まで頑張ろう。
朝食になったら、昼食まで持ちこたえよう。
そして午後をなんとか切り抜けようという。
時間を細かく分けて考えるのだ。」

2つめのテクニックはイメージトレーニング、つまり頭の中で映像化すること。
そうすれば本番でうまくゆく。
Potterat「頭の中でトレーニングしてストレスがかかる状況で、どう対処するか想像し、1回予行演習しておけば、実際そうなった時は2回目となり、経験が生かされる。
そうすればストレス反応が減る。」
3つめのテクニックは独り言。
考えをまとめるのに役立つ。
一般的には1分間に300〜1000文字のペースで独り言を言える。
後ろ向きではなく、前向きな言葉。
できないではなく、できるということで、扁桃体からの恐怖に対する信号に打ち勝って助ける。
Bric Zillmer(Drexel University)「前頭葉はいつも作動しているので、辛く悪いことを考えがちになる。
失敗するかも、自分は何をしているのだ、もっと練習できたはずだなど。
その代りにもっと良いことを考えるようにするのだ。」
4つ目の方法、興奮抑制とは、呼吸を集中させること。
ゆっくり落ち着いて呼吸することがパニックで起こる反応と戦うのを助ける。
息を長くはいて体がリラックスしている状態を真似れば、より多くの酸素が脳に取り込まれうまく行動できる。
呼吸を整えるだけでは足りない。
扁桃体が強い信号を送るため、恐れをかんじたままではパニック状態を抑えることは困難。
しかし4大攻略法を組み合わせることでSealの志願者の合格率を4分の1から3分の1に増やした。
限界を超えるという考えは目新しいことではないかもしれないが、Sealの例は脳を訓練できるという決定的証拠であり、科学がそれを実証した。

危険なことに近づかないように脳に恐怖心という感情が発達した一方で、種の存続を確保するために、強い性的衝動が備わった。
Helen Fisher(Rutgers University)「オルガスムはもっとも強烈な体験の1つ。
頭の中に忍び込んで、あのとてつもない恍惚状態を脳がどのように作り出すのかを調べられるなんてワクワクする。」
オランダのGert Holstege(University of Groningen)はセックス研究の草分け的存在。
オルガスムの間男性と女性の脳で何が起きるのか、初めて明らかにした。
Holstege「15年前には実現不可能だったが、今は神経画像処理の技術で、脳の中を見ることができるようになった。」

実験にはカップルのボランティアが必要。
カップルそれぞれに検査用の物質が投与され、オルガスムに達するようパートナーから刺激される。
その間ペットスキャナーと呼ばれる3D撮影装置に頭を入れて横になる。
「ペットスキャナーは血流量だけを計測する。
脳内の他の部分に流れてゆく血流量を測る。」
脳には多くの血管がある。
神経細胞が活発に活動する際には、酸素やエネルギー源を含んだ血液が大量に必要になる。
活動が少ないとほとんど必要ない。
研究室という場所で、ボランティアがオルガスムに達するのはとても難しい。
それは時間の制限もあるからだ。
投与する検査用物質の寿命はたった2分。
運よく11人の男性と13人の女性がなんとか時間内に性交した。
そしてこの画期的な実験で、セックスの間女性と男性の脳の活動が驚異的に異なることが分かった。

男性のオルガスムでは脳幹の上部に血液が集まる。
脳幹は人間の脳の中でも古い部分の1つで、ドーパミンの放出を管理している。
ドーパミンはホルモンの一種で神経伝達物質とも呼ばれ、快楽などの非常に強い感情を作り出すことで知られている。
Gregory Berns(Emory University)「ドーパミンは食事やセックス、ドラッグなどを行う少し前に分泌されることが明らかになっている。
だから厳密に言うと快楽の物質ではなく、気体の物質。」
Fisher「大量のドーパミンがでてくる。
ドーパミンはコカインや覚せい剤などで快感を得る際にも働く物質だから、かなり強い幸福感やエネルギーを体験することになる。」
実験では男性の場合、不安という感情に関係する脳の部分から血液が引いたが、その他の部分は警戒したままだった。
Fisher「男性の場合、扁桃体などの不安や恐怖に関係している部分が活動を止めることが分かった。」
博士は女性も同様にドーパミンがもたらす快楽を得ることが分かっていたが驚いたことはオルガスムの間、女性の脳はどれほど活動を停止するかどうか。
「女性の場合、不安や恐怖や警戒などに関連するあらゆる脳の中枢機能を止めている。
女性は全てを忘れるようだ。」
女性はオルガスムの最中、意識を失うことさえできるのだ。

専門家はこのような男女の差は大昔の狩猟採集生活をしていた頃にさかのぼると考える。
Fisher「数100万年前には危険な動物がうろついているアフリカの草地でセックスしていたので、警戒が必要だったのだ。
急いで逃げたり仲間を守ったりするのは男性の役目だったのだろう。
それで女性の方が脳の活動を止める傾向があるようだ。」
博士は今後、ドーパミンで誘発された陶酔感がオルガスムの後、どれくらい速く引くのかを調べようとしている。
Holstege「男性と女性ではオルガスムの直前と最中と直後で大きな違いがあるはずだと考えている。
具体的に脳のどこが違うかが知りたいのだ。」

セックス以外にも様々なことにおいてドーパミンが脳を動機付ける大きな役割を果たす。
セックスとは正反対と思われるようなことにさえもだ。
危険なことにも挑戦させる。
ユタ州Moabのベースジャンパー達を崖から飛び降りたいと思わせる快楽とはどんなものなのだろうか?
一歩間違えれば死ぬこともある。
これを究極のスリルだと考える人もいるが、誰もがそう感じるわけではない。
ベースジャンパーがジャンプのことを考える時、脳がドーパミンを分泌することが分かっている。
セックスと同じようにドーパミンが期待感を高める役割を担う。
セックスと違うのは扁桃体が活動を停止せずに、恐怖感という信号を送る。
ジャンパー「ジャンプする前はイライラしたり緊張したり掌に汗をかいて不安が頭をよぎる。」
Berns「ジャンパーたちはジャンプに集中していて気付いていないだろうが、この間ずっとドーパミンが興奮をもたらす反応を起こしている。」

ベースジャンプ初体験のクレスタが緊張する理由は高い所に対する恐怖心を隠し持っている扁桃体が120m下を見ることで、パニックボタンを押しているから。
「人が生理的に興奮した場合に起こる反応。
ストレス系統が活動を始める。
アドレナリンが分泌され、鼓動が速まる。
ホルモンが放出され、コルチゾールのようなストレスホルモンがでてくる。
またドーパミンのような神経伝達物質が恍惚感を期待してでてくる。」
しかし同時にクレスタの前頭葉が介入してくる。
本当に大丈夫かという質問を投げかけるのだ。
恐怖、快楽、起こりうる危険、そんな矛盾する信号を処理して行動に移すのは、脳の中ほどにある線条体という部分だと専門家はいう。
Berns「線条体とはレートの交換局。
そしてまた、ドーパミンの受容体が密集している部分でもある。」
クレスタの脳内のドーパミンは線条体に突撃する。
快楽を得たいという気持ちが他の感情に打ち勝つのだ。

ベースジャンプ初心者のクレスタが生きるか死ぬかの決断をする際、脳の中で戦いがあった。
快楽のためなら何でもできるのだろうか。
Berns「ジャンプするという決断は、予想される良い結果と悪い結果との戦いに、良いほうが勝ったということを意味している。
反対の場合なら崖から退散しきりあげているだろう。」
ジャンパーたちは死の恐怖から生き延びて間もなく、次の準備をする。
彼らは新たな危険、もっと難しい状態を求めて別の場所を探すのに夢中。
科学者はそれにも理由があるという。
「おいしいものを食べたり飲んだりすることでも、セックスでもなんでもよいが、快楽の感情に頻繁にさらされると、脳内のドーパミン反応がだんだん弱くなることが分かっている。
価値が減ってしまうのだ。」
そのためスリルを求める人々はまったく新しいことをするか、もっと危険なことをするかのどちらかをする。
「目新しいことはドーパミン系統に大きな衝撃を与える。
ベースジャンプではそのどとらも満たして最大限の快楽を得ることができる。
だからもう1度、ということになる。」

危険を求め、楽しむ感情は進化のために必要なのだと科学者達はいう。
人間が危険を冒さなかったら今でも洞窟の中に住んでいただろうというのだ。
しかし危険を冒したがる人と冒したがらない人がいるのはなぜなのだろう?
日常生活においても、例えばレストランで毎回同じものを注文する人がいる一方、新料理を注文して美味しいかどうか試してみようとする人もいる。
ジョージア州エモリー大学ではより危険なことを選ぶよう、脳がプログラムされているのかを研究している。
ボランティアにギャンブルゲームをしてもらう。
足にショックがこないようにするのが目的。
毎回ボランティアは2つの選択肢から1つを選ぶ。
はずれを選ぶと足にショックがきて痛い。
Berns博士はスキャナーでこの実験を行い、選択前にどのくらいのドーパミンがでるのか脳の活動を監視する。
「遺伝情報に組み込まれている特徴があるようだ。
人には危険に反応してでるドーパミンの量に差があるという生物的な系統がある。」
また人の脳は意思決定において首尾一貫していることが分かった。
そして人がどの選択を選ぶのかを予測できるコンピュータープログラムを完成させた。
「ギャンブルゲームで脳の反応の型をとることができる。
これを神経指紋と呼んでいる。
それをコンピューターのアルゴリズムに組み込めば、高精度で何を選択するかを予測できる。
人間は個々に違うが意思決定には何らかの傾向があるようだ。」
しかし複雑な予測ができるようになるにはまだまだ時間がかかるという。

ある特定の性格タイプの倫理的意思決定方法について疑問をもった科学者がいる。
精神病質者の脳と犯罪の関係を理解するヒントが見えてきたという。
Adrian Raine(University of Pennsylvania)「誰もが時々悪いことをする。
悪いことをするとわかるだけでなく、心で悪いと感じる。
嫌な気持ちになり罪悪感を抱き深く後悔する。
間違いだと感じることが将来私達が悪いことをしないよう止めるのだ。」
しかし罪の意識や後悔を感じない場合にはどうなるのか。
私達にとって考えられないほどの残虐行為を止めようとする葛藤は彼らの脳の中では起こらない。
テッド・バンディーという男は35人以上の女性を殺害した。
ジェフリー・ダーマーは17人の男性と少年を拷問死させた。
ジョエル・リフマンは17人の女性を殴打絞殺した。
Kent Kiehl(University of New Mexico)は実在する悪の典型を研究している。
調査によると、100人に1人が精神病質者だという。
しかしそのほとんどは暴力を振るったり連続殺人犯になったりはしない。
しかし共通の特徴を持っている。
「テッド・バンディーは精神病質者の特徴をすべて兼ね備えている。
口のうまいうわべだけの男だったが、人を惹きつけ説得するのがうまく、刑務所で結婚もした。」
彼が冷酷な殺人を犯すとはだれも想像できなかった。
Kiehl博士によると、精神病質者のもっとも重要な特徴は良心の欠如。
バンディーとダーマーは亡くなったが、Joel Riffkinはニューヨーク州北部にある刑務所で生きている。
殺人を犯した後、罪悪感はあったのだろうか?
Joel Riffkin(Serial Killer)「1〜2回は悪いと思ったことはあったが、たいして罪の意識はなかった。」
Kiehl「私達が理解したいのは自分の罪が他人にどんな衝撃を与えるかということを認識できないのかということ。」
神経科学者は精神病質者の脳の中を見れば、彼らの心が歪んでいる理由をつきとめられるのではないかと期待をかける。

何が悪に導くのか、ニューメキシコ刑務所で画期的な実験が行われた。
科学者は受刑者の20人に1人は人格障害を持っていると推定している。
目的は新しい治療法の開発。
そのために彼らの脳と普通の人間の脳の違いを知る必要がある。
まずKiehl博士は受刑者たちにインタビューをして精神病質者の傾向がある者を見分ける。
精神病質者の行動パターンは非常に似ている。
「彼らは衝動的で放浪癖のある生活を送り、様々な場所を転々とする。
誰とでも性的な関係を持ち、トラブルに巻き込まれやすい。」
Kiehl博士は精神病質者と診断した受刑者の脳を検査した。
最初の検査ではミスをすることにどう反応するかを見る。
検査装置は磁場と電波エネルギーを使って受刑者が考えたり反応したりする間の血流量を観察するもの。
検査官「スクリーンにXとKの文字が続けて見えるので、スクリーンにXがでてきたら右手の人差し指で1つめのボタンを押す。
Kが出てきても何も押さないでください。」
2つの文字は一瞬しか見えないので、正解することは誰にとってもほぼ不可能。
Kiehl「すごく難しいのでたくさんミスする。
押さなくていいのに押してしまう。
私達が知りたいのは、どのように脳がミスを正しく認識し、自ら立ち直るか。」

Kiehl博士は脳の動きを観察することによって、精神病質者は普通の人よりミスを気にしないということを知る。
だからといって知能が低いわけではない。
連続殺人犯Joel Riffkinの知能指数は128で、受刑者の上位3%に入る。
「彼らは短期で衝動的で人を利用して騙す。」
Joel Riffkin「死体を車に乗せていた時、警察に職務質問されて嘘をついて切り抜けた時があった。
死体を捨てる場所を探していた時だった。
ここで何をしていると聞かれて、とっさにこの道に行きたいが迷ってね、といった。
地図を持っていたので適当な場所を指してうまくだませた。」
次の検査では、受刑者に写真を見せて道徳上よくないかを放火させる。
検査官「モラル違反とは悪いことだと考えられる行動や態度のこと。
自分自身の価値観で決めてください。
他人や社会が悪いことだと思うかという基準で判断しないように。」
この革新的な研究が科学者達の長年の疑問に答えた。
精神病質者は理性が弱いのかという疑問だ。
研究で分かったことは、脳の中で一番後に発達した前頭葉と初期に発達した扁桃体の伝達がうまくいっていないということ。
さらにRaine博士の最新の研究で、精神病質者の脳は物理的にも異なることが分かった。
彼は精神病質者の扁桃体がしぼんでいることを初めて示した。
通常より平均17%ほど小さいのだ。
この発見が、なぜ精神病質者が悪事を働くことを恐れないのかを理解する重要なカギとなる。
Raine「精神病質者は殺人が悪いことだと知りながら、なぜそれをするのか、理由は道徳観を持っていないから。
普通の人は、人にナイフで刺せば自分も痛みを感じるので、そんなことはしない。
感情移入してそのような行為に走らない。
Joel Riffkinのような殺人者はそれができない。
女性達を殺したのは首を絞められることはどんな気分なのかを気にしようともしないから。」
Joel Riffkin「首を絞めている間はただ首を絞めることだけに集中し、それ以外何も考えられなかった。」

Riffkinはたくさんの人を殺し、結局捕まった。
しかし100人に1人もいる精神病質者全員が刑務所に入らないのはなぜか。
Raine博士の研究では、精神病質者のうち知能犯罪者の脳の違いを指摘した。
知能犯罪者とは、人が貯めたお金を平気で騙し取るような人物。
確かに小さな扁桃体だが、前頭葉への伝達能力は正常に見える。
人に共感することが苦手だが、うまく嘘をつき、人を騙す力はある。
「犯罪者以外の精神病質者は優れた実行力や企画力がある。
その上人を管理する能力に長けている。
そして自分自身のことを知っておりストレスにも強いことが分かった。
このような能力は人を騙し、利用するのにも必要なものなのだ。」
精神病質者の脳に機能不全があると分かったが、それはいつ起こったのだろう。
「何が良くて悪いかという感情は主に脳の中にプログラムされていると考えている。
遺伝や神経生物学的な原因によって、脳の中で感じる道徳観の強さの度合いが変わってしまうのだ。
道徳観は私達の遺伝子の中にあり、子宮の中でどう成長するかで決まるが、博士はそれだけではないという。
「もちろん環境を無視できない。
それも半分影響している。」

科学者達は脳のどこで善悪を判断するのか素人研究してきたが、それよりももっと大きななぞがある。
記憶だ。
記憶のおかげで脳はいつでも過去や未来へ行けたり、過去にあったことを現在に引き出せる。
この能力は人間が存在するのに必要なこと。
David Eagleman(Baylor College of Medicine)「記憶する理由は将来同じようなことを繰り返さないため。
私達の考え方や将来の計画は記憶によって支配されている。」
心臓のような臓器の働きは良くわかっているが、脳の記憶の仕組みについてはまだ研究段階。
80年前に大きな発見があった。
「1920年代にカール・ラシュレイという科学者が鼠に迷路を学習させた。
脳の一部を選んで損傷させ、どこに迷路を通るための記憶が保存されているのか調べた。
そして特定の場所に保存されないことが分かった。
非常に精密で入り組んだシステムになっている。」
とても精密なシステムなため、スーパーコンピューターでも脳の記録容量にはかなわない。
およそ10兆バイトの情報を記録できると科学者は仮定している。
「脳の外側にある大脳皮質だけで、100億個の細胞がある。
銀河系の星の数より多い。
1m㎥の小さな大脳皮質のかけらがつながりあっていることになる。」

このようなつながりが大量のデータを驚くべき方法で保存したり取り出したりすることを可能にする。
この状態を写真記憶と呼ばれている。
「神経科学で視覚や記憶について理解しようとする際に、私達は写真記憶を持つ人に興味を持った。
彼らは何でも記憶することができる。」
イギリス人アーティストStephen Wiltshireは、この驚くべき能力を持っている。
複雑な町の眺めを記憶して、それをびっくりするほど詳細に再現する。
Stephen Wiltshire「ただ建物や高層ビルを眺めるだけでよい。
だいたい20分見ればその後は思い出すだけで描ける。」
視覚は脳の後ろにある後頭葉、または視覚野と呼ばれる部分で処理される。
人間の視野は両目でおよそ200度。
230万色を識別することができる。
毎秒72ギガバイトの情報が脳に送られると推定されている。
それはi-podで考えると18000曲の量。
Stephenはギャラリーに戻ると、さっき見たものを書きはじめる。
脳の数カ所を使う。
特に空間認識力と反射神経を司る頭頂葉を使う。
彼のスケッチを実際の風景と照合してみると、不思議なくらい性格。
1時間ほどで彼はパノラマを再現した。
この絵は4000ドルで売られる。
Stepgenの才能は超人的だが、その能力は犠牲を伴った。
彼は自閉症なのだ。
通常とは脳の発達が異なっている。

「ほとんどの人は彼のような能力を持っていない。
何故なら他にたくさんのことを同時にするから。
仕事のこと、ローンのこと、将来のことなど、様々なことを考える。
その結果神経細胞はいろいろな処理を分担して行う。
ある分野で優れた能力を持つ自閉症患者の神経細胞は、ルービックキューブを解くことや、ピアノをひくことなど、1つのことに集中する。
その結果例えば人とうまくつき合えなかったりする。」
レオナルド・ダ・ヴィンチやモーツァルト、モネのような天才も素晴らし記憶力を持っており、自閉症だったのではないかという憶測もある。

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見えない雷を追え〜驚異の自然現象

雷鳴がとどろき稲妻が駆け巡る。
世界有数の雷地帯オーストラリア、ノーザンテリトリー、雨季の3ヶ月間毎日雷が広い大地に落ち続ける。
先住民族アボニジニの人達の祭、台地に雨をもたらす雷を崇め、雨季を迎える時期に古くからおこなわれている。
顔の化粧は雷を、体に塗る白い絵の具は雲を表現している。
オーストラリア雷多発地帯で不思議な体験をしたカメラマンがいる。
それは稲妻が走る直前のことだった。
「ぱちぱちという金属音が空から聞こえてきた。
周りで静電気が強くなり全身の毛が逆立った。」
稲妻が光る直前、肉眼では捕えられない見えない雷が発生している。
その全貌を記録しようと世界で初めての挑戦が始まった。
立ち上がったのは雷オヤジの異名をとる研究者。
見えない雷を捉え、落雷する位置を事前に特定しようという試み。
雷を探知する高性能のアンテナとNHKのハイスピードカメラをつなぎ、見えない雷の撮影に挑む。
落雷場所は予測できるのだろうか?
映し出された見えない雷、20000分の1秒単位の姿。
不思議の多い雷の世界、その知られざる姿を紐解く。

Australia
オーストラリア、ノーザンテリトリー、11月雨季を迎える。
世界有数の雷が発生する街ダーウィンへやってきた。
この時期ダーウィンでは頻繁に激しいスコールが発生する。
雨があがった夜7時、空の様子が一変する。
町から20kmほど離れたところに雷が発生。
地上に向かっていくつも落ちている。
雲の間を稲妻がひっきりなしに飛び交う。
手前だけでなく奥の雲からも同時に落ちている。
何10分にもわたって凄まじい音と光が続いた。
ノーザンテリトリーの天気を観測している気象局。
周囲300kmが観測できる気象レーダーを20ヶ所のポイントに設置して気象観測を行っている。
雨季の始まる11〜2月までの3ヶ月かんは毎日雷注意報を出し続けている。
赤道の近く南緯12度に位置するダーウィン、雷が多く発生する秘密はこの場所にある。
ダーウィンの上空では内陸から吹く乾いた風の上に熱帯の海を渡ってきた暖かく湿った風が乗り上げ、激しい上昇気流が起こりそれによって大量の水蒸気が吹き上げられ、巨大な積乱雲を生む。
ダーウィンの上空を観察すると、積乱雲がもくもくと立ち上ってゆく。
わずか30分ほどで20mほどの高さに成長。
ダーウィンは別名世界の煙突と言われている。
成長した積乱雲が今度は横に大きく広がり始めた。
その面積は3000k屐東京都がすっぽり納まる大きさ。
こうしてダーウィンの周辺には巨大な積乱雲が毎日いくつも出現する。

Beautiful
花火のように夜空を美しく彩る雷、どうしてそんなに光り輝くのか。
その仕組み・・・積乱雲の中では氷や雹がぶつかり合って静電気が発生。
雲の下の方には大量の電子が蓄えられてゆく。
そして雲が大きくなるにつれて、あふれた電子がそこから飛び出すようになる。
この放電現象が雷。
ダーウィンにできる巨大な積乱雲にはそれだけ多くの電気が溜まっており、雷もとんでもなく多くなる。
落雷の回数を調べる。
同じ場所で30分間撮影を行う。
その回数は600回に達した。
ダーウィンは1時間に2000回も落雷することさえある世界有数の雷地帯。

Chase 追跡
ダーウィンを疾走する1台の車、追っているのは雷。
マイク・オニールさんは雷を追いかけ、写真を撮っている。
マイクさんのようなカメラマンは嵐の追跡者、ストームチェイサーと呼ばれいている。
待つこと30分、積乱雲が発生。
さっそく雷を狙う。
しかしなかなか発生しない。
風が強く積乱雲が流されてゆく。
こんな日もあるさ・・・
雨季を迎えると新聞の一面を飾るのは雷の写真、すべてマイクさんが撮影した。
腕前は超一流、ダーウィンで雷を撮らせたら右に出るものはいない。
マイクさんは雷の激しさに魅せられ、6年前家族を説得しダーウィンに引っ越してきた。
プロのカメラマンではないが、毎年雨季になると仕事そっちのけで雷を追い求め、天空に描き出される芸術的な光の奇跡を写し取ろうとしている。
マイク「雷に同じものはない。
世界中どこを探しても同じ雷の写真はない。」
マイクさんの写真、稲妻が今にも飛び出してきそうな迫力。
撮影する時いつもぎりぎりまで雷に近づくようにしている。
ストームチェイサー歴6年、まさに命がけで撮った写真。

まず雲の状況を確認。
マイク「上昇気流が発生している。
嵐はまだ小さいけど、これから成長する。」
マイクさんにはストームチェイスに欠かせない道具がある。
カメラ、雲のデータを見るパソコン、そしてラジオ。
マイク「周波数をAMに合わせると雷の中の雷の音が分かる。」
放電現象がある雷は、必ず電波を出している。
それをラジオが受信してノイズを発している。
ストームチェイスが始まる。
ラジオから聞こえる雷のノイズがだんだん大きくなってゆく。
マイクさんはダーウィンの中心部が一望できる港を撮影ポイントに選んだ。
夕方になると雷雲が激しく成長を始めた。
ダーウィン上空に積乱雲が沸き立ってゆく。
夜空が光り始めた。
雷のエレクトリカルパレード。
この日は1時間余りも雷が光続けていた。
マイク「太い光を撮れたので満足している。
独特の色味がでている。
綺麗なオレンジ色だ。」
70人のストームチェイサーたちは稲妻の撮影に日々腕を競っている。

Disaster 災害
立ち上る黒い煙・・・落雷による火災だ。
幸い雨が降り自然に沈下。
ダーウィンで落雷被害の報告数は年間およそ300件になる。
そのうちの1つ、1年前の夜雷の被害を受けたお宅を訪ねた。
雷は8mのヤシの木に落ち、地中に埋めた伝染を伝い、上を覆うレンガを吹き飛ばし、屋内へと侵入した。
照明器具や天井のファンなど、電化製品が壊れた。
被害額は200万円ほどになったという。
当時一家は仲間と楽しくホームパーティーをしていた。
雷の気配は誰も感じていなかったという。
そこへ突然落雷した。
いつどこに落ちるのかが分からない、それが雷の大きな脅威。
雷の被害は日本でも深刻、2003年雷は国会議事堂を直撃した。
中央棟を破壊、外壁が崩れた。
修理費用は4800万円もかかった。
この時国会議事堂の周辺では、わずか20分でおよそ100回も雷が落ちた。
落雷の被害の多くは家屋の火災や機械の故障による工場の停止。
被害額は日本全土で年間1000億を超えるとも言われている。
日本もまた、雷多発地帯なのだ。

Electric 電気
ストームチェイサーのマイクさんは雷にさらに近づいて迫力ある写真を撮ろうとしていた。
撮影準備開始・・・しかしマイクさんはずいぶん軽装。
時計やネックレスなど金属も身に着けているが大丈夫?
落雷が始まった。10kmも離れていない。
さらにこちらに向かって強い風が吹き付けてきた。
雷雲が迫ってくる。
マイクさん、すぐさま車に逃げ込む。
車の中なら雷が落ちても大丈夫だとマイクさんは言う。
本当に安全なのだろうか?
日本工業大学、超高電圧研究センターで実験、雷発生装置で乗用車に150万ボルトの雷を落とす。
自然界の雷の数100分の1から、数10分の1の規模で実験。
放電開始!バ〜ン!
金属で囲まれた空間の中は安全、雷の電流は周囲の金属を通って大地に流れる。
【雷からの身の守り方】
1.時計やネックレスなどの貴金属、雷は金属に落ちるとは限らないので身につけていようがいまいが関係ない。
2.ゴム長靴、ゴムなら電気を通さないと思われるが、強い電気の場合、ゴム長靴は効果なし。
3.雷は高い場所に落ちやすい性質を持っている。

特に高い木のそばは危険。
木に落ちた雷が飛び移ってくる可能性がある。
傘や釣竿、ゴルフクラブなど長いものを振りかざすことも危険。
雷注意報がでていたり、雷が発生している時はなるべく外出は控え、建物の中にはいろう。
雨季を迎えたノーザンテリトリー、雨により湿地が広がり、鳥が集まってくる。
生き物たちは雷の季節の到来を歓迎している。

ノーザンテリトリーの北部に広がる世界遺産カカドゥ国立公園には、数万年前に先住民族が描いた壁画が残されている。
雷の神と言われるNamarrgonが、肘と膝を打ち合わせ稲妻を振られた時、北上に楽園ができたと伝えられている。
先住民族はそれぞれの部族に神がいる。
この壁画は雷を神としていた部族が残したものと言われている。

Fable 神話
ノーザンテリトリーの東の端ダーウィンから車で4時間の町ナランバイ、オーストラリアの中で先住民族アボリジニーがもっとも多く暮らす土地。
雷を神とする部族。
雨季を迎え、村の男達はユーカリの林に出る。
長老ジャル・グルウィウィさんが軽く気を叩き音を聞いている。
乾いた音のする木を選んで切り倒してゆく。
この選び方にはわけがある。
切り口を見ると木の芯はシロアリに食われていた。
ジャルさんは叩いて音を聞くことで、空洞ができているかどうかを確認していたのだ。
ジャルさんの息子がユーカリの木で何かを作り始めた。
芯をくりぬいている。
くりぬきやすいようにシロアリに食われている木を選んでいたのだ。

彼らが作っていたのは世界最古の木管楽器と言われているディジュリドゥとうい笛。
その音は雷が鳴り響く様子を表現している。
雨季を迎える祭のとき、これを吹く。
村の人達は祭の練習を始めた。
雷に感謝する踊。
この部族に代々伝わる祭の日をまもなく迎える。

God of Thunder 雷神
雷を神とする信仰はアボリジニだけではない。
天空を支配するというギリシャ神話の神ゼウス、ローマ神話に登場する気象現象を司る神ユピテル、インド神話の軍神インドラ、いずれも雷を自在に操る神として崇められている。

古くから日本でも雷は神様として祀られてきた。
浅草、浅草寺の雷門、提灯の裏側には風雷神門と書かれている。
江戸時代から風雷神門を略して雷門と呼んでいた。
雷門は平安時代、浅草寺を風水害や火災から守るために作られたと伝わっている。
門に向って右側に風神が、左側に雷神が祀られている。
日本で雷神は厄除けの神様として祀られている。
また雨を降らせ、農作物の生育に欠かせないことから農耕の神様としても祀られている。
一方学問の神様として知られる菅原道真、その死後天変地異が頻繁に起こった。
これは道真が雷を自在に操る天神となったためとも言われた。
雷が鳴ったら蚊帳の中に逃げ込んで、「くわばら くわばら」と唱える日本の慣習は、道真の領地であった京都の桑原には雷が落ちなかったという言い伝えから来ているとも言われている。
人々は雷の恐れをなした一方で神として敬っていたのだ。

Hundred
現在使われている100ドル紙幣の真ん中に描かれているのはアメリカの気象学者ベンジャミン・フランクリン。
政治家、実業家、物理学者など様々な顔を持っていた。
雷の正体は放電現象、それはフランクリンによって今からおよそ260年前、1752年に明らかにされた。
フランクリン46歳のこと、雲に向け金属をつけた凧を揚げ、糸の端には金具をくくりつけていた。
凧に雷が落ちた時、金具に手を近づけると火花が飛び散った。
これにより雷が放電現象であることを発見した。
高いビルの上にたつ避雷針もフランクリンの発明。
当時はフランクリンの棒と言われていた。
落雷被害を防ぐ手段としてこの発明は今でも活躍している。

日本でも雷の研究は進められてきた。
ある大学の実験、小型のロケットを雷雲をめがけて打ち上げることで雷の被害を減らそうという試み。
その仕組み・・・ピアノ線をつなげたロケットを雷雲めがけて飛ばす。
そこへ雷を落とすことで電気を地上に吸い取ろうという実験。
ロケットが打ちあがる、その後雷がピアノ線を伝わり地上に落ちた。
こうすることで雷雲から電気を消し去る。
ロケットを飛ばし雷を地上に落とす、これをロケット誘雷という。
現在日本では4つの研究機関がロケット誘雷の研究に取り組んでいる。
これが実用化できれば雷を思い通りに誘導し、落雷の被害を減らすことができると研究者達は期待している。

Investigation 研究
世界でもトップレベル、雷研究の第一人者がダーウィンにやってきた。
大阪大学大気電気学・河崎善一郎教授、雷オヤジの異名をとり、雷の謎を解明したいという情熱は誰にも負けない。
12年前から、町から100km離れた農場を訪れ、研究の本拠地としている。
見晴らしがよく雷の観測に絶好の場所。
32歳で研究を始めた河崎教授は雷を追い求めてアメリカ、中国など11か国の雷地帯を巡る。
1年の4分の1は調査に出かける日々を送ってきた。
そして46歳の時雷の規模や回数が他を圧倒していたダーウィンの地に研究の基盤を置くことにした。
ダーウィンでの研究の結果、開発したのが持ち運びのできる高性能のアンテナ。
このアンテナにより雷の発生した位置を特定することができる。
仕組み・・・まず雷が発生する電波をアンテナが捉える。
すぐにそれを解析し巨大な雲の中のどこで雷が発生しているかを特定できる。
これにより半径30km以内の雷の発生位置が、ほぼリアルタイムで分かるようになった。
アンテナは日本ですでに実用化されている。
奈良、平城宮跡、甲子園球場300個分にもなる広大な土地にアンテナが設置されている。
2010年6月平城宮跡の周囲10km以内に発生した雷をアンテナが捉えた。
発生から10分後、警報が発令され、多くの人達が避難した。
河崎教授はこのアンテナで落雷する位置を事前に特定することを目指している。

Judgment 判定
石川県金沢市、日本で一番雷が多い。
1年間で平均37.4日雷が観測されている。
市内の電気店、この時期テレビ、パソコン、電話機などを修理に持ち込む客が多い。
コンセントから雷の電気が入り、基盤がやられてしまう。
家電への被害の原因は誘導雷という現象にある。
雷が落ちるとおよそ半径100m以内に強い電磁波が発生する。
それが送電線などの金属製のケーブルに流れ込み、高い電圧を発生させる。
それによって高い電流が住宅の中に流れ込み、電化製品が故障する。
家庭でもこの被害を防ぐ製品がある。
一定量以上の電気が流れ込まないように作られたコンセント。
しかし雷が大きい場合流れ込む電気のすべてをカットできるわけではない。
雷が鳴り始めたらコンセントから抜くのがよい。
雷被害に遭った時、気象台に駆け込む必要もでてくる。
雷被害の保障を受ける場合などに本当に雷で壊れたかどうか裏付ける証明を出してもらう。
もとになるのが観測記録。
雷マークが記録されているかどうかで判定する。
観測記録をもとにして出される落雷の証明書、発生時刻や方角、強さが記されている。
1シーズンでおよそ30件の申請がある。

Keep 守り続ける
雷を神とするアボリジニの村では祭のひを迎えた。
子供たちは最後の練習をしている。
顔に化粧を施す。
茶色に白、黒、黄色の点々、この模様は蛇を表す。
腰に巻いた白い布、体に塗った白い絵の具は雲を表現している。
胸に描くのは稲妻、蛇が動くとき雷が鳴り、舌を出す時稲妻が光る、村の神話を体で表現している。
祭が始まる。
村人全員で踊る。
この部族には雷の踊が10種類以上伝わっている。
雷の力強さを表す踊、雷が落ちる場所を探している踊・・・
拍子木のテンポが速くなり、クライマックスを迎える。
砂浜にたてたユーカリの木の周りで雷に扮したアボリジニが踊る。
ユーカリの木を激しく打つ。
地上に雷が落ちる様子だ。
最後には雷が激しい雨を降らせる様子を踊る。
アボリジニ達は自然の恵みを与える雷に感謝の気持ちを表す。
祭はこの部族の中で何万年も前から受け継がれてきた。

Lottery あみだくじ
様々な研究がつづけられてきた雷、いまだ謎に包まれている現象がある。
それは肉眼では捉えられない見えない雷。
稲妻が光る直前、細く弱い電気があみだくじのように枝分かれしながら地上に向かって伸びることが分かっている。
そのうちの1つが地面とつながったところに一気に大量の電気が流れる。
この時初めて目に見える雷となる。
しかしこの光はあまりに早く弱いため、その全体像が映像に記録されたことはない。
もしこの全貌を捉えることができれば、雷の落ちる位置を特定する手がかりになる。
あみだくじのように進むこの見えない雷は、ステップドリーダ(Stepped Leader)と言われている。

Mystery
稲妻が光る直前、不思議な現象を体験した男がいた。
ストームチェイサーのマイク・オニールさんだ。
いつもぎりぎりまで雷に近づいて撮影するからこそ感じた不思議な現象だった。
2年前の12月、自分のわずか30m前に雷が落ちた。
その時撮った写真、まっ白に飛んだ画面が落雷の強烈さを物語っている。
この直前・・・
マイク「パチパチという金属音が空から聞こえてきた。
静電気が強くなり、全身の毛が逆立った。」
雷が落ちる所には直前に電気が降って来ている。
マイクさんはこうした経験からステップドリーダの存在を知った。
いつか写真に収めたいと考えている。

News
河崎教授、ダーウィンの気象局を訪ねる。
今シーズンの雷の発生状況について気象局の最新の観測データを聞く。
局長アンドリュー・タッパーさん「雷はとても活発になっている。」
所長によると今年はペルー沖の冷たい海水が太平洋に張り出すラニーニャ現象が起きていて、オーストラリア沖合に温かい水が集まってきているとのこと。
積乱雲が発生しやすくなるという。

Operation 作戦
河崎教授、今回の研究の最大のテーマはステップドリーダの全貌を捉えること。
落雷のメカニズムを時証、落ちる場所の手掛かりをつかもうという。
新兵器、肉眼では見えない映像が撮影できるウルトラハイスピードカメラ、肉眼では見えない世界を何万分の1秒単位でみることができる。
このカメラを雷の発生位置を特定できる河崎教授尾アンテナと接続する。
アンテナが雷の発生場所を感知するとカメラの録画スイッチが自動で入り、見えない雷発生の瞬間を撮影できる仕組み。
このカメラで2万分の1の世界に挑む。

Quest 探求
撮影準備が整った。
夕方、突然雲が光り始めた。
カメラを構えるが見えない雷をなかなか捉えることができない。
2万分の1秒の映像を捉えるには雷までの距離が少し遠すぎる。
この日撮影できたのは、わずかな光だけ。
雷までの距離が遠く、明るさも足りない。
雷撮影は難しい。
翌日同じ場所でセッティング、レーダーによるとここから南に行ったところに巨大な雲が発生していた。
ストームチェイスの開始。
南に走ること2時間、ついに積乱雲を捕まえた。
レーダーの情報で雲の位置を確認、積乱雲からわずか10kmの距離にまで近づいた。
撮影開始、明るさは十分。
しかしこの日もステップドリーダを捉えることはできなかった。
多数の雷が発生したものの、すべて雲の中の放電現象だった。
アンテナが反応し、カメラの録画スイッチは入るが映し出されたのは明るく照らされた雲だけだった。
雷に近づいているのに撮ることができない・・・

Revenge 雪辱
ステップドリーダの全体像が撮影できる条件は、雷までの距離が近いこと、雲の高さが十分にあり見晴らしがよいこと。
なかなか条件がそろわない中、様々な場所で撮影を試みた。
しかしステップドリーダを捉えることができない。
数日後、巨大な積乱雲が発生。
ダーウィンの町が巨大な雲に覆われてゆく。
しばらくすると雷が落ち始めた。
十分な明るさがあり、雲に隠れずに見えている。
まさに潜在一隅のチャンス。

Strike it 大当たり!
取材班の真正面に落ちた大きな雷。
ハイスピードカメラで捉えた15000分の1の世界。
ステップドリーダは通常のカメラでは映らない。
見えない雷が地上に届いた直後、雷が落ちた。
通常のカメラに雷が映る前に、見えない雷ステップドリーダが動き出していた。
その姿はまるで植物の細い根が広がってゆくよう。
そして地上にいち早くついたステップドリーダに電気が流れ、稲妻が起こる。
この時光は下から上に向けて走っている。
実は私達がよく目にする雷の光は天空からではなく、地上から延びているのだ。
いったん雷の道ができた後は、天空と地上を何度も電気が行き来する。
肉眼では「雷は空から地上に向かって光っているように見えるのだ。
1コマ2万分の1秒の映像も捉えた。
ステップドリーダが進む1コマはおよそ50m、雲から出て地上につくまでの時間はわずかに0.05秒、枝分かれした1本1本が空気を破壊しながら曲がりくねって地上へ向かっている。
そして最初に地上と結びついた場所が雷の落ちる場所になっていた。

Together
帰国した河崎教授は研究室で撮影したステップドリーダの解析を行った。
これまでにない完全な形で撮影できたステップドリーダの映像から改めて裏付けられたことがある。
雷が落ちる範囲だ。
通常雷の発生場所の周囲10kmは落雷の危険が高いとされている。
今回撮影できたステップドリーダの広がりは直径およそ10km、確かに言われている通りの範囲に落雷の可能性があった。
新たな謎もでてきた。
この雷では右側のステップドリーダが一番早く地上と結びつく。
いくつもの候補の中でなぜこのステップドリーダがいち早くたどりついたのか。
はたして地上にステップドリーダを呼び寄せる何らかの要因があるのか。
謎は深まるが、河崎教授は今回の撮影で今後の研究の方向性を見出したという。
河崎教授「全体像を映し出すことができ、共存に向けての第1歩になった気がする。
落雷は防げないが機械は壊さないようにスイッチをオンオフする。」

Unique
被害を防ぐだけでなく、それを利用しようという試みも始まったいる。
九州大学農学部付属演習林、雷でキノコを増やすという実験を行っている。
九州大学キノコ学・大賀祥治教授「南米のペルー、アジアのモンゴルで、雷雨の後キノコがたくさん生えるという言い伝えがある。」
キノコの生える菌床に、落雷と同じような状態にするために、瞬間的に高電圧の電気を流す。
この刺激がキノコの菌糸に含まれる酵素に働きかけ、通常よりも大量で大きなキノコができる。
エリンギの場合、2倍もの大きさに成長する。
さらに生きた木の根にしか生えないマツタケの発生量を増やそうと、地上に電気をあてる実験にも取り組んでいる。
雷を思い通りに落とすことができれば、キノコの生産量を一気に増やせる。
その可能性に期待が高まっている。

Vivid 真に迫った
ストームチェイサーのマイク・オニールさんはこの日も撮影に向かおうとしていた。
見送るのは妻のナタリーさん、毎日のお出かけにすっかりお諦め顔。
この日マイクさんは夕食までには帰ってくると言ってでかけたが、撮影は深夜にまで及んだ。
雨季に入って1ヶ月あまり、マイクさんはようやく念願の迫力ある写真が撮影できた。
真に迫って撮った写真、しかしマイクさんは雷をただきれいに撮ることで満足しているわけではない。
マイク「どれくらいの雷が落ちるとか、身の守り方を伝えることができればよいと思っている。」

Wood
アボリジニの村、ユーカリの木で作った雷を表現する楽器ディジュリドゥ、父親が息子に吹き方を教える。
アボリジニの日常に溶け込んでいる雷への思いは親から子へと伝えられてゆく。
アボリジニの伝説・・・「稲妻は雷神が地上に向けて舌を出している姿。
雷が降り注ぐことで地上には陸ができた。
雷は私達の住む大地を造った。
雷は自然の恵みの象徴。
私達はそれを失ってはならない。」

XYZ 未知
雷はいまだに多くの謎に包まれている。
しかしその美しさにひかれ、謎の解明に情熱を燃やし、さらに雷を神と敬う様々な人々がいる。
彼らは今日も天空を駆け巡る神秘の光を見上げている。

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ハリケーンを止める7つの方法 Hurricane

“ほら、水平線を横切ってハリケーンが来る。
海原を覆いつくす屍の衣のように雲が迫ってくる。”

ハリケーンの被害が激化している。
大型ハリケーンの発生数は過去30年で2倍になり、さらにその数を増やしている。
ハリケーンが1秒間に放出するエネルギーは長崎型原発の10倍以上。
私達人間には手も足も出せない相手。
もしハリケーンの被害でこうむる数10億ドルの損失を事前の対策費に使えば、巨大化するハリケーンを止められるだろうか?
止められないという科学者が多い中で、何人かは止められると考えている。
長年フロリダ国際大学で研究を続けているHough Willoughby(Florida International University)は懐疑論者。
政府が誰かにハリケーンを止める計画を出すたびに批判的意見を発表している。
現在課学者や発明家、気象学者などからハリケーンを止められるという多くのアイディアが提示されている。
それらの中からもっとも有望な7つを取り上げる。
そのうち3つは海上での計画。
1.Jason Stanton・・・Liquid Nitrogen 液体窒素の噴射
2.Vladimir Pudov・・・Chemical Film 化学薬剤による膜の生成
3.Phil Kithil・・・Deep Water Pumps 深層水の汲み上げ
他の3つは空中からの計画
4.William Gray・・・Carbon Black 炭素微粒子の煙
5.Joe Golden・・・Cloud Seeding 雲への種の散布
6.Robert Dickerson・・・Laser Beams レーザーによる放電
残る1つは宇宙空間からマイクロ波を照射する
7.Ross Hoffman・・・Satellite Microwaves

ハリケーンは熱力学で説明できる自然現象。
まず海水温が26℃以上になると海水がどんどん蒸発し、熱風となって上空に吹き上がる。
地球の回転によって熱風は渦巻きになり、中心に下向きの風が吹く真空の目ができる。
するとより多くの湿った空気がアイウォール(目の壁)の雲に飛び込んで雲を厚くする。
この時に風速は80m以上にもなる。
科学者達は原因を断定したがらないが、この10年間にハリケーンの発生頻度が増し、大型化が進んでいることは疑いもない事実。
2005年はアメリカ史上最大のハリケーンの当たり年で、最大級に位置づけられるカテゴリー5が頻発、甚大な被害が発生した。
ハリケーンが消滅するには、そこに蓄えられた熱が発散されなければならない。
その熱は陸地との摩擦や陸上の乾燥した空気が奪ってゆく。
もしハリケーンから熱の元、つまり湿った海水やその海から盛んに蒸発する湿気などのエネルギー源を奪い取ることができれば、ハリケーンを弱められるだろう。
問題は人の手でそんなことができるかどうか。
凶暴な嵐の雲の下に広がる海面が、考える出発点。

Phil Kithil「カトリーナがあった年の春、妻と私はジャズフィスティバルに行った。
ニューオリンズに友達がいた。
ところがその友達と娘がカトリーナで家をなくし、私の家に2ヶ月ほど避難していた。
その内他のハリケーンもきて何とか方法はないか考えた。
すると深層水という深い海の水は表層よりはるか冷たいことを思い出し、今ある技術で汲み上げることにした。」
Phil Kithilのアイディアはこうだ。
ハリケーンの進路を遮るように100万個のポンプを浮かべる。
そして冷たい深層水を海面に汲み上げてハリケーンのエネルギー補給を抑える。
Kithilは早速貯金をかき集め、投資者を募りプロトタイプをテストするために海に向かった。
Kithil「これが150mの深さに沈める装置。
構造は単純で底に蓋がついたバケツのようなもの。
波で下がった時に底のパルブが開き、中に冷たい深層水が入ってくる。
次の波で持ち上げられると、バルブが閉じてその波の高さだけ水も持ち上げられる。
これを繰り返すと冷たい水がホースの中をどんどん上に上がってきて、そのうち海面につく。
そしてブイの口から流れ出して海面を冷やす。」
Willoughby「問題は深層水は冷たく、海面の水より密度が高くて重いので、上まで上がってこられないだろう。」
Willoughbyは水を冷やせばハリケーンを弱くできるという考えには賛成だが、このポンプでは冷水を汲み上げられないか、あるいはポンプ自体が嵐で壊れてしまうだろうと評価した。

昔々風車を巨人だと思い込み、戦いを挑んだスペイン人がいた。
彼は人々を救いたかった。
7つのアイディアを考えた人たちもある意味でドラゴンを退治しようとしたドン・キホーテのようだが、ドン・キホーテの幻想とは違い、メキシコ湾の海水温度を下げられれば、カトリーナのような巨大ハリケーンを退治できることは確実。
ハリケーンが発達するには20℃の海水温が必要。
カトリーナの時は30℃に達していた。
この海域の水温は地球温暖化のために、かつてないほど高くなっている。
ゴア元副大統領もこの海洋温暖化によって過去10年間ハリケーンが巨大化したという調査を支持している。
しかしハリケーンの研究者であるランドシーやグレーは海洋温暖化は自然変動だと言っている。
だがメキシコ湾の海水温をなんとかして下げることができれば、ハリケーンの発達を抑えられるということには異論はない。
さらに湾内を流れるLoop Currentという暖流が重要なカギを握るという。
Willoughby「ハリケーンのシーズンにLoop Currentを冷やすことができれば、2005年以来アメリカを襲った4つのハリケーンほどに巨大化することは防げるかもしれない。」

アメリカ東海岸に向かうハリケーンは全てアフリカ沖で発生する。
サハラ砂漠の南の縁に広がるサヘルで発生するハブーブという強烈な砂嵐が最後にハリケーンになってアメリカを襲う。
マサチューセッツ工科大学のR.Williamsはここで研究している。
Williams「アフリカの人たちにとってハブーブは日常風景。
彼らにとって雨季には2〜3日に1回吹く当たり前のもの。
カトリーナはアフリカの西海岸で発生した。
アフリカでの偏東風はアフリカ大陸の東から西へ向かって大陸を横断して大西洋に吹き出す。
さらに大西洋上を進み続ける。」
海水温と風、そして地球の自転運動が組み合わさってハブーブは回転を始め、やがて熱帯低気圧になり、その後大西洋を進むうちに速度が増してハリケーンに発達。
最後にアメリカ大陸にぶつかる。
その移動距離は10000kmにも及ぶ。

Williams「この熱帯低気圧の発達の経過をよく観察していれば、それが東海岸に被害をもたらすハリケーンになるかどうかが分る。
つまり東大西洋を観測すれば警報を発したり備えを固めることができる。
でも今の科学では、どのハブーブがハリケーンにまで発達するのか、この段階でははっきり特定できない。
私達はその謎を解き明かそうとしている。」
研究を始めて5年、Williamsはアフリカの低気圧がハリケーンになる要因について重要な見解を発表する。
秘密は雷にあった。
Williams「2004年に熱帯低気圧にまで発達した暴風のほとんどが雷雲を伴っていたことを突き止めた。」
Robert Dickersonも雷がカギだという。
彼はニューオリンズを愛する空軍用化学レーザーの専門家。
ハリケーンにまで発達する熱帯低気圧が雷を伴うことを知った彼は、もし雷雲の中の電気をレーザーで発散させれば、ハリケーンの発達を抑えられるのではないかと考えた。

ATL高度戦術レーザーを前輪の後ろに搭載したC-130輸送機でハリケーンの目に飛び込む。
そしてアイウォールに向かって強力なレーザーを1秒間発射する。
レーザーはアイウォールを振動させる。
すると雲の粒子に溜まった電荷が発散してアイウォールは内部崩壊し、ハリケーンも弱くなるという。
しかしジハリケーンセンターのクリス・ランドシーは発達したハリケーンに対して今のレーザーなどでは太刀打ちできないという。
ランドシー「ハリケーンが海から吸収したエネルギーは膨大で、雷雲が放出するエネルギーもまたとてつもなく膨大なもの。」

もしハリケーンを止められないなら、向きだけでも変えられないのだろうか?
Ross Hoffman「これはハリケーンイニキをモデルにして条件を設定したコンピューターシミュレーション。」
大気研究の権威Hoffman博士はこのシミュレーションを使ってイニキのコースを変える条件を探した。
Hoffman「黒い太線はハリケーンの中心が通ったコースでこれで約30時間分。
でも気温や風、その他の気象条件を少し変えて発生させた極小さな力をハリケーンにぶつけてみるとハリケーンは黒い線から少し左にそれて赤い線を通った。」
Hoffmanはこの気象条件を少し変える力を、宇宙ステーションを使って作り出そうと考えている。
Hoffman「将来建設が予想されている宇宙の太陽熱発電所ではマイクロ波で大気のある1点を熱する。」
宇宙に浮かんだ発電所からハリケーンの傍の特定の空間にマイクロ波を放射する。
Hoffmanはこれによって海面上の気圧や温度、風、あるいは湿度を変えられると考えている。
そしてコースをそらす。
Neville Marzwell博士はNASAの先端技術部門のマネージャーで、国際的に著名な専門家。
彼は宇宙での太陽エネルギー利用技術を開発する国際チームを率い、また80年代には宇宙ミサイル防衛にも取り組んだ。
彼はHoffmanのアイディアを高く評価している。
Marzwell「技術的にはどの部分をとってもすでに実用化されているものばかり。
ソーラーパネルで作り出した電気パワーをマイクロ波に変換するが、マイクロ波は携帯電話でも使われていて、電話をかけて発信するように、地上へ向かって発信する。
ただし実現の容易性とコストが問題になるだろう。」
Willoughbyもこのアイディアは気に入った。
ただしマイクロ波でハリケーンの方向を変えるだけのエネルギーを作り出せるのか検証が必要。
しかしこのアイディアは新たなジレンマを生む。
Willoughby「ハリケーンのコースを変えることができるようになれば、新しい問題が生じる。
社会的な問題、例えばカトリーナのコースを変えることにした時、いったいどっちに向けて変えるのかという問題。
その町の社会的経済価値を判断する経験をつんだ誰かがニューオリンズの変わりにどこをつぶすのか選ばねばならなくなる。」
Roelof Bruintjes(National Center For Atmospheric Reseach)「もう1つ考慮しなければいけないのは実際にハリケーンのコースを変えれば気象はすべて相互関係にあるので、地球の裏側に影響がでること。
地球は文字通り1つ。
エネルギーの均衡、もろもろの均衡、グローバルに考えねばならない。
もしどこかに力を加えれば、その力は回り回って地球のどこかで何かを起こすことになる。」

ミシシッピ州Biloxiに配備されたハリケーン観測機、使命はハリケーン調査の目と耳になること。
この飛行機で海岸地帯を脅かすハリケーンにつっこむ。
Willoughby「60年代観測機に乗る志願者を探していた。
思慮分別より知識欲を優先するような若い士官。
私はすごく興味をそそられて6ヶ月後にはフィリピン海で台風オルガに向かっていた。
ものすごく揺れた。
シートベルトを締めていても飛ばされて、計器版にぶつかるほどだった。
今なら宙くらいの乱気流の中を飛んでもパイロットに身体的な緊張を強いることはないし、当時ほど筋肉が強くなくても大丈夫。
精神的にも楽。」
今もハリケーンの観測はコンピューターを満載したC-130で行っている。
乗組員も高度な飛行訓練を受け、大学レベルの知識を持つ空軍のスペシャリスト。
乗組員「強いハリケーンのアイウォールの中を飛ぶと、あらゆる揺れに遭遇する。
目の中に飛び出すと太陽が眩しくてしばらくは何も見えない。
でも目が慣れると巨大な大聖堂かスタジアムの中にいるような感じがしてすごく感動する。」
アイリーン・ダイエマ大尉はアイウォールの中を飛ぶ際のナビゲーションを担当している。
また彼女は機体のセンサーが観測した全てのデータを送信する重要な役割を担っている。
データは衛星経由でマイアミのハリケーンセンターにいるリチャード・ナブのチームに送られる。
ナブ「衛星データに観測機のデータが積みあがって、さらに地上観測のデータも加わり、コンピューター気象モデルで計算した予測情報をどっと吐き出す。」
観測機はハリケーン上空を2時間半飛行する。
合計で数100万ドルもする観測機器を使ってハリケーンの今後の予測進路について詳細な情報を集める。
驚くことにこれだけ費用と時間をかけて集めた情報は、ただ人に避難を呼びかけるために使われている。
Willoughby「私達の社会やインフラをもっと耐久性の高いものにするために、緻密な努力が必要。
頑丈な家を建てるとか開発に適さない海岸線はそのまま自然公園にしておくべき。
高潮が押し寄せるのは元々そういう地形のところだからだ。」
カトリーナの傷跡を見ても、陸軍工兵隊はニューオリンズを次のカトリーナクラスのハリケーンから守れない。
完全な復興と対策には数10億ドルの費用と4年の歳月がかかると言われている。

William Grayはアメリカのハリケーン対策の長老。
彼は気象予報のパイオニアでもある。
彼はハリケーンを止めるためにあらゆる理論を検討し、確実な方法を1つ選んだ。
Gray「炭素の微粉末がベストだと思う。
これなら実現可能。
ハリケーンが海岸線まで2日ぐらいの距離まで近づいたことを確認したら、船団を送ってハリケーンを取り巻く。
船は軍用船でも商船でもかまわない。
船には石油の燃焼装置を積む。
この装置は酸欠状態でも燃やし続けられるので不完全燃焼になり大量のススがでる。
このスス、つまり炭素の微粒子でハリケーンを取り巻く。」
こうしてできた炭素のモヤがハリケーンの外側の雲を熱して膨らませ、渦をほどいてしまう。
Gray「ちょうどアイススケートでスピンが上手な人は腕を一旦開いて次に閉じることで回転の速度をどんどんあげる。
だからこの炭素微粒子の煙作戦では、ハリケーンに雲を開かせて渦になって閉じようとするのを抑える。
回転を遅くさせるのだ。」
Christopher Lansea(Operations Director)「この炭素のアイディアは、詳細に検討する価値があると思う。
ハリケーンの外周部分の雲に熱源を分散するということで、物理的にかなり有効。
もし雷雲を雲散霧消させられれば、ハリケーンのエネルギーバランスを崩せるだろう。」

オクラホマ州タルサに住むスタントン家は有名な科学一家で、両親は学者、子供達も将来を嘱望されている。
一家はカトリーナの避難民を町で見かけたときに科学でハリケーンを止められないか考え始めた。
おとなしそうな少年Jason Stantonは数多くの賞を総なめにした科学プロジェクトのまとめ役。
Stanton「僕の仮設はこういう気象環境の中に液体窒素のような極低温の物質を投入すれば、ハリケーンに対する熱の吸収を遮断できるから、ハリケーンを弱体化させる効果があるということ。
液体窒素、つまり液層の状態の窒素はほぼ-200℃なのでとても冷たいし、液層から気層、つまりガスになって蒸発する時の膨張比は1対700と大きいので輸送も楽。」
さらに安価かつ大量に入手できる。
メキシコには世界最大の窒素工場があり、メキシコ湾油田の副産物として窒素を採取している。
この案ではハリケーンの進路を塞ぐように窒素を積んだ無人の艀を100隻並べる。
ハリケーンが近づくと衛生から信号を送ってパルブを開き、ハリケーンの根元をめがけて極低温の窒素ガスを放出する。
Stanton「窒素なら環境汚染も心配ないしとても経済的でシンプルな方法なので、現実的だと思う。
それに必要なものはもう全部あるし。」
Willoughby「問題もある。
1つはとても大掛かりで、もし効果があるとしても大量の艀が必要。
したがって出港準備が大変。
それに高波と強風が吹く中を大量の艀を引いて外洋までタグボートを進めるのはとても難しいと思う。」
Jason達兄弟は政府主催のハリケーン専門家会議に招かれた。
そこでは大気研究センターの専門家が窒素を使ったアイディアをコンピューターでシミュレーションしている。
これが職員の全員が興味を示した唯一のアイディアだった。

太陽に近づきすぎて落ちたイカロス。
南極に執着しすぎて遭難したスコット、タイタニックの船長、歴史には英雄になろうとして自然の猛威に負けた人たちの名前が大勢残されている。
ハリケーンを止めようとするのも同じことなのかもしれない。
Joe GoldenStormfury計画の気象学者としてハリケーンに何度も飛び込んだ。
そして今でも米国海洋大気庁の上級幹部の地位にいる。
60年代に彼は名度もハリケーンに種をまいた。
Golden「Stormfury計画はアメリカ政府の計画だった。
計画の骨子はアイウォールのすぐ外側を取り巻くもっとも降雨量の多い雲の帯、あるいは非常に活発なドーナツ型をした雷雲に種をまくことで、アイウォールそのものを拡大させてしまうというものだった。
言いかえればアイウォールを作り直すことで、最大風速を10〜15%弱める。」
議会が承認した予算は3000万ドル。
ヨウ化銀の種を2つのハリケーンにまき、一定の成果をあげた。
Golden「種は大西洋上のハリケーン、エスターとビムラーそれに発達前のいくつかのハリケーンにまいた。
結果は発達前のものにはかなり効果があった。
でも当時の飛行機は性能も観測機器も今と比べれば原始的だったので、やむをえない部分もあった。
観測も機体に搭載した原始的なレーダに頼るしかなく、種をまく前後の状態も実際に中を飛んで調べるという具合だった。
でも実際にそれで観測した結果ではハリケーンの最大風速を弱める効果があることが分っていた。」
Willoughbyは計画の打ち切りに関与している。
しかしGoldenは打ち切るべきではなかったという。
Golden「計画は1982年に打ち切られたが、それはたぶんに予算上の問題が原因であり、成果が全くなかったからではない。」

しかしそれから25年、Goldenは種をまく技術や観測能力が進歩した今、計画を復活させるべきだと考えている。
ヨウ化銀の種をつんだ2基のP3哨戒機がハリケーンの下から3分の2の高さに北西の方角から飛び込む。
そして飛びながら種をばら撒く。
ヨウ化銀は雲の中の水滴を凍らせる。
これにより目の外側の雲から熱が奪われ、アイウォールへのエネルギー供給が止まり、その結果目が広がって勢力が衰える。
Willoughby「大多数のハリケーンの雲には種まきが効果を発揮するだけの水滴は含まれていない。
たとえ勢力が弱くなってもそれが種まきの効果なのか、たまたま自然にそうなったのか区別できない。」
Golden「計画が打ち切りになった当時は種まきをした結果の測定ができなかった。
でも今ならできる。わざわざ一番危険な雲の帯の中に人間を送り込まなくても、無人機を飛ばして自動で種をまかせることもできる。」

一方ビル・グレーにとって天候やハリケーンをコントロールしようという計画は70年代の初めに挫折した。
当時アメリカ軍はベトナムでホーチミンルートを泥流に変えようとしていた。
1980年代WilloughbyやGoldenがハリケーンに種をまいている間にソ連はハリケーンの押さえ込みに取り組んでいた。
Vladimir Pudovはボルネオ沖のスラベス海で展開された極秘任務の中心人物。
Pudov「あの海域は船も少ない、妨害されないということで選ばれた。
それにインドネシア近海は日差しがとても強く暖まった海面から盛んに海水が蒸発するのでテストの条件がそろっていた。」
実験は油脂と尿素、そしてアルコールが主成分のカルミドル(Carmidol)というドロっとした黄色い化学薬剤を10k屬粒ぬ未卜すというものだった。
他の方法論同様、カルミドルは環境に優しいものとはいえない。
Pudov「カルミドルは旧ソ連時代の南部の稲作地帯で使われた。
南部はとても暑いが水田には大量の水が必要だった。
カルミドルは水面を覆って水の蒸発を抑える。」
テストの結果カルミドルはハリケーンが海から熱を吸い上げるのを防ぐ効果があると分かった。
その仕組みはこのようなもの。
カルミドルをつんだタンカーの船団をハリケーンの約80km手前に配置する。
そしてカルミドルを海面に流す。
ハリケーンはカルミドルの膜ができた海域まで来るが熱エネルギーを吸収できず、勢力は弱まって停滞する。
しかし50mの風でも膜は吹き飛ばされないのだろうか?
Pudov「場所によっては大丈夫。
実験ではもっと強い風が吹いたが膜は有効だった。」
こうしてPudovの実験は多大な成果を収めたが、ソ連の崩壊によって研究資金は全て打ち切られた。

Willoughbyの結論ではハリケーンを止めることができるのはたった2つの方法しかなく、海面を膜で覆うこの方法はその1つだという。
Willoughby「数値シミュレーションの結果でも明らかなように風速50mの暴風にも耐える膜で海水面を覆って暖まった海水が蒸発するのを抑えるか、あるいは海水面そのものの温度を冷やすかのどちらか。」
Weather Modification Association、ハリケーンの防止に献身的な人々も、この会議に出席している気象コントロールに取り組む人々同様、科学界の外で活動しているのが実態。
Landsea「現在政府の努力は気象観測と予測に向いていて、ハリケーンを弱める方には向いていない。
ですが興味を持っていないというわけではない。
もしハリケーンを弱めるか押しやれれば素晴らしいが、現在の物理学では実現不可能。」
Willoughbyがもっとも有望だと考える海面の膜と深層水の汲み上げでさえ、さらなる研究が必要。
500年前のレオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ多くの発明家が飛行機やヘリコプター、月ロケットを夢見た。
しかし当時はどれも見捨てられた。
当時は技術がなかったが、今それらは全て実現している。
これら7つの方法もそうだろう。
ポンプには水を汲み上げる力がなく、カルミドルは強風で流され、液体窒素の艀も同様、空からのアプローチも種まきは雲の中に肝心な水がない、炭素は風で流され、レーザーも威力が足りない、宇宙からのマイクロ波もハリケーンを動かすには弱すぎる。
しかしもしこれらの方法を全部いっぺんに試したらハリケーンはどうなるだろうか?
ハリケーンが接近した時に全てを一斉にぶつける。
衛星は進路を変えさせるマイクロ波を放ち、C-130はレーザーを発射、アイウォールの雷雲を無力化する。
哨戒機の編隊がアイウォールに種をまき、カルミドルが海を覆う。
無数のポンプが冷たい深層水を汲み上げ、艀の船団が液体窒素を放出。
さらに不完全燃焼装置が真っ黒いススを噴き上げる。
これら7つの方法で一斉に攻撃すれば、超大型ハリケーンから大都市を守ることができるかもしれない。
しかし今は守る方法はない。

“再び怪物は無邪気に遊ぶ子供達をみやった。
しかし親達はその怪物を止める術を持っていないのだ。”

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目に見えない世界★水中の観察

水はもっとも身近な物質。
飲んだり洗ったり毎日の暮らしに欠かせない。
水は生活の一部になっているが、実は私達が知っているのは水のほんの一面に過ぎない。
水の動きは見慣れているはず。
水滴や波は誰もが見ている。
しかし水が作り出す驚くべきショーは見逃されている。
水が繰り広げるショーは肉眼では見えない。

Dr.Jonh Bush(Mathematician,MIT)「専門は流体力学で、液体や気体の動きを研究している。
動く液体の美しさに魅了されている。」
Bush教授は液体の流れる様子を観察し、その複雑なパターンを探っている。
Bush「問題はサイズではなく速さ。
水面に落ちた水滴の動きは速すぎて肉眼では見えない。
注いだミルクの滴は一瞬で消えてしまう。」

そこで彼が導入したのは時間を遅らせる画期的な機器。
1秒10000コマの高速カメラ人間のもの400倍の速さで動きを捉える。
そこに見えるのは驚くべき水の動き。
水に落ちた水滴は一瞬の間に見事なダンスをする。
これはコアレッセンス・カスケードという現象。
Bush「水面に落ちた水滴の行方など、ほとんどの人は知らない。
ただ水中に消えると思われている。」
しかし実際は水中に消えるのは水滴の半分だけ。
残りは小さな水滴となって跳ね返る。
さらにその半分が再び跳ね返り、それを繰り返す。
水滴は目にもとまらぬ速さでバウンドしているのだ。
秘密は水の中の水素と酸素の強い結合力。
滴の表面では結合力が特に強く、水分子同士が驚異的に引き合っている。
水面は幕のように強くなる。
この表面張力が水の動きを支配している。
Bush「2つの蛇口を開けて水量を上げ、2本の水流をぶつける。
合流した水流は再び2本に分れ鎖状になる。
さらに水量をあげると輪郭がギザギザになる。
でも肉眼では見えない。」
超スローモーションで見てみよう。
“魚の骨”と呼ばれる構造が現れる。
上が頭でその下の螺旋状の部分が骨に見える。
スローで再生すると、驚くほど繊細で美しい水のオブジェ・・・
Bush教授の研究の応用範囲は広いだろうが、彼が夢中なのは自然の美そのもの。
Bush「平凡なものに光を当てたい。
流れる水の美しさに気づけばシャワーやプールの水も違って見えるだろう。
深く知ることで意識が変わるはず。」

美しいのは動くみずだけではない。
気温が下がると水は固体になり、小さく眩い姿に変わる。
Dr.Ken Libbrecht(Physicist,Caltech)は自然が作り上げた目に見えない繊細な結晶を集めている。
Libbrecht「雪は水蒸気から生まれた複雑な構造体。
その精巧な形を見ていると、秘密を解き明かしたくなる。
雪の結晶ができる仕組みはまだ解明されていない。」
謎を究明するため、カメラを持って現場へ行く。
気候が違う場所では降る雪の性質も様々。
世界中の雪を研究した彼は長年の謎に答を出した。
形が同じ結晶はあるのか?
Libbrecht「全く同じ結晶は存在しない。
生成過程がほぼ無限に考えられるからだ。」

1mm以下の結晶を丁寧にスライドに載せて顕微鏡カメラで撮影する。
何1000枚もの写真は自然の限りない多様性を示している。
彼の研究室では人工的に雪を作ることもできる。
実験室であらゆる条件を設定して独自の雪を作る。
数1000m上空にある雪雲を再現する。
そこでは水蒸気が雪になる。
気温や湿度を調節して人工の雪を作る。
世界に1つしかない形の結晶。
六角形から柱状や針状まで様々な珍しい結晶を観察できた。
これまでに数100万個の結晶を作り、今後も作ってゆく。
それでも同一の結晶はできない。
目に見えない結晶の無限の美しさを科学の力で見ることができる。

この見事な水の芸術に勝るほど驚異的なのが水中の生物。
他の動物を意のままに操る現実離れした力を持つものもいる。
ある湿地には、脳に住み着いて魚を操る虫がいる。
目に見えない小さな侵入者がSF顔負けの使命を果たす。
Dr.Nancy McQueen(Microbiologist,Cal State LA)「この虫は宿主の魚の脳をコントロールする。」
この虫の能力を探れば、人間の病気の治療法が見つかるかもしれない。
こうした虫は寄生虫と呼ばれる。
大抵肉眼では見えないが、実は寄生虫こそが水中の影の主役。
寄生虫の形や大きさは様々。
10mのサナダムシもいる。
Dr.Armand Kuris(Zoologist,UC Santa Barbara)「寄生虫は他の動物から養分を奪う。」
宿主に知られずに寄生する場合も多くある。
寄生虫が水の中で繁栄する様子が最近分ってきた。

カリフォルニア沿岸の湿地の調査で、大量の寄生虫が発見された。
Kuris「寄生虫の総重量を計算したところ、結果は衝撃的だった。
入り江にいる鳥を、寄生虫の総重量が上回った。」
カダヤシという魚に寄生するこの虫は、巻貝と鳥を経て魚にたどり着く。
まずサギなどの水鳥の体内に寄生虫の卵が産み付けられる。
鳥が虫の卵の入ったフンを落とすとそれを巻貝が食べる。
卵は貝の殻の中で孵化する。
貝を解剖すると侵入者の残酷な仕打ちが見えてくる。
寄生虫は貝の生殖巣を食べる。
Kuris「貝が繁殖活動に使うはずだったエネルギーを奪い取って自分の子孫繁栄のために使う。」
貝は一生寄生虫を養い続ける。
やがて巻貝から泳ぎ出た幼虫は次の犠牲者を目指す。
カダヤシの表皮やエラから侵入し、体内に入ると神経をたどって脳に達する。
魚の外見に変化はない。

寄生されてもカダヤシは正常に暮らし続ける。
しかし顕微鏡で魚の体内を見て博士は目を疑った。
魚の頭を埋め尽くす小さなのう胞には寄生虫が入っていた。
Kuris「小さな脳に7000匹もいた。
寄生された魚は突然異常な行動を始める。」
脳にこの寄生虫が増えると魚は虫に操られて奇妙な行動をとる。
Kuris「突然水面に出たり、体を揺らしたり、突進しては後退したり、注意欠陥障害が起きたようだ。」
この行動の原因は寄生虫。
魚の脳に侵入した寄生虫は正体不明の物質を分泌する。
微量で魚の脳の働きを変化させる物質は、脳の情報伝達を担う神経伝達物質に作用する。
異常行動が始まれば魚は一巻の終わり。
捕食動物の水鳥に見つかりやすくなるからだ。
鳥は魚を食べ糞を落とす。
この地域のカダヤシは1匹残らず寄生虫に支配されている。
しかし恐ろしい虫も人間には役に立つ。
魚の神経伝達物質は人間と同じ、ドーパミンセロトニン
神経伝達物質はなおうないのメッセンジャー。
セロトニンが不足すると人は憂鬱になり、ドーパミンが過多だと冷静さを失う。
寄生虫が神経伝達物質に作用する仕組みを調べれば、うつ病などの新たな治療法の発見につながるだろう。

沖合いでも強大な力が働いている。
海の底では光と音の関係が逆転している。
光は遠い宇宙からも届くが、海面から先へはほんの少ししか進めない。
海水の大部分は暗闇に包まれている。
光の届かない深海で役立つのは視覚ではなく聴覚。
クジラなどは音を頼りに食料や仲間を探す。
しかし近年人間の出す音で海の生物が被害を受けている。
Dr.John Hildebrand(Oceanographer,UC San Diego)「海生哺乳類などの動物にとって騒音は大問題。
海洋生物たちは周囲の音や他の生物が出す音を聞いている。
人間の出す騒音は生きるために聞く必要のある音を掻き消してしまう。」
博士は海洋音響学を研究している。
海洋騒音問題の権威。
彼は騒音の原因を3つ挙げている。
Hildebrand「まず船、大型の商業船舶の数は10万隻に達する。
次は様々なソナー、また大陸棚で資源を探す海底調査も問題。」
彼は数10年間海中の音を聞いてきた。
人為的な音はそれをかき消す。
Hildebrand「海の中に接地できる録音装置を開発した。
魚や自身などの自然の音から船の音まで全て録音する。」
音は分子から分子へ次々に伝わる振動波。
圧力差が波となって放射状に広がる。
Hildebrand「水はとても効率的に音を伝達する媒体。」
水分子は空気より密度が高いため、水中では音が早く進む。
空気中の5倍のスピードで、しかもより遠くまで届く。
深海にはSOFAR層という一帯があり、そこでは低周波音が特に遠くへ届く。
SOFAR層があるのは水深1000m付近。
音が消滅せずに何1000kmも進む、音のハイウェイ。
多くの生物の情報伝達はこの層内で行われる。
Hildebrand「音速は海の深さによって違うことをクジラは知っているとしか思えない。」
SOFAR層の音は海面や海底にぶつからず無駄なく遠くまで進む。
Hildebrand「SOFAR層でたてた音は層から出ることはない。
音のエネルギーは層の内部に集中するので遠くまで届く。」
博士達はSOFAR層の調査のために特殊な調査船を使う。
Hildebrand「FRIPと呼ばれる船、片側に水を入れると船が直立する。
これで船が安定する。
動きの少ない深海の水に支えられるからだ。」
FLIPに搭載された水中マイクで海中のあらゆる音を捉え、スペクトログラフという機械で図に変換する。
Hildebrand「最近では海底の音について以前より多くの情報が得られるようになった。」
その結果判明したのが海の騒音公害。
SOFAR層の音は10年前の10倍になったという。
音を頼りに生きる海洋生物は新しい騒音に苦しんでいる。
Hildebrand「音を視覚化する方法によって目に見えない音の世界をより深く知ることが可能になる。」

海の邪魔者は騒音だけではない。
太平洋が巨大なゴミ捨て場と化している。
Charles Moore(Algalista Marine Research Foundation)「ゴミは1km四方に約335000個もある。」
1997年Mooreは海に浮かぶゴミ捨て場を見つけた。
ゴミを集めていたのは海流。
見えない力が海水を循環させている。
400m以深を流れる海流が海の約9割を占める。
温かい水が冷えて深海へと沈み、地域全体を循環する。
海流は低緯度から高緯度へ大量の熱を運んでいる。
海面付近の海流は風の影響を受けて形成される。
規則的に風が吹くいくつかの海域では還流と呼ばれる巨大でゆっくりとした流れが生まれる。
還流の中心部は台風の目のように穏やかで、北大西洋で見られる。
ゴミが還流の中心に集るのはカリフォルニア州とハワイ州の間の生活圏から離れた海域だが、ゴミ捨て場はテキサス州の2倍以上の面積を占める。
たった9年でゴミの量は3倍に増えた。
人間の行動を劇的に変えなければ、海は守れない。

Moore達は解決策を探るため、ゴミを集める見えない力を調査する。
微生物は私達の制止にかかわりを持つ見えない存在。
植物プランクトンを育むため、海底から栄養分を運ぶのも海流。
地球の生命の大半は植物プランクトンに頼っている。
その姿は目に見えないため軽視されがち。
Dr.Heidi Sosik(Biological Oceanographer)は生態系における微生物の役割を研究している。
海洋生物の栄養源である植物プランクトンは二酸化炭素を減少させ、温暖化を遅らせている。
さらに地球上の約半分の酸素を作り出している。
酸素は生物の発明品と言えるだろう。
Sosik「地上の植物が放出する酸素とは別に大気中には海中で作られた酸素が存在する。
人間の進化は植物プランクトンに支えられてきた。」
植物プランクトンは容易には見えない。
その大きさは1ミクロン以下で髪の毛の太さの100分の1ほど。
微生物の生態を調査するため、博士達はCytobotを開発した。
植物プランクトンを数え撮影する装置だ。
Sosik「微生物が入った液体をレーザーに通す。」
研究所のサイトポットは旧型、最新型は海底に設置されている。
内部には非常に細い管があり、微生物は1固体ずつしか通れない。
葉緑素を含む固体はレーザーが当たると光る。
この光に反応して植物プランクトンが撮影される。
この方法で何1000枚もの写真を撮影し、データを蓄積する。
サイトポットは海底から研究所へ24時間データを送り続ける。
Sosik「個体数や成長特性の研究などで得られる結果が飛躍的に増えた。」
膨大な数の画像が集る。」

以前よりも短い時間の調査で私達を支える微生物がより鮮明に記録される。
生命を育む微生物が生命を脅かす場合もある。
多くの植物プランクトンは春に増殖する。
極小の藻が大繁殖し海を変色させる。
赤潮とも呼ばれる現象だが、その色は様々で無色の時もある。
赤潮では毒素が作られる。
赤潮は海面近くに発生し、魚が犠牲になる。
この毒を人間が摂取すれば死に至ることもある。
Dr.Don Anderson(Phytoplankton Ecologist)は海中の毒素が空中に飛散する過程を研究している。
ニューイングランドでは毒を作る藻の装飾が定期的に発生し、その影響を受けた食用の貝が人体を危険にさらす。
Anderson「アメリカ北東部では麻痺製の貝毒が発生する。
原因は海を泳ぎまわる微生物、Alexandriumで、これを摂取した貝が毒を蓄積する。」
貝にとっては無害だが人体には有害な毒。
Anderson「毒を蓄積したアサリやムール貝などを食べるとすぐに息苦しさを感じるようになるだろう。
毒の量が多ければ死ぬこともある。」
しかし植物プランクトンがいなければ、私達は生きられない。
見えない世界が私達を支えているのだ。

微生物は水のある場所ならどこにでも存在する。
透明な飲料水で死に至ることもある。
管理された水道水にも大量の微生物が存在し、中には危険なものもいる。
Dr.Charles Gerba(Environmental Microbiologist)「微生物は家中の水道管内で繁殖し、薄い相乗のバイオフィルムとなって付着している。
水道管の中では微生物が活発に会話している。
極小の微生物の侵入を防ぐにはまず見つけねばならない。
1993年ミルウォーキーで感染症が流行した。
水道システムの処理能力を超える大雨が降り、寄生虫クリプトスポリジウムが水道水に入りこんだ。
約40万人が発症し、約100人が亡くなった。
科学者達は浄水場を調べたが、感染源を特定できなかった。
入り込んだ微生物の数も分らなかった。
山の湧き水や小川の透明な水の中にも危険な微生物が潜んでいる。
胃腸炎を引き起こすジアルジアは透明な山の小川に潜んでいる。
海岸ではコレラ菌が待ち伏せている。
Gerba博士達の研究によって危険な微生物が可視化された。
大腸菌は命に関わる胃腸感染症を引き起こす。
ブラックライトで水が光れば陽性。
しかしこの検査は結果がでるまでに時間を要す。
すぐに確認できる方法はないのだろうか?
Gerba「レーザーを水に照射する。
微生物がいればレーザー光が拡散する仕組み。」
まだ試験段階だが、将来の活躍が期待できそうだ。
彼らは微生物の追跡システムも開発中。
微生物の行動パターンを予測する。
水道管はあらゆる方向に分岐している。
移動パターンが分れば微生物の家庭への侵入を防げる。
微生物を追跡できれば、水道水の安全性は飛躍的に向上する。

人命を守れるかもしれない新技術もある。
マイクロ流体研究の分野では、ラボオンチップ(Lab-on-a-chip)という小さな装置が注目されている。
Dr.Stephen Quake(Bioenginer,Stanfrd University)はラボオンチップを医療用に開発している。
Quake「ミニサイズの生物学研究所という発想。
研究員が大掛かりな設備を備えなくても1枚のLab-on-a-chipで代用できる。
流体を流す電子回路のようなもので生物学と化学の実験に使える。」
Lab-on-a-chipは新薬の開発やDNA検査などにも使える。
複数の検査でもつようなサンプルはわずか1ナノリットル、1ミリリットルの100万分の1ほど。
Quake「流路の端部であるチャンバーの長さは約3mm、複雑に配置された流路がチャンバーをつないでいる。」
肉眼では見えない流路やバルブ、チャンバーなどが微量の液体を誘導している。
ナノサイズの流体を操ることができれば、検査の精度は飛躍的に上がる。
多くの検査を一貫して行えるので、より正確な結果が出る。
サンプルとして使う流体の量は大幅に抑制できるし、検査の正確性は飛躍的に上がる。」
Lab-on-a-chipは血液の分析や検査に適している。
わずか1滴の血液があれば、幅広い分析が可能。
Quake「チップ上の血液はポンプで所定の場所へ送られる。
遠心分離機のようにも使える。
チップ上の血液が細胞の種類ごとに分かれる。
1つのチップでたくさんの分析が行えるようになる。」
小さなチップでの検査が可能になれば、外部機関に検査を依頼しなくてもすむ。
止血帯や注射針は要らない。
すぐに結果が分る理想的な検査。
研究現場で活躍してきたLab-on-a-chipは医療現場を変えるかもしれない。

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目に見えない世界★大気の観察

一見上空から見た古代遺跡に見えるが、実はチリの粒子。
Dust Particle(1080X Magnification)
空気流に浮遊する無数のチリ、私達は絶えずチリを擦っている。
万物から生み出されるチリ・・・
Hannah Holmes(Author,"The Secret Life of Dust")「自然界は崩壊の連続。
倒れる木々、砂漠から運ばれる砂は恐竜の化石を風化させる。
荒れた海面から噴き上がる塩。
崩壊から生まれた物質は地球上を舞い、降り注ぐ。
これらの浮遊物質には地球にない物質が紛れる。」

地球に存在しない微粒子が空中に飛び交っている。
その微粒子の正体は宇宙からたどり着いたチリ(宇宙塵)。
私達は宇宙の微粒子を吸っているのだ。
宇宙塵とは人の細胞ほどの微粒子、はるか宇宙から地球へとやってくる。
宇宙塵には3種類ある。
隕石ダスト、彗星ダスト、小惑星ダスト。
小惑星同士が衝突すると細かく砕け散り、それが地理となって知らぬ間に地球に降り注ぐ。
また爆発した星からは超高温のガスが発生し、低温の宇宙空間で凝結する。
それらが結晶化したものの中にはダイヤモンドやルビーの粒子が含まれている。
宇宙塵は銀河系を飛び交う彗星からも生まれる。
彗星はガスやチリを放出する。
活発な彗星が太陽に近づくと氷が蒸発し、チリが放出され尾のように見える。
飛来する彗星ダストの成分は原始太陽系の成分を保持している。
無数のチリが集り太陽系は生まれたのだ。

太陽系誕生の謎に迫る手掛かりとなる宇宙塵を、屋上で採取する科学者がいる。
Dr.Ken Farley(Geochemist,Caltech)「まず採取皿に水を循環させる。」
宇宙塵が水の表面に落ちるとゆっくり沈んでゆく。
採取量は時期によって増減する。
奇妙な現象で理由は不明。
採取皿には地球上の物質も混ざる。
磁石で宇宙の物質をひきつけて、それだけを取り出す。」
しかし地球の物質にも磁気はある。
そこで宇宙の石に特有のヘリウム靴陵無を調べ、物質が宇宙のものかを判断する。
宇宙塵の粒子の標準サイズは10マイクロメートル、爪の上に1000粒並べられる大きさ。
宇宙塵と確認されたものを電子顕微鏡で見ると、小惑星ダストは岩のように見える。
彗星ダストは太陽から遠いところで形成される。
熱が不十分なせいか、しっかり溶け合っていない。
彗星ダストは穴だらけ。
隕石ダストにはダイヤモンドなどの宝石が豊富に含まれる。
大きさは毛髪の直径の10分の1。
目には見えない極小の宝石。
私達はそれを吸っているのだ。
地球に古くからある花崗岩なども含まれる。
宇宙の創世記のチリだ。
宇宙の果てからきた悠久の昔に生まれた微粒子は、宇宙の歴史を解くカギになるだろう。

宇宙のチリが屋内で舞う様子を光のかげんでみることがあるかもしれないが、屋内のチリは宇宙塵ではない。
その正体はハウスダスト。
その種類は様々、塩の粒半分ほどのチリを電子顕微鏡で見てみると・・・
そこには動物の抜けた毛や、ハエの眼球などの昆虫の器官、蛾の羽のリン粉などが見える。
さらにアレルゲンも含まれる。
屋内に入った花粉(Pollen)は屋外にあった時よりも凝縮される。
ペットの毛や羽も同様だ。

ハウスダストはペット以外からも発生する。
ハウスダストの大部分は人間の皮膚(Human Skin Flake)。
体を取り囲む暖気の中に皮膚の断片が無数にある。
シュリーレン撮影法で熱の流れを映し出すと、体の熱がカゲロウのように立ち上がる様子が見て取れる。
皮膚片も他のハウスダストと共に私達の周りに渦巻いている。

穏やかに思える家の中でも空気の流れは常に変化している。
床に落ちた皮膚片は、チリダニの格好のエサ。
針の頭に3匹乗るほどのサイズ。
チリダニ(Dust Mite) は風船に脚がついたような生き物。
フケやアカを好んで口に運ぶ。
植物連鎖の常として、チリダニにも天敵がいる。
チリダニを捕食するツメダニだ。
ダニの小さな糞もハウスダストに変る。
糞が混じった空気が呼吸を通して体内に入るとアレルギー症状を引き起こすことがある。

ハウスダストは多くの人にとっては無害だが、有害なチリもある。
空気中に浮遊する目に見えない粒子の中には危険なものも存在する。
グラウンド・ゼロは有害なチリで満ちていた。
Dr.Thormas Cahill(Atmospheric Scientist,UCD avis)「同時多発テロ事件の現場で立ち上がる噴煙の成分を調べた。
尋常でない量の化学物質を発見した。
一般には煙がもっとも有害だと思われるかもしれないが、噴煙の成分の大半は壁材で、それは無害な石膏。」
事件後3週間にわたり現場の空気汚染は進んだ。
問題はきめ細かいセメントだった。
粘膜を刺激する化学成分を含んでいる。
鼻や気管支系の粘膜に炎症を起こさせる。
そしてさらに燃える瓦礫の山から発生した超微粒子の汚染物質が発見された。
直径0.1マイクロメートル以下の微粒子、毛髪の1000〜2000分の1の大きさ。
パソコンの金属が溶け気化して超微粒子となったもの。
3ヶ月間作業員達は焼けて濃縮された金属の微粒子を吸った。
通常見ることのできない微粒子を透過型電子顕微鏡で捉えることに成功した。

Cahill「超微粒子は体の防御機能をすり抜ける。
フィルター機能を持つ呼吸器、大きな粒子は鼻や喉で、中程度の粒子は気管支で捕われる。
しかし超微粒子は肺の奥にまで到達する。
この超微留意者肺を損傷しないまでも他の器官を傷つける。
肺の奥で血管に入り込み、最終的には心臓にまでたどり着く恐れがある。
粒子自体は有毒ではないが、器官を侵略する粒子に体は過剰な反応を起こす。
特に金属の超微粒子は心臓に入り込むと、組織の一部と化す。
すると心臓は老化し、肥大して機能が弱まる。」
グラウンド・ゼロは最悪の汚染現場だったが、安全だと聞いていた作業員達は何の疑いも持たなかった。
Cahill「高性能の防塵マスクなど、誰も着けていなかった。
超微粒子は紙マスクを通過する。」
今後数年内に、作業員らが発病する危険をCahillは心配している。
Cahill「作業員らが1ヶ月間に吸収した汚染物質の量は、大気環境の悪い都市で10年間働いた場合と同じ量に値する。」

汚染現場はグランド・ゼロ以外にもある。
Cahill達は脅威を拡大する超微粒子を追う。
超微粒子は常に空気中に浮遊しているのだ。
Cahill「州間高速道路の上で排気ガスの超微粒子を計測している。」
サンプル採取器で見えない脅威の証拠を収集、採取したものを研究すで解析する。
Cahill「気になる物質の成分がいくつか検出された。
1つ目は汚染物質である亜鉛などの金属、発癌性物質のベンゾピレンもあった。」
超微粒子の流出は規制されていない。
規制対象の粒子の大きさに満たないからだ。
超微粒子が心臓に及ぼす影響は明白。
しかし国や州は超微粒子についての法令を定めていない。
Cahill達は環境保護機関に対し、処置を講じるよう働きかけている。

大気に潜む脅威はこれだけではない。
目に見えない空気のうねり災害を引き起こす危険をはらんでいる。
大気を支配する見えない力が、高圧波や乱気流を生み、荒れ狂う海のように猛威を振るう。
突然襲いかかり私達を圧倒する。
中でも最強のパワーを誇るのが衝撃波で、その破壊力は驚異的。
John Williams(Atmospheric Scientist,NCAR)「衝撃波は圧縮された空気の層が超音波で空気中を伝わってゆくもの。」
急激に空気に圧力が加えられた時、衝撃波は生まれる。
銃弾を発射すると空気の分子が圧縮され、高密度の層となり、前に押し出される。
シュリーレン撮影法で空気の動きを映し出してみる。
衝撃波ともなると大抵のものを破棄する。
ほとんどの爆弾は衝撃波ではなく、破片が殺傷力を発揮する。
しかし原子爆弾では空気のうねりが人命を奪う。

衝撃波には謎が多く残るが、耐久力のある建造物を設計するため、科学者は研究を続ける。
研究の対象となる現象は他にもある。
乱気流をシュリーレン撮影法で見てみる。
異なる速度や方向を持つ気団の摩擦により乱気流は生まれる。
Williamsは乱気流の仕組みを探求する科学者。
Williams「航空機にとって問題になるのは乱気流の発生地点や威力が予測できないこと。」
Williamsらが考案中のシステムは乱気流の危険を目で確認できる。
1966年富士山上空付近で英国海外航空機が乱気流が原因で空中分解した。
乱気流を探知できれば、操縦士と乗客の身の安全を確保できるはず。
彼らは乱気流の位置を特定するソフトを開発した。
Williams「これは36000フィート上空の様子。
緑は弱いもの、オレンジは中程度、赤は激しい乱気流を示す。
ドップラーレーダーで観測したデータを処理し画像で表示させる。
降水粒子からの反射波を利用して乱気流を形成する風の動きを探る。」
人工知能技術を用いて乱気流を予測するソフトもある。
技術の革新で見えない危険を探知すれば、航空機は乱気流を避けることが可能。

目に見えない危険から人々を守るため、科学者が注目する現象が他にもある。
海を越えて侵入する細菌が空気中に潜む可能性に着目する。
大気に潜み自在に旅する見えない物質の脅威。
微生物が地球上の大気の流れに乗り、大洋を横断しているかもしれない。
着陸先は私達人間の体。
衛星写真で見ると、ゴビ砂漠の砂嵐で舞った砂は太平洋を越えている。
その砂はアメリカやカナダの西海岸にまで飛来し、人々の呼吸器に入る。
大西洋上を西へ向かうアフリカの砂は大気の流れに乗り、フロリダやカリブ諸島にまで運ばれる。
この発見から新たな疑問が浮上した。
飛来するのは砂だけなのだろうか?
砂に混じり病原菌はやってこないのだろうか?
飛来する微生物を研究するDale Griffin(Microbiologist U.C.Geological Survey)は、人体への影響を懸念している。
彼はオレンジ色のもやの観察に、フロリダ沿岸に来た。
Griffin「これは粒度分布測定装置で粒子の分布を測定する。」
病原菌がチリと共に短距離を移動するのは知られている。
アフリカでは砂嵐の後に髄膜炎が流行、米国では土ぼこりでハンタウィルスとコクシジオイデス症を引き起こす真菌が拡散。
しかし病原菌は大西洋を横断できるのだろうか?
Griffin「進むサハラ南部の砂漠化に伴い、大西洋を渡る砂は急増している。」

飛来する砂の激増でカリブ海の島国バルバドスでは肺の病気が流行った。
砂と喘息の関連性を信じるGriffinは、致死性の細菌も飛来すると考える。
しかし空を移動する細菌は、太陽熱の下で生き延びることができるのだろうか?
多くの人は紫外線で菌が殺されると考え、長旅は無理だと信じている。
そこで彼はアフリカから来た砂を採取して生きた細菌の有無を調べる。
Griffin「これは大型の空中浮遊菌測定装置、このフィルターで砂粒を効率よく収集する。」
アフリカの砂粒の大きさは紙幣の薄さ以下で、小さいものはその100分の1。
研究室に戻りサンプルを取り出す。
西アフリカ特有の赤い砂はアメリカの砂とは全く異なる。
サンプルを顕微鏡で観察する。
Griffin「砂の粒子の表面に黄緑色の光る点が見える。
これが細菌。」
彼が下した結論は、細菌が大西洋を横断しているというもの。
Griffinはサンプルを採取し続ける。
紫外線により死滅するはずの細菌が何故生き延びたのだろうか?
砂粒が盾となったとGriffinは考えている。
彼はサンプルを培養器にいれ、4日間置く。
培養結果を分析する。
注目したのは病原菌のDNA指紋。
Griffin「この2つの帯はコウジカビのコロニーを示す。」
Aspergillus(コウジカビ)は土壌菌で、致死性の病気を引き起こす。
病原性の菌が大西洋を絶えず横断しているのだ。
人に感染したという証拠はないが、病原性の細菌は確かにサンプルから検出された。
Griffin「人間に感染症を引き起こす細菌もいる。
シュードモナス、サルモネラ、ストレプトミセス、バシルス・・・
種類は様々。」
伝染病が空から襲来することがあるのだろうか?
Griffin「砂嵐は病気をもたらすと考えられる。
地球を巡る砂嵐に乗って飛来した微生物を見ると、地球は小さく世界は狭いと改めて実感する。」

海を横断する砂粒の増加により、細菌の飛来が懸念されている。
同様に電子機器の急増が人々の不安をかき立てる。
電波等や送電線をはじめ、無線機や携帯電話など様々な機器から放出される電磁波。
私達は目に見えない電磁界に身を置いている。
エネルギー粒子の波が作る電磁界の影響については、専門家により意見が分かれる。
Dr.Alec Schramm(Physicist,Occidental College)「電気を使用する機器や物体は何であれ、電磁界を生じさせる。
家の中は周波数の異なる電磁波で満ちている。
しかしどんな電磁波も生命体に害を与えるほどのエネルギーは持っていない。」
しかし電磁波の検査員数は増えている。
Mary Cordaro(EMF Inspector)「私は許可を受けた電磁波の検査員。」
目には見えなくても電磁界は確かに生じている。
Cordaro「ガウスメーターで測る電磁波は、通常0.5〜1ミリガウス。
しかしこのあたりは10ミリガウスもある。
配線の欠陥が考えられる。」
電磁波が有害だと考える科学者も少数派ながら存在する。
また携帯電話も議論の的。
Schramm「遠くに信号を送る携帯電話の電磁波は強力。」
電話機を耳に当てると電磁波は頭骨を突き抜ける。
また使用のたびに電波はレンジのように頭部の組織を加熱する。
その上で電磁エネルギーは脳に吸収される。
争点はそれらがDNAを破壊し、脳腫瘍を発症させる危険性。
Schramm「発がん性のあることで知られる放射線や特定の化学物質は、化学結合を破壊してDNAの突然変異を誘発する。
ただギガヘルツ程度では結合の破壊は起こらない。」
高圧送電線の電磁界を危険視する声も多く上がっている。
小児白血病の原因となる可能性も指摘されているが、否定する研究者もいる。

画期的な調査が、都市に溢れる無線LAN信号を描き出した。
ソルトレイクシティで電波のデータを収集したトランスは巨大な無線LANの雲を画像化した。
無線LANが有害だという証拠はない。
目に見えない電磁界の影響を巡る論争は尽きない。
そして空中を飛び交う信号は電磁波だけではない。
強烈な信号は他にも存在する。
異性をひきつける要素にもなっているという信号。
その正体は匂い。
Dr.Rachel Herz(Author"The Scent of Desire")は20年に渡り匂いの謎を研究している。
Herz「匂いは人間がとるべき行動を感情に訴える。」

臭覚は脳内の感情を支配する領域にあるため、行動の決定を左右する。
臭覚の情報処理の方法とは?
香りを吸い込むと匂いの分子が臭覚受容器の細胞が並ぶ鼻腔に入り込む。
分子の形によって結合する匂いの細胞が異なるため、匂いが決まるという説が有力。
分子と細胞は鍵と錠のような関係。
この情報が脳に伝達され、特定の匂いと判断される。
匂いは食べ物だけでなく、恋人を選ぶ決め手ともなる。
体臭が連の中で果たす役割をHerzは発見した。
男性の体臭を女性は本能的に探るというHerz。
彼女が発見したのは脇の下の分泌物とDNAとの密接な関係。
Herz「生物が持つ固有の免疫機構の遺伝暗号は、体臭という形で伝達される。
男性の体臭が免疫機構の遺伝子を読み取り、配偶者を選別するのは女性が健康な子を産むため。」

行動を操る目に見えない力を研究する科学者達、見えない物質自体を操る科学者もいる。
彼らは微小な装置の開発に取り組んでいる。
その装置に見張られる日が来るかもしれない。
スマートダストは爆発物や化学兵器を探知するミクロのスパイ。
これで目に見えない物質を探り出す。

国防総省の援助を受け、Dr.Michael Sailor(Chemist,UC San Diego)が作る微粒子は、有毒な化学物質を感知し警告を促す。
レーザーで照射しないと微粒子は見えない。
特殊なナノ構造の微粒子は発色する。
有毒な化学物質に反応し、警告を発する。
Sailor「変色を可能にしているのはナノ構造。
化学物質がナノ構造に入り込むと緑の粒子が赤に変化する。」
スマートダストは反応が早く、遠距離からの確認が可能。
スマートダストの材料にはシリコンウェハーを使用する。
Sailor「電子工業薬品で表面に菌魚に小さな穴をあける。」
取り出したものを超音波洗浄機の振動で粒子状に砕く。
この粒子がスマートダスト。
Sailor「顕微鏡で見るとこの微粒子は高密度でないと分る。
スポンジのように小さな穴がある。」
変色を可能にするのがこの穴。

スマートダストは進化を続ける。
偵察能力を備えるダストを開発中の科学者もいる。
知能を持つ微小機械は将来チリ程度に小型化されるだろう。
次世代のものはプロセッサーを内蔵する高性能ダスト。
入手したデータを分析し判断を下す能力を持つ。
無線を内蔵しているので周辺の景色や気温、湿度などの情報も伝達できる。
軍にとっては新たな情報収集の手段。
戦場にスマートダストをまいて受信した音声を伝達させる。
すると車両や兵士の足音などが聞こえてくるので敵の進行方向などを予測できる。
しかし悪用を恐れる声もある。
例えばキラーダストが開発されるとする。
キラーダストは繁殖を繰り返し、生命体を食べつくすと仮定しよう。
散布されたキラーダストは自己繁殖を繰り返し、自然界の栄養分を片っ端から吸い取る。
敵の全滅で機能が停止する設定のダスト。
しかし最悪の状況はダストの誤作動で増殖が止まらない場合。
数日のうちに地球全体がキラーダストで覆われ、生命体は絶滅する。
地球の未来は目に見えない自然の力や技術の進歩、微生物の影響を受け、形作られるだろう。

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目に見えない世界★光と力の観察

地球は見えない力に支配されている。
しかし現代は科学技術がそれらを見せてくれる。
私達は目の前の世界が全てだと思っているが別の世界も存在している。
重力は物の動きを支配する目に見えない力。
誰も重力から逃れられない。
重力は自然の法則。
重力により物体は落下する。
また惑星の軌道や潮の満ち引きをつかさどる。
重力なしで今の地球はありえない。
しかし重力の作用は見えても重力自体は見えない。

ニュートンが重力を発見して以来、人々は重力の源を探ろうとしてきたが今も謎。
しかし答には近づいている。
初めて重力を視覚化することに成功したのだ。
Dr.Michael Watkins(Project Scientist,GRACE Mission)「人やものを下に引く力だけが重力ではない。
影響は広範囲に及ぶ。
重力は基本的な力だが、物理学者にとっては極めて説明が難しい力。」
重力は2つの物体が引き合う力、その大きさは質量に比例するため、質量の大きな地球は物体を引き寄せる。
重力を見ることはできるのだろうか?
重力を視覚化するためにNASAは衛星GRACEを打ち上げた。
GRACEは地球重力場観測衛星。

地球上の重力は均一ではない。
Watkins「山頂では地球の中心から離れているため物体は軽くなる。
逆に谷や海溝では地球の中心に近いので重くなる。
地球は横長の球体なので赤道では軽く、極地では中心に近づくため重くなる。
地球の密度は均一ではない。
表面や内部に密度の高い部分があると重力は強くなる。
こうした変化をGRACEで確認できる。
重力の強い場所では前の衛星が引張られて加速するので、後ろの衛星との間隔が広くなる。
その間隔は正確に計測され髪の毛の10分の1ほどの違いも分る。
データから地球の画像が作られる。
地球は球体だと思われているがGRACEによると起伏だらけ。
赤は重力の強い場所、青は弱い場所。
Greenland:Heavy Gravity  India:Light Gravity
Watkins「重力の分布を通して地球を見ると、山や谷があるように見える。
地球内部の質量の分布による起伏もある。」

GRACEは重力場の全体像だけでなくカナダにある重力の穴の謎も明らかにした。
ハドソン湾周辺で体重を量ると軽くなることが知られているが、理由は謎だった。
GRACEからのデータにより謎が解けた。
この一帯は氷河期に厚さ3km以上の氷に覆われ、その重みで地殻が沈降した。
氷は1万年以上前に溶けたが、地殻は沈降したまま。
地表が凹んだ分、重力は強く働くと考えがちだが、実際には地表の奥深くで地殻の質量が減るために重力は弱まる。
GRACEによってハドソン湾周辺では地殻下の鉱物層の密度が平均より低いことも判明した。
2つの地質上の理由から重力が弱くなり体重が軽くなるのだ。
GRACEからの画像によって水の動きによる重力の変化を見ることもできる。
Watkins「重力は地球上の水の質量に影響される。
GRACEで重力場を測定すれば水の質量の変化がわかる。
2003年以降温暖化のために2兆トンの氷がグリーンランドや南極、アラスカで溶けている。
気候の変化で地球の質量の配置は動く。
GRACEにより気候の変化がもたらす重力場の変化が明らかになった。」
衛星の画像が残した気候による重力場の変化は人間にも影響するかもしれない。
GRACEの重力測定によって海の変化や南極の氷の様子など様々なことが分る。
見えない世界を見ることで、地球の将来も見えてくる。

地球の将来を左右するのは重力に限らない。
ミクロの世界も地球に影響を与える。
莫大な数の見えない侵略者が日常の意外な場所に潜んでいる。
ミクロの世界には人類の見方も敵も住んでいる。
Dr.Paul Dowson(Food Scientist,Clemson University)は日常の見えない世界に注目する。
細菌は人間に必要な単細胞の微生物。
Dowson「ほとんどは有益なものだが中には致命的な病気を引き起こすものもいる。」
細菌の動きは活発で、15分に1回細胞分裂する。
1つの細菌は10時間後には10億になる。
しかし増えすぎると生存できないので、新しい生息場所を求めて人間の体内に入る。
人間は細菌を運ぶ。
紙幣は細菌にうってつけの移動手段。
1枚の紙幣には100種類近くの見えない細菌が群がっている。
紙幣の多くはブドウ球菌や肺炎を起こす肺炎かん菌などに汚染されている。
紙幣の繊維に付着し、休眠状態で生き続け、人間の肌に付着すると活動し始める。
そしてさらに移動を続けたり体内にとどまって病気を引き起こしたりする。
紙幣によって病気が人から人へと広まる恐れがある。
2003年に中国でSARSが流行した時、中央銀行は紙幣を再流通させる前に24時間保管した。
ウィルスが死滅するために十分な時間だが、細菌の移動手段は紙幣だけではない。
もっと直接的な方法がある。
Dowson「大抵の台所には膨大な数の細菌がいる。」
目には見えなくても台所用スポンジには10000以上の大腸菌がいるだろう。
それが食物に入り、深刻な病気を招くこともある。
スポンジの臭いは細菌の排泄物。
調理台の上は大腸菌でいっぱい。
その大きさは針の頭の1000分の1。
大腸菌は深刻な病気を引き起こすこともある。
調理台の上の細菌数はトイレの便座の約2倍、床は約3倍。
どんなにきれいな床でも菌は存在する。
食べ物への混入は免れないだろう。

Dowsonらは私達が知らずに口にしている菌の数を調査することにした。
検証1:食べかけのクラッカーをディップにつけるのは安全か?
1回だけつけた場合と2度づけの場合を実験する。
サンプルは特別な機械にいれ、2日間細菌を培養した後菌の数を調べる。
結果は予想通り、1回だけの場合細菌はなかった。
2度づけの場合は1ミリリットルに約1000もいた。
パーティーではディップの中で大勢の唾液が混ざる。
唾液は有害な細菌の温床。
検証2:口をつけた容器はどれだけ危険か?
牛乳の容器に口をつけて飲み、3日ごとにサンプルをとる。
結果は口をつけないで飲んだ場合より100倍もの細菌が検出できた。
検証3:落ちた食べ物は50秒以内の拾えば問題ない?
サルモネラ菌を植え付けた培地にソーセージやパン、ガムを落として実験する。
結果は5秒以内に細菌は移動した。
1つの食品に8000個の菌が見られた。
1分後には10倍になった。
調査はさらに続く。
例えば赤ん坊のお尻が触れるショッピングカートやスポーツクラブの器具、病院のエレベーターのボタンはどうだろう?

人間の体内には100兆細菌がいる。
人間の細胞の10倍もいる菌が実は我々を守っている。
細菌と共存する利点は他にもある。
細菌を発電に利用する研究が進んでいる。
台所にいる細菌の数にショックを受けたことだろうが、家の外にいる見えない微生物の数はその比ではない。
どこにでもある裏庭の土の中は形も働きも様々な数10億もの微生物がいる。
Dr.Ken Nealson(Geobiologist,UCLA)は土の中の見えない世界を研究している。
Nealson「微生物の社会を研究することで、地球環境を考えた社会のあり方を学べると思う。」
1gの土には5000〜7000種の細菌がいる。
細菌は土の中だけでなく地表の養分も摂取する。
動物の死体などだ。
地上で養分を摂ると細菌は地中へ戻る。
必要な時は異なる細菌とも協力する。
見た目は単純でも微生物は以外に社会的な生物。
細菌同士は基本的に協力し合う。
私達の足元では微生物が活発に活動している。
戦ったり求愛したりもする。
化学物質を出し、情報を伝達する。
この伝達の方法はクオラムセンシングという。
細菌は化学物質を発することで、他の細菌に情報伝達を行う。
化学物質の濃度が一定以上に達した時、細菌に特定の能力が備わる。
単体には存在しない力だ。

驚くべき能力をもった細菌もいる。
シュワネラ菌(Shewanella Oneidensis)、この細菌が2000個並んでも針の頭ほどの長さ。
金属に電気を発生させる。
人間は酸素で食べ物をエネルギーに変える。
シュワネラ菌は金属を使う。
菌は鉄などの金属にくっついて電子を移動させて分解する。
人間の呼吸で電子が酸素分子にわたるのに似ている。
科学者は細菌の呼吸が電気を作ることを発見した。
電気は力を生み出す。

Nealsonはこれらの細菌を実験用の燃料電池にいれ、発電装置を作った。
しかし研究はこの細菌の弱点に気づいた。
電池の中では増殖しなかったのだ。
燃料電池の中で電気を取り出しすぎたために繁殖する力が残っておらず、死に絶えた。
Nealson「細菌が死滅しない状態を維持する必要がある。
シュワネラ菌がいき続けてゆっくりと繁殖し、電気の大半を利用できるのが理想。
微生物の体はどんなものを摂取しても代謝できるよう作られている。
コバルトや酸素、有害な鉱物もだ。」
核廃棄物さえ分解するものもいる。
いつかこの驚異的な仕組みを活用し、有害な廃棄物の処理が可能になるだろう。
複雑な微生物の世界は見えなくても確かに存在する。
見えない世界に住む微生物は環境問題の有力な解決策となるかもしれない。
Nealson「想像力と科学が結びつくことによって微生物の見えない世界が私達にとって身近になるのだ。」

私達を守っている見えない地球にシールドは破れることがある。
そのときの影響は?
地球の中心にも見えない世界がある。
液体の鉄の海が複雑な動きで渦巻き、巨大な力を生み出している。
地球の磁場だ。
見えないシールドで地球を覆い、太陽や宇宙からの危険な物質を阻止している。
磁場がなければ北も南もない。
地球の磁場は必要不可欠だが目には見えない。
Dr. Paul Renne(Geologist,UC Berkeley)「磁場は地球の歴史を解く重要なカギ。」
地球の磁場は磁石の磁場のように広がり、磁性体によって感知される。
コンパスは磁場で働く。磁極を指す。
科学者は磁場の解明に取り組んでいる。
2007年NASAが衛星テミスを打ち上げ、磁場が地球に与える影響を調査した。
科学者達は磁場の破れを発見し、衝撃を受ける。
Dr.Harry Tom(Physicist,UC Riverside)「思いもよらない巨大な穴が開いていた。
その幅は地球4個分、長さは地球7個分だった。」
磁場は時々破れるがこれは今までになく巨大だった。
穴から太陽粒子が入り込むかもしれない。
磁場は有害な放射線から地球を守る。
この放射線は人間をはじめあらゆる生物に有害。

2007年に発見された磁場の穴はすぐに消えたが、Renneは別の磁場の乱れを指摘する。
1000万年前の溶岩の一部、溶岩が冷えた時、中の磁性鉱物が北を向いて固まっている。
しかしそれは1000万年前の溶岩の一部。
1000万年前の北は現在とは違うことが分った。
研究によると地球は今までに何度も極が逆転していることが分った。
逆転するには数千年かかると言われる。
原因は分っていない。
溶岩石を調べると磁極の反転時は何千年も磁場が弱まることが分った。
再び磁極の反転が起きることはあるのだろうか?
もし起きたら人間はどうなるのだろうか?
いつ起きるにしろ、大きな被害がでる怖れがある。
Renne「強い太陽風が吹き付けるだろう。」
太陽風は危険な放射線を運ぶ。
Tom「太陽風はエネルギー粒子を含む。
それらがDNAを破壊し、癌などの原因となる。」
Renne「過去の反転の記録を研究することで、何が起きるか予測できる。
地磁気が弱まってゆくと同時に放射線を防ぐ力も弱まるだろう。
私達は今から備えておくべきなのだ。」

未来を支配する見えない世界。
見えない世界を研究する科学者もいれば作り出す科学者もいる。
それは私達の生活を変えるかもしれない。
私達の世界は光のおかげでものが見える。
太陽や人工の光などだ。
しかし目に見える光は無数にある光の種類のほんの一部にすぎない。
目に見えない光の世界が存在する。
人間の目が見る世界は驚きに満ちている。
しかし見えない世界にはさらに驚かされる。
奇妙で驚異的な不可視光の世界だ。
Dr.Austin Richards(Physicist,Brooksinst.of Photography)「不可視光は目で見える帯域外の光。
光の帯域の広さを理解するにはピアノの88個の鍵盤をすべての光だと考えてください。
私達の目に見えるのは鍵盤の1個分の帯域。」
光には周波数がある。
周波数の低い電波や高い赤外線波、紫外線やエックス線、ガンマ線などがある。
周波数が高いほど1つの波は短くなる。
それが波長、目に見える帯域はとても狭いのでほとんどの光は見えない。
しかしRichardsは見える範囲を広げ続けてきた。
特別なカメラで普段私達には見えない集種類の光を捉える。
カメラの多くは赤外線を感知する。
赤外線を吸収する表面は他の部分よりも黒く映る。
Richards「画面を見ると私の肌と歯と目は黒く映っている。
肌や目に含まれる水分が赤外線を吸収しているからだ。
赤外線には波長の領域があり、それぞれのカメラが異なる領域を捉える。
これは二酸化炭素を映す。
肺や口から出る二酸化炭素が見える。
これはメタンやプロパンのような炭化水素を映す。」

カメラによって捉えるものは異なる。
遠赤外線で温度を見るカメラもある。
熱エネルギーを映す熱探知カメラ(Longwave Infrared Camera)と呼ばれ、地質学者も使っている。
火山の熱の分布を調査したり噴火前の地価の温度上昇を探知するのに使う。
消防士が人命救助に使うこともある。
遠赤外線カメラは煙で隠れたものを見ることができる。
カメラが熱い場所を特定するのだ。
美術史学者の仕事には近赤外線カメラが役立つ。
絵の具の下の層が見られる赤外線は可視光線より透過力が強い。
昔はキャンバスを再利用したため、下から別の絵が見つかる時もある。
紫外線の様子を撮影するカメラもある。
紫より波長が短いため、人間には見えない。
紫外線に近い光が見える生物もいる。
昆虫や鳥などだ。
ミツバチは紫外線で蜜の場所を見分ける。
人間には1色の花に見えるが、ミツバチには色の濃淡が見える。
ハチは色の濃い場所を狙う。
Richards「自分の体の機能を超越して科学の力で見えないものを見ることは喜びだ。
特定の紫外線の波長域を画像にする美術に興味がある。
優麗や亡霊のような目に見えない超自然的なものが見えるかもしれない。」

見えないものを見せる技術がある一方、物を見えなくする技術の研究者もいる。
現在透明人間は映画や漫画の中の非現実的な話だが、Dr.David Smith(Electrical Engineer,Duke University)は透明マントを作ろうとしている。
マントは光を屈折させて物体を回避させる。
光が反射も吸収もされないと物体は見えなくなる。
仕組みはこうだ。
光波が物体を迂回して反対側へ抜ければ、物体は消えたように見える。
Smithのチームは電磁波の流れを変え、視界のポケットを作る装置を作った。
彼らが利用する光の領域は可視光帯ではなくマイクロ波。
透明マントの素材はメタマテリアルと呼ばれ、何万個もの回路でできている。
Smith「回路パターンを回路基盤上に作る。
その回路基盤を細長く切り分け、曲げながら溝にはめ込んで組み立ててゆく。」
回路基盤は中心部の周りのマイクロ波を屈折させる。
通常光波は中央を貫き、中においた物体に当たる。
Smith「消したい物体を置いた中心部を避けてマイクロ波が通り、反対側で復元する。
だからマントと物体の両方が見えなくなる。」
今曲げられるのは目に見えないマイクロ波だけ。
可視光にこの概念を適用して物体を消せるだろうか?
適切な素材の開発が必要だが、不可能なことではない。

医療の分野でも見えない世界が活躍する。
ナノテクノロジーは超微細な世界の先端科学。
Dr.Diana Huffaker(Nanotechnology Scientist,UCLA)「ナノテクノロジーの独特な世界は私達の生活に大きな影響を与えるだろう。」
Dr.Mark Thompson(Chemist,USC)「ナノテクノロジーは簡単に言うと1mの10億分の1単位の素材を扱う技術。
ナノテクノロジーの素材は人間の毛髪の1万分の1の大きさ。」
肉眼で判別することは不可能。
ナノテクの素材を作るには原子や分子を入替えてチューブや棒、ワイヤーや粒子を作る。
構成要素は赤血球の8000分の1の大きさ。
Dave Zobel(Science Writer)「研究の中で特に興味深いのは原子や分子を使って微細な装置を作ること。
それを人間の体内で活用するのだ。」

がん治療への活用も期待されている。
まずは金を使う。
金でナノサイズの球体を作れば、金は血液中に溶け、体中で自由に動き回れる。
Thompson「多くの物質の物理的特性はナノサイズにすることによって大きく変化する。」
金の粒子ががん細胞に吸収されたら赤外線を照射して加熱する。
Huffayer「金の粒子が高温になるため熱によってがん細胞は破壊される。」
実用化はまだ先だが、環境分野でのナノテクの実用化は近いだろう。
Huffakerは新しい太陽電池を開発している。
量子ドットというナノ粒子を使う。
Huffaker「太陽光を電気に変える変換効率を大幅に高める。」
この電池で使う量子ドットは毛髪の1000分の1の大きさ。
ドットが1つの光の粒子を吸収し、電流となる2〜3個の電子を生成する。
これが従来の倍の電力を生む。
太陽光は石油に代わる新しい資源となるかもしれない。

環境を考えた技術は他にもある。
目に見えないナノワイヤーを使い車の振動エネルギーを利用する。
Huffaker「ワイヤーは車と共に振動し、振動のエネルギーを取り込み電気に変える。」
ナノテクを生み出す身近な元素、炭素。
炭素ナノチューブは特殊な分子でできている。
炭素原子が二重結合しているため、強度に優れている。
その強度は鋼の100倍。
小さくても重量あたりの強度はどの素材よりも優れている。
その特性を生かした壮大な計画がある。
物資や人を宇宙へ運ぶ宇宙エレベーターだ。
丈夫で軽い炭素ナノチューブはエレベーターを支えるベルトとして使われる。
将来地と宇宙ステーションをつなぐだろう。
莫大な燃料を使うロケットを打ち上げなくてすむ。
ナノテクノロジーは私達の世界に大きな影響を与える。
見えない世界を見ることで、新たな可能性が開ける。
私達に見えないものは、想像力を使って理解すれば驚異的な力を発揮する。

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なるほどね 2

形に秘められたミステリー
●板チョコの窪みは何のためについているの?
窪みをつけて割れやすくした、ということもあるが・・・
チョコの表面積を大きくし、チョコが固まる時間を短縮させるため。
●ケーキを食べるフォーク、何故端だけ形が違うのか?
ケーキが今ほど柔らかくなかった頃、フォークの端をナイフとして使っていた名残。
●ペットボトルには四角と丸があるのは何故?
炭酸飲料が入った丸と四角のペットボトルを振ると・・・
四角のペットボトルは一瞬で丸くなる。
丸いペットボトルは側面から底まで全部丸でできている。
そうすると中の炭酸飲料が膨張する力が均等にかかるので、強度に耐えられる。
四角いペットボトルは角は強いが側面は強くないので、中で炭酸が膨張する時、側面が耐え切れなくなり、膨らんでしまう。
ガスタンクは中に圧力をかけたガスが詰まっているので、丸の形以外だと爆発する可能性がある。
丸は外側と内側から均一に力が分散され、自然に重力が中心に向かう。
地球などが丸いのもそのため。


●コンビーフの缶詰は何故台形?
コンビーフは水分が非常に少ないので、円形の缶に隙間なく詰めることが難しい。
また中に空気が入ると、空気で酸化してしまい、肉が変色してしまう。
工場では、缶を逆さまにして広い方から狭い方へ詰めてゆき、隙間なく詰めることができる。
現在の技術では円柱のコンビーフ缶も作れるが、台形の方が取り出しやすいという利点もある。
●新聞の縁は何故ギザギザ?
輪転機、新聞などを高速で印刷する。
上から下りてくる新聞紙をローラーについているギザギザの刃で切り分ける。
もし真直ぐな刃だと、紙に押し当てた時、キレイに食い込まず、裁断した所が曲がってしまう。
そこでギザギザの刃を使うと刃の頂点から徐々に食い込み、刃の膨らみによってギザギザに切り分けられる。
●鉛筆は六角形だが色鉛筆は丸いのは何故?
黒い芯は焼いて硬くしてあるが、赤鉛筆は焼きが入っていないので柔らかく折れやすい。
そこでどこに力がかかっても均等に力を分散して、折れづらい丸い形にした。
黒い鉛筆は転がらないように六角形。


●100円ガスライターの真中の仕切りは何?
高温になるとガスが膨張して破裂する恐れがあるため、仕切りをつけ強度を出している。
●缶ジュースのプルトップが簡単に開くのは何故?
てこの原理を使い、少ない力で簡単に開くよう工夫されている。
開けやすくなった秘密・・・開け口が非対称になっている。
力を入れた瞬間、右側が開く、一気に開くのではなく、時計回りに徐々に開けてゆく。


●卓上醤油、50年間形が変らず販売されている理由は?
注ぎ口が60度にカットされており、液ダレさせない。
60度はやっと導きだされた特別な角度。
注ぐ時に小指が自然と上って、手を美しく見せる工夫もなされている。
最近は技術、材料が進歩し、新しいタイプがでている。
真空パックになっており、注ぎ終わると自動的に口がしまる。
醤油は空気に触れると酸化して風目が落ちるので、鮮度を保つため。
この真空パックは今までのものよりプラスチックの材料を約40%カットしてあり、究極のエコロジー。
●新型ファスナーは手袋をしていても簡単にしめられる、何故?
従来タイプは上からチャックの穴に入れてしめた。
新型タイプは横から入れられるようになっている。


心臓
心臓が弱っていると、あらゆる手術が受けられない?
心臓の危険信号を見逃さなければ、危険な病気に対処できる?
心臓血管研究所スーパーバイザーであり、心臓外科医の須磨久善先生、バチスタ手術(治療不可能と言われていた肥大した心臓の一部を切り取り、縫い合わせ、正常の大きさにする手術)に日本で初めて成功。
さらに心臓の弱った血管の代りに、胃にある血管を使ってつなぐバイパス手術の新たな方法に世界で初めて成功。


元気な心臓は、その人の握り拳の大きさと言われている。
平均して大体200グラムほどの大きさ。
一番鼓動を感じられるのは、左胸の少し下辺り。
1日に10万回動いている。
1度拍動すると80ccくらいを送り出す。
20秒くらいで体をぐるっと回って心臓に戻ってくる。
心臓は筋肉の塊、アスリートがするように鍛えれば筋肉がぶ厚くなり強くなる。


スペインTorrent-Guasp教授は「心臓は1枚のベルトでできている。」という斬新な発表をした。
教授によると心臓は筋肉のブロックだと思われていたが、筋肉のベルトでできていて、それがターバンのように巻き上がって心臓になっている。
ツイスト(ひねり)運動をしている。
絞り込むということが、血液を力強く押し出すパワーの源になる。
新しい学説として注目されている。


心臓を見て健康状態を知る方法とは?
体の中を時期の力で見るMRI、元気な心臓はハート型をしていて力強く動いている。
病気の心臓は大きく膨らみ、縮む力が非常に弱くなっている。
弁がきちんと閉まらなくなり、血液が逆流。
こうなると心臓は弱って心不全になる。
新しいタイプのX線を使ったCTスキャン、心臓と血管がキレイに見える。
血管が狭くなっているのも分かる。
以前は入院してカテーテル検査をしないと分からなかったが、今は外来で全部検査できる。


弱った心臓、自覚症状は?
軽く運動すると普通なら疲れないのに息切れがするとか、胸がドキドキドキドキと不整脈が出てきたり、場合によっては冷や汗が出てくる。
狭心症の場合、軽い運動しただけで、あるいは食事の後、胸がギューっと締め付けられるといった症状。

心臓の負担は季節によっても違う。
夏場、血管が狭くなっている人は、炎天下で運動して脱水症状になると血液が粘ってくる。
血が固まり狭くなったところを塞いでしまい、心筋梗塞になる。
夏場は喉が渇く前にこまめに水分補給することが大切。

心臓の音でいろんな情報が分かる。
正常な心臓の音、心臓に問題がある人の音、聞き比べると全く違う。
弁が壊れてしまうと雑音が聞こえる。
胸板が厚い、筋肉が分厚いと音が遠く聞こえる。
人によって音の強さも脈間隔も違う。


心臓が弱くなると手術の時、麻酔などの負担に耐えられなくなり、あらゆる病気の手術ができなくなる。
【最先端の治療技術】
狭心症とは心臓を養うための血管が狭くなる病気。
動脈硬化が原因で血管の壁にコレステロールなどがくっつき、最後には血の塊ができて蓋をする。
完全に血が通わなくなると心筋梗塞になる。
カテーテル治療、狭くなっている部分を風船で押し広げ、ステント(金属製)を残してくる。
すると狭くなってくるのが防げる。
腕や手の血管に梁を刺してそこから細い管を入れるので傷はつかない。
全身麻酔も必要なく、目覚めたままで治療できる。
痛みもほとんどない。
しかし金属アレルギーの人など、全ての人にできる手術ではない。


そこで誕生したのが心臓バイパス手術
胃の血管を使ってバイパスする。
心臓を包む血管が狭くなり、詰まってしまうとその先の部分に血液が通わない心筋梗塞になり、心臓の一部分が機能しなくなる。
そのため胃からの血管や胸からの血管を持ってきて、詰まってしまった部分の先につなぐことで、血液が通い、血流不足を改善する。


バイパス手術用のセット、1本何10万円もする。
全部そろえると数100万円。
手術用の糸や針、縫う血管は直径約1〜2ミリ。
大動脈の手術をする時に使う人工血管、足の血管を倍パスする人工血管など、様々なサイズ、材料の人工血管が開発されている。


1996年12月、須磨先生により、日本で初めて行われたバチスタ手術、メロンほどの大きさまで肥大し、放っておけばやがて不全を起こす病気に対して行われる。
その方法は、肥大した心臓の一部を切り取り縫い合わせることで、心臓を小さく正常の大きさに戻すというもの。
神の手を持つと言われる先生は、わずか20分で手術を成功させる。


【簡単にできる心臓トレーニング方法】
元気な人の場合、有酸素運動、少し息がはずむ、うっすら汗をかく程度の運動を続けてゆくと心臓のトレーニングになる。
ちょっと速めのジョギングやウォーキングを30分以上行う。
夏場は朝夕の涼しい時間に行った方がよい。
プールなどで水中歩行することも良い有酸素運動。
無理せず息が切れてきたところで休息をはさんだほうがよい。

衝撃波
衝撃波とは音よりも速く伝わる空気や水の圧力の波。
水槽の中で衝撃波を起こす実験、ビール瓶をセット、ひも状の爆薬を一気に爆発させることで衝撃波を作り、ビール瓶を割る。
超ハイスピードカメラ(100万分の1秒撮影可能)でしか捉えることができない。
爆発の瞬間、爆薬の威力より先に衝撃波がビール瓶に到達し破壊、続いて爆薬の威力でビール瓶は粉々に飛び散った。

近年衝撃波をコントロールし、応用した技術が開発されている。
医療現場では体内の結石をメスを使わず衝撃波で壊す結石破砕治療が実用化されている。
これは人体に害のない長微弱の衝撃波をあて、体内の結石を砕くというもの。
将来体内の血栓を衝撃波で壊し、心筋梗塞などの病気も治療できるようになるという。
熊本大学工学部、伊藤繁教授は、衝撃波をコントロールした調理器具を発明。
爆破鍋、雷を水の中で発生させるというもの。
リンゴを入れて点火!
外側は原形をとどめているが、中身はまるでスポンジのようにグジュグジュ、ストローもささる。
爆破鍋を使うと、食材を一瞬にして柔らかくするなど、調理時間を短縮できる。


辛味
何故辛味は後から感じるのだろうか?
人の味覚とは、酸味、苦味、塩味、甘味、旨味。
辛味は通常の味覚とは異なる感覚。
唐辛子の辛味=痛みの刺激。
唐辛子の中のカプサイシンが味覚ではなく、痛みの神経を刺激する。
普通の味は舌の表面に感じる部分(味覚神経)があるため、すぐ感じる。
辛味=痛みを感じる部分(三叉神経)は舌の少し奥まったところにあるので、少し遅れて感じる。
インド人は辛さに鈍い。
東京都新宿区インド定食ターリー屋では世界1辛いBhut Jolokiaを激辛カレーのトッピングに使用している。
インド原産で、ギネス記録で世界一辛い唐辛子として認定された。
辛さはタバスコの約200倍。
唐辛子の辛味には乳製品が最適。
インドでは野生のゾウ撃退のため、Bhut Jolokiaをすりつぶして柵に塗ったり、軍部が暴動鎮圧のためにジョロキアを使った催涙兵器を開発予定。


不思議な生き物
●バットフィッシュ(Red-lipped Batfish)、アンコウの仲間、ヒレで張って歩く。
正面から見るとオッサンのような顔???


●ゾンビ貝(ヤマグチバイ貝)
普段は砂の中に潜っているが、死骸の臭いをかぎつけると一斉に這い上がってくる。
味は美味らしい。


サメのまぶた
サメの眼は丸く、ひとみは丸かったり、ネコの眼のように縦やあるいは横に細長かったりする。
瞬膜とよばれる瞼(まぶた)があるものとないものがあり、この瞼は下から眼を覆うように出てくる。
サメが食いつく時に白目をむくといわれるのはこの瞬膜のせい。
おそらく眼を守るための適応。
サメの眼にあるレンズは球形で、人間の眼のレンズのように形が変わって焦点を合わせるタイプではない。
硬骨魚類ではこのレンズを動かして焦点を合わせることが知られていますが、サメではまだ確認されていない。
遠視気味ではないかと推定する学者もいる。
さらに、サメの眼にはネコの眼にもあるタペータムというものがあって光にたいする感受性を増加させ、まっ暗なところでもはっきり物を見ることができると言われている。


サメは人間にはない感覚器官を2つ持っていて、いわば7感あるということになる。
この残りの2つの器官は、振動や圧力の変化を感知することのできる側線と生物の微弱な電流や海流、地磁気を検地することのできるロレンチーニ器官。
サメには内耳があり小さな管で外に通じている。
サメが餌を探すのに最も重要な役目を果たしているのは、おそらく聴覚。
サメは魚が傷ついてもがいている音を1キロも2キロも離れたところから気づいて近づいてくると言われている。
サメは吻端(頭の先端)のお腹側に鼻の穴が2つ開いている。
サメの嗅覚は大変するどく1滴の血を百万倍以上に薄めても充分臭いをかぎつけることができるといわれている。
サメは潮流や風で吹き流された臭いをたどって、大きく蛇行しながら獲物に近づく。

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