ドキュメント鑑賞☆自然信仰を取り戻せ!

テレビでドキュメントを見るのが好き!
1回見ただけでは忘れてしまいそうなので、ここにメモします。
地球環境を改善し、自然に感謝する心を皆で共有してゆきたいです。
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古代の宇宙人 黄金と宇宙人
コロンビア、Guatavita湖、古代に隕石が墜落したという円形の湖が、山々が囲む。
人類が大規模な探索を行ってきた場所でもある。
探すのはエルドラド、失われた黄金郷。
16世紀以降、財宝ハンターたちが行ったエルドラド探索は、困難を極めた。
南米のどこかに誰も知らない宝が眠ると伝える伝説は、星の数ほどもあるが、今もなお、エルドラドは発見されていない。
こんな夢のような場所が何世紀もの間、探検家に見つからずにいたのはなぜなのだろうか?

Gregory Deyermenjian(Paititi Explorer)「エルドラド伝説は、グアタビータ湖から生まれたとされている。
ここは先住民ムイスカ族、別名チブチャ族の土地で、首長制がとられていた。
インカ人やアステカ人ほどの高度な文明ではなかったが、ここに存在した文明には、多くの金があった。
ムイスカ族の土地の南半分を治めた酋長は、ジップという名だったが、16世紀にここにきたスペイン人征服者たちは、母国語で黄金の人を意味するエルドラドと呼んだ。
ムイスカの神聖な儀式を見た後につけられた名前である。

儀式の中でジップは、船でグアタビータ湖の中ほどまで漕ぎ出すと、湖底に住む神に黄金のささげたと言われている。
酋長のジップは、樹脂を体に塗って全身に金粉をまぶしたと言われている。
その後湖に飛び込んで金粉を洗い落とす。
この金粉が湖の底に降り積もっていたことや、金でできた神への捧げものが投げ入れられていたことから、コロンビア周辺では、エルドラド伝説が語られるようになった。
イギリス人土木技師のパートレイノールズの指揮のもと、グアタビータ湖の探索が行われた。
そして1912年には、黄金の異物を含む20000ドル相当の宝物が見つかったと発表された。
ノールズは、これがほんの一部であると信じて疑わなかったが、この時に発見された遺物は、ムイスカ族の酋長の伝説が真実であった証ではないか?
だとすれば神と呼ばれ、湖底に住んだ者たちは、何者だったのだろうか?

David Childress(Author,Technology of the Gods)「異星人が地球に来たのは木々を掘るためだったという研究者が数多くいる。
ゼカリア・シッチンは、宇宙人は故郷の星を守るために黄金が必要だったといった。」
Derrick Pitts(Chief Astronomer The Franklin Institute)「実際に金は宇宙探査と天文学にとって大変重要なもの。
それは金が不活性の物質で、どんな物質とも化合しない金属だから。
他にも伝導性がすばらしくよいという重要な特性ももっている。
そして最後にもう1つ忘れてはならないのが、金は赤外線エネルギーを反射するのに適した物質であるという点。
恒星やそのほかの発熱体が発する高熱から、宇宙船を守るためにも使われる。」

宇宙全体でみても金は非常に希少な元素。
金を探して宇宙人が地球にたどりつくことなど、ありえるのだろうか?
古代宇宙飛行士説を唱える者たちは、その可能性があるばかりか、古代に記された文章や伝説の中に、証拠が残されている。
その1つがペルーの南東地域近辺に位置すると言われた古代インカ帝国の伝説の都市パイティティだ。

探検家グレゴリー・ダイアメンジャンは、ペルー人探検家のパウリーノ・ママーニと共に遠征を組み、黄金郷を求めて1984年以来、15回以上におよぶ探索を行ってきた。
「パイティティに続くと伝説に語られる石造りのインカの道を私たちはたどり続けている。
この地一帯が、苔やジャングルに覆われて、川にも行く手を阻まれるのは、大地の恵みパチャママが何かを隠しているからそうだ。」

ダイアメンジャンたちの対策は、黄金の囲い場を意味するインカの聖地クスコのコリカンチャから始まったと言われる。
1559年にスペインの征服者たちはサントドミンゴ教会を建てるためにコリカンチャを取り壊した。
そして今もこの教会は、古代インカの神殿遺跡に囲まれながら、クスコの中心に立っている。
金で覆われた巨大な祭壇が見どころである。

しかしスペイン人の記録によれば、コリカンチャはこの教会が見劣りしてしまうほどに素晴らしく、黄金の像があちこちに置かれていただけでなく、純金の薄板で覆われていたという。
Brien Foerster(Author,A Brief History of The Incas)「金は太陽の汗と考えられ、インカ人にとって重要なものだった。
太陽はインカの最高神、したがって太陽の汗は手にすることのできる最も神聖なものを意味した。」
古代宇宙飛行士説では、かつてコリカンチャにあったプンチャウと呼ばれる金色に輝く太陽神の像に、宇宙人がインカ人と接触した証があるかもしれないと考える。

Giorgio A.Tsoukalos「コリカンチャに巨大な金の円盤があったことはよく知られている。
この金の円盤にまつわる古代信仰があるのだが、それはこの円盤が空から降ってきて、インカ帝国の皇帝アタワルパの目の前に落ちたというもの。
伝説によれば、皇帝は空の神々と接触があったようだ。」
かつてこりにか保管された巨大な金の円盤は、宇宙から来た者たちを称えるために造られたのだろうか?
それに宇宙人の目的が金の採掘であるなら、これはパイティティが近くに存在する証でもあるのだろうか?

1533年に、スペインはクスコの町を襲撃し、インカの金を求めてコリカンチャの神殿を破壊した。
しかし伝説によれば、その時すでに金は、30kmあまり北西の町へ移され、近隣の町に沈められていたという。
「スペイン人の一行がクスコに到着する前に、神官がそれに気づいた。
人々は神殿から金をすべて持ち去って、湖に投げ入れた。
いまだにその財宝は見つかっていない。
現在の価値にして数十億ドルに上ると言われている。」

さらに不思議なことにこの周辺の空では、不思議な物体が頻繁に目撃されている。
それが何百年もの間、続いているという。
船が湖の上を飛ぶだけでなく、水の中に入っていくと地元住民がいう。
直径約6mの宇宙船がちょうど入るほどの渦が発生して水面に穴が開くという。
そこに謎の船が入ると渦巻きは消える。
その後船は同じようにして水から出てくる。

東京帝国大学、1924年3月、原子力エネルギーに関する初期の実験を行っていた長岡半太郎教授は、パラフィンオイルの長岡誘電層の中で水銀の同位体に15満ボルトの高電圧を4時間もかけ続けていた。
実験の目的は、水銀の原子核から水素原子を取り出し、別の元素を作り出すことだった。
その元素とは金である。
実験は成功し長岡教授は何世紀も科学者たちが得ることのできなかった賢者の石、つまり黄金を作り出す秘法を見つけた。
A.J.SHAKA,PH.D.(PROF.CHEMISTRY,UNIV.OF CALIFORNIA,IRVINE「賢者の石とは錬金術の中で使われる概念。
鉛など手に入りやすい金属を黄金へと変える魔法のような物質のことを意味する。」
何千年もの間、何人もの王が、ありふれた金属から金を作り出す伝説の装置を求め、科学者と錬金術師もその発明のために何百年も費やした。

アイザック・ニュートンでさえ、17世紀には賢者の石の神秘に取りつかれていた。
しかしイギリス王室は増産によって金が暴落することを恐れ、錬金術を行う者に死罪を科した。
1924年に長岡教授の実験が成功するまでは、科学者の大多数が別の金属から金を作り出すことなど不可能だと断言していた。
しかし注目すべき点が明らかになると、態度は一転する。
MICHAEL DENNIN,PH.D.(PROF.CHEMISTRY,UNIV.OF CALIFORNIA,IRVINE)「自然界では恒星が超新星となる時の核融合によって金が作り出される。
その大規模な爆発のために生成された金が宇宙全体にばらまかれる。
現代は核反応が制御できるようになったので、金を造ることは原理としては可能。」
カリフォルニア大学Irvine校では、A.J.SHAKA博士によって錬金術の実験がほぼ毎日行われている。
「このチューブに水銀を入れる。
水銀は原子百分率が0.15%の少量の同位体を持ち水銀196と呼ばれる。
中性子線を照射して、原子核を崩壊させると、23時間ほどで金に変わる。」

原子炉内の中性子を吸収して反応を抑えるのが制御棒、これを引き上げて原子炉の質力を最大にすると、驚異的な速さでエネルギーが生成される。
「ある質量の物質から作り出せる電気などのエネルギーは、核反応を使えば他の方法を使用した場合の、およそ1000万倍、もしくはそれ以上を生産することができる。」

錬金術の発見は、科学にとって貴重ではあるが、皮肉にもそれは富を生み出すものではない。
「この原子炉で1日照射したとしても、得られる金は0.3セントほどの価値のものでしかない。
原子炉の使用には1時間当たり200ドルかかるので、これでは割に合わない。」
現代の錬金術は、莫大な量の金を製造するにはあまりにも効率が悪すぎる。
これに対して古代宇宙飛行士説では、現在のものより、さらに素晴らしいテクノロジーが古代エジプトで使用されていたかもしれないと考える。
ROBERT BAUVAL(CO-AUTHOR,BLACK GENESIS)「金が神聖な金属、つまり神聖な元素であるという考えは、古代エジプトにおける信仰の根底にある概念。」

AIDAN DODSON,PH.D.(EGYPTOLOGIST,UNIVERSITY OF BRISTOL)「金は神の肉体だった。
古代のエジプトは最大の金の供給量を誇っていたと思われる。
バビロンやアッシリアの王たちからエジプトの王にあてた手紙が残されているが、中には金を請う内容のものが多々ある。
例えば、ファラオよどうかたくさんの金をお送りください。
あなたの国ではシリアクタのようにあるのですから、などと書かれている。」
どうして古代のエジプトは周辺の国よりも豊富に金を持っていたのだろうか?
またなぜ金をこの世のものではないと考えたのだろうか?
古代宇宙飛行士説では、エジプト人は金を製造できた可能性があるとしている。
そのために人知を超えた力を借りていたかもしれないというのだ。
DAVID CHILDRESS「工学専門家のクリストファー・ダンは、ギザのピラミッドが巨大な装置で、内部ではなんらかの化学反応が起こっていたのではないかと言っている。
ギザの大ピラミッドが他の元素から金を生成するのに使用されていたかもしれないのだ。」
CHRISROPHER DUNN(AUTHOR,THE GIZA POWER PLANT)「青写真に記された内部の通路や部屋、シャフトの配置を実際に見てみると、ギザの大ピラミッドが墓として使用されていたとは思えない。
建築制度の高さ、王妃の間や大回廊へと続く精緻の石積み、また王の間に使われた何千トンもの花崗岩は、ナイル川を800km以上も下って運ばれている。
ここは何か特別なことを行う場所だったのではないかと考えずにはいられない。」

1936年エジプト、ギザ台地、3000年以上の間、スフィンクスの体は、砂の下に埋められていたという。
しかし11年を発掘に費やしたエジプト人考古学者の手で、とうとうこの像の全容が明らかになった。
全長73.5m、高さ約20m、世界最大で最古の1枚の岩でできた石造だ。
さらに驚くのはその形状、スフィンクスは人間の頭を持ち身体はライオンという姿をしている。
この像が造られたのはカフラー王の時代、つまり紀元前2500年頃であるとエジプト学者たちは考えている。
だが、それよりもはるかに古いものだと主張するものがいる。
ROBERT BAUVAL(CO-AUTHOR,BLACK GENESIS)「浸食状態からみて、もっと古いものだと思われる。」

このような奇妙な石像が造られた時代や理由に関して、学者の意見は一致していない。
しかし古代宇宙飛行士説では、宇宙人が存在した証がこの像に残されていると考える。
JASON MARTELL(AUTHOR,KNOWLEDGE APOCALYPSE)「古代シュメール文明や古代エジプト文明の碑文には、半人半獣のスフィンクスについて刻まれているが、結合されている動物も、その度合いも様々。
なぜこのような怪物が記録に残されたのかを考えなければならない。
宇宙人がここに訪れて、その姿に似せて人間を作り出したことが多くの古代文書に書かれていると考えるほうが、論理的にもつじつまがあう。」
GEORGE NOORY「今は亡きゼカリア・シッチンは、太陽系の外にある惑星の住人アヌンナキという者たちが金の採掘のために地球にやってきたと考えていた。
アヌンナキは採掘作業を嫌がって当時この惑星に存在した生物を遺伝子操作によって人類に作り替え作業員にしたという。」
スフィンクスは古代異星人が行った、遺伝子操作の証なのか。
宇宙人が金を採掘するために人間と動物を遺伝子操作によって作り替えていたのなら、この巨大な構造物は、かつて金をしまう倉庫だったのだろうか?
エジプト人考古学者がスフィンクスを発掘し始めたとき、彼らが本当に捜し求めていたのは金ではなかったか。

ギザ台地周辺では何世紀にもわたって秘密の部屋やシャフト、狭いトンネルが発見されている。
スフィンクスの裏側にギザ台地を走る地下通路が発見された。
通路は何本にも枝分かれするが、どこへもつながっていはいない。
近年は地球レーダ探査が行われるようになって、スフィンクスの周囲に地下空洞がいくつも存在する証拠が得られている。
それだけでなくスフィンクスの下に、秘密のトンネルや部屋があることの証が初めて得られた。
憶測や仮説や言い伝えなどではなく、科学的観点からみて強力な手がかりとなるもの。
もはやギザ台地の下に文津の地下通路があるのかではなく、ここに入るのができるのかという問題になっている。
ここにはたいへん重要なもの、おそらく科学を覆すような異星人に関する何かが残されているのではないろうか。
スフィンクスの下にあるという空洞に、ただの金ではなく、古代の異星人が採掘した金が納められているなら、そこには財宝以上のものがあるのではないか。
古代宇宙飛行士説をとなえる者たちは、スフィンクスの足の下に巧妙に隠された秘密の保管庫があると信じている。

保管庫の年代は、なぞの大陸アトランティスが沈んだ頃にまでさかのぼる。
古代文書によれば、12000年前のことであるという。
またアトランティスには宇宙人が住んでいて、積み上げた英知のすべてを納めるための保管庫を必要としていたという。
William Henry(Author/Investigative Mythologist)「かつて神が持っていた金を使用した技術が納められていると考えている。
これは誰がどうやってピラミッドを作ったのかを知る手がかりとなるだろう。
またここには宇宙への入り口があるように思える。」
もしこの保管庫が実在するなら、そこに納められた地球外生命体の知識が古代の巻物にではなく、金に記されていた可能性はないのだろうか。」
Michael Dennin,PH.D.(Prof.Chemistry Univ. Of California,Irvine)「金は驚くべき金属で、最も優れた伝導体でもある。
電子応用の分野で使われる導体には、伝導性のみならず、腐食しないことが求められる。
なので非常に高品質で耐久性のある電子機器が必要な時には、金が使われる。」

古代人の知るこの貴金属が持つ秘密は、金と一緒に納められているのではなく、金自体に記憶させられているのだろうか。
1953年1月29日フランスRennes-le-Chateau、マリー・レナルノーという衰弱した85歳の女性が死の床にあった。
遠い昔から守られた莫大な財宝についての秘密を明かす、そういった後脳卒中に襲われ、秘密もろともこの世を去った。

レンヌルシャトーに隠された莫大な金に関する伝説は古く、5世紀にまでさかのぼる。
西暦410年に西ゴート族として知られるゲルマン人がローマに侵入、略奪の限りをつくした彼らは、財宝を持ってこの地にやってきたという。
そしてその200年後にこの土地を離れる際には、財宝の一部を残していったとされている。
西ゴート族は死者と共に宝物を埋葬することで知られていたので、レンヌルシャトーに金が埋まっていると言われるようになった。

1891年ベランジェ・ソニエールという名の若い教区司祭が教会の修復を行っていた際、何かを発見し、ほぼ一夜にして大変な資産家となったことが語り継がれている。
David Childress「ソニエールが手に入れた宝は、この教会の下にあったいくつもの地下墓地カタコンベに納められた莫大な財宝の一部であったと考えられる。
ここのカタコンベは古代に造られたものだった。
またこの地域には西ゴート族が使った洞窟があると言われている。」
ソニエール神父は偶然財産が転がり込んだだけと主張した。
しかし教会の下のカタコンベに納められたさらに多くの金を精力的に探していたと多くの者が考えられている。

しかし金の発見よりもさらに謎に包まれているのはその後の神父の行動だった。
その奇行の一端は教会のデザインにも表れているという。
ソニエール神父は古代文書を探し回って錬金術に使われる錬成ジンについて調べていたようだ。
そのあと神父はある計画に沿って教会を建て始めるが、その計画とは神と接触するというものだった。

神父はある種の金属を変化させればそれが可能になることを知っていたのではないか?
謎の財宝を手に入れた経緯を神父が打ち明けた相手は、家政婦のマリー・レナルノーただ1人だった。
ソニエールが扉の上に掲げた言葉は100年の間物議をかもしている。

それはラテン語で書かれた文章で、ここは恐ろしき場所かなという意味に間違って解釈されることが多かったが、実際には旧約聖書の創成記から取られた言葉。
聖書の中でヤコブは天へと続く梯子の夢を見てその地を神と人を結ぶ場所だと考えた。
旧約聖書の中ではこの文書の訳は、畏れ多い場所となっている。

レンヌルシャトーは別世界への入り口かもしれない。
宇宙への入り口がある強大なパワーを持つ地でないのなら、ソニエール神父があのような文書を入り口に掲げることなど考えられない。
レンヌルシャトーにはUFOが出現するという証言もある。
ここでタイムスリップをした人もいたし、悪魔と遭遇したという話もある。
この小さな村には別世界への過去へと、もしくは別次元へとつながるトンネルがあるのだろうか?

スコットランド、Rosslyn Chapel、エジンバラから10kmあまり南にあるロスリンの村、西暦15世紀、村を見下ろす丘の上にこの教会は建てられた。
この教会の中には秘密の部屋がある。
失われた素晴らしい遺物が隠されていると言われ、その中にはテンプル騎士団の財宝も含まれている。

全員が戦士で修道士だったテンプル騎士団は、十字軍遠征の時代にエルサレムの神殿の丘に拠点を置いた。
また多くの宗教的遺物を持っていたとも噂されていた。

世界で最も貴重な聖なる金の遺物と言われる聖杯もその1つで、これは最後の晩餐の時にイエスが使ったとされる杯である。

テンプル騎士団はソロモン王の神殿跡地を発掘して数えきれないほどの金の遺物が納められた秘密の洞窟を発見したと言われている。
ソロモン王の財宝は神殿が破壊された時に突然消え失せている。

騎士団が財宝をスコットランドに運んで、ロスリン礼拝堂に埋めたとも言われている。
ロスリン礼拝堂はソロモン王の神殿を再現したもの。
この礼拝堂は聖杯やその秘密を納めるべくウイリアム・シンクレア教によって建てられた、まさに聖杯神殿だった。

当時ここより優れた象徴的表現が施された建造物はない。
この建造物が聖杯の隠し場所を示す謎の言葉や記号で飾られていると考える者もいる。

ロスリン礼拝堂の壁に見られる数多くの彫刻の中にグリーンマンと呼ばれるものがある。
これは成長と再生をつかさどる異教の神。
この不思議な顔の彫刻が礼拝堂に聖杯が隠されている手がかりだと信じる者もいる。

「グリーンマンには2つの意味が込められている。
礼拝堂のあちこちに110体以上もある。
東から西へとグリーンマンを追ってゆくと、時間と共にこの彫刻が変化していることがわかる。
東側の壁に彫られたものは比較的新しいもので、西に行くにしたがって年代が古くなっている。」

聖杯がロスリン礼拝堂に納められたのなら、どこに隠されたのだろうか。
徒弟の柱と呼ばれる飾り柱の中にあると信じるものもいる。
実際に取り出そうとしたものも1人いた。
斧を持って礼拝堂に忍び込み、徒弟の柱の中に聖杯が隠されていると信じ、柱を叩き割ろうとした。

聖杯とは何だろうか。
人類の過去と未来を握るものなら、これはDNAだと考えらないだろうか。
実際に徒弟の柱はDNAの二重らせん構造そっくり。
これらの謎の彫刻が示すのは最後の晩餐の際にイエスが使用したとされる聖杯は単なる杯ではなかったということではないか。

ドイツの詩人ボルハム・ボン・エッシェンバハは、聖杯が宇宙からもたらせたものだと言っている。
聖杯の描写に点滅する赤いランプがついていたという表現をよく耳にするが、テンプル騎士団はハイテク機器か何かを持っていたのだろうか。
古代において聖杯は冥界のもの、あるいは別世界のものとイエスをつなぐものだったのだろうか。
聖杯が見つかれば人間の異星人との関係も明らかになるのだろうか?
そうだとすれば、金の神殿と呼ばれる謎の建造物が存在するペルーや、エジプト、フランスには金よりもはるかに価値のある宝が眠っているのかもしれない。
金とは、人間と別世界の者たちとを結びつけるものだったのだろうか。
おそらくは何千年も前に別の星から地球にやってきた我々の祖先を知る手がかりとなるものだろう。
しかし古代の宇宙人が太陽系第三惑星、つまり地球を訪れた理由の1つが金の探索だったとすれば、宇宙人はさらなる金を求めているのだろうか。
そして地球に再びやってくるのだろうか。
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Aliens and Sacred Places 宇宙人と聖地

ここはおそらく人類にとって最も神聖な地といえるだろう。
世界の主要な3つの宗教、キリスト教、ユダヤ教とイスラム教の信者が皆この地を敬い崇め奉る。
まさに聖地と呼ぶのにふさわしい場所。

Jerusalem旧市街、神殿の丘、古代の城壁に囲まれた台地は数千年前から聖なる場所と考えられてきた。
Robert Mullins PH.D.(Archaeologist)「ここがユダヤ教とキリスト教にとって神聖である訳は、創世記の22章でアブラハムが息子イサクを縛って生贄にしようとした場所だから。
またここにある岩のドームには、イスラム教開祖のマホメットが天界に旅立った時に足跡を刻んだという岩がある。」

Philip Coppens(Author,The Ancient Alien Question)「神殿の丘には、3つの宗教にまつわるものが混在している。
それぞれ違った説話があるが、重要な場所であることに間違いない。
その起源は、神が地に降り立ったという点で共通している。
以来ずっと、ここは死後の世界か、神の世界と更新するために場所だった。」

毎年何百万人もの巡礼者が礼拝のために神殿の丘を訪れる理由は一体何なんのだろう?
紀元前10世紀に、ダビデ王がこの地を巨大な神殿の建設地に選んだ訳は?

Mrvin Mewer,PH.D.(Prof.of Religion Chapman University)「ここはイスラエルの王となったダビデが攻め落とした地だった。
神の祝福があった土地でもあるし、イスラエルの民に神が与えてくれた聖なる土地という意味合いが当時からすでにあった。」

Michael Coogan,PH.D.(Leturer,Harvard Divinity School)「聖書によればダビデはエルサレムに遷都した後に、神の住まう家を建てたがっていた。
しかし最初の神殿を建設したのは、その息子ソロモンだった。」

紀元前957年、ダビデの息子ソロモンが建設した神殿には、契約の箱が置かれたと言われている。
ユダヤの紙が与えし掟、十戒が刻まれた石板がこの箱に納められている。
しかし古代宇宙飛行士説を唱える者の多くが、契約の箱は異星人に与えられた強力な装置であるという。

Erich Von Daniken(Author,Chariots of the Gods?)「聖書には契約の箱のことがつづられている。
神はモーセに聖なる山に来るように命じて、この箱のつくり方を伝授する。
この箱がその後どうなったかは聖書に記される通りで、たいへん奇形なものだった。」

R・M「ソロモン王は契約の箱を神殿の奥深く、位の高い祭祀だけが入ることを許された場所に安置した。
本殿の内部に作られた内洞だ。」

ユダヤ教の聖典・タルムードによれば、ソロモンの指輪と呼ばれる特別な記号が刻まれた魔法の指輪を持っていたという。
この記号こそ、ダビデの星。

この指輪は普通の人間なら、到底なし得ないことをも可能にするものだった。
ソロモン王は指輪の力で悪魔を操ることもできた。
こうして力を得たために、それまでは不可能だった建造物の建築が可能になったとも言われている。
イスラム教の聖典によれば、ソロモンは緑の絹でできた魔法の絨毯を持っていた。
それは玉座と兵士が乗れるほど大きなものだった。
Giorgio A. Tsoukalos(Publisher,Legendary Times Magazine)「魔法の絨毯なんてものが存在するはずがない。
私たちの祖先は、この話の中で何を言い表そうとしていたのだろうか。」

David Childress(Author,Technology of the Gods)「ソロモンはどうやって不思議な力を得たのだろう。
宇宙人と接触して空を飛び回るための宇宙船を与えられていたのだろうか?」
ソロモンの神殿の複雑な形状やデザインを研究したアイザック・ニュートンでさえ、ソロモンが秘密の知識を持っていたのでは、と疑った。
Bill Birnes,J.D.,PH.D.(Author/Publisher,UFO Magazine)「たいへん高度な建築技術が駆使され、光の取り入れ方にも正確な天文知識が繁栄されている。
この神殿にみられるデザインとレイアウトを可能にしたソロモン王時代のテクノロジーは、一体どれほどのレベルだったのだろう?
現代の学者や建築家たちでさえ首をかしげるばかり」

「実際旧約聖書のソロモンの契約には、ソロモンが人間の労働者や建築家を使っただけではあく、悪魔にも手伝わせたと書いてある。
悪魔は特に力が強かったため使ったようだ。」
契約の箱に備わった高度なエネルギー装置がソロモンに莫大なパワーを与えていたのだろうか?
その装置とは、もしや宇宙からきたものではなかったか?
ソロモン王の神殿は紀元前6世紀、バビロニアに攻め入られた際に焼き払われた。

だがその跡地には、ヘロデ王によって西暦1世紀、第二の神殿が造られた。
新約聖書によれば、第二の神殿は、イエス・キリストの人生に深くかかわるものであったという。
イエスはこの神殿の境内から物売りを追い出し、その後ユダヤ人とローマ人の両方の手によって磔となり命を落とした。
そしてここは蘇ったイエスが体ごと天に上った場所とされるオリーブ山の近くでもある。
Rev.Barry H.Downing(Author,The Bible & Flying Saucers)「イエスの物語には、弟子たちが、イエスが天にめされても、いつか戻ると信じていたと記されている。
このような話も含めたうえで、地球外に生命体が存在することを聖書は認め、信じるよう説いているとも解釈できる。」

古代宇宙飛行士説がいうように、イエスはソロモン王と同じく、別世界のものとつながりがあったのか。
Rev.Michael J.S.Carter,M.Div.(Author,Alien Scriptures)「異星人との遭遇に関して、天に昇るという話がよく出てくる。
新約聖書にもイエスが昇天した話がある。
このような話は雲の上で待つ宇宙船へと人間を持ち上げ、引き上げる装置を地球外生命体が持っているという裏付けともなりえる。」

第二神殿も、西暦70年にローマ軍によって、炎上、破壊される。
そのおよそ600年後にこの地を侵略したペルシャ人は、崇高なる聖書とイスラム教徒が呼ぶ、岩のドームを、ここに建設した。

岩のドームは、露出した岩の岩盤に覆いかぶさるように建っている。
イスラム教の教えでは、神の導きでこの岩からマホメットが天に昇ったとされている。
実際にこの岩には穴が開いていて、マホメットが、どこから天に連れて行かれたかが分かる。
天でアラートであって啓示をうけた後、マホメットは再び同じ場所に戻ってくる。
なのでイスラム教徒にとってここは、重要で神聖な場所。

コーランによれば、マホメットが天に昇る際に乗った岩は、聖なる岩と呼ばれている。
宗教学者たちは、この岩の上にはかつて、契約の箱が安置されていたと考えている。
ソロモンの神殿の内洞が建っていたというのだ。
神殿の丘は、古代に存在した、銀河をつなぐトンネルの入り口ではなかったかと考える専門家もいる。

宇宙を旅した生物は、何万年も前に、本当にこの地に降り立ったのだろうか。
神殿の丘は、古代人が異星人と初めて接触した場所だったのだろうか?
この地の持つ宗教的意味が、地球外生命体との関連を裏付けとなる証となるのだろうか?

中東の要、サウジアラビア、紅海から80kmほど入った内陸に、イスラム教のもっとも聖なる都市、メッカがある。
西暦570年に、予言者でイスラム教の開祖であるマホメットが生れた場所である。

Michael Coogan,PH.D.(Lecturer,Harvard Divinity School)「当時のメッカは、商業の中心地だった。
インドや、さらに遠くのアジア諸国から持ち込まれた商品は、陸路で北部のダマスカスに送られた後に、海路でエジプトまで運ばれた。
この商業都市で予言者マホメットは最初の啓示を受けた。」

メッカの中心には、イスラム教徒にとって最も神聖な場所アルハラムモスクがある。
このモスクの中心部に位置するのがカーバ、高さ13m、幅10m、花崗岩でできた立方体の神殿。
イスラム教の教えによると、カーバは紀元前およそ2000年に、イスラムとユダヤ、両方の祖となった人物アブラハムによって造られたという。

アブラハムには2人の息子がいたと聖書には書かれている。
最初の息子はイシュマエル、そして次男がイサクだった。

このイシュマエルとアブラハムが一緒にこの地を訪れ、カーバを造ったと言われている。
金の刺繍が施された黒い絹で覆われたカーバは、イスラム教で最も神聖な建造物。
毎年およそ300万人のイスラム教徒がカーバへ巡礼に訪れる。
この巡礼はハジと呼ばれる。

イスラム教徒にとっては、可能であるなら一生のうちに少なくとも1度はメッカ巡礼、つまりハジに行くことが義務となっている。
これはアブラハムとイシュマエル、マホメットの足跡をたどり、それを象徴した儀式に参加することを意味する。

メッカを訪れる巡礼者にとってここで行われる儀式の一番のメインとなるものは、カーバを取り囲む集団の列に参加して、この神殿の周囲を反時計回りに7周歩いて回ること。
この立方体の建物の一角には黒い石が埋め込まれている。

この石がどこから来たのかは不明だが、伝説では天使によって空からもたらされたとされている。
そして現在の場所に保管されるようになった。
この石がマホメットの時代よりはるかに前から崇拝されていたという説がある。
古代に落ちた隕石だという。
古代の人々にとっては、隕石は神からの啓示と映ったことだろう。
巡礼でカーバの周りを7周歩く際に、できることならこの隕石に口づけするのがよいと考えられている。
しかし今は巡礼者の数が多すぎるので、それが不可能になっている。
そこで現在の慣習としては、石に口づけできないのなら、石の方に向いて敬意を示せばよいということになっている。

この石が天国から落ちた隕石で、代々守られてきたのだと人々は信じている。
隕石の一部はかけて破片となったが、銀で縁取りされているおかげで、破片も全て失われず保存されている。
黒い石は本当に隕石なのだろうか?
そうだとすれば、イスラム教の教えに語られるこの黒い石の起源は、どう解釈できるだろう?
カーバは、ある種のエネルギーを放出して、人々にエネルギーを与え、精神性ある健康を高めるという説がある。
おそらくこれは、黒い石が隕石で、宇宙から来たことに関係している?
イスラム世界において、この黒い石は、あまりにも神聖視されているため、科学的分析にかけつことなど、到底許されることではない。

E.Deniken「大天使ミカエルは、地上に降り立った。
そしてアブラハムに文書に記された何らかの情報を与える。
その情報は石の中に封印された。
その石が現在現在カーバにある天より賜りし石なのだ。」
古代の人々は、神の教えを得るためか、天を読む能力に長けていた。
黒い石を読むこともできたかもしれない。
研究者によれば、カーバの壁面はちょうど、竜骨座のカノープスの上る方向と、月の軌道、夏至と冬至の太陽の方向を向いているという。
しかし古代の人々はどうやってこのような天文学の知識を得たのだろうか。
Jason Martell(Author,Knowledge Apocalypse)「太陽の周りを惑星が回るように、カーバの周りを回巡するようになったのは、当時の惑星の配列を人々が知っていたのかもしれない。
G.Tsoukalos「イスラム教には、翼をもつ天使が、光を放ちながら強風と共に降臨し、大地を震動させたという説話がある。
この説話に語られた出来事は必ずしも神との遭遇だったとは言えず、生身の地球外生命体との遭遇だったとも考えられる。」
天文学の知識をもとにカーバが建てられたのは、古代のイスラム教徒が秘密の知識を持っていたからなのか、そして黒い石を崇める行為には、異星人と遭遇したことを祝うという意味合いもあるのでないか。

1819年4月28日インド西部Ajanta村のすぐ近くで虎狩りをしていたイギリス人将校ジョン・スミスは、精巧な細工が施されたいくつもの石窟寺院を発見した。
寺院が彫られた場所は、ワゴーラ渓谷を見下ろす断崖だった。
建設は紀元前200年と考えられている。
この石窟寺院の建設技術と美術品の数々は、謎の多いインドの歴史に新たな光を投げかけた。
アジャンターはインドに現存する仏教徒の寺院では最古のもの。
建築は紀元前200年に始まり6世紀の終わりごろまで続いたと考えられている。

7世紀以降はインド全体で仏教が衰退し始める。
石窟は置き去りにされ住む者もいなかった。
そして時が経つにつれ、ジャングルの木々が石窟を覆い隠してしまった。

堅い岩から削り出され、すべてが巨大な1つの岩から彫られている。
現在のおいてもこの寺院は神聖とされ、毎年何千人もの仏教徒が訪れる。
献身的な僧によって聖堂として建てられたこの寺院は、数多くの礼拝書を持つ。
そこは、目覚めた人と呼ばれた釈迦の一生や当時の時代を写し取った数々の絵や彫刻が飾られている。

David Efurd,PH.D.(Asst.Prof.of Art History Wofford College)「アジャンターには様々な彫刻が残されているが、その多くが釈迦の姿を彫ったもの。
釈迦の他にも神の世界の者たちを記した仏教説話が題材となっている。

この説話はジャータカと呼ばれる。
この中では現生は前世とつながっているという輪廻転生について書かれていて、釈迦も前世では動物や人として生まれたかもしれないし、神だった可能性もあると説いている。」

2000年以上も前に高さ20m以上もある花崗岩の岸壁をくりぬいて洞窟が造られたことには現代の技術者も舌をまく。
この洞窟は岩を外部から掘り進めて、トンネルを造るようにくりぬいて造られている。
現在も見ることができる石窟内部の空洞は、岩を砕き、ノミで削って瓦礫を運び出すという作業によってできたもの。

この石窟に施された装飾の細部に至るまで、また数々の彫刻のすべてが、この岸壁のひと連なりの岩から造られている。
アジャンターの石窟寺院は、岸壁に沿って綿密に計算して造られたその配置に重要な意味があるという。
当時の人々が天体活動について高度な知識を持っていたことがうかがえるという。
石窟は馬蹄形に浸食された断崖に造られているので、様々な方角を向いている。
あるものは東の方角、つまり太陽が昇る方角を向いている。
これを見ると、古代のインドの人々が宇宙や天体の星々の関係といったことに強い興味を持っていたのではと思える。

この寺院を彫った者が天体に関する知識を持っていた証を2つの洞窟に見ることができる。
どちらにも大きなストゥーパがある。
これは仏教の開祖となった釈迦、ゴータマシッタールダの遺骨、仏舎利を祀っているとされるドーム型の建造物、仏塔のことである。

第19窟と呼ばれる石窟は、冬至の太陽の方角を向いている。
つまり冬至の日に朝の光が石窟正面に造られた大きな窓から差し込み、その光がちょうどストゥーパを照らし出すように造られている。
第26窟でも同じことが起きる。
夏至の太陽の方角を向くように建てられている。
やはり差し込んだ光が石窟内のストゥーパを照らし出す。

若いころの釈迦が中央に置かれたストゥーパが数多くあるが、釈迦が何かを操縦しているようにも見える。
ストゥーパは、釈迦が天に昇るとき、または地上に降りるときに使われたという。
なのでこれは釈迦が宇宙に旅立つ姿を表したものではないかと考えられている。」

George Noory(Radio Host,Coast to Coast AM)「古代人は見たことを表現しなくてはという思いに駆られていたのだろう。
それで洞窟に彫られたレリーフや絵画、彫刻、記念碑といったものに自分たちの見たものを見たままに写し取ったのだ。
なのでそれは古代人が目撃したものと考えらえるが、どうにも奇妙なものが描かれている。」

アジャンターの壁画には、半身半獣の姿を持つ神が描かれている。
なのでこの石窟寺院は宇宙の絶対神のような存在のために造られた特別な地底の寺ではないかと考えられる。

僧侶たちは誰と会っていたのか?
地球外生命体の力を借りていたのかもしれない。
宇宙人が遺伝子操作によって異形の生物を作り出したのか?
アジャンターの彫刻と壁画は、現存する古代インド美術の中でも最古のものに分類され、精巧な細工が施されたこの石窟は、宇宙人との接触によってできたのだろうか。

エチオピア、Lalibela、山々が連なるこの風景に隠されたひと塊の岩からなる11の聖堂。
Giorge A.Tsoukalos「ラリベラに近づく間は特に何も見えてはこない。
しかしすぐ近くまで行くと、突然地面が開ける。
そして岩盤から削り出された巨大な素晴らしい聖堂が目に飛び込んでくる。」
Philip Coppens「ラリベラの聖堂群は建築概念が当てはまらない。
聖堂は岩盤を掘り下げて造られている。
この驚くべき工学技術は現代の建築工法を根底から覆してしまうほど。」
ラリベラの生活は、宗教儀式が中心。
毎年約21000人のキリスト教信者が巡礼に訪れる。

Michael Gervers,PH.D.「エチオピアのキリスト教はユダヤ教の流れをくむ古いキリスト教で、現在の西洋諸国のものとは異なる。
キリスト教が西欧諸国に普及したのとほぼ陶磁器にエチオピアにも広まった。」
考古学会では聖堂が12世紀に彫られたと考えているが、聖堂を調査した科学者たちは、この聖堂建築は、科学的には説明がつかないと説明づけた。

聖堂を一目見れば、電動工具が使われていることがすぐわかる。
堅い石を加工する際に、鉄製の専用の道具が必要、現代でも電動のこぎりやグラインダー、電動ノミがなくては不可能。
古代宇宙飛行士説で言うように、ラリベラの聖堂群が現代の技術なしで造られたのなら、一体何者によって造られたのか。

15世紀に記されたとされるラリベラ王に関する説話がある。
それによると天使ガブリエルが現れ、王を連れ去る。
王が連れていかれたのは、神々しいエルサレムの町で、そこで神は王に、ラリベラを第二のエルサレムとするように言う。

王は国に帰り聖堂建設に取り掛かる。
何年物月日が費やされた。
昼夜を徹しての作業を手助けしたのは、天使だったと言われている。
伝説によれば天使が天国から降りてきて、作業員たちが疲れて眠っている夜の間に作業を行って手助けをしたと言われている。

ラリベラの聖堂建設に天使が手を貸した理由は何だったのか?
神や天界の者を称えるためか、あるいは地球外生命体を祀るためだったのだろうか?
エチオピアのキリスト教徒にとっての古代の聖典ケブラナガストによれば、金箔で覆われ、十戒を納めたとされる契約の箱は、紀元前9世紀にエルサレムからエチオピアに移されたという。
ソロモン王とシヴァの女王の間には子供がいた。
ネメリク1世と名付けられ、後に初代エチオピア王となる人物。
ネメリクが22歳になった時、父親に会いたいと母であるシヴァの女王にいった。
そこで女王は息子がエルサレムに行けるよう手配する。

ネメリクはエルサレムに長期間滞在するうちに同じ年頃の貴族の男と知り合いになる。
そしてネメリクが国に帰る前の晩、2人は一緒に神殿に忍び込んで契約の箱を持ち去りエチオピアに持ち帰ったと言われている。

契約の箱がラリベラに保管されたことははたしてあったのか、それを示す歴史的根拠は何1つ存在しないが、この地に残る伝説では、一時期ラリベラに安置されていたと語られている。
ラリベラの聖堂には契約の箱がちょうどぴったりとおさまる祭壇がある。
エチオピア正教会の説明によれば、契約の箱はもはやラリベラの聖堂にはなく、320kmほど北上したアクスムの町にあるという。

今もエチオピア人の司祭が警備する特別な聖堂があって、そこには誰も入ることができない。
アクスムの町にはマリアシオン大聖堂と呼ばれる大きな聖堂があり、地下にはトンネルがあり、このトンネルのさらに下に契約の箱が置かれていたという。
それはなぜ長い間封印されていたのだろうか?
古代宇宙飛行士説によれば、契約の箱を人間に与えた強大な宇宙人がいつかこの箱を取り戻しに来るのだという。
そして宇宙人が再来するときには、最初に訪れた場所に再び降り立つと考える者もいる。

レバノン東部Bekaa Valleyには、古代の都市ヘリオポリスの遺跡が残されている。
紀元前4世紀にアレキサンダー大王がゼウスに捧げた神殿である。
だが、ギリシャ時代とローマ時代の遺跡やコリント式円柱の下には、それよりはるかに古い遺跡が横たわっている。
考古学者によれば、およそ9000年前のものだという。

この古代都市バールベックの名は、古代カナンの地で崇拝されたバールに由来する。
バールは生命と空と太陽をつかさどる神、この神はバールベックの地でカナン人とフェニキア人が共に信仰した神だった。
この場所がバール信仰の聖地であったために、後に訪れたギリシャ人とローマ人も同じ場所に神殿を建てたのだろう。
考古学調査が行われた結果、この遺跡の土台を形作る巨石は、何万年も前のものということが明らかになった。

Hanan Charaf(Archaeologist)「考古学資料からは、バールベックは原石器時代、つまり紀元前6000年から8000年、もしくは9000年に存在したと考えられる。」
古代宇宙飛行士説ではさらに、この巨大な石の土台は、かつて宇宙を旅する者たちの、着陸体として使われていたのではないかと考える。
研究者たちがこの説の根拠としてあげるのが、土台に組み込まれた巨大な石。
巨石はそれぞれ800〜1200トンもある大きなものだが、それが完璧に組み合されている。
このような石をどうやって持ってきたのか、どうやって組み立てたのか?
石があまりにも巨大であったため、古代の人々はこの石が未知の力によってここに運ばれてきたと考えた。
古代宇宙飛行士説で言われるように、バールベックが数万年にわたって聖なる地と人々からみなされてきた理由は、異星人が最初に地球に降り立った場所だからではないだろうか。

バールベックが宇宙人の上陸地点であることがシュメール文明のギルガメシュ叙事詩に記されている。
ロケットがバールベックに着陸したり、発進したりするのをギルガメシュが見たと書かれている。
レバノンのバールベックとエルサレムの神殿の丘を比較してみると、石をくみ上げて造られた超大型の土台が驚くほどよく似ている。
どぢらとも宇宙船を上にのせる目的で造られていたのだろうか。
異星人の集団は、地球の最も聖なる土地にほんとうに降り立ったのだろうか。
信仰に篤いものは、すでに真実を知っているのかもしれない。
それとも将来明らかにされるまで、真実は隠されたままなのだろうか。
 
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ヒッグス粒子
40年にわたる研究の末、宇宙の謎を解く手がかりがついに発見された。
捉えがたく強力なパワーを秘めたヒッグス粒子、それは宇宙におけるすべての存在を作りだした神の粒子なのだろうか?
空間、時間、生命体の誕生、宇宙の謎を解くカギは、ワームホールにある。
私たちはどうやって宇宙に生まれたのだろう?
宇宙はエネルギーの爆発によって始まったという。
そのエネルギーが物質へと姿を変え、天体や私たちの体を形作る素材となった。
宇宙は一瞬で燃え尽きることなく百何十億年も生き続けている。
物理学者たちは以前から、宇宙全体に見えない力の場が広がり、それがエネルギーを物質に変えると予測していた。
そしてついにその力が実在することを証明した。
そこから発生したのが神の粒子と呼ばれるヒッグス粒子、これで宇宙創成の謎がついに解けるのだろうか?
もしも神の粒子がなければ、宇宙は一瞬で消え去っていただろうと考えられている。
ダン・フーパーとパトリック・フォックスは、フェルミ国立加速器研究所の理論物理学者。
高速粒子衝突実験で、ヒッグス粒子が見つかるのをずっと待っていた。
エアホッケー台が宇宙だと考えてみよう。

物理学の世界ではビッグバンで生まれたのは、質量のないエネルギーだけの粒子だったと言われている。
初期の宇宙ではすべての粒子が質量を持たず、光の速さで飛び交っていた。
でもそんな状態は長く続かなかった。
ほんの一瞬で何かが変わった。
まるで誰かがレバーを引いたように、大部分の粒子が急に動きを止めた。

ビッグバンの直後に宇宙が冷えはじめヒッグス場が働きだしたと言われている。
影響を得たものは質量のある粒子に、受けなかったものは、質量のないエネルギーだけの粒子になった。
粒子と粒子をぶつけてミクロの世界を探ろうとしてきた研究者たちは、粒子に2つのタイプがあることを知った。
質量を持っていて物質を運ぶフェルミ粒子と、質量を持たずに力を運ぶボーズ粒子だ。
ヒッグス粒子がなければ、どちらも質量を持たなかったはず。
フーパー「ヒッグス場がなければ、みんな力を運ぶ粒子になっただろう。
光子のように質量を持たず光の速さで飛ぶ粒子だ。
質量がないということは、宇宙に原子も、科学現象も生まれないということ。」
宇宙に人類のような複雑な構造体が生れたことも、ヒッグス粒子のおかげ。
でもどうしてヒッグス場が働きだしたのだろう。
フーパーやフォックスなどの物理学者は、ビッグバンの衝撃によってヒッグス場が働きだしたと考えている。

エネルギーの塊を物体のある宇宙に変えた力は、自然に働きだしたと言われている。
でも中にはこれを創造主の計らいとみなす人もいる。
ヒッグス場をより深く知れば、こうした謎が解けるかもしれない。
研究者たちはヒッグス場に働きかけてヒッグス粒子を取り出し、それを調べようとしている。
そのために史上最強の実験マシーン、LHCと呼ばれる大型ハドロン衝突型加速器が建設された。
リンドン・エバンスは、この40年間ジュネーブにあるCERNで、粒子加速器の建設に携わってきた。
作った機械は今も全て現役で、段階的な作業を担っている。
粒子は古い加速器を通って、徐々に加速される。
できる限りのエネルギーを詰め込んだ状態で、1周27kmのLHCに送り込まれる。

「CERNに来たのは1969年、最初に担当したのはディオプラズマトロンイオンゲンとう陽子を発生させる装置。
線形加速器とブースターで加速された陽子は、私が70年代に手掛けたスーパー陽子シンクロトロンを通ってLHCに送られる。」

粒子加速器はここ数十年で進歩した。
より多くのエネルギーで粒子を衝突させて、より高い質量を持った新しい粒子を作れるようになった。
以前は2つの陽子をぶつけて2倍の質量を持った粒子を作るのが精いっぱいだった。
でもヒッグス粒子の質量は、少なくとも陽子の100倍、物理の法則では陽子に高い運動エネルギーを与えると、ぶつけたときの質量よりもはるかの重い粒子が誕生すると予測することができる。

「あの有名なE=mc2という方程式の通りだ。
私たちは高いエネルギーを重い物質に変えているのだ。」
ヒッグス粒子のような質量の高い粒子を作るには、従来よりもはるかに高性能の加速器が必要。
エヴァンスたちは、テクノロジーの限界に挑んだ。
「粒子は周回ごとにエネルギーを高める。
そして最終的にはフルパワーに至る。」
必要なパワーは手に入ったが、力だけでヒッグス粒子の研究はできない。
乾草山から針を探すような仕事が待っている。
ここでの乾草は何兆個もの素粒子。
姿が見えず声が聞こえなくとも、神はいつもそばにいる。
宗教の敬虔な信者はそう考える。
ヒッグス粒子もまた、きわめて捉えがたい存在。
粒子は1兆×10億分の1秒間ほどこの世に現れ、かすかな手がかりを残して消えてしまう。
決して目に見えない粒子をどうやって探すのだろうか?

物理学者ジョー・インカンデラの両親は、息子を硝子作家にしたいと願っていた。
「大好きなガラス作家の1人が科学者だったので私も大学に行って科学を学ぶことにした。
そこで物理の授業を履修したとき衝撃を受けた。」
インカンデラは、LHCにおける主要な実験のリーダー。
世界中から来た物理学者と共に1つの謎を探求している。
全ての存在がなぜ存在するのかを突き止めようとしているのだ。
LHCでの実験がその問いに答えてくれる。
LHCでの衝突実験は、ビッグバン直後のエネルギー状態を再現する。
研究者はそこからヒッグス場が働きだした瞬間についての情報を得ようとしている。
ヒッグス場の力は宇宙に広がり、すべての物質が作り出された。
その力を運ぶのがヒッグス粒子、これを検知する唯一の方法はヒッグス場にエネルギーの乱れを作ること。
「ヒッグス粒子はある意味宇宙の状態や粒子の姿の現し方などを決定づけている存在。
LHCなどの加速器を使って高エネルギーの陽子と陽子をぶつければ、ヒッグス粒子を飛び出させることができる。」
LHCで衝突する陽子の中に、クオークやグルーオンと呼ばれる粒子がつまっている。
衝突すると数千個の新しい粒子が飛び出すのだ。
そのあとを調べるのは、ガラスの破片をふるいにかけるようなもの。
骨の折れる作業だ。
「エネルギーや粒子やその破片が散らばっている中から特定のパターンを探す。
ヒッグス粒子の崩壊パターンには非常に厳密な条件がある。」
神の粒子はそう簡単に捕まらない。
見つかる前に消えてしまうのだ。
「一瞬で崩壊するため粒子の測定はできない。
崩壊によって生まれたものから推測するのだ。」

ヒッグス粒子を検出するには、陽子が衝突した後を調べて、元の粒子を推し量るしかない。
床に散らばったガラスの破片をすべて分析し、軌道を計算すれば、衝突の状況を再構成できるのと同じこと。
「衝突の大部分は凡庸なパターンを描くので、それらは分析の対象から外される。
つまり圧倒的多数が排除されるのだ。」
彼らが調べたいのは、陽子と陽子の中身が直線状に並んだケース。
陽子の中のクオークが相手のクオークと正面衝突すると、ほぼすべてのエネルギーが1カ所に集中する。
この強い衝撃によって、ヒッグス場からヒッグス粒子が飛び出す。
でもこうした衝突はめったに起きない。
LHCが稼働してから、陽子をぶつけた回数は、およそ1000兆回。
1000兆の砂粒は、競泳用プール1つ分、そのうちヒッグス粒子が発生しうる衝突は数百回、砂粒に例えれば指先に乗るくらいの量。
気の遠くなるような仕事だが、インカンデラの数千人の物理学者たちはこれをやりとげてしまった。

2012年7月4日、インカンデラは研究チームのもたらした画期的な成果を発表する。
予測されたヒッグス粒子と同じ質量125〜126ギガ電子ボルト付近に粒子を検出したという。
アインシュタインによるE=mc2という方程式以来の大発見と言われている。
存在の謎を解くカギとなる粒子が見つかった。
宇宙を完璧に理解できる日も近いのだろうか。
ダン・フーパーはそう簡単ではないという。
ヒッグス粒子は全部で5種類あるかもしれないのだ。
ヒッグス粒子は宇宙にある物質の期限を解き明かすカギになると考えられている。
しかし近年宇宙の大部分はダークマターという見えない粒子でできていることが分かった。
宇宙におけるダークマターの量は普通の物質の5倍、ヒッグス粒子の存在を予測する今の理論では、ダークマターの存在を説明できない。
何かを見落としているのだろうか。
半世紀にわたる研究の結果素粒子物理学の標準のモデルと言われる1つの理論が構築された。
物質を構成する素粒子は12種類、クオークとレプトンからなるフェルミ粒子。
一方電気や磁気などの力を媒介するのはボーズ粒子のうち4種類。
そしてもう1つの特別なボーズ粒子がヒッグス粒子。
しかしこのモデルではダークマターの説明ができない。
他にも重大な不備があるのだ。
フーパー「標準モデルが抱える大きな課題の1つは階層性問題。
ヒッグス粒子の質量は126ギガ電子ボルト前後と言われる。
でも標準モデルをそのまま当てはめた場合、質量はもっと大きくなるはず。
でも何かの理由で軽くなってしまった。」

ヒッグス粒子の問題は、重さ。
ヒッグス粒子はほかの粒子に質量を与えると相手からも質量を受け取る。
それを計算するとヒッグス粒子の質量は本来の数10億倍になると考えられる。
標準モデルを成立させるには、計算上の矛盾をごまかす必要がある。
フーパーはヒッグス粒子やダークマターの問題を解決する方法があるという。
それは標準モデルに修正を加えた超対称性理論。
超対称性理論では、宇宙の粒子はまだ半分しか見つかっていないと考える。
それぞれにパートナーの超対称性粒子があるはずで、そのうちの1つがダークマターだという。
「超対称性粒子の中で、最も軽いものがダークマターの最有力候補だと言われている。
この粒子は初期の宇宙で大量に作られ、大部分が破壊された。
でもわずかに残った粒子がダークマターになったと考えらえる。」
超対称性理論が証明されれば、ヒッグス粒子の質量問題も解決するという。
「この理論が正しければ、ヒッグス粒子は電子から質量を渡されても、そのパートナーであるセレクトロンに質量を取られてしまう。
結果的に粒子の質量が増えることはない。」
標準モデルで解決できなかったヒッグス粒子の軽さも、ダークマターの正体も、これで説明がつく。
しかし1つだけ問題が・・・超対称性理論が正しければ、ヒッグス粒子は前部で5種類あるはず。

ヒッグス粒子は宇宙全体の物質に質量を与えた。
ヒッグス粒子だけの手柄ではないとしたらどうだろう。
神の粒子以外に立役者はいたのかもしれない。
ジョン・エルスはCERNの理論物理学者、彼のアイディアはしばしば実験によって間違いだと証明される。
でもそれでいいとエルスはいう。
アルバート・デルックは実験物理学者、アイディアの間違いを証明するため、実験を続けてきた。
デルクとエルスの2人はヒッグス粒子の探索に初期のころから携わっている。
そもそもヒッグス粒子はある謎の手掛かりと考えられていた。
極端に重たいW粒子とZ粒子の謎だ。
他のボーズ粒子にそんな質量はない。
物理学者たちはボーズ粒子の中で、W粒子とZ粒子だけが目に見えない力を持つヒッグス場と反応し、質量を得たのだと考えた。
その後標準モデルによってヒッグス場には宇宙全体に質量をもたらすという大きな役割が与えられた。
デルクたちは、たった1種類の粒子がすべてに質量を与えたとは限らないと考えている。
「標準モデルをふまえた数多くの理論が、ヒッグス粒子には複数の種類があると予測している。」
2人は標準モデルに修正を加えながら、新たな理論を構築することを目指している。
ヒッグス粒子の正体について、斬新な予測をたてようとしているのだ。

予測される粒子のバリエーションは、アイスクリームの種類にも例えられる。
LHCが見つけたのはお馴染みのバニラ味、思った通りの味がする。
でもチョコチップミントのように刺激的な味が見つかれば、もっとスリリングな展開がまっているだろう。

2種類のヒッグス粒子がそれぞれ違う仕事をしている可能性もある。
「W粒子やZ粒子にかかわるヒッグス粒子と物質を運ぶ粒子にかかわるヒッグス粒子が、役割分担しているのかもしれない。」
例えば、エリスが力を運ぶZ粒子で、デルックが物資を運ぶクオークだとしよう。
エルスは無類のコーヒー好きで、デルックはチョコレートマニア、カフェが1つのヒッグス場、チョコレート店がもう1つのヒッグス場と考える。
エリスはカフェの前で速度を落とし、質量を得るだろう。
「私という粒子はそこを通り過ぎて、もう1つのヒッグス場に反応する。
このチョコレート店で質量を得るのだ。」
標準モデルは2つのヒッグス場を想定しない。
だからこそ2人はこのアイディアを押すのだ。
複数のヒッグス粒子が発見されるとしたら、それは標準モデルを超える物理の証明になる。
今まで観測された崩壊パターンに見られるいくつかの異常は、ヒッグス粒子に別の種類があることの兆しかもしれない。
観測データの分析はまだ終わっていないのだ。
古代ギリシャに生きたデモクリトスという哲学者は、物質を構成する最も小さいブロックのことを原子と名付けた。
2000年も生き続けたこの概念は、核の時代を向かえて新たな事実に直面する。
最小単位と思われてきた原子はクオークや電子などの粒子からできていたのだ。
もしヒッグス粒子を構成する部品があるとしたら、それらによって物質がなぜどうように現れたのかを突き止められるかもしれない。

フランチェスコ・サニーノは、オーデンセにある南デンマーク大学の理論物理学者。
オーデンセは創造の翼を羽ばたかせるにはぴったりの場所。
有名な童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンもこの町で生まれた。
私たちが思い描く宇宙の基本的な構成要素は、この街並みのように完璧とは言えない。
標準モデルはヒッグス粒子を素粒子とみなしているが、サニーノはその先を見ている。
ヒッグス粒子の中身を探ろうとしているのだ。
「標準モデルでは、ヒッグス粒子を分割することはできない。
この壁は白く見えるが、実際は3色の光を同時にあてて、白く見せているだけ。
このように手をかざすと、3種類の色が分かれて見える。
緑と赤と青で白を作っている。」

白い光のようにヒッグス粒子も別の粒子からできているのではないかとサニーノは考える。
全ての物質の根源ではないということだ。
ヒッグス粒子の成り立ちに関する仮説は、研究者の間でテクニカラー理論と呼ばれている。
サニーノはヒッグス粒子を新しい視点から見ている。
例えばこれらのブロックが通常のクオークで、白いボードがクオークをつなげるグルーオンだとしよう。

陽子を作るにはクオークが3つ、テクニカラー理論によるとヒッグス粒子の構造も同じ。
ただしテクニクオークと呼ばれる特別なクオークが使われる。
「テクニクオークは特殊な力で互いを結び付けている。
そのエネルギーがヒッグス粒子に質量を与えているのだ。」
通常のクオークは組み合わせによって別の粒子を作る。
ある組み合わせでは陽子に、またある組み合わせでは中性子になる。
テクニクオークも同じ、ある組み合わせではヒッグス粒子になり、また別の組み合わせでは研究者たちが探し回っているダークマターの粒子になる。
標準モデルがダークマターの存在を説明できないのは、ダークマターがヒッグス粒子の別の姿だからなのかもしれない。
これらの粒子は特別な力で結び付けられているのだ。
テクニクオークは様々な組み合わせによって新しい粒子を作る。
2015年にエネルギーを引き上げて実験を再開するLHCでこうした粒子が見つかるかもしれない。
サニーノはヒッグス粒子の解析に期待している。
十分なパワーがあれば粒子を分解できるかもしれないからだ。

夜空の高みから私たちを見下ろしている月は、不思議な力で浮かんでいるように見える。
重力のせいだと分かっていても神秘的。
もし重力や神の粒子よりもはるかに謎めいた力がこの宇宙に広がるすべての物質を支えているのだとしたらどうだろう?
ハーバード大学のハワード・ジョージャイは、人生の大部分を素粒子物理学に捧げてきた。
でも近年キャリアを変更し、今は非粒子物理学者。
標準モデルから新しい理論を構築しようと方程式を構築していたジョージャイは、不可解な計算結果に気づいた。
物理学の数式では、光子のように質量のない粒子は負の整数で表される。
ジョージャイの計算でも負の数が現れた。
でもそれは分数だったのだ。
「質量のなり粒子が2と1/2個現れるという計算結果になった。」
1/2という数字に異変を感じたジョージャイはそれらを非粒子と名付けた。
計算を続け、非粒子をより深く知ったジョージャイは、分数が現れた理由に気づいた。
そこにはフラクタル次元がかかわっていた。
「樹木は1次元ではない。成長しながら枝分かれして、それがまた枝分かれして、それがまた枝分かれする。
同じことが無限に繰り返される。
これがフラクタル。」
非粒子は木の枝と似たようなもの、細部を見ても全体を見ても同じパターンが現れる。
でも普通の粒子は木の葉のようなもの、近づけばそれだけ大きく見える。
この宇宙で質量を持つ粒子はすべてヒッグス粒子のおかげで存在していると言われる。
でも本当は既存の物理法則が通用しない非粒子の世界に影響を受けているのかもしれない。
つまりこの宇宙で質量を持ったすべての粒子は木の葉のようなもので、それを支える目に見えない非粒子の枝は、隠れた土台の役割を果たしていると考えられるのだ。
今のところLHCに非粒子の気配はないようだが、ジョージャイは、非粒子物理学を諦めていない。

ヒッグス粒子は神の粒子なのだろうか?それとも何か大きな秘密があるのだろうか。
私たちの存在は謎に満ちている。
科学者たちは今も発見されたヒッグス粒子の正体を探るために研究を進めている。 
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神の数式2 宇宙はなぜ生まれたのか
はるか頂に浮かぶ美しい物体、この宇宙のすべてを表す神の設計図だと言ったら、一体何の話が始まるのかと思うかもしれない。

ここは天才物理学者たちの世界、宇宙はどこから来たのかという人類究極の謎に迫る物語の始まり。
去年ドイツで開かれた理論物理学の学会、世界中から天才たちが集まった。
理論物理学者というのは、その頭脳と数式だけで、この世の森羅万象を解き明かそうとする人たち。
今挑んでいるのは、史上最大の難問。
この宇宙はどこから来たのか・・・
ちょっと気が遠くなるような難問だが、実はその答のある場所も分かっているという。
スティーブン・ホーキング博士「そこは私たちの時空の概念が通用しない場所、その謎を解き明かせば宇宙の始まりを解明できるのだ。」

その場所とは、巨大な重力ですべてを飲み込むブラックホール、光さえも出てこられないその奥底を、もし数式で書き表すことができれば、宇宙のすべてを読み解けるというのだ。
それはいわば神の数式、でも一体どうやってそんな数式を求めるというのだろうか。
実は私たち人類は、すでに神の数式に最も近いと言われる数式を手にしている。
その1つが標準理論、ミクロの素粒子を完璧に表した数式。
そしてもう1つ、広大な宇宙を支配する重力の数式、一般相対性理論。
この2つを進化させ、1つに束ねることができれば、それこそが神の数式。
アインシュタイン以来100年にわたる物理学者たちの見果てぬ夢だった。
しかし神の数式への道は困難の連続だった。
数式は常識をはるかに超えた世界を突きつけた。
縦、横、高さと時間、4つの次元からなるはずの私たちの世界、なんと異次元が存在するという。
しかもこの世界がいつ崩壊してもおかしくないという数式の予言まで飛び出した。
天才たちの中には、精神に異常をきたす人さえ現れた。
今世界中で数式の予言を検証しようという動きが加速している。
アメリカの巨大国家プロジェクト、ブラックホールの重力を直接捉えようとしている。
数式は私たちがまだ見ぬ世界をいち早く示してくれる。
宇宙はどこから来たのか、スーパーコンピューターも解き明かせない究極の謎。
そこに純粋な思考だけで挑む物理学者たち・・・

アメリカ、コロラド州の山中に、物理学者たちの聖地ともいえる場所がある。
数々の大発見の舞台となってきたアスペン物理学センター。
その50周年を祝う記念の場に1人の老物理学者が招かれた。
ジョン・シュワルツ71歳、今や神の数式に最も近付いたとされる。
シュワルツが生み出した新たな数式、超弦理論、または超ひも理論という名前で聞いたことがあるかもしれない。
ごくごく簡単に言うと、これまでの常識ではミクロの点だとされてきた素粒子が、震える弦のような存在だというのだ。
神の数式を追い求めるシュワルツ、寝ても覚めてもひたすら数式を考え続けている。
コンピュータは、使わない。
コンピューターは、人間がプログラムした数式に基づいて動いている。
だからそもそも新しい数式を見つけることはできない。

研究の合間を縫って時折、山登りをしているシュワルツ、ロサンゼルス郊外の山の上に、神の数式を追い求めるきっかけとなった場所がある。

アインシュタインも訪れた天文台で、すごい発見があった。
137億年前、ビッグバンの爆発である1点から始まり膨張をしているこの宇宙。
そしてその事実はすでに、ある偉大な数式によって予言されていたという。
20世紀が生んだ物理学の巨人、アインシュタイン。

その名を歴史に刻んだ数式が、一般相対性理論だった。
巨大コンピューターもない時代に、遠い宇宙の動きを正確に表すことに成功。
宇宙誕生の謎を解き明かすと期待された。
一般相対性理論の数式↓

数式尾意味は意外と単純。
式の左側には空間の歪み、右側には物の重さやエネルギーを表す記号が書かれている。
つまり重さやエネルギーがあると空間が歪む、というシンプルな式なのだ。
重力というと、星と星が引き合って回っていると考えるだろう。
しかしアインシュタインの理論では、星の重さによって、周りの時空が歪み、その歪みに沿ってほかの星が動いている。
その星の歪みは、星が小さくて重いほど角度が急になり、強い力が働く。

アインシュタインは、この数式を使い大胆に予言した。
巨大な重力が存在するところでは、光さえも曲がる。
つまり数式が正しければ、大きな星の裏側に隠れて見えないはずの星の光が、重力によって曲げられ、見えるはずだというのだ。
そして予言は見事に的中した。

皆既日食、太陽の周囲に見える星々は、実際よりもずれて見える。
太陽の巨大な重力によって、遠くの星の光が曲げられたのだ。
宇宙がどこから来たのか、人類究極の謎を解き明かすと期待された一般相対性理論、しかし思わぬ落とし穴が見つかった。

指摘したのはスティーブン・ホーキング博士、車椅子の天才。
全身の神経が麻痺する難病と闘いながら、その頭脳1つで宇宙誕生の謎に挑んできた。
一般相対性理論が神の数式ではないということに気付いたのは、ある宇宙の研究がきっかけだった。
巨大な星が爆発した後に生まれ、強い重力ですべてを飲み込むブラックホール、そのもっとも深い部分こそがアインシュタインも見逃した盲点だった。
アインシュタインの理論では、小さくて重いものほど空間の歪みが大きくなった。
ではとてつもなく重く小さな点があったとしたらどうだろう。
空間はある1点に向かって無限に沈みこんでゆく。
これが理論上のブラックホール。
ブラックホールの数式↓

だいたいの意味をくみ取るとこんな感じ。
rはブラックホールの奥底との距離、奥底に近づくほど、D(空間の歪み)が大きくなる。
ところがブラックホールの奥底では、距離Rが0、つまり分母が0になってしまう。
これは無限大を意味する。
無限大、それは数式上計算不能ということを意味する。
つまり一般相対性理論の数式は、ブラックホールの奥底では通用しないということ。
宇宙誕生の謎を解き明かすと期待された一般相対性理論だが、ブラックホールの底だけは、どうしても説明できなかった。
そもそも、宇宙の始まりとブラックホールの底がどう関係してるというのか?
これまで数式が解き明かしてきたのは、実はビッグバンから10の-43乗秒たった後からの世界。
137億年前に生まれたとされる宇宙、誕生のまさにその瞬間だけが、人類に残された最後の謎。
そしてビッグバンの瞬間と数学上全く同じとされるのが、ブラックホールの底。
謎を解く唯一の鍵。
宇宙のすべてを記した神の設計図、物理学者たちがそこにたどりつくためには、無限大の問題を解消しなければならない。
そこで、物理学者たちに大胆な発想が生まれる。
一般相対性理論に、もう1つの数式を組み合わせてはどうか。
それは素粒子の数式。この数式、すさまじく正確で世界を形作る素粒子などのミクロの物質を完璧に書き表している。
なぜ2つの数式を合わせるのかというと、ブラックホールの底というのは、極限まで圧縮された超ミクロの点。
だからミクロの素粒子の数式を合わせることで、無限大の問題を解消し、宇宙誕生の謎を解き明かすことができると考えたのだ。
一般相対性理論と素粒子の数式、世界で初めて2つを合わせて神の数式を求めようとした物理学者がロシアにいた。
普段は人もほとんど訪れない郊外の森、そこに2つの銃弾の跡が刻まれた墓がある。
旧ソビエト連邦時代に非業の死を遂げた天才マトベイ・ブロンスタインの墓。
ブロンスタインの娘が存命している。
ブロンスタインは31歳で亡くなったが、そのことを半世紀以上も知らされずにいたという。
神の数式を求めるブロンスタインに、一体何があったというのか。
貧しい家に生まれ、独学で物理を勉強したブロンスタイン、当時の物理学者にとっても難解だった一般相対性理論と素粒子の数式を、わずか19歳で完璧に理解していたという。
ブロンスタインが挑もうとしたブラックホール、しかしその奥底を計算する前に、まず証明しなければならないことがあった。
それは身の回りのミクロの空間で、2つの数式がうまく融合するかということ。
ブロンスタインは、空間を素粒子よりもはるかに小さい超ミクロのサイズに区切って、そこに働く重力を計算した。

ブロンスタインがこの時使った2つの数式を最新の式に置き換える。
最初の部分はミクロの世界の計算ということを示している。
( )の中はミクロの物質やそこに働く力を示している。
ブロンスタインは、この式に一般相対性理論をそろえて組み込んだのだ。
すると意外な結果が現れた。
分母に0が現れた。
計算不能を意味するあの無限大・・・
正しい2つの数式を合わせたはずなのに、なぜこんな結果が生れるのか。
ブロンスタインは、さらに精度を高めて計算をすすめたが、最終的には無限大は、無限大個発生した。
その結果が意味するのは、つまり私たちの身の回りの空間は、実はミクロに見ると不安定で、無限大を生み出すブラックホールのようなものが満ち溢れているのではないか・・・
そのころソビエトはスターリンの時代となり、おそろしい事態が起きていた。

100万ともいわれる知識人や一般人に対する大弾圧だ。
自由な発想を持つ科学者にも、その矛先が向けられた。
しかしブロンスタインはそうした事態を気にもとめず無限大の問題に頭を悩ませ続けていた。
なぜ無限大が発生するのか、もしそれが正しいとすれば、この空間もいつか崩壊してしまうかもしれない。

そして1937年ブロンスタインは秘密警察に逮捕され、すぐに銃殺され、森の墓に埋められた。
宇宙の始まりを論じ、神の数式を求める行為が、危険な思想ととらえられたのではないか、今ではそう考えられている。
ブロンスタイン亡き後、半世紀近くにわたって神の数式への挑戦は続いた。
ノーベル賞を受賞した物理学者たちが無限大の問題を解消し、宇宙の始まりを解き明かそうとしたのだ。
しかしどんな天才もその壁を超えることはできなかった。
天才たちの前に立ちはだかった大きな落とし穴。
無限大の謎に挑むことは、人生を棒にふることと同じだ、そういってほとんどの物理学者が神の数式を目指すことを諦めた。
神の数式への挑戦が大きな転機を迎えたのは、1974年、なんと無限大の謎を解く数式を見つけたとうたった論文が登場した。『非ハドロン粒子の相対モデル』
プリンストンで知り合った全く無名の2人の若き研究者、論文を書いたジョン・シュワルツとフランスから来たジョエル・シャーク。

2人は当時誰も見向きもしなかった時代遅れの分野を研究していた。
それは弦理論という。
たとえば、物質の最小単位である素粒子、弦理論では粒子は点ではない。
様々な形をした震える弦のようなものだという。
この一風変わったアイディアは、見捨てられた古い物理学の数式を基にしていた。
そうした中、2人は弦理論を進化させ、超弦理論を提唱。
その数式が、一般相対性理論と素粒子の数式が解けなかった無限大の問題を解消することになる。
2人はどのようにして無限大の問題を解いたのか。
一般相対性理論と素粒子の数式を合わせた式↓

四角の部分はすべての粒子が点であることを意味する。
ミクロの世界で飛び交う粒子同士の間の力は、極々簡単に表すと、粒子の間の距離1/r2と表すことができる。
粒子が点だとすると、互いにぶつかった瞬間距離rは0になる。
分母に0が現れた。
つまり無限大が現れるのは、粒子同士の衝突の瞬間だったのだ。
でも、超弦理論では、粒子を点ではなく、輪ゴムのような形の弦だと考えていた。
輪ゴムのような形だとすれば、広がりがある。
なので粒子同士がぶつかっても、その輪の大きさ以下にはつぶれない。
衝突しても、距離rは0にはならず、無限大がでなかったのだ。
超弦理論は、半世紀近く物理学者たちを悩ませてきた無限大の問題を解消した。
そして宇宙誕生の謎に迫る可能性を開いた。

しかし物理学の主流派の学者たちは、なぜか超弦理論に目もくれなかった。
超弦理論はいまいち信用できない。
なぜならあの一般相対性理論と素粒子の数式とはかけ離れて見えるという。
それだけではない。超弦理論の数式を成り立たせる条件が、現実ではありえないものだったのだ。
どういうことなのか?
私たちの世界は、縦横高さの3次元に、時間を加えた四次元の世界だと考えられてきた。
しかし超弦理論の数式が成り立つのは、この世界が10次元の時だけだった。
10次元・・・異次元の存在に、多くの物理学者たちも耳を疑った。
超弦理論は物理学とも呼べない、こんな研究をする奴は締め出してしまえ、という声まで飛び交う。
シュワルツはノーベル賞を受賞した物理学の権威からも、たびたび皮肉を言われたという。
超弦理論が認められない中、重い糖尿病を患い、故郷フランスへ戻ったシャーク、なぜ10次元なのか、見えない異次元はいったいどこにあるのか・・・
シャークは何かにとりつかれたように異次元の研究に没頭していったという。
町中を異次元を求めてさまようシャーク、次第に仏教の世界に傾倒し、瞑想にふけるようになっていった。

そしてシャークは、突然34歳の短い生涯を閉じる。
部屋には、糖尿病の治療薬を大量に注射した跡が残されていた。
シャークの意志をついで、シュワルツは研究を続けた。
他の物理学者たちが華々しい業績をあげるのを横目に見ながら、ひたすら超弦理論にこだわり続けた。
最初の論文の発表から10年後、超弦理論に大きな転機が訪れた。
海を隔てたイギリスから新たな才能が研究に加わった。
マイケル・グリーン、ケンブリッジ大学で、あのニュートンやホーキングも務めた、名誉あるルーカス教授職の継承者だ。

シュワルツとグリーンの2人は、異次元の問題について、こんな風に考えることにした。
そもそもこの世が四次元でなければならないという証明はない。
数式が10次元と示しているのだから、自分たちの常識の方が間違っているのかもしれない。
2人は改めて超弦理論の数式が神の数式にふさわしいかどうか確かめることにした。
それは超弦理論の数式に、あの偉大な一般相対性理論と素粒子の数式がふくまれているかどうかを検証することだった。
複雑な計算を進めると、全く無関係に見える2つの数式が導かれ始めた。

そして数式に矛盾が生じていないか、最後の計算をしている時のことだった。
496という数字が数式に次々に現れた。
496、それは完全数の1つで、古代ギリシャ時代、天地の創造と関係があるとして崇められたいた数字。
その数が一斉に現れたということは、数式の中で、広大な宇宙とミクロの世界が美しく調和しているということを意味していた。
そして496という数字が表れたと同時に、超弦理論から一般相対性理論と素粒子の数式が矛盾なく導き出された。
シュワルツとグリーンの計算の結果は瞬く間に世界中に伝わった。
THE THEORY OF EVERYTHING 万物の理論、宇宙がどこから来たのかという謎に答える神の数式ではないのか、世界中の物理学者たちが雪崩を追って超弦理論の研究を始めた。
超弦理論は、物理学の最前線に躍り出た。
ところで多くの物理学者が最終的にその存在を受け入れた異次元、でも一体この世界のどこに異次元が存在するというのか。
次元というのは、動くことができる座標の数を指す。
例えばこの綱渡りの女性にとって綱は1次元、つまり線の世界。
彼女は前か後ろにしか進めない。
でもこの綱の上をはうテントウムシはずっと小さいので、ロープの上を線ではなく、2次元の面に見えるはず。
つまりより小さい世界に視点を移すことで、隠れていた次元が見えてくるということ。
では超弦理論が示した10次元の世界は一体どこに隠れているのか。
それは小さな小さなミクロの世界、原子の1兆分の1の、そのまた1兆分の1、超ミクロの世界。
そこに奇妙な形で丸まっているもの、これが物理学者が考える異次元の一部。
異次元は、超ミクロの世界に潜んでいるため、普段私たちの目からは見ることができないのだ。

あの偉大な2つの数式、一般相対性理論と素粒子の数式を含む、新たな超弦理論、この数式は、はたして宇宙のすべてを読み解く神の数式なのだろうか。
しかしその行く手には、まだ何やら不穏な空気が立ち込めていた。
ここで再び登場するのが車椅子の天才ホーキング博士、物理学者たちにブラックホールの無限大の謎を突きつけたあの人。
果たして超弦理論は神の数式の資格があるのか。
ホーキングが新たにつきつけたのはブラックホールの底に潜む別の難問だった。
それはブラックホールの奥底で発生している謎の熱にまつわる問題。
ブラックホールの奥底は極限まで凝縮されたミクロの1点、そこでは何1つ身動きがとれないはず。
素粒子さえ全く動けないのに、どうやって熱が発生するのか。
これはホーキングパラドックスと呼ばれ、物理学者たちの前に立ちはだかった難問だった。
ホーキングパラドックスを解くことができない超弦理論、ホーキングはブラックホールの熱を解くための数式、つまり神の数式は存在しないとまで主張した。

そうした中、超弦理論に若き救世主が現れる。
ジョセフ・ポルチンスキー、超弦理論をさらに進化させることに成功した。
超弦理論といえば、小さな震える弦のような粒子が飛び交うミクロの世界。
ポルチンスキーは学会の合間に立ち寄ったコインランドリーで1つのアイディアを思いつく。
洋服は、細い糸がたくさん集まってできている。
ミクロの世界でも粒子である弦は1つではなく、まとまっているのではないか。
たくさんの弦が集まると、興味深い現象が起きる。

もっと弦を加えてみると・・・
これらは結合し、重要な性質を持つものになる。

数式から導き出されたのは、弦が1つ1つではなく、膨大な数が集まって膜のように動いている現象だった。
ポルチンスキーの発見を受けて世界中でブラックホールの謎の熱について計算が進められた。
そして膜の数式を新たに加えたことで、超弦理論はブラックホールの熱を計算することに成功した。
それはこんなイメージ。

ブラックホールの奥底で凝縮し、動かないと考えられていた粒子。
しかしブラックホールのそこにも異次元が存在した。
その異次元で、膜状に集まった弦が動き回り熱が発生していたのだ。
ブラックホールの謎の熱を計算する数式は存在しないと主張したホーキング、自らもその問題の検証を続けた。
そして2004年、ホーキングは、自ら会見を開き誤りを認めた。
ホーキングパラドックスを乗り越え、さらに進化した超弦理論、この数式で、人類はいよいよ宇宙誕生の謎を解くことができるのか・・・
無限大、異次元、ブラックホール、神の数式を求める物理学者たちの遥かな道のり。
宇宙最初の姿が垣間見えてきた。
今、超弦理論の予言を検証しようという動きが世界中に広まっている。
ヒッグス粒子を発見した世界最大の素粒子実験施設CERN、次なるターゲットの1つが異次元の発見。
巨大な加速器を使ってミクロの世界に隠れている異次元をあぶりそうとしている。
そして神の数式を求める物理学者たちの闘いの舞台となったブラックホール、世界各国がその入り口を直接観測しようとしのぎを削っている。
注目を集め続ける超弦理論、その生みの親シュワルツ、見捨てられていたアイディアから、新たな理論を構築し、神の数式に近づけてきた。
71歳のシュワルツ、命あるうちに宇宙誕生の秘密にはたどりつけないかもしれない、そう思い始めている。
私たちの宇宙はどこから来たのか、最新の数式が描く宇宙は11次元、しかも10の500乗個という想像を超える数の宇宙が存在しうるという新たな難問も現れている。
宇宙の神秘を紐解く神の数式、それは人類のあくなき探求の証なのだ。
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神の数式1 この世は何からできているのか

1本の鉛筆を、尖った方を下にして机にたててみよう。
もし完璧に垂直にたてることができれば、バランスがとれて倒れないようにできるかもしれない。

どんなに真っ直ぐたてても鉛筆は必ず倒れてしまう。
なんどやっても、どれだけ完璧に垂直にしたとしても・・・
そんなの当り前じゃないかと思うかもしれない。
しかし鉛筆が倒れる何でもない現象が、ある科学的大発見の大本になっている。
スイスにあるヨーロッパ合同原子核研究機構CERN、2012年7月、ここで1つの素粒子が発見された。
ヒッグス粒子、人類が探し求めてきた最後の素粒子の発見として最先端科学になじみがない人まで湧いた、世紀の大発見と言われた。

鉛筆が倒れる現象の重要さに、世界で初めて気づいたのは、2008年ノーベル賞物理学者・南部陽一郎92歳、物理学の最終目標と言われるある研究を長年続けてきた1人。
この世にもし創造主がいるとしたら、一体どんな設計図に基づいて宇宙を作り上げたのか。
アインシュタイン以来、物理学者達は、いわば神の設計図を発見し、それを数学の言葉=数式で表したいと血眼になってきた。
神の数式の探求だ。
これまでも物理学者たちは、いろいろな現象を数式で表すことに、一様の成功は収めてきた。
例えばオーロラが輝く理由は、こんな数式で表される↓

大気の動きならこんな数式↓
dv/dt=ρK-grand p+1/3η grand(div ∨)+η▽2v
電気が係る現象については、この数式がある程度うまくいくことが分かっている。
けれども、もしあらゆる現象を寸分の狂いもなく、しかもたった1つの数式で説明することができたなら、それこそが創造主の設計図、つまり神の数式と言えるのではないか。
物理学者はその数式を求める野望に取りつかれているのだ。
すべての物理学者は、いわゆる万物の理論を見つけることを夢見ている。
自然界のありとあらゆるもの、素粒子の世界から大宇宙までを説明できる数式だ。
この世は何からできているのか、神の数式を探し求めるための血のにじむような道のり・・・
それはいわば神の名にふさわしい完璧な美しい数式を求めようとする、苦難の連続だった。
大発見で打ち破った困難、その一方で完璧な美しさを追い求めるあまり、この世が数式上は存在してはならないという矛盾した結論に苦悩する年月も続く。
そんな時鉛筆のアイディアを引っ提げて登場したのが南部陽一郎、完璧に垂直にたてた鉛筆でも、必ず倒れる運命にあるように、完璧な美しさは、現実世界では崩れる運命にあることを示し、神の数式への扉を開くことになる。
 
月この世は何からできているのか〜天才たちの100年の苦闘〜
これからお話するのは、物理学の中でも素粒子物理学と呼ばれる世界の人たちのお話。
彼らはこの世のすべての出来事が数式で書けるに違いないと疑わないちょっと変わった人たち。
頭の中は、とにかく数式でいつもいっぱい。
私たちとは考え方がすっかり異なる物理学者たちは、どんな方法で万物の理論に肉薄しようとしてきたのか?
実は、物理学者たちはこの100年間で神の数式にかなり近づいたという。
ヒッグス粒子を発見したCERNの裏庭に1つの数式が刻まれている。
物理学者たちが神の数式に最も近いと考える最先端の数式。
この式を少し詳しく書くと、こんな感じ↓

1行目はこの世界を作り上げている物質の最小単位、つまり素粒子がどんな性質を持っているのかを表す数式なのだという。
その素粒子は4種類↓

これらの素粒子はどこにあるのか。
ミクロの世界に存在している。
まず原子の中をくるくる回っている電子。(e)
そして原子の中心の原子核を作り上げているのがクォークと名付けられた2種類の素粒子。(u d)
最後に原子核から時折飛び出してくることがある気まぐれな素粒子がニュートリノ。
これらの素粒子を原子の中にまとめたり、動かしているものの正体は?
それを表しているのがこの3行↓

電子を原子核に引き寄せているのが電磁気力、2種類のクォークをまとめ原子核を作り上げているのが、強い核力と呼ばれる力。
ニュートリノを原子核から飛び出させていた原因は弱い核力と呼ばれる力。
物理学者たちは先ほどの4つの素粒子と、この3つの力が完全に理解できれば、オーロラや台風だけでなく、この世のすべてが説明できると信じているのだ。
そして最後の2行は、ヒッグス粒子の存在を示した部分。
物理学者はこの神の数式に最も近い数式にどうやってたどりついたのか・・・

まずは1行目物質の最小単位である素粒子を説明する数式、そこには数式の美しさにとことんこだわった1人の男の物語があった。
神の数式探しの最初の舞台となったのは、1920年代後半のケンブリッジ大学だった。
ここに1人の若き物理学者、ポール・ディラックが暮らしていた。
ケンブリッジの中でも最も権威のあるルーカス教授職に30歳の若さで就くことになる天才。
このルーカス教授職に就いた人物には、あのニュートンや、車椅子の天子ホーキング博士がいる。
万物を説明する数式を探したい。
ディラックの興味はまず4種類の素粒子のうちで唯一発見されていた電子に向かった。
すでに電子はマイナスの電気を持っていることはわかっていた。
さらにその性質を表す数式も知られていた。
シュレディンガー方程式、この数式を使えば、電子のエネルギーなど、ほぼ正しく求めることが可能だった。

ところがその電子にシュレディンガー方程式では説明のつかない性質があることがわかってきた。
いわば地球のように自転をし、さらに磁石のような性質を持っているという事実だった。
なぜ自然は自転する磁石のような不思議な性質を電子に与えたのか、ディラックはその性質を説明できる新しい数式を作り出したいと考えた。
当時の物理学者の姿は、こんな風に例えられる。

この時持っていた最高の知識を武器に、素粒子の正しい数式を求めようとしたものの、まるで歯が立たなかったのだ。
新しい数式を作ろうというディラックのアプローチは、非常に変わっていた。
それまでは実験や観測結果をそのまま数式に置き換えればよいと考えられていた。
一方ディラックは、自分の美的感覚に従うことにした。

ディラックの座右の銘「物理法則は数学的に美しくなければならない。」
美の感覚には個人差がある・・・が物理学者にとっての美しさは、対称性と呼ばれ、その基準は非常にはっきりしている。
例えばこの2つの図形、物理学者なら迷わず右を美しいと考える。

物理学者はXとY座標軸を使って美を見極めている。
座標軸を回転させたとしても円の数式の形は変化しない。
このことがすごい事だというのだ。

この数式には回転対称性があるといい、物理学者は、これを美しいと感じるのだ。
さらに物理学者はこんな縞模様も大好き、それはこの模様を表す数式が座標軸を平行にずらしてみたとしてもやっぱり変化しないから。
こんな時物理学者は並進対称性という美しさがあるという。

基準になる座標軸、つまり見る人の視点を変えても数式が変わらないことが美しいのだ。
ちなみに先ほどの円の数式が座標軸が平行に移動すると、形がこんな風に大きく変化してしまう。
 
だから円の数式は回転対称性は持っているが、並進対称性は持っていない。
対称性とは、見る人の視点が変わっても、もともとの形や性質が変わらないということ。
正方形は視点を90度回転しても全く同じに見える。
物理の数式も、見る人の視点によって変化しない。
ディラックが大切にしていたもう1つの美しさがローレンツ対称性。
アインシュタインの相対性理論関係があり、いわば時間と空間は本質的には同じものだという意味。
その上でディラックは、こんな風に考えた。
もし神が作った宇宙の設計図があるとするならば、それは完璧な美しさ、つまり全ての対称性を持ったものに違いない。
シュレディンガー方程式をよく見ればわかるように、時間を表すtが1つ、空間を表すxは2つ含まれている。

だから時間と空間は同じものだというローレンツ対称性は持っていなかった。
そのため視点が変わると数式は形が大きく崩れてしまう。
見る立場が変わると変化してしまう数式は神の数式としてふさわしくない。
ディラックはすべての対称性を持った美しい数式の構築を目指した。
3か月間書斎にこもりっきりになったディラック、外部との接触を一切断ち切る。
有頂天な気持ちと恐怖が交互に現れ、何度もパニックに陥る日々、しかし美しさにとことんこだわった苦労は報われる。
1928年に発表された論文『電子の量子論』に登場したのはディラック方程式。
 tとxが1つずつ、あのローレンツ対称性をも満たすシンプルな数式だった。

その威力は驚くべきものだった。
電子の自転や磁石といった謎めいた性質をすべて正確に説明することができたのだ。
さらにその後見つかったニュートリノやクォークなど、物質の最小単位である全ての素粒子の性質がディラック方程式で説明できることまで分かった。
全ての対称性を兼ね備えることで、素粒子の性質を完璧に説明する数式が解明されたのだ。
物理学者たちが神の数式を刻み込んだ石碑の1行目には、ディラック方程式がコンパクトにまとめられ、刻み込まれた。
この世は何からできているのか、それを1つの数式で解き明かそうとする物理学者たちの戦い、次に立ちはだかったのは、素粒子同士を結び付けたり動かしたりしている3つの力の数式がまだわかっていないという問題だった。
最初のターゲットは3つの力の中で最も身近な電磁気力だった。
電磁気力は原子核に電子を引き寄せ、さらには原子同士をまとめあげ、様々な物質を生み出す源となっている力。

1930年代、アメリカ西海岸に電磁気力の数式に挑む1人の物理学者がいた。
ロバート・オッペンハイマー、その後原爆の父と呼ばれるようになる人物。
あらゆる研究分野でその名がとどろいていた。
オッペンハイマー達当時の物理学者の考え方は、こんな風に例えられる。
かつてディラックはローレンツ対称性という美しさを武器に付け加えることで、素粒子の性質を表す数式に導かれた。
同じように何か新たな美しさ、つまり対称性を取り込めば、電磁気力を表す数式にたどりつけるのではないかと考えた。
オッペンハイマーたちが目を付けたのは、ゲージ対称性と呼ばれる4つ目の対称性だった。
ゲージ対称性は難しい概念だが、ごく簡単に言えば回転対称性に似ているという。
電磁気の大きさを測る分度器が空間にあって、その角度を変えたとしても数式の形は変化しない、という美しさを意味している。
 物理学者たちはゲージ対称性を含む4つの美しさを持った数式の構築を模索した。
すると再び1つの数式が姿を現した。
いわばディラック方程式の発展版、4つの対称性を持った電磁気力の性質を説明する数式の誕生だった。

数式から導き出された世界は興味深いものだった。
電子は光子と呼ばれる光の粒を放ち、それが電子と原子核を結び付けている。
電磁気力を伝える実態もまた、粒のような存在だという。
新たな対称性から導き出された電磁気力の数式は、この世の成り立ちを見事に説明するだろう・・・
ところが意外な事実が待っていた。
色々な計算を行ってみると、無限大という全く意味の分からない数値がでてきた。
皆、数式が間違っているかもしれないと考えた。

オッペンハイマーが発表した論文『場と物質の相互作用の理論について』、実際に数式を使ってみると電子のエネルギーは無限大と数値になってしまい、それはあらゆる物質が存在してはならないということを意味した。
なぜ無限大というわけのわからない数値ばかりが出てくるのか、オッペンハイマーは仲間の物理学者たちと手分けをして計算を何度もやり直したが、無限大の問題は全く解消できなかった。
この頃時代の歯車は大きく狂い始める。

1939年9月ドイツがポーランドへ侵攻、第2次世界対戦が始まった。
さらにアメリカの物理学者フェルミがウランの核分裂連鎖反応に成功、多くの物理学者が原爆の開発へと駆り立てられることになった。
アメリカが誇る天才オッペンハイマーはマンハッタン計画の責任者に任命された。
ニューメキシコ州のロスアラモスに集まる物理学者たち、神の数式へ近づくための研究は、無限大の問題を解消できないまま姿を消した。
何十万人もの命を奪った原爆、ジャーナリストたちはオッペンハイマーに、原爆の父という称号を与えた。
その後電磁気力の研究の第一線に戻ることはなかった。

純粋な理論物理学の世界で生きる道はなかったのか、戦後自戒の念に苦しめられたオッペンハイマーに、思わぬ場所から手紙が届いたのは、1948年のことだった。
差出人は朝永振一郎、名前も知らない日本の物理学者だった。
自分は戦争中に無限大の問題を解決する方法を見つけていた。
しかしそれを欧米に発表する機会を奪われていたという内容だった。
自分が開発した原発の被害国からの思わぬ知らせにオッペンハイマーは心を揺さぶられる。
英語に翻訳された朝永の論文『量子場理論での無限大の反作用について』は、オッペンハイマーの手助けで、世界で最も権威のあるフィジカルデビュー誌に掲載された。

特殊な計算方法を開発し、無限大の困難を打ち破った論文に、世界は度肝を抜かれる。
あるアメリカの物理学者はこう語った。
フリーマンダイソン著『Disturbing the Uni
verse』「戦争の廃墟と困難のさなかにある日本で、国際的に完全に孤立状態にありながら朝永はどうにかして理論物理研究集団を維持し、ある意味では世界のどこよりも進んだ研究を行っていた。
我々には深淵からの声のように響いた。」
ちょうど同じころ、朝永と全く同等の理論をアメリカの若き物理学者リチャード・ファインマンとジュリアン・シュウィンガーが発表、戦後の自由な空気の中、無限大の問題は一気に解決した。
朝永達がまとめあげた数式による計算結果は、実験事実と驚くべき一致を見せた。
例えば電子が持つ磁石の強さもその1つ。
対称性の美だけから導かれた計算結果はこんな数値、それは実験で測定された磁石の強さと、小数点以下10桁までぴたりと一致した。

対称性(Gauge Symmetry)という美に従えば正しい数式を構築できる。
ディラックから始まった信念は、電磁気力の数式をも解明した。
物理学者たちがたどりついた神の数式の2行目、驚異的に正確な数式が歴史に刻まれることになった。

見事に解明された電磁気力の数式、しかし続く1950年代、神の数式の構築を目指す物理学者たちは、思いもよらぬ事態に翻弄されることになる。
その悲劇の主役となったのは、中国出身の風雲児チェンニン・ヤンだった。
物質を構成する素粒子をまとめたり動かしたりしている3つの力、すでに電子を原子核に引き寄せる電磁気力の数式は解明された。
ヤンが挑んだのは、原子核を作るクオーク同士を結び付けている強い核力。
そしてニュートリノを原子核から飛び出させる弱い核力だった。
ヤンがこうした力の数式を目指す手掛かりにしたのも美しさ、つまり対称性をさらに追及すれば、新たな力の数式も構築できるはずだと考えた。
ヤンは原子核の中にゲージ対称性と似た美しさが存在しないか調べ始めた。
そしてたどりついたのが物理学者にとっても超難解だと言われる非可換ゲージ対称性と呼ばれるものだった。
1954年ヤンが同僚のミルスと共に発表した研究論文『荷電スピンの保存とゲージ不変性』、新たなゲージ対称性を数式に持たせることで、素粒子の間の新たな力の数式にたどりつくことができた。
ヤンの理論を推し進め、それを現在の物理学の言葉で書き表すと、こんな数式になることが分かっている。

これで物理学者たちが神の数式に最も近いと考えるものが、ヒッグス粒子の部分を除き全部そろった。
ついにこの世のすべての力と素粒子を表す数式が見つかった。
多くの物理学者が期待に胸を躍らせた。
ところがそこには全く予想外の落とし穴があった。
それは強い核力や弱い核力を伝える粒子の重さがどう計算しても全て0になってしまうという矛盾だった。
重さが0なのは光子だけで、ほかの粒子はすべて重さを持つはずだった。
数式は素晴らしく美しい。
しかし力の粒子の重さは0になってしまうという点で現実とかけ離れている。
完璧な美しさを追い求めてきた物理学者の目の前に重さ0という大きな矛盾が姿を現した。
その後まもなくヤンの理論について議論しようという物理学者はほとんどいなくなった。
ヤン自身も議論の完成を諦める。
さらに物理学者たちを驚かせる出来事が続く。
対称性のより深い研究から、力を伝える粒子だけでなく、物質の最小単位であるすべての素粒子の重さまでもが数式上は0になってしまうという驚くべきことが指摘された。
つまり世の中のすべてに重さがないという現実とは矛盾した結論が数式から導き出される事態になったのだ。
もし本当にすべての素粒子に重さがないとしたら大変なことが起きる。
計算上、原子からは電子が飛び出し、物質はすべてバラバラになってしまうのだ。
全ての素粒子の重さが0だったとしたら、あらゆるものが飛び散る。
全てが光の速さで飛び出すのだ。
安定なものはなくなり、人も犬も猫も全てのものがなくなる。
あらゆるものが光の速さで動き、原子を構成するものがなくなってしまうからだ。
対称性という美しさに導かれ神の数式に近づいていったはずの物理学者たち、そのすぐ足元には、重さの謎という深い落とし穴があったのだ。
全ての謎がとかれるまでには、ヒッグス粒子の発見を待たねばならなかった。
1960年代シカゴにそれまでとは全く異なるタイプの物理学者が登場する。
日本生まれの南部陽一郎、人々は彼をこう形容した。
南部には未来が見えている・・・
この異質の天才が、美しさに導かれるとなぜか重さが0になるという大きな矛盾を解決することになる。
1960年代初め、南部が最も興味を持っていたのが、いわばこの現象。
そう、倒れてしまう鉛筆の問題。
単に鉛筆が倒れる何でもない現象だと思うかもしれないが、この現象が重さの矛盾を解くヒントになると南部は気づいた。
ここに鉛筆をたてるという設計図があるとする。
まっすぐに立てなさいというのだから、この設計図は回転対称性を実現するように描かれている。

そして設計図通り実際に鉛筆をたててみるとどうなるか。
現実は設計図通りの回転対称性を持った状態にはならない。
設計図には対称性があるのに、実際に起きる現実には対称性はない。
その後ノーベル賞に輝く「自発的対称性の破れ」と呼ばれる現象だ。
南部はこの「自発的対称性の破れ」が自然界の設計図でも起きうるとひらめいたのだ。
南部陽一郎が初めて示したのは、自然界の設計図に対称性があったとしても、我々が観測する物理現象には、その対称性がなくてもよいということ。
数学的に言えば自然現象を記述する数式に対称性があっても、その数式から導き出される現実には対称性がなくてもよい。
1961年に南部が発表した強い核力に関する研究論文『超伝導の類推による素粒子の動的模型』の内容を現在の物理学の言葉で言えばこうなる。

これは強い核力を表す数式、つまり強い核力の設計図。
少し詳しく書くとこんな感じ↓

強い核力を感じるクォークの姿が見えている。
この設計図は一種のゲージ対称性に沿うように描かれていて、その結果クォークの重さは0でなければならない。
しかし回転対称性を持つ鉛筆の設計図から回転対称性がない現実が生れたように、クォークの重さが0だとする設計図から、クオーークに重さがあるという現実が生れてくることを南部は見抜いた。
南部が解決したことをわかりやすくまとめるとこうなる。
完璧な美しさを追い求めてきた結果、重さ0という矛盾にぶち当たった物理学者たち、しかし南部は完璧な美しさは崩れる運命にあることを倒れる鉛筆を例に示し、その結果この世界に重さが生れてくることを証明したのだ。
倒れる鉛筆という身近な存在から生まれた自発的対称性の破れは、誰もが予想しなかった大発見だった。
さて強い核力からクオーークの重さが自動的に生まれることはわかった。
しかし強い核力を感じない電子やニュートリノ、そして弱い核力を伝える粒子などの重さが数式上はどうしても0になるという問題が残っていた。
この問題にヒッグス粒子という新手のアイディアで挑むことになるのがスティーブン・ワインバーグだった。
ワインバーグはクォーク以外の素粒子にも重さを持たせるため、南部が提唱した自発的対称性の破れを応用できないか悩み続けていた。
そしてついにそれまでの物理学者が決して踏み出さなかった、いわば禁断の領域へと足を踏み入れる。
それはこの世には存在しない都合のよい粒子を理論に持ち込むことだった。
ワインバーグ「私の理論では、ある種の新しい場というか、力というか、そいういうものを持ち込んだ。
それがどんな時でも何もない真空をびっしりと埋め尽くし、しかもそれが宇宙全体に広がっているという考え。
これが自発的に対称性を破るのだ。」
当時ワインバーグが参考にした研究論文『ゲージ粒子の質量と対称性の破れ』(ヒッグス1964年)によると、ある都合のよい素粒子ヒッグス粒子を理論に持ち込めば、数式の美しい対称性は保ったまま素粒子の重さを持たせることができると書かれていた。
その都合のよい粒子は、最初は空間にほとんど存在しないにも関わらず、その後勝手に空間を埋め尽くすような粒子だという。
これは最初は完璧な美しさを保っていた世界が、その後勝手にその美しさを失うという南部の考え方を応用したものだった。
さて、ワインバーグによると、このヒッグス粒子に邪魔されることで電子などが行く手をはばまれ、動きにくくなる。
その動きにくさこそが重さの正体だというのだ。
1967年に登場したワインバーグの論文『軽粒子の一つの模型』、ワインバーグはヒッグス粒子のアイディアで電子や弱い核力の粒子にも重さを与えることに見事に成功した。
重さの謎に翻弄されてきた物理学者たちは、ヒッグス粒子の力を借りてついに神の数式にたどりつく道を見つけた。
ところが当時ワインバーグの理論の評判は決してよいものではなかった。
ヒッグス粒子があまりに都合がよすぎるという違和感を一部の物理学者が拭い去れなかった。

車椅子の天才ホーキング博士は、ヒッグス粒子が存在しない方に金銭までかけた。
そして迎えた2010年、ワインバーグの理論の発表から40年以上の年月が流れていた。
ヒッグス粒子を見つけるため、人類史上最大のエネルギーを空間の一片に注ぎ込む実験装置がついに動き始めた。
CERNで2年以上にわたる実験を経て、ヒッグス粒子が叩き出されたと思われるシグナルが捉えられた。
ワインバーグの理論が立証されたと、世界中が称えた。
物理学者たちがたどりついた1つの数式、この世界を作る4種類の素粒子と3つの力を矛盾なく書き表した標準理論が完成した。
ヒッグス粒子を発見したCERNの片隅には、神の数式に最も近いとされるその数式が刻まれた。
それは物理学者たちの100年にわたる闘いの金字塔だったのだ。
神の数式の美しい対称性がこの世界にどのように反映されているのか、今物理学者たちはビッグバン以来の宇宙の歴史の中で、次のように解釈している。
宇宙は設計図である神の数式に従って誕生し、当初は設計図通りの完璧な対称性を保っていた。
そこではあらゆる素粒子に重さがなく、バラバラに飛び回っていた。
しかしヒッグス粒子などが引き起こす自発的対称性の破れによって素粒子に重さが生れた。
その結果素粒子がまとまり、原子が作られ、星々が輝き始め、銀河も形成されていった。
今、私たちの暮らしが存在することも、いわば神の数式に織り込まれていたというのだ。
ヒッグス粒子の発見によって、標準理論は今やこの世界に説明できない現象はないとまで言われるようになっている。
しかし標準理論を構築した物理学者たちは、理論の完成を喜ぶよりも、むしろ今、その先を目指し始めている。
標準理論の完成のためにヒッグス粒子の導入に踏み切ったスティーブン・ワインバーグ、万有引力、つまり重力を取り込んだ理論の構築が必要だと考えている。
素粒子の世界では、素粒子があまりに軽いため、それまで考えに入れる必要がなかった重力、今、物理学の最先端では、この重力をも取り入れなければ、本物の神の数式にはたどりつけないという考え方が支配的になっている。
およそ100年の歳月をかけて、この世の成り立ちを解明してきた物理学者たち、神の数式を探し求める闘いは、今もまだ終わっていない。
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The Universe★Nemesis,The Sus's Evil Twin謎の恒星ネメシス

最初に存在していたのは闇だけだった。
そしてビックバンが発生、時間、空間、物質が無限の膨張を開始した。
神秘と驚きに満ちた空間・・・宇宙、今日もまた新たな発見によって、この宇宙の謎が解き明かされてゆく。

私達の太陽には、邪悪な仲間がいるという。
それは太陽系のはるか遠くを周回している未発見の死の星。
周期的に太陽系に破壊をもたらし、地球で発生した大量絶滅の原因とも言われている不可解な恒星。
科学者たちは巨大な天体や謎の小惑星を調べながら、その姿を探し求める。
天空できらめく幾多の星の中には、地球の生命に災難をもたらす恒星があるという。
太陽の邪悪な双子の兄弟と呼ばれるネメシスだ。
ネメシスは未発見の暗い恒星で、太陽の周りを公転している。
そして2600万年ごとに災難を引き起こしているという。
Greg Laughlin(Universe of California,Santa Cruz)「太陽系は彗星が集まった巨大なオールトの雲に囲われている。
ネメシスは彗星と内部太陽系を弾き飛ばし、その一部は地球に衝突すると言われている。」

それが事実なら、大災害がもたらされるだろう。
今から6500万年前に発生した恐竜絶滅は、彗星の衝突が原因だという。
しかし天文学者Richard Mullerは、その時期に宇宙の岩石が地球に衝突した理由について、革命的な説を唱えた。
Richard Muller(Lawrence Berkeley Nacl,Laboratory)「私はネメシスの仮説を提唱した。
それは太陽の周りを2600万年周期で公転している恒星があるという説だ。
他に考えられる説はもうないと思う。」
ミュラーによると、ネメシスが太陽の近くに来ると重力場が乱れ、彗星は内部太陽系に弾き出される。
その彗星が地球に衝突して大量絶滅が引き起こされたという。
なぜネメシスの仮説を考え出したのだろうか?
Muller「2人の古生物学者が絶滅のパターンを調べていた時、不思議なことに気付いた。
同じような大量絶滅が2600万年ごとに発生していたのだ。
しかしその原因と考えられるものが地球にあるとは思えなかった。
ミュラーは驚くべき仮説をたてた。
周期的な絶滅をもたらしている要因は、2600万年ごとに太陽を周回し、彗星を軌道からはじき出している天体、いわゆる太陽の仲間の星、番星であると。
Muller「その恒星は地球上の生命の進化に大きな役割を果たした。
それがなかったら、今でも恐竜がいたはず。」
もしミュラーの説が正しいなら、人類が存在するのもネメシスのおかげだと言えるだろう。
大量絶滅が発生するごとに、多くの生物種が消滅した。
しかしその後、新たな種が出現し、最終的に人類が登場するに至ったのである。

Clifford Johnson(Univ.of Southern California)「ネメシスによって地球がどう進化したかを理解するには、野焼きを見ればわかる。
炎が多くの生物種を消し去ったが、そこには新たな種が登場できる空間ができた。」
どうして野焼をするのか・・・?
この場所の植物を一斉になくすため、在来種の植物が育つよう、非在来種の植物をとりのぞく。
毎年区画を変えて野焼をしている。
植生の研究や環境に与える影響を観察することもできる。
計画される野焼は、ネメシスが引き起こしたとされる大量絶滅に似た状況を生み出した。
絶滅では多くの生物種が一掃され、その破壊によって生き延びた種が繁殖し進化する。
恐竜が絶滅するという大事件の後、哺乳類が生き延びて繁栄したが、それが人類出現へのキッカケを作ったのである。
この地域では、毎年定期的に野焼が行われている。
大量絶滅も定期的に繰り返し発生したが、その規則性こそ、ネメシスの仮説が生み出されたキッカケのようだ。
Muller「大量絶滅の周期性について説明できる要素は2つしかない。
1つはネメシスの仮説、もう1つは大量絶滅が偶然にも2600万年ごとに規則的に発生したというもの。」

しかしネメシスはどのように大量絶滅を発生させたのだろうか。
その答えになりうるものは、太陽系の1つの領域、オールトの雲にあるという。
オールトの雲は、彗星が集まっている低温の領域で、彗星はそこから太陽に向かって弾き出される。
つまり普段彗星は地球と地球から近い星星との間で凍りついている。
オールトの雲にある彗星の大多数は、太陽から1光年離れた領域を軌道周回している。
しかし時にそれを邪魔されることがある。
時々恒星が近づいてくると。彗星はぶつかりあう。
ぶつかった時の勢いで、彗星は太陽と違う方向にはじきとばされることもあれば、逆にゆっくりと太陽の方向に向かっていくこともある。

なぜ彗星の軌道は近くを通る恒星の影響を受けやすいのか?
ジャグリングを例に説明しよう。
ジャグラーが玉を放りあげてできるカーブは彗星が軌道を描く時のカーブに似ている。
ボールは頂点で速度が遅くなり、下では速くなる。
ジョシュ・ホートン(ジャグラー)「まず2つでやってみよう。
ボールを投げたら空中で彗星の軌道のように交差させる。
右→左→キャッチ→キャッチ・・・」
Laughlin「ジョシュは7つのボールを同時に投げている。
でも太陽は何兆個もの彗星をオールトの雲の中で周回させている。」
しかしネメシスの仮説によると、太陽を周回するす異例の軌道は、邪悪な兄弟星によって2600万年ごとに乱されているという。
そしてこの邪悪な兄弟星の姿は見えない。

太陽には太陽系の外側の領域を公転している邪悪な兄弟星ネメシスがいるのだろうか?
それは2600万年ごとにオールトの雲から地球に向かって彗星を弾き飛ばしているのだろうか?
Laughlin「彗星には、弾き飛ばされるものもあれば、蒸発して消えるものもある。
もし彗星が内部太陽系に飛んできたら、ある意味覚悟するしかない。」
Mullerが提唱しているのは、この周期的な破壊行為の原因がネメシスにあるということだけではない。
彼はネメシスの正体が赤色矮星であることも確信している。
赤色矮星は小さな恒星で、質量は太陽の10分の1以下、それがどんな影響を及ぼすかは、炎の棒をジャグリングするジャグラーの手元に、4kgのボーリングの玉を投げ込むと分るという。
炎の棒は、オールトの雲の彗星を意味する。
Laughlin「オールトの雲を周回する彗星のように炎がスムーズに回転している。
赤色矮星を中に投げ込んだらどうなるだろうか?」
中に赤色矮星が入ったことで、彗星の軌道が大きく変わった。
今2つの彗星が地面に落下した。
これは大量絶滅を引き起こした天体衝突を意味している。

地球は太陽の兄弟星が引き起こした天体衝突の犠牲になっていたという仮説は信じられないかもしれない。
なぜなら空を見上げても、太陽は1つしかないからだ。
だが実のところ恒星はペアになっている場合が多い。
Laughlin「恒星の6〜7割はペアになっている。
連星、あるいは3つ以上の星が組になって連星系を作っている。
Mullerのネメシスの仮説によると、私達の太陽も連星系を作っている。」
Muller「私がたてたネメシスの仮説では、太陽は銀河系の中にある恒星の3分の2と同じように番星を持ち、その星は2600万年周期で公転している。」
もしそうなら、なぜ太陽の兄弟星は見えないのか。
Mullerによると、その理由はネメシスが極めて暗い赤色矮星だからという。
定義によると、赤色矮星はほとんど光を放っていない。
Muller「ネメシスは太陽のもっとも近くにあるのに、未発見なのはなぜだろう。
番星を発見できるのは、明るく光っているからだが、ネメシスは明るくない。
または晩性が太陽の近くを通過するからだが、ネメシスは地球よりゆっくり太陽を周回していて、空に固定されているように見えるので気付きにくい。」
言い換えると、地球から見た場合、近くにある天体は時と共に移動する。
しかしネメシスは止まって見えるという。

ネメシスの探索が進んでいくにつれ、重要な疑問が浮かんだ。
どこを探すかである。
連星が互いにどのように軌道運動しているかについては、科学的に判明しているので、その理論をネメシスに当てはめることができる。
もし太陽とネメシスが同じ質量を持つとしたら、大きくて同じような円を描く軌道運動をするだろう。
その場合ネメシスは簡単に探せるはずだ。
しかし連星が同じ大きさになることは滅多にない。
Laughlin「連星のうち1〜2割はペアの恒星が全く同等の条件になっているが、大多数の連星は片方の質量がかなり大きくなっている。」
連星の大きさが異なる場合、小さいほうの番星、この場合ではネメシスは、大きなほうの主星、太陽の周りを大きく公転する。
大きな太陽は全く公転していないかのように見えるが、なぜネメシスは大きな軌道を描くのだろうか。
その答えは質量重心という概念に関連しているという。
シーソーの両端に体操選手に乗ってもらい、説明しよう。
Laura Dunly(Griffith Observatory)「ペアの連星は、共通の重心の周囲を公転する。
もし2つの恒星がほぼ同じ質量なら、2つの間のちょうど真ん中の部分を中心に公転する。
ちょうどシーソーがつりあっているように。」
だが2人の体操選手と違って、ネメシスと太陽は大きさが違う。
ネメシスの説を提唱したMullerは太陽の質量はネメシスの10倍と予測している。
そして連星の片方が大きい場合、両者の間の質量重心は、大きな方の恒星に移動するという。

Dunly「タミーは体重69kg
シーソーの片方に16kgの錘を載せる。
シーソーに乗ってもらい、どこでバランスがとれるか見てみよう。」
タミーは錘のほぼ4倍の重さ、シーソーのバランスを保つためには、質量重心のかなり近くに来なければならない。
もしタミーと錘が連星だとしたら、タミーは動かず、錘は遠く離れた軌道を公転するだろう。
だが実際、両社は互いに公転することになっている。

Dunly「質量の大きな恒星が動かず、小さいほうだけが公転すると考えるのは誤解だと思う。
実際、両方とも共通の重心の周りを公転している。
大きな恒星はあまり動かないが、小さな方は大きく動く。」
この概念は、ネメシスが太陽に対してどこに存在するかを予測するためのカギになっている。
Muller「軌道周期が2600万年ということは、半径は1光年と少し、つまり軌道の大きさは分っている。」
科学者たちは、探すべき場所に検討をつけ、本格的にネメシス探しを開始した。
そして現在、驚くべき新たな仮設がもたらされている。
太陽が未発見の兄弟星を持つだけでなく、太陽系に未知なる巨大な惑星が存在するという説だ。
彗星を弾き飛ばし、地球に大量絶滅をもたらすという恒星ネメシス、探索のための準備は整ったが、1つだけ足りないものがある。
Johnson「ネメシスの仮説には、ネメシスの存在を示す直接的な証拠が必要。
そうすれば、すべての情報がそろう。」
Muller「多くの天文学者はネメシスの仮説に関心がなく、もしネメシスが存在するとしたら、もう見つかっているはずと考えている。
今後薄暗い恒星を探してゆけば、数年後にはネメシスを発見できると私は信じている。」
広域赤外線探査衛星WISE、ネメシスの謎を紐解く力強いツールと期待されている。
物体の光ではなく、熱を探知することによって、暗くても熱を持つ天体を容易に探せる。
熱を探知する方法の長所は、太陽からどれだけ離れていても観測できる点、その典型的な1例は木星。
木星の表面温度は摂氏-145℃と計測されている。
しかし宇宙空間の温度-270℃に比べたら、燃えるように熱いことになる。
つまり太陽の光が届かない、遠い木星のような惑星でも、赤外線画像では明るく映し出されるのだ。

オートレース場、赤外線探査衛星WISEが物体の温度差を利用して、どのようにネメシスを探査するか確かめてみよう。
Alex Filippenko(University of California,Berkeley)「私はこれからレースカーに乗り込み、高速でトラックを回る。
そしてレーシングカーを赤外線カメラで撮影し、車が周囲の環境より熱くなっている様子や、真っ赤に映し出された赤外線の波長を見る。」
速度は約270km/h、走行中の車を赤外線カメラで撮影した。
すると新たな視点で車の熱を捉えることができた。
「赤外線カメラは、カメラというより計測機で、温度をとても細かく捉える。
無数の画素ごとに温度を計測している。
熱くなっている部分は赤、オレンジ、白、熱くなっていない部分は冷たいイメージを持つ青や黒になる。」
熱い部分に色の違いがあるのが分る。
右側のタイヤは左より熱くなっていた。
カーブを曲がると圧力がかかるからだ。
タイヤの温度は約88℃、さらにこのカメラは昼間だけでなく、夜の暗闇の中でも計測できる。
探査衛星WISEも、太陽系の中の暗くて遠い領域を映しだす。
もしネメシスがあれば、赤外線で捉えることができるだろう。

Filippenko「数百万光年も先にある天体を観測できるのは、その天体が明るく輝いていて、莫大なエネルギーを発しているから。
でも太陽系周辺の天体は小さくて、太陽の光をあまり反射しないので、可視光線の波長では見えない。」
しかし科学者がネメシスに関連したデータを分析した時、彼らは気がかりなことを発見した。
ネメシスはあと数百万年間は戻ってこないと予測されているが、現在オールトの雲にある彗星の軌道を乱そうとしているものがあるという。
もしかしてネメシスなのだろうか。
ネメシスの仮説が提唱されて以来、暗くて赤い恒星の探査が行われている。
その恒星は、オールトの雲にある彗星の重力を定期的に乱しているだけでなく、多くの彗星を2600万年ごとに内部太陽系に送り込むという破壊的な一面も持っている。
しかしオールトの雲を調査していた時、現在何かが彗星の軌道を乱しているという不穏な証拠が見つかった。
ネメシスがすでに戻ってきたのだろうか。
Laughlin「もしネメシスが存在せず、太陽だけなのだとしたら、オールトの雲の彗星の軌道はすべて予測可能で、規則的になるはず。
軌道上を移動する時間がとても正確になる。」
他の天体から重力の影響を受けていなければ、オールトの雲の彗星は、ジャグリングされている物体のように、均一に分散しているはず。
しかし科学者が気付いたことは、どれだけではない。
Laughlin「彗星が空のどこから飛来してくるか調査した結果、彗星が飛んでくる方向は空の特定の領域に集中していると分かった。」
その理由は・・・
宇宙には未発見の天体があって彗星が飛んでくる方向はそうした天体が持つ重力の摂動によって決まるのだと。
科学者たちは、ある巨大な天体がオールトの雲を乱しているのではないかと推測している。
それは何らかの事故が交通渋滞を引き起こしているのではないかと推測することに似ている。
壁面にあるのはロサンゼルス市内の高速道路網、市内の主な高速道路が表示されている。
この図の緑色は交通の順調な流れを、赤は交通渋滞が引き起こされていることを意味している。

Danly「これを見れば渋滞していることはわかるが、状況を具体的に知りたければ、監視カメラの映像を見るか、現場にいる人からの報告を受ける必要がある。
同じく天文学者も常に見えないものを理解しようとしている。
天文学者は何かの存在を推測する。
その存在が見えるからではなく、それが周辺に与えている影響が見えるからだ。」
ラッシュアワーの間、少ない車線に多くの車があふれる、または交通事故が起こる等の理由によって交通渋滞が引き起こされる。
オールトの雲にも同じような混乱が見られるというなら、犯人はネメシスなのだろうか。
オールトの雲の混雑を説明する驚くべき仮説が提唱されている。
その仮説によると、オールトの雲を混乱させている犯人はネメシスではない。
木星の4倍の大きさに相当する未発見の巨大な惑星だと推測されている。
実在すれば太陽系でもっとも大きな惑星となるが、天文学会はこれをテュケーと名付けた。

Laughlin「テュケーはネメシスとは対照的、まずネメシスの方は、元々の仮説では赤色矮星とされ、木星の100倍の質量があると考えられていた。」
ネメシスと違いテュケーは恒星のように光を発しない。
むしろ見た目が変わった木星のようだという。
雲の切れまがみえ、そこに雷が発生している。
その雷の光が上空にある雲を明るく照らしている。
テュケーがオールトの雲にある彗星の軌道を乱しても、地球の周期的な大量絶滅の原因とはいえない。
太陽を周回する周期については、ネメシスは2600万年だが、テュケーは100万年。
しかもテュケーはネメシスの比べとても小さい。
Laughlin「テュケーは彗星を弾き飛ばして地球に周期的な大量絶滅を引き起こすような、またオールトの雲の規則性を乱すような強い重力を持っていない。
つまりテュケーは彗星が飛ぶ方向に、多少の影響は与えられるが、彗星を押出すほどの力はないと考えられている。」
もしテュケーが実在するなら、NASAの赤外線探査衛星WISEによって発見されるだろう。
太陽系に未知の巨大な惑星があるという仮説には驚くが、それがもう1つの未知の恒星ネメシスにつながりはしない。
しかし近年ネメシスの存在を裏付けることになるかもしれない新たな証拠が、太陽系の外円部で発見されたという。

2003年、天文学者のマイク・ブラウンは、歴史的な発見をした。
夜空に説明のつかない天体を見つけたのである。
Mike Brown(Caltech)「セドナを発見した時、コンピューター画面を見ながら思った。
こんな遠い所にありえない、太陽系にこんな天体が存在するはずがない。」
Brownが偶然発見した天体は月よりわずかに小さい小惑星セドナ。
しかしセドナには不可解な点があった。
セドナは太陽から冥王星までの距離のおよそ3倍にあたる遠い地点を周回していた。
天文学会では、惑星は存在しないと考えられていた場所だ。
Brown「そこは太陽系でもっとも遠い低温の領域。
もしセドナの表面に立ち、ピンを持って腕を伸ばして太陽を見たら、太陽はピンの頭に隠れてしまうほど。」
予想外に遠い領域に存在することに加えて、セドナは大きな楕円軌道を描きながら太陽系を周回していた。
謎なのは、それほど遠い軌道を周回する要因となるものがセドナの近くに何もないこと。
ではなぜセドナは大きな楕円軌道を描いているのだろうか。
もしかしたらネメシスが何らかの役割を果たしているのだろうか。
トランポリンの跳躍を見てみると、どのようにしてセドナが大きな軌道を周回するようになったか理解できるという。

Brown「これはどれだけ飛んだかが分る計測用のポール、60cmごとに目盛がある。
それだけ飛んだかということは、太陽からどれだけ遠くを周回するかを意味する。
通常の円形軌道では、惑星は床から常に同じ距離を保つ円形軌道の他に、太陽の周りを楕円形に回る楕円軌道もある。
太陽から遠ざかった後、また太陽の方に戻ってくる。」
天体が重力によって軌道を保つのと同じく、人間はトランポリンで頂点に達すると、重力で引き戻される。
「このまま何もおきなければ、私は同じ高さで跳躍を続けながら、永遠にこの軌道を保つ。」

しかし不思議な何かがセドナに影響を与えた。
セドナは謎の物体とぶつかって、惑星が存在しないとされる領域に押し出された。
推測によると、それはネメシスだという。
そしてもし太陽の邪悪な兄弟星ネメシスが存在するなら、科学者はいつネメシスが戻ってくるか、正確に判断できるという。
数10億年前、セドナは他の惑星と同じように、円形に近い軌道で太陽を周回していた。
しかしある時奇妙なことが2つ起きた。
まずセドナの軌道が極端な楕円軌道に変わったこと、次にその軌道が遠くに押し出されたこと。
それについては今のところ説明がつかないという。
楕円軌道をもたらした要因は、かなり容易に説明できる。
外部太陽系の巨大惑星木星と度生からの重力作用だと考えられている。

それをトランポリンで解説しよう。
どうやって楕円軌道をとるようになるかを理解するには、さらに高く飛ぶ必要がある。
トランポリンで跳躍中に、他の人が加わると、跳躍力が増すように、太陽系の巨大ガス惑星が重力の作用で小型の天体を跳ね返し、軌道を大きな楕円軌道に変えた可能性がある。
Brown「今セドナが順調に楕円軌道を進んでいる。
その後惑星の1つに近づいた。
するとその惑星の重力が加わり、セドナは押し出された。
さらに大きな楕円軌道を描く。
その後木星に近づいた。
木星の跳躍が加わったので、セドナは太陽系のずっと外側に送られる。」
木星と土星によって生み出された軌道の跳ね返しは、なぜセドナが楕円軌道をとるようになったかの説明になる。
しかしなぜ太陽系のはるか遠く、つまり惑星は見つからないだろうと考えられていた領域にまで押し出されたのだろうか。

「セドナは楕円軌道を進みながら、徐々に外側に移動していった。
そしてセドナは他の重力の作用によって、違う軌道に押し出されたまま戻ってこれなかった。」
それはまるで2つ目の重力が通りかかり、セドナを違うトランポリンに押し込んで、予想外の領域に跳ね飛ばしたかのようだ。
「考えられる答えは、セドナの軌道が広がり続けている時に、太陽の近くに別の恒星があったということ。」
Laughlin「太陽系は恒星の集団の中で形成されていったので、初期太陽系ともなれば近くの恒星や重力の強い惑星によく出くわしたことだと思う。」
太陽の兄弟の多くは、はるか昔に離れていった。
しかしネメシスの仮説によると、そのうちの1つが今でも存在し、太陽を周回しながら周期的に彗星の集団を乱し、そしてもう1度地球大量死をもたらすという。
もしそれが正しいなら、ネメシスが1000万年後に戻ってきた時、未来の人々は底知れぬ恐怖に直面するだろう。
Laughlin「月、火星、そのほかの惑星は基本的に現在の状態と変わらないだろう。
地球では、都市はなくなっていても大陸は現在とほぼ同じ場所に残っているはず。」
しかしネメシスの仮説によると、大きな変化が太陽から1光年先で始まっているという。
赤みを帯びた暗い星がオールトの雲に入る。
ネメシスが戻ってきたのだ。
もし人類がまだ地球に存在していたら、彼らは宇宙の脅威に直面するだろう。

Filippenko「オールトの雲には彗星が10兆個以上あると言われている。
だがオールトの雲と地球との間の空間は非常に大きいので、地球にいて、常に彗星が降ってくるようなことはない。」
ジャグラーがボーリングの玉を受け取った時のように、ネメシスは彗星を軌道から弾き出す。
Muller「オールトの雲の内側には木製と太陽が天体を追い出した無の空間があり、地球はそこにある。」
だがネメシスが近づけば、内部太陽系は射撃場となる。
Brown「最初はいつもより少し多い程度だが、突然次々と飛来してくる。」
Filippenko「ピーク時には、1年に1000〜10000個の彗星が空に見えるだろう。」
予測によると、地球は100万年間彗星が集中的に飛来する領域にあるという。
Muller「100万年間にわたって10億個の彗星が飛来する予定だが、計算では地球に衝突するのはそのうちの1つか2つだけ。」
Laughlin「いつそういったことが起こるかは正確に予測できない。
だが将来彗星サイズの天体が衝突して地球を破壊し、危険な局面をもたらす可能性が現在よりずっと高まるだろう。」

だが彗星の衝突によって地球が新たな大量絶滅に見舞われるかどうかは私達次第のようだ。
Muller「次の大量絶滅まで時間があるので、ネメシスが戻ってきて、大量の彗星が空を覆うことになっても、人類はそれを回避する方法を編み出しているだろう。」
このような未来を回避できるかどうかは、科学者がネメシスを発見する、または排除するまで誰にも分からない。
未来のある日、たとえ空が彗星で覆われることになるとしても、人類は太陽の邪悪な兄弟の犠牲にならないよう、自らを守る手段を見つけてゆくだろう。

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Stephen Hawking's Grand Designホーキングの好奇心The Meaning of Life生きることとは?

私はStephen Hawking、物理学者で宇宙論者、そして少々夢想家、体は動かず会話にはコンピューターが必要、でも心の中では私は自由。
宇宙には壮大な謎がいくつも存在する。
例えば生きる事の意味とは何だろう。
なぜ私達はこの地球に存在してるのだろう。
生きているとはどういうことなのか?知性とは何か?人間とは?現実とは何なのか?
さあ宇宙へ!!!

人は好奇心が強い生物、疑問を持ち、答えを探す。
中でも悩ましいのが、活きる事の意味とは何なのか、という問題。
哲学の話だと思いますか?
私は哲学の役目はもう終わったと思っている。
カギを握るのは科学、科学はすべてを変えた。
私達の生活環境、そして世界観、その影響は計り知れない。
科学の発見は私達の常識を幾度となく覆した。
人という生物を客観的に観察してみると、非常に特殊な種であることが分る。
私達は愛し合い、娯楽に興じる。
時には悪事に手を染め、罪を犯す。
1人1人が夢や希望、欲を持っている。
生きる事の意味を考えるにあたってまず、こうした人間のあり様も物理学の法則にのっとっていることを確認しておこう。

宇宙に存在する全ては物理法則に従っている。
原子の内部の現象も、銀河系同士の衝突も、あらゆるものがこの法則にのっとっている。
私達人間だけが例外だとは考えられない。
私達は宇宙にあるもので作られ、同じ規則に従っているはず。
生きる事の意味を問うということは、人間とは何かを探求し、私達の存在がどのように宇宙と関連しているのかを解き明かすことであると私は考える。
その時初めて生きる事に意味があるのか、あるとしたら何なのかが明らかになるだろう。
私の考えでは、この厄介な難題に初めて意味がある答えをもたらしたのはルネ・デカルト。
デカルトは近代哲学の父と呼ばれるが、私は彼こそ科学的思考のパイオニアだったと思う。
デカルトは、人間は精神と体という2つの構成要素からなると考えた。
彼は詳細な人体解剖図を残している。
体を精巧な機械と捉えたのだ。
では精神はどうだろう。

デカルトはある試行実験を行った。
まず自分には体はないと想像してみる、そう幽霊のように・・・これは想像できる。
奇妙な状態ではあるが・・・
次に精神が無い状態を想像してみる。
これは無理。
精神がなければ、そもそも想像することはできない。
ここからデカルトの有名な言葉が生まれた。
“我思う、ゆえに我あり”
精神と体、すなわち物質は、根本的に異なった存在だと考えたのだ。
それらがどのように関係し合っているかを明らかにすることが生きる事の意味を科学的に解明する基礎となる。

デカルトはさらに考えを進める。
かれは精神は脳の中の松果腺という小さな部位に宿ると考えた。
これは当らずと言えども遠からずだった。
現代では脳全体が意識をつかさどっていると考えられている。
脳はとてつもなく複雑な機関、その複雑さが考えることを可能にしている。
人間の脳細胞の数は1000億個以上、私達の銀河系に存在する恒星の数と同じくらい。
脳細胞をつなぐシナプスの数は観測可能な宇宙に存在する銀河の数より多いのだ。
脳を研究するのは脳科学の仕事だと思うかもしれないが、脳内の現象も結局は電気などの物理現象、つまり精神もまた物理学の法則に支配されているといえる。
物理学者である私は、脳もまた宇宙の一部であると考えている。
宇宙の一部である精神が宇宙全体をいかにして認識するのかを明らかにする必要がある。

古代ギリシャ人はすでに精神は自然の法則の支配を受けるのか、という疑問を持っていた。
しかしこの問題はその後長い間無視され続けた。
人間が精巧な機械に過ぎないのなら、生きる事に意味はあるのだろうか?
そんなものはないのかもしれない、でも結論を出すには早すぎる。

ここで少し人間の営みを観察してみよう。
ケンブリッジの町を流れる川で、若者3人が船遊びをしている。
彼らは周囲の環境を楽しみ、互いの存在を楽しみ、交流する。

その体をコントロールするのは脳、歌を歌ったり、恋に落ちたり、3人は生きる事に意味を見出している。
彼らにとって世界は意味で満ちているのだ。

ちょっとした眼差しにさえ意味を感じ取る。
そして意味に振り回されることも・・・

意味はどこから来るのか、科学的に解明するためにはそもそもなぜ意識はあるのかを追求しなければならない。
生命の進化の歴史を振り返ってみよう。

地球上のすべての生命は、アミノ酸と呼ばれる複雑な分子からできている。
最初の生命は原始の海でアミノ酸分子が衝突を繰り返し生まれた。
数10億年かけて生物は複雑になり、多細胞生物が現れ、ついには脳を持つ動物が登場する。
脳は大量の情報を処理するために必要な機関、周りの状況に対応し、先を読む事を可能にする。
周囲の認識能力が高いほど、反映する事が出来る。

その内にある動物が自分自身を認識するほどに高い能力を持つようになった。
それが私達人間。
進化によって人は、自己を意識することができるようになった。
なぜそのようなことが可能なのだろう。
生物学的な機械にすぎない者が考え、感じ、物事に意味を与える事ができるものだろうか。
これは難しい問題。
しかし意識の発生を説明できそうな理論はある。

1970年代ケンブリッジ大学の数学者ジョン・コンウェイが興味深い発明をした。
ライフゲームという一種のシミュレーション。
いくつかの簡単な法則に基づいて展開するが、まるで生命のような複雑は現象が生じる。
ライフゲームはチェス盤のようなマス目の上で展開する。
それは四方に無限に広がっている。
正方形が緑ならば生きているということ。
黒ならば死んでいることを意味する。
ある正方形が次にどうなるかは、それを囲む8つの正方形によって決まる。
生きている1つの正方形の周りに生きている正方形が0か1つなら、その正方形は過疎で死ぬ。
もし生きている正方形の周囲に4つ以上の生きている正方形があれば、今度は過密になり死ぬ。
死んでいる正方形の周りに3つの生きている正方形があれば、死んでいる正方形も緑になり、誕生する。
以上がライフゲームのルール。

これを初期状態に与え、シミュレーションを走らせる。
すると驚くべきことが起こる。
様々なパターンが生まれ、動き回り消えてゆく。
群をなして移動するパターンもある。
まるで生物の種のように多様なパターンが互いに作用し合っている。
本物の生物のように繁殖するものもある。
動きや自己複製を定めたルールはないものの、このような複雑な振る舞いが生じるのだ。
ライフゲームはとても単純な基本法則から極めて複雑な現象が生じる事を示した。
十分な数のマス目があれば、おそらく知能のようなものさえ生じると考えられる。
何しろ脳には1000億個以上の脳細胞があるのだ。
私は人間の精神や、それが物事に与える意味も、単純な法則に基づいて働く巨大な複雑なシステムの産物だと考えている。
同時にデカルトの言うとおり、精神と物質は別の物、脳は確かに物質でできているが、精神は物質をつかさどる法則に単純に還元できないからだ。
いわば体がハードウェア、精神はソフトウェア。
私がしゃべる旅に使っているソフトウェアのようなもの。
でもここで新たな疑問が出てくる。
自由意志とは何なのか?
昔父は私が医者になることを望んでいたが、私は物理学を選んだ。
結果的によかったと思う。
ご覧の通り、これでは医者は務まらない。
しかしその選択をしたのは本当に私なのでしょうか。
自由意思は本当にあるのでしょうか。
精神も自然の法則に支配されているのなら、私が選んだ道はすでに決められていたと言えないでしょうか。

私達が何かをしようとする時、その意思は様々なものの影響を受ける。
例えば電気だ。
患者に意識がある状態で脳医学手術を行ったと想像してみよう。
実際に同様の実験が行われた。

脳に直接電極で電気刺激を与える。
実験では、脳の特定の領域を刺激して、手や足、顔の筋肉などを動かしたいという欲求を起こさせることができた。

必要なのはたったの3.5V、被験者は自分の意思だと思っているが実は違う。
未来では他人の意思をコントロールする技術が開発されるかもしれない。
例えば恋心を起こさせたり・・・かわいそうな被験者は、自分の意思だと思っているが実は脳を物理的に刺激され、操られているのだ。

このようなアイディアは私達の人間性を根底から揺るがす、恐ろしいものと言えるだろう。
機械と同じように私達がコントロールされるかもしれないのだ。
時には邪悪な目的のために・・・

もしかしたら私が物理学者の道を選んだのも、私の意思などではなく、あらかじめ決められていたのだろうか。
ことはそう簡単ではない。
物理の法則に支配されていても、予測可能とは限らないのだ。
例えばサイコロは物理の法則に従っているが、出てくる目を予測する事は困難。
さらに複雑なシステムになれば予測は事実上不可能。
そのようなシステムの例は家のすぐ外で見られる。

イギリスは天気が変わりやすいことで知られている。
ある男性はバーベキューパーティーを計画している。
友人を招待したのに、当日の天気が悪ければ台無し。
天気を予測することは原理的には可能。
雨雲が形成されるメカニズムは分かっているのだから・・・
でも現実にはどれだけのデータをコンピューターにかけても特定の日時と場所の天気を確実に予測する事はできない。
地球上に存在するあらゆる要因を考慮することはできないのだ。
ほんの小さな要因が、重大な結果を生むこともある。
例えばバタフライ効果のように、アマゾンでの蝶の羽ばたきによって、イギリスで嵐が起こり、バーベキューが台無しになることもあり得る。
気象現象は複雑系だからだ。

私は人間の脳も複雑系なのだと考えている。
だから物理的な法則に従っていながら、予測する事は不可能なのだ。
精神は脳に生じる気象のようなもの。
脳という複雑系が選択を行う時に起きる現象を、私達は自由意志と呼ぶのではないだろうか。
分りやすく説明しよう。
夜中に喉が渇いて目が覚めたとする。
私の考えでは、この男性の脳もまた、自然の法則に従って動いている。
彼に自由意思はあるだろうか。
選択肢を与える。
冷蔵庫の中にはオレンジジュースとリンゴジュースがあった。
りんごジュースの香りで、彼の脳細胞が活性化し、記憶がよみがえる。
それはリンゴ園での特別な時間の想い出だった。
一部の脳細胞が活性化した結果、彼はリンゴジュースを選んだ。

物理法則に従った脳細胞の働き、それは自由意志だったと思っている。
自由意志とは脳の中で起きる複雑な物理現象のことなのだ。
しかし人生の選択までもが物理現象なのだとしたら、生きることの意味とは何なのだろう。
その答えを知るためには、現実とは何かということを深く考えてみる必要がある。
現実とは何か、大多数の人は常識的に分ると思っているだろう。
現実は疑いようもなく、そこに存在しているものからなる実在の世界だと。
しかしこの常識は実は仮説にすぎない。
イタリアのモンツァの市場を、金魚鉢を持った少女が歩いている。
少女は音、色、味、匂いなどによって現実を知覚している。
それらは感覚器官から脳に届く情報。
脳は物理法則に従っているが、精神は天気と同じで予測不能。
つまり精神が把握する現実もまた予測できない瞬間的なものと言える。
1人1人が違った現実を経験しているかもしれないのだ。

例えば少女が持っている金魚が目にする現実は、丸い金魚鉢のせいで歪んで見える。
なんとモンツァでは歪んだ世界に金魚を住まわせるのは残酷だという理由で、丸い金魚鉢で金魚を飼うことを禁じた。
これは科学的な処置とは呼べない。
金魚が見ている現実が私達と違うからといって、それが歪んでいるとは言い切れないのだ。

この金魚が天才的な頭脳の持主だったとする。
私達と違った世界を見てみても、金魚はそこから物理法則を見出せるだろう。
金魚鉢による光の屈折を数学的に処理すれば、私達と同じ物理法則に辿りつくはず。
白バイの走行速度を考慮にいれ、軌道と飛び出すタイミングを計算すれば、金魚は金魚鉢から見事に脱出することだってできるはずなのだ。

現実はそれぞれの主観の中にだけ存在する。
つまり誰かにとっての現実が、別の誰かの現実より価値があるわけではない。
実は人間は、観察者として完璧とは言い難い存在。
例えば人間の目は私達が思っているほど優秀ではない。

人間の目が見たものを高解像度で捉えることのできる範囲は実は非常に狭く限られている。
それらの視覚情報は電気的は信号として視神経を通り、脳に送られる。
視神経が眼球につながっている箇所は視界の中の盲点となる。
しかし普通は認識されない。
それは脳の驚くべき働きのおかげなのだ。

脳は視神経からの情報を処理し、欠落部分を補い、外界の立体的なモデルを構築する。
この脳内で構築されたモデルを私達は現実と呼んでいるのだ。
この事実をどう受け止めたらよいのだろう。
私達が経験する現実が、各自の脳の中にあるモデルに過ぎないとすれば、客観的な現実の実在そのものがおぼつかなくなり。
そうなったら生きる事の意味など見つかりそうにない。
現実の存在を疑うなど、狂気の沙汰と思われるかもしれない。
しかし生きる事の意味を知るためには必要なこと。
はたして実在とは何なのだろう。

SF映画さながらのシナリオを考えてみよう。
この世界が人間より高い知能を持つ未知の存在が作り上げた仮想現実だとしたら・・・
あなたが見、聞き、嗅ぎ、味わい、感じるもののすべては巨大なスーパーコンピューターからインプットされる情報、実はあなたには感覚器官すらない。
機械につながれた脳だけの存在なのだ。

まさに映画のような話だが、実はこのシミュレーション仮説は真剣に検討されている。
私達が知覚する現実はすべて、とてつもない計算能力を持つコンピューターによる完璧なシミュレーションであり、その中で生きている私達はそれに気付くことができないというのだ。
しかしだとしたら何だというのか、デカルトが言うように、“我思う ゆえに我あり”なのだ。

ハンバーガーは現実のものでないかもしれない。
しかし食べたいという欲求は私達自身のもの。
私達が感じる空腹は、精神が存在していることの証拠。
現実がシミュレーションであったとしても、何も変わらない。
人間がに意識できることには限界がある事を受け入れるしかないのだ。

例えば部屋の中にテーブルがあるとする。
あなたが部屋を出た後も、テーブルはそこに存在しているのだろうか。
あなたが見ていない間に、外に出かけているかもしれない。
国際宇宙ステーションまで飛んで行っているかもしれない。
いやひょっとしたら月まで、そしてあなたがドアを開ける直前に部屋のもとの位置に戻ってくるのだ。
あり得ないとは思うが完全に否定する事はできない。
私達はテーブルが動かないと考えた方が簡単だから、このようなモデルを通して現実を認識しているに過ぎない。

科学も本質的には同じ宇宙の仕組みについて有効に説明できるモデルを作り上げるのだ。
古代ギリシャ人はすでに宇宙を説明するモデルを持っていた。
地球は巨大な球体で、宇宙の中心で静止しているというものだ。
後世、ガリレオやコペルニクスが革命的な転換をもたらすだろう。
天体の運行をもっと単純なモデルを使って説明したのだ。
彼らは地球が自転しながら他の惑星と共に太陽の周りを回っていると考えた。
こうしたモデルは、私達が知覚する世界をより有効に説明するために、思考によって作られたもの。
物理学者は常に新しいモデルを考案している。
それらは観測結果と一致する限りにおいて真実なのだ。
1960年代に発表されたある素粒子に関する理論を例に説明しよう。
クオークは引き離そうとするほど強い力で引きあうはず。
まるで輪ゴムで束ねられているように・・・
このモデルが正しければ、1つだけ分離したクオークを観察するtことは不可能。
そこで一部の科学者が疑問を投げかけた。
絶対に見る事ができないものは存在しているといえるのだろうかと。
はたしてクオークは実在なのだろうか。

スイスにあるCERNには、大型ハロゲン衝突型加速器という巨大な実験施設がある。
この装置の中で陽子を高速で衝突させることで、極小の素粒子を観測する事ができる。
直接は観測されていないが、クオークの存在を仮定したモデルに合致する素粒子の兆候が確認された。
クオークは実在するのだろうか。
それはクオークモデルが有効である限りにおいて実在する。
言えるのはそこまで。
このような考え方をモデル依存実在論と呼ぶ。
生きる事の意味への手がかりだ。
科学は人類に驚くべき知識をもたらした。
人間は自然の法則に従って動く生物学的機械。
脳の中の複雑なニューロンのネットワークが私達の意識を作りだしている。
そして意識は世界の3次元モデルを作りだす。
この最適モデルを私達は現実と呼ぶのだ。
現実は私達の日常よりはるかに大きな世界に広がっている。
地上や宇宙空間に設置された望遠鏡によって、宇宙の観測が可能になったことで、かつてなかったほど大きなモデルを作れるようになったのだ。
宇宙に関する知識が増えるにつれ、私達の現実はどんどん広がっていった。
かつて天空にあいた穴だと思われていた星星が、実は私達の太陽と同じような恒星であり、それぞれ惑星や衛星を持つことが分ってきた。
そして何億という恒星が集まった他の銀河の存在が見つかる。
さらには時間をさかのぼり、宇宙の誕生の瞬間が明らかになった。
137億年の宇宙の歴史全体が私達の精神が作り上げたモデルなのだ。
だとしたら、生きる事の意味とは何だろう。
私にとっては明らか、意味とは私達1人1人が脳の中で作り上げた現実を認識するためのモデルの一部。

例えばこの親子、2人とも意識の中で自分にとっても現実を作り上げている。
子供の頭の中には身の回りの環境のモデルがある。
ただし、ここが建物の5階であることの意味は十分に理解していない。
母親にとっての現実も彼女の意識の産物。
近くにいる子供より、電話の相手のほうが存在感が増すこともある。

私達が知覚する現実は、脳が作ったものだからだ。感情や意味も同じ。
愛、名誉、物事の善悪、それらもまた私達が精神の中で作り上げる宇宙の一部。
テーブルや惑星や銀河と同じようにを考えてみれば驚くべきこと。
私達の脳は物理学の法則に従って、動く素粒子から出来ている。
それが現実を知覚するだけでなく、現実に意味を与えることもできるのだ。
生きる事の意味を決めるのはあなた。
人1人の人間が、この宇宙に意味を与えているのだと私は考える。
かつて宇宙論者カール・セーガンは言った。
人類は宇宙が自身を知るための手段なのだと。
意味は人間の精神の中にしか存在しない。
だから生きる事の意味は宇宙のかなたにではなく、私達の頭の中にある。
私達自身が創造主だといえるのかもしれない。

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Turnning the World on its Head★地球は膨張しているのか

1999年8月11日正午、アルプス山脈が闇に包まれ、中央ヨーロッパで皆既日食が起きている。
オーストリアのクレムスミュンスター修道院は、日食が見られる皆既帯の中心にある。
ここの古い天文台には、長さ53mの振子が吊るされている。
1851年、レオン・フーコーは、こうした振子を使い、地球の自転を証明した。
1999年、振子が切り離される。
振子の軌道はビデオに記録される。
予想通り、その軌道は1時間に11度、時計回りにずれていた。
ところが日食の開始から6時間後、振子は通常の軌道から大きく外れていた。
考えられる理由の1つは、その時地球が異常に速く自転していたということ。

月の影がオーストリアからトルコへと移動した頃、トルコの地震計が局地的な揺れを記録する。
そしてその後発生した大地震で、およそ20000人が亡くなった。
はたして日食と関係があるのだろうか。
7年後の2006年3月、トルコで再び日食が起きた。
1999年の惨事を忘れられない人々が、即席のテント村に避難する。
地震と日食の関係について発見したトルコの科学者が、デマを流したとして起訴された。
しかしこの2つの関係は理論的に説明可能だという科学者もいる。
もし彼らの主張が正しければ、地球への影響は地震よりはるかに大きい。

まずは時間の話から始めよう。
何千年もの間、人は地球の自転を利用して時間を計ってきた。
始まりは日時計、天頂の太陽が再び天頂にくるまでの時間を“太陽の日”と呼んでいた。
地球の自転は不規則なため、現在は原子時計が使われている。
極めて正確なこの時計も、地球の自転に合わせて調整がいる。
ドイツではそれを国立計量研究所が行う。

Dr.Andreas Bauch(Physicist)「現代の時間システムの基礎単位である秒、1900年ごろに地球の自転との関係で決まった。
しかし時点のスピードは時と共に変わる。
潮の満ち引きの摩擦によって遅くなったり、地表や地球内部の質量の分布によっても、そのスピードは変わる。
そこで1秒加えて調整する。
ここ30年は平均で13ヶ月に1回、閏秒を挿入して調整している。」
これは1年におよそ0.7秒という計算になる。

そのごくわずかな時間も、5つの弾み車を持つこの時計では計ることはできない。
しかしこのわずかな時間を積み上げてみると、結果は驚くべきものとなる。
科学的な根拠によれば、およそ9億年前、1日はたった18時間しかなかった。

物理学者のProf.Konstantin Meyl(Field Physicist)の専門は電磁波。
地球の自転速度が遅くなる原因を研究していたMeylは、時計の仕掛けだけではなく、回転する全てのものに関心がある。
例えばアイススケート、100年以上前からスケーターはある現象をうまく利用していた。
スピンする時両腕を縮めると、回転速度が上がる。
質量が体の軸に集まるからだ。
そして腕を広げると速度が落ちる。
これは角運動量保存の法則と呼ばれ、地球にもあてはまる。
Meyl「潮の満ち引きの摩擦によって地球の自転スピードが落ちるというのは理由としては弱いと思う。
角運動量保存の法則にしたがえば、地球の原則は地球の膨張と密接に関係しているはず。
1年に0.7秒ずつ減速しているということは、地球の周囲が19cmずつ増えているということ。」

地球46億年の歴史で宇宙から地球を観測するようになったのは50年、しかしその間に技術は飛躍的に進歩し、より正確に地球を計測できるようになった。
そのデータを基にNASAが作成した地形図を見ると、地球が文字通りはち切れそうな状態である事が分る。
太平洋では地殻の裂け目が年に最大15cm広がっている。
大西洋では、年に3〜4cm拡大している。
地殻の割れ目からは、高温の噴煙が上がっている。
これがMeylのいう膨張だろうか。
しかし地図の制作者の見方は違う。

Dr.Paul Lowman(Geophysicist)は多くの物理学者同様、地球の大きさは変わらないと考えている。
プレートテクトニクスの理論を用い、南太平洋のNazcaプレートを例に説明してもらう。
Lowman「Nazcaプレートがここから離れて東に移動してゆく。
そしてやがてペルー、チリ海溝にぶつかる。
ここが沈み込み帯。
Nascaプレートは南米プレートの下に4〜500km沈みこんでいる。」

こうした深さで沈み込みが起きると言われている。
漂っている2つのプレートが衝突すると、太平洋プレートが大陸プレートの下に押し込まれる。
そして上部マントルまで沈み込み、そこで溶ける。
このように全体としてはプレートの運動は相殺される。
しかし沈み込みは証明できるものだろうか?
「実際に4〜500km下の物を測ることはできない。
しかしこの辺りではよく地震が発生し、それも大規模。
地震学者はどの沈み込み帯が、どの方向に、どれほどの速さで動いたのか、割り出すことができる。」

このプレートテクトニクスの理論、つまりプレート同士が互いの力を相殺するという考え方を地球膨張論者は受け入れない。
しかしどちらの説も極地探検家Alfred Lothar Wegenerの理論に基づいている。
1930年にグリーンランドで亡くなったWegenerは、生前大陸移動説を発表した。
それが30年後にプレートテクトニクスとなった。
Wegenerは、アフリカ大陸と南米大陸の海岸線が一致することから、かつて1つであった大陸が2つに別れたと提唱した。
超大陸パンゲア存在説だ。
今の諸大陸が1つの巨大な大陸を形成し、四方は海に囲まれていた。
Wegenerの理論はほかにも応用されている。

物理学者Ott Christoph HilgenbergはWegenerの理論を発展させた。
彼が1933年に作った地球の模型、最初の模型は今よりも小さい地球をすべての大陸が覆い尽くしている。
この時海はない。
地球が徐々に成長しているようるがわかる。

Hilgenbergは成長する地球の理論を発表した。
ベルリン工科大学本館の中央ホールに、Hilgenbergの地球は2年間展示されていた。
地質学者Prof.Kerl-Heinz Jacob(Ore Geologist)の提案だ。
しかしその後展示は中断、論争が起きた。
大学が許可しないため、Jacobは学内で地球膨張に関する取材を受けられない。
Jacob「今の科学会は地球膨張説にまったく耳を傾けようとしない。
主流の地質学者や研究グループはほかのテーマにばかり目を向けている。
地球膨張という言葉を出すだけで大騒ぎだ。」
かつては違った。
1965年には、地球膨張についてのテレビ番組まであったのだ。
科学番組で活躍したProf.Heinz Harberは地球を膨らませてみせた。
Harber(1965)「こうすると2つの大陸がどのように別れたか、S字型の大西洋がどのようにして生まれたかが非常によくわかる。」

地球膨張説によれば、数億年前の地球は今の半分ほどの大きさしかない。
つまり地球は大陸でほぼ覆われていたことになる。
この説が正しければ地球はとてつもなく成長し、海洋ができたのはこの3億年の間ということになる。
Jacobは地球膨張説に関する論文リストを共同で研修、その数は1000件以上に上る。
Jacobの専門は鉱床学、鉱石が集まる場所の研究。
彼は調査でよく出会う現象に注目する。
硬い花崗岩に割れ目ができ、鉱物であふれている。
ここで産出された蛍石は、工業用に採石される。
この巨大な蛍石の回廊は、バイエルンの鉱山にある。

Jacobによればこの割れ目は地震で一瞬にしてできたわけではなく、徐々に開いていったということ。
ここでは花崗岩の壁の隙間を埋めている蛍石を見ることができる。
帯状の鉱物、あちこちから花崗岩の断片がぶら下がっている。
従来の地質学では、こうした断片が落ちずに蛍石の中に浮いている。
理由を説明できない。
地震で一瞬にして避けたのであれば、断片は落ちるはずだが、頭上にあるのだ。
こうした断片が鉱物でいっぱいになるには長い年月がかるため、地震でできたとは考えられない。
Jacob「割れ目は外からの力で無理やり開けられたと考えられていたが、そうではなかった。
最近認められた理論によれば、下から上がってきた流動体、これはいずれ鉱物へと変化してゆくのだが、それが両側の壁から外へ出ようと押してゆく。
こうして割れ目は徐々に開いていったのだと考えている。」

Hilgenbergは彼の地球膨張説の中で、最初にこの理論を紹介した。
彼の残した図は地球のひずみの変化によって、どのようにこうした裂け目ができるかをよく示している。
こうした割れ目は地上でも見ることができる。
バイエルンにある長さ30mの石英の壁は、近くにできた割れ目の隙間を埋めていた。
この壁を近くの蛍石の街道に、並行して伸びており、地質学的に関連している。
「今見ている壁は160km続く壁のうちのほんの一部にすぎない。
そして我々が目にすることができないものは、この壁の誕生とも関連がある。
数100mの地表の隆起、どうしてこのような構造ができたのか、その理由は1つしかない。
それは地球の膨張だ。」

ベルリンに戻る途中、Jacobはザクセン州のバルドーで講演を聞いた。
Klaus Vogel(Globe Maker)は建設技師として働いているが、この30年間、地球の膨張について研究している。
Vogelははるか昔の小さな地球に大陸の配置してゆくが、彼の模型はユニーク。
Vogelの傑作、地球の中の地球。

Vogel「私のモデルでは、大陸同士の位置関係は同じ。
また隣の大陸に対して傾いているようなことはない。
それぞれの輪郭もそれほど変わっていないし、単に拡大している。」
Vogelはワークショップで成長する地球を再現するため、切り抜いた紙をゴムボードに貼り付けている。
「大陸の紙が二重にしてある、というのは大陸の地殻は海洋の地殻に比べると厚みがあるから。
ボールを膨らませて紙が引っ張られると、一番弱い部分から避けてゆく。
そこに現れるのが海。」

Vogelがボールの地球に空気を入れてゆく。
2つの大陸、南極大陸とオーストラリア大陸が別れた。
「ここがオーストラリア大陸、そしてここがカリフォルニア。
この2つの間に現れた一番古い海が太平洋、この時海底では驚くべきことが起きている。
山脈が生まれているのだ。」

海洋の地殻が避け、そこからガスや溶岩が吹きあがり、山脈を作り出す。
これが地球膨張説を後押ししている。
海底山脈があまりに成長すると、音をたてながら海から姿を現すこともある。

そのよい例がアイスランド、この間欠泉の島は大西洋中央海嶺に他ならない。
陸で見られる海嶺には、割れ目が走りユーラシアプレートと北米プレートが分離している様子がはっきりとわかる。

では大陸の中央にある山脈はいったいどのようにしてできたのだろう。
プレートテクトニクスによればこうした山脈は2つの大陸プレートが衝突して形成された。
衝突した時の力で岩盤が押し上げられる。
ヒマラヤ山脈はできて数千万年たった今でも隆起を続けている。
では海洋プレートと大陸プレートがぶつかった場合はどうだろう。
海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むとき、解放された力によっても山脈が形成される。
プレートテクトニクスによれば、こうしてできたのがアンデス山脈。
しかし地球膨張論者は異なる理論を展開してきた。

Heinz Haber(1965)「それでは私の拳を使って説明してゆこう。
拳を太古の地球とする。
拳をきつく握っているので皮膚はなめらか、では地球が膨らんでいったらどうだろう。
ちょうど拳を開いてゆく様子に似ている。
でこぼこしていたところが平らになった。
皮膚のヒダが山脈のようになっているのがわかる。」

Hilgenbergは75年以上も前にこのヒダを描いていた。
しかしこの理論はもはや受け入れられていない。
Jacobは新し理論を考え出した。
これで地球膨張説を否定するプレートテクトニクス支持者の理論を打ち破れるかもしれない。
山脈は大陸の衝突でしかできないとプレートテクトニクス支持者はいう。

これはJacobの数年に及ぶ実験、砂を詰めたガラス瓶の上下に金属の電極を差し入れる。
次に砂を湿らせてふたを閉めたら、電極を1.5Vのバッテリーにつなぐ。

そして2〜3週間、ビデオカメラで撮影する。
まず鉄塩の層ができた。
次に沈殿によって帯状の構造が現れる。

ここで見られる電極反応は、科学的には知られていないが、地質学的にはとても意味がある。
アム鉱山で見た硬い岩の中の巨大な帯もこうした電極反応によってできた可能性がある。
Jacob「この現象は自己組織化、つまりパターンが自律的に形成されるプロセスと似ていいる。
家庭で使うような電池が作り出す電波は、自然界のそれに比べればはるかに弱いもの。
それでも重力に逆らって瓶の中でヒダや山脈のような構造が生まれる。
しかし自然界では、こうした構造は常に浸食される。
Jacobはプレートテクトニクスにおける力学的な力だけが山脈形成の要因ではないと信じている。
電気で促進される化学反応も重要な役割を果たすのだ。
「これはアルプスやヒマラヤのような大山脈についてもいえること。
シワを寄せたような山脈、しゅう曲山脈の成立を説明できるということ。」
この発見は地球膨張の証明にはならないが、裏付けにはなる。
プレートテクトニクスを使わずに山脈形成を説明できるからだ。

仮にこれが事実だとしたら、地球はどうやって膨張しているのだろう。
これまでにも様々な説があった。
地球内部の熱によって風船のように膨らんだというものもあった。
Hilgenbergはエーテルという媒質を吸収して膨張していると言っている。
光を伝えるにはこうした媒質が必要だと長年考えられていたのだ。
またノーベル賞受賞者のポール・ディラックは宇宙が膨張するにつれ、重力は小さくなると考えた。
Haber(1965)「重力が徐々に小さくなるということは、地球を構成している様々な物質同士を結び付けている力も徐々に小さくなるということ。
そしてその力が小さくなるにつれ、地球はどんどん膨張していくというわけ。」

もし重力が小さくなっているとしたら、数億年前の重力は今よりもずっと大きかったことになる。
しかしかつては恐竜が地球を支配していた。
これはつじつまが合わない。
Dr.Berne Herkner(Palaeontologist)「今よりも恐竜の時代の方が重力が大きいとすれば、我々古生物学者は恐竜がなぜあれほどの大きさになったのか説明できない。
重力が大きければもっと小型だったはず。
だから恐竜のサイズと重力は関係なく、単に恐竜は哺乳類とは生理機能が違うのだと思う。
それであそこまで成長したのだろう。」
恐竜の体重は最大100トンほどあったと言われる。
恐竜があれほど成長した理由には諸説あるが今だによくわかっていない。
しかしMeylとJacobには共通の説がある。
2人はフランクフルトにあるティラノサウルス模型の下で落ち合った。
Jacob「陸の恐竜がなぜあれほどの体重を支えられたのか、皆躍起になって突きとめようとしている。」
Meyl「体重が80トンにでもなれば倒れてしまうはず。
骨が耐えられないからね。」
しかしその頃の地球の重力が今よりずっと小さかったとすれば説明は簡単。
Meyl「その頃から重力が大きくなったのだと思う。
そして考えられる理由は1つしかない。
地球の質量が増えたのだ。」
Jacob「その通り、同じ考えを持つ古生物学者を大勢知っている。
誰も公にそれについて話そうとはしない。
今の科学会では地球の質量の増加について発言することはタブーとされているから。」

どこかから何かを取り入れなければ、地球の質量は増えない。
そしてその源として唯一考えられるのは宇宙。
Hilgenbergは宇宙からエーテルを取り込んでいると唱えたが、エーテルが質量の源であるとは、もはやだれも思っていない。
アインシュタインがエーテルの必要性を否定したからだ。
しかし別の粒子が新たに発見された。
それはニュートリノだ。
ニュートリノは電気を帯びておらず、質量もほとんどないため、地球に何の影響も残さずにすり抜けてゆく。
最新の研究によると、太陽から地上にやってくるニュートリノの数は親指の爪ほどの面積に対し、毎秒600億個。
Meyl「地球が膨らんでいることを説明する十分な物理的モデルが今だないことが地球膨張説の障害となっている。
私個人はニュートリノパワー、ニュートリノのエネルギーを信じている。
どういうことかと言えば、宇宙や太陽から地球に入ってくるニュートリノ放射が地球の核に吸収され、物質に変わっているということ。
この考え方は正統派の科学者達にとっては異端かもしれない。
Meylのニュートリノパワーの仮説は地球が膨張する理由を説明するだけではなく、現代物理学を根本から覆してしまう可能性がある。
この仮説はMeylが1990年に発表した電磁場の理論を発展させたもの、計算式を使えばニュートリノの数さえも求めることができる。
物理学者の主流派はMeylの理論を認めていない。
しかし彼らの理論もまた答えられないことの方が多い。

1980年代、現代物理学史上最大級のプロジェクトがイタリア中部のアブリッツ州で始まった。
グランサッソ山の地下1400mの所に、3つの巨大トンネルが掘られた。
それぞれのトンネルには、ニュートリノを観測するための巨大な施設がある。
宇宙から飛来する様々な粒子を遮断し、ニュートリノだけが到達できるようになっている。
1990年代には、ガレックス実験により太陽から飛び出してくるニュートリノの存在が照明された。
科学者は検出したニュートリノの数から地球を突き抜けるニュートリノの数を割り出す。
すると予測していた数の半分しかないことが分った。
素粒子物理学者達は頭を抱える。
これがニュートリノの欠損問題。
Prof.Piero Monacelli(Particle Physicist)「現在ではニュートリノには3種類あることが分っている。
そしてニュートリノ欠損は、ニュートリノがある種類から別の種類に変化するために起きるということが分ってきた。
これまで行ってきた実験では、1種類のニュートリノしか検出できなかったために予測した数よりも少なかったというわけだ。」

しかしこれもいずれ解決されるだろう。
2006年5月に始まったオペラ実験でジュネーブ郊外の欧州合同原子核研究所Cernからグランサッソに向けてニュートリノを飛ばした。
この実験でニュートリノは振動する事、言いかえればニュートリノは別の種類に変化することを5年以内に証明しようとしている。
「まずここから700km離れた研究所Cernで作ったニュートリノをここまで飛ばす。
このニュートリノは1種類の純粋なもの。
我々の目的は、このニュートリノと別の種類のニュートリノを検出すること。
別の種類のものが検出されれば、ニュートリノが振動することを立証できる。
振動するということは質量があるということ。

ニュートリノの質量については十分に分かっていないため、これは重要な実験。
ニュートリノ放射の存在に最初に気付いた科学者は、スラブ人のニコラ・テスラ。
彼はそのパワーを実際に使ったとも言っている。
テスラは1884年にアメリカに移住した。
そこで彼はエジソンの最大のライバルとなった。
エジソンは直流電流を推進していたが、テスラの交流電流が勝利をおさめ、その後も使われるようになった。
テスラは700以上の特許を持ち、最高裁の判決により無線電信の発明者としても認められた。
しかしその業績は今ではほとんど知られていない。
テスラの生誕150周年に、スイスのチューリッヒ工科大学で講演会が開かれた。
その時スイステスラ協会の招きでMeylが貴重講演を行った。
Meylは1992年2月6日付のニューヨークタイムズに掲載された記事を紹介した。
その中でテスラは、太陽からやってくる放射線について述べている。
それは驚くほど小さい粒子からなり、数1000kmの個体もすり抜けるとしている。
これらは今日ニュートリノの性質とされているもの。
ニュートリノの影響は日食の時に特に大きいと考えられている。
月が太陽の前を横切る時、レンズのような働きをし、ニュートリノを集めるからだ。
そしてそれが地球の自転に影響を与えているという。
1999年の日食でも、このような自転の振れが記録されている。

オーストリアのクレムスミュンスター天文台では、日食の時に53mの振子を振らせた。
その時振子は緩やかで規則的な振動とは異なる振れを記録した。
日食の時に起きるこの現象は、NASAのホームページでも報告されている。
最初に気付いたのはフランス人のノーベル賞受賞者モーリス・アレで、1950年代のことだった。
アレは多くの日食で振子の振れを観測した。
この振れはアレ効果と呼ばれている。
録画されたクレムスミュンスターの振子の振れは、日食が始まった6時間後に予測された軌道から10度外側に外れていた。
これは目を見張る結果。
理由として考えられることは、地球の自転の観測。

しかしこの興奮も束の間、検証によってこの振子は正確な新世代の振子パラコニカルペンダラムがある。
ボールの上でバランスをとっているため、あらゆる方向に揺れる。
振動の角度はレーザーで計測する。

重力研究所が行った最近の計測では、2006年9月の日食の時に、振動の角度が急激に変化した。
科学者達の意見は様々。

Meylは振子の実験の他にも1999年の日食の時に地球の自転速度が上がった証拠があるという。
遅くなっている地球の自転スピードに合わせて、規則的に加えられてきた閏秒だ。
1972年以降、ほぼ毎年閏秒が加えられてきたが、1999〜2005年の間は加える必要はなかった。
地球の自転速度が速くなったからだ。
「地球の自転スピードの加速は1999年の皆既日食によって引き起こされた可能性がある。」

皆既日食の5日後、トルコで大地震が発生し、2万人が亡くなった。
トルコは皆既帯、つまりもっとも暗くなる地域の中心にあった。
講演会などでMeylはこうした地震は日食によって引き起こされた可能性があると述べている。
Meylによれば、月のレンズ効果によって束ねられたニュートリノ放射が地球の核の片側にぶつかる。
それにより核に不均一な圧力がかかり、1方向に引っ張られる。
「部分的に引っ張られることで、圧力波が生まれ、それがマグマを抜けて地表に伝わる。」
2006年3月、ヨーロッパで部分日食が観測された。

3月29日、シュバルツバルトのテクノロジーパークでMeylは講演を行った。
Meylは振子を設置して実演してみせる。
日食が始まる直前、Meylは電子時計の傍らで、大胆な予測をした。
「私は大きな地震が起きる可能性があると思っている。
ただしトルコの上空を日食の影が通過する時ではなく、おそらくその数日後になるだろう。」
ヨーロッパ上空では部分日食だが、トルコと東地中海では皆既日食が見られた。

「2006年に観測される日食の影が進む方向はこうなる。
地球上から垂直に見てみると、ここに地球のコア(核)がこのようにある。
2本の線が東地中海で交わっている。
私はここで地震活動が起こると予想している。」

翌日キプロスの近くで中規模の地震があった。
その中心は皆既帯からさほど離れていない。
日食が終わってからこの地震が起きるまでにはそれほど間がなかった。
だからこれは前兆だったと考えている。
地球の核が引っ張られて地表に圧力波が伝わり、地震が引き起こされるまでにはかなり時間がかかるからだ。
日食の2日後、クレタ島付近の海底で中規模の地震が発生した。
皆既帯の端だ。
同じ日、イラン西部を激しい揺れが3回襲った。
70人以上が亡くなり、1000人以上がけがをした。
5日後にはギリシャのザキントス島の沖合で地震が頻発し始めた。
2週間、島民たちは眠れぬ夜を過ごす。
比較的地震の多いこの地域にしても、長期間地震学者はこの現象について触れながらも、日食との関係は否定している。
しかし驚くべき一致だ。
その地殻は様々な物質で構成されているからだ。
Jacob「近くの中でエネルギーのやり取りが起きていることは容易に想像できる。
互いに増強したり、相殺したりしながらやがてエネルギーは消滅する。
いずれにしても陸の地震や海の地震と日食の関係を科学的に調査することは緊急の課題だと思っている。」

2006年の太陽放射は1999年の放射よりも弱いものだった。
そのため1999年の地震の方が大きかったとすれば説明がつく。
地球膨脹説が唱えるニュートリノ理論によれば、宇宙放射の変動により地球の成長も一定ではなかった。
太陽もまた成長している。
天体物理学者によれば数10億年後巨大化した太陽によって、地球上の生命は絶滅すると考えられている。
この現象にニュートリノは関係しているのだろうか?
ニュートリノが宇宙で起きている誕生や崩壊に関係していることは確かだ。
はたしてニュートリノの海がアインシュタインがその存在を否定したエーテルなのだろうか。
天体物理学者は真剣に言う。
核融合のための燃料を使い果たした時、太陽は膨張するだろうと。
しかしMeylの見方は違う。
彼の理論は太陽はすでに成長している。
その原因は地球とまったく同じ宇宙のニュートリノ放射。
太陽は光とニュートリノだけでなく、電気を帯びた粒子のスペクトル・太陽風も地球に送っている。
太陽の活動によって強くなったり弱くなったりするが、地球はただその前を通過してゆく。
地球は磁場によってこの太陽からの放射・太陽風から守られている。
その磁場がこの数100年の間徐々に弱くなっていることが分かっている。
数1000年後には、地球の磁場が消滅し、磁極が逆転してしまうだろう。

すでに地球上には、磁場に異常が現れている場所がある。
遠からず極をいくつも持つ秩序のない磁場が生まれ、最後には北極と南極が入れ替わってしまうだろう。
科学者によれば最後に磁極の逆転が起きたのは70万年前。
しかし計算では、20万年に1度起こるはずだという。
次の逆転はずいぶん遅れている。
イタリア、アブリッツ州にあるグランサッソ研究所の地下施設には、巨大な装置がある。
ニュートリノ望遠鏡だ。
1000トンの溶液が超新星爆発によって地球にやってくるニュートリノを捕まえようと待ち構えている。
ものすごい輝きを放つ超新星爆発が銀河で見られるのは、100〜200年に1度しかない。
Meylは超新星爆発で生まれる強力なニュートリノシャワーが地球の成長の引き金になったのではないかと考えている。
またニュートリノ放射が磁極の逆転に影響を及ぼす可能性があるという。

Meyl「太陽風は電気を帯びた粒子からなり、太陽の電場に沿って進んでいる。
地球はこの電場の中を垂直に移動している。
ファラデの単極誘導によれば、この時磁場が誘導されるが、この磁場は電場に対し垂直で、また地球の運動の方向に対しても垂直になっている。
もしニュートリノ放射が増えると、太陽活動がさらに活発になり、その結果地球の電磁場も強くなるというわけだ。
今ある地球の磁場はやがては消滅するだろう。
そして個々の磁極が突然地表の磁場に棒磁石のように1列に並ぶと考えている。
磁極の逆転によって北極と南極が入れ替わると、方位磁石と同じ現象が起きる。
磁気を帯びた針は180度回転させても再び元の奉公を指す。
これと同じことが地球でも起こりうるということだ。」

Meylの仮説が正しければ、地球は逆さまになる。
海水が押し寄せて地上は大洪水に見舞われ、そして世界規模で巨大な津波が発生するだろう。
ドイツザクソン州ベルドー、地球の模型を製作しているKlaus Vogel、80代の彼は大洪水のことは心配していない。
旧東ドイツがなくなるまで、そこで暮らした彼は、普通の人なら引退する年に、一時国のものになっていた家業を復活させた。

Vogelの成長する地球のコレクションはユニーク。
日夜改良を重ねて世間に発表している。
ベルドーの中学校で講義をしている。
社会主義時代には、地球科学者達から講演を依頼されることもあった。
しかし時代は変わった。
ここにいる生徒たちの教科書には、地球膨脹説はどこにも載っていない。
だからこそ若者が彼の模型に興味を持ってくれることが嬉しいのだ。
Vogel「シェークスピアの言葉を借りれば、天と地の間、そして地球の内側にも、哲学など思いも及ばないことがあるということ。」
地球の内側で何が起きているのか、確かなことは誰にも分からない。
つまり科学を盾に地球膨脹説を切り捨ててしまう理由はない。
しかしこの理論、本当に私達の地球の常識をひっくり返してしまうのだろうか。

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Beyond the Cosmos☆Quantum Mechanics 量子力学で見る「現実」

人類は長年にわたり宇宙の仕組みの謎を解明し続けてきた。
そして宇宙に存在するものは、一定の法則に基づいて運動することが明らかになった。
銀河や恒星、惑星などがその例。
しかしその後自然界の現象は根本的に曖昧であるという認識が広まる。
それまでの宇宙観を覆す新たな法則が発見された。
科学者たちは遠く離れた宇宙空間からミクロの世界へと視点を移し、それまでの考え方を粉々に打ち砕くほどの斬新な法則に辿りついた。
これが量子力学の法則、量子力学が取り扱うのは物質を構成する電子などの領域。
恒星や惑星、そして私達も原子でできている。

日ごろ量子力学の不思議な世界を意識することはない。
しかしそれはあなたのすぐそばに存在している。
では少しだけ、目線を変えて、原子やその中に含まれる素粒子で構成されるミクロの世界を覗いてみよう。
量子レベルの世界を支配する法則は、身の回りにある物質を支配する法則とは全く異なる。
ここに足を踏み入れたら、物の見方がガラリと変わるはず。
人類はこれまで数々の法則を見出してきた。
惑星が太陽の周りを周回する法則から、打たれた球が弧を描いて飛ぶ法則、そして水面の波の動きの法則に至るまで、こうした古典力学の法則は、方程式を用いて様々な事柄を確実に予想することができる。

しかしおよそ100年前、科学者達が光の不思議な性質に気付いた時、既存の古典力学の法則では、これを説明することができなかった。
ガラス管に気体を閉じ込めて熱し、光を生じさせる実験を行った時のこと、プリズムを通してこの光を見た科学者達は、予期せぬ結果に驚いた。
Peter Galison(Harvard University)「熱せられた気体が放つ光は、線上のスペクトルだった。
カットグラスに光を当てた時に生じるような、帯状の光ではなく、とびとびのスペクトルなのだ。」
David Kaiser(MIT)「虹のように隣の色とくっついているわけではなく、独立した淡色の線だ。
なぜこうした光の線が生まれるのか謎だった。」

この謎を解明したのは20世紀初頭に活躍した科学者のグループ、彼らは物質の本質を探るべく研究を重ねた。
中でも代表的な存在がニールス・ボーア、彼は仲間と卓球をしながら議論するのを好んだ。
謎を解くカギを握っているのは原子の構造だと確信していたボーア、原子の仕組みは太陽系に似ていて、電子が原子核の周りを回っているのだと彼は考えた。
ちょうど惑星が太陽の周りを回っているように・・・

さらにボーアは電子が原子核の周りを周回する時は、特定の軌道しかとらないと主張した。
そして原子に熱が加えられると、電子はそれまで回っていた軌道から別の軌道へ飛び移るといった。
電子はそのたびにエネルギーを放出する、それが特定の波長の光として現れるのだ。
これを量子飛躍と呼ぶ。
S.James Gates,JR.(University of Maryland)「この現象が起きなければ、エネルギー状態の変化によって生まれる光は帯状になる。
鮮やかな特定の波長の光を作りだしているのは量子飛躍という現象そのものなのだ。」
この現象の注目すべき点は、電子がある軌道から別の軌道へと飛び移ること。
その間の空間を横断しているわけではない。
まるで火星が木星の軌道にジャンプしているかのようだ。
量子飛躍が起きるのは、原子を構成する電子の得意な性質によるものだとボーアは結論付けた。
量子と呼ばれる最小単位を持つ電子の運動エネルギーは、段階的にではなく、とびとびに変化する。
そのため電子は軌道から軌道へと飛び移るのだ。

実験により、ボーアの考えは正しいと証明された。
電子は惑星や卓球の球とは異なる法則に従っていたのだ。
彼の発見は波紋を呼んだ。
ボーアと仲間の研究者たちは、これ以降既存の物理学と対峙する道を歩み始める。
それだけではない、革新的なアイディアを提唱する。
ボーアは偉大なる物理学者と対決することになる。
アルベルト・アインシュタインだ。
彼の意に反し、1920年代量子力学は独自の発展を遂げる。
確実に何が起きるかを予測する古典力学と決別し、新たなる道を模索し始めたのだ。

量子の本質を明らかにしたのは、後に広く知られるようになった二重スリット実験、今まで知らなかった驚きの世界を見せてくれる。
これに似た実験を行おう。

使うものはボーリングの球、ボールを投げると障壁にぶつかるか、スリットを通ってスクリーンに当るかのどちらか。

結果は予測した通り、球は通り抜けたスリットの真後ろの部分のスクリーンを突き抜けた。
二重スリット実験とはこんな感じ、ただし実際に使うのは数10億分の1のサイズの電子。
この↓球を電子と仮定する。

2つのスリットを通りぬけた電子はスリットの真後ろの2ヶ所だけではなく、電子はスクリーン全体に縞模様を描くように進んだ。

普通は障壁の後ろには当らないと思うだろう。
当時の科学者たちはこの縞模様を見てあるものを思い浮かべた。
波だ。

波はボーリングの球には決してできないような動きをする。
例えば分裂したり、また1つになったり。

二重スリットに向かって波を起こすと、水の流れは2つに分れ、スリットの向こうで交差する。
すると波の山や谷が重なり合い、大きな波や小さな波が生まれる。
そして時には互いに打ち消しあう。

スクリーンに当る波の山と谷の部分を明るく表示すると、縞模様が現れる。
これを干渉パターンと呼ぶ。

ここで疑問が生じる。
粒子である電子が、なぜこのように波と同じような干渉パターンを描くのだろうか?
Leonard Susskind(Stanford University)「粒子と波は別物。
海は粒子でできていても、波自体は違う。
石は波ではなく石、石は粒子でできているが、海の波はやはり波。」
この実験が行われた1920年代、科学者達は謎の解明に苦心した。
ついに物理学者のマックス・ボルンがシュレーディンガーの波動方程式に全く新しい解釈を与える。
彼は波うっているのは電子ではないばかりか、科学が出会ったことのないものだと言った。
スクリーンで波うっているものは確立波であると主張した。
これは電子の存在する確率が高い場所ほど、波も高くなるという意味。
Peter Fisher(MIT)「電子は今どこにあるかなんて聞いてはいけない。
正しい聞きかたは特定の空間で電子を見つけたいと思うが、どこにある確率が高いか。」
ホルンの理論は電子の動きを正確に表している。
私が投げた電子がどこに辿りつくか、言い当てることはできない。
しかしシュレーディンガーの方程式を用いれば、どこに辿りつきそうか確立を示すことができる。
例えば33.1%の確率でこのへんに、9.9%の確率でこのへんに、という風に。
これらの数値は実験で何度も検証された。
そして量子力学の方程式は正確だと証明された。
あとはこの概念を受け入れればよいだけ。

確率がなんであるかを理解するために、ラスベガスのカジノへ行ってみよう。
20ドルをルーレットの29に懸けてみる。
私がいつ勝つかなどハウス側は当然知らない。
しかし38分の1の確率で私が勝つのは分っている。
今回は私の勝ちだが、何度かやると必ずハウス側が勝つ。
ハウス側は懸けの種類が何であろうが勝負の結果を知る必要なはい。
そんなことをしなくても、何千回も客が懸けさえすれば、必ずハウス側が勝つ。
またどれくらいの確率でハウス側が勝つのか、確実に予測することもできる。
量子力学はこれと同じように世界を支配するのは偶然だといっている。
宇宙の全ての物質は、確実性ではなく、確立によって支配されているのだ。
Edward Farhi(MIT)「確率なくして自然界を語れない。
しかしこの理論をすんなり受け入れられる人は少ないといってよいだろう。」
アインシュタインもその1人だった。
偶然があらゆるものの本質を決めてしまうなど、彼には到底信じられなかった。
Walter Lewin(MIT)「アインシュタインはこう言った。
神はサイコロを振ったりしないと。
ものごとを明確に説明できない。
曖昧さを彼は嫌っていたのだ。」

しかし多くの物理学者はこの理論を支持した。
なぜなら量子力学の方程式を用いれば、原子や素粒子がどう作用するかという確立をはじき出すことができるから。
後にこの理論を活用した数々の発明品が誕生する。
レーザー、トランジスター、そして集積回路など、電子工学の幅広い分野の品々だ。
しかし今なお量子力学には謎が残っている。
1920〜1930年代にかけてアインシュタインが提起した問いの答えはまだ見つかっていない。
カギを握るのは確立と測定、そして観測。
ニールス・ボーアは観測が全てを変えると言った。
彼は観測するまでその粒子の性質は分からないと信じていた。
例えば二重スリット実験の電子は後ろのスクリーンに到達するまでは空間のどの地点に存在するか、確定することができない。
観測された瞬間に初めて電子の位置が明らかになるのだ。

Brian Greene(Columbia University)「量子力学に対するボーアの解釈は粒子を観測し、その位置を確定することで、それ以外の場所に存在する可能性はなくなり、測定された位置に確定されるというもの。
測定するという行為が位置を決めるのだ。
ボーアは曖昧さという自然の本質を受け入れた。
それに対してアインシュタインが好んだのは確実性、観測で物事が決まるなど、彼には許せなかった。
アインシュタインは言う、私が見ていなくても月はそこにあると。」
量子力学には何かが足りないとアインシュタインは確信する。
観測以外に粒子の性質を決定する要因があるはずだと考えた。
しかしこれに賛同する物理学者の数は多くなかった。
ボーアは動じることはなく、アインシュタインが神はサイコロを振らないと行った時も、神がすることに注文をつけるべきではないと切り返した。
1935年アインシュタインはついに量子力学の弱点を発見したと意気込む。
論理性を欠く不可解な仮説に目をつけたアインシュタインは、これで量子力学が不完全だと立証できると考えた。
この説をエンタングルメントと呼ぶ。

エンタングルメント、すなわち粒子の絡み合いは、理論に基づく予測。
絡み合った2つの粒子は密接な関係を持っている。
驚くべきことに、この2つの粒子を遠くに引き離しても、一度できたつながりは消えることなく関係は維持されるという。
これを理解するために、電子の回転する性質に注目してみよう。
おもちゃのコマとは違い、電子はどの方向に回転しているか、不可解なままその向きが最終的に定まるのは観測された瞬間。
時計周りに回っているものもあれば、反時計周りも・・・

回転盤でこのことを説明する。
赤と青のマスがある。
これが2つある。
これらは絡み合った電子と同じ動きをする。
一方が赤で止まると、もう一方は必ず青で止まる。
その逆もある。

回転盤はつながっていないのに、なぜこうなるのだろう。
量子力学主流派の主張はこれにとどまらなかった。
ペアの一方を遠くに移してみよう。
回転盤の1つを月に置く。
お互い連絡を取り合わなくても、こちらが赤で止まればもう一方は青で止まる。
つまりここで電子を観測すれば、その行為が遠くにあるもう一方のペアの電子にも影響を及ぼす。
アインシュタインは2つの電子の密接な関係を不条理だと考える。
そしてこう言う、気味の悪い遠隔作用だと。
エンタングルメントの作用など、受け入れることのできなかったアインシュタインは、量子力学に欠陥があると考えた。
絡みあう粒子が存在したとしても、離れた2つの粒子が密接に関わりあう理由はもっとシンプルなものだと推測した。

アインシュタインが抱いたイメージを手袋に例えよう。
手袋を片方ずつ別々のケースに入れる。
1つは私のもとに届けられる。
もう1つの届け先は南極。

私に届いたケースの中にあるのは左右の手袋のうちどちらか。
ケースをあけると左側が入っていた。
その瞬間、南極のケースには右側が入っていると分かる。
中を見なくても、これは単純明快。
私がケースの中を見ても、手袋に与える影響などない。
こちらのケースには左側、もう1つには右側が入っていることはケースを持ち出す瞬間、すでに決まっていた。

アインシュタインはこれと同じことが2つの粒子にも当てはまると考えた。
例えば電子が離れ離れになる、その瞬間に全ては決まっていたのだと。
ではどちらが正しいのか、遠く離れていても、瞬時に不思議な方法で情報をやり取りする絡みあう粒子の方程式を支持したボーアか、それとも気味の悪い遠隔作用など存在せず、観測する前にすべては決まっていると主張するアインシュタインか。
この議論は中々決着がつかなかった。
アインシュタインは粒子の回転する向きは最初から決まっていると言い、その根拠を尋ねると彼は観測すればわかると答えた。
するとボーアは観測で量子の状態は決まるのだと。
答えは誰にも分からず、まるで哲学の問答のように思われた。
1955年にこの世を去るまでアインシュタインは量子力学では自然界の現象を完全に説明することはできないと信じ続けていた。
1967年コロンビア大学である若者が量子力学と格闘していた。
天体物理学で博士号の取得を目指していたJohn Clauser(J.F.Clauser & Associates)だ。
しかし量子力学の成績が芳しくない。

ところがある時Clauserは人生が一変するほどの大きな発見をする。
彼が見つけたのはアイルランドの物理学者ジョン・ベルの論文。
ベルの仮説を実証できれば、長年にわたり繰り広げられたアインシュタインとボーアの論争に決着をつけることができるかもしれない。
ベルは絡み合った2つの粒子の密接な関係を解き明かす方法を発見していた。
得体のしれない遠隔作用が起きているのか、それとも最初から粒子の状態は定まっているのか、その答えについにたどり着けるかもしれない。
それだけではない、ベルの数式を使ってこの遠隔作用が存在しないことが明らかになれば、量子力学は不完全ではなく、間違いだと証明されるのだ。

理論家だったベルが提唱した数式を検証するには、絡みあう粒子のペアを大量に作り出す装置を組み立てねばならない。
さっそくClauserは装置の設計に着手した。
Clauserは見事に装置を完成させ、これにより数千ペアの粒子の回転を測定することが可能になった。
実験の結果を見たClauserは驚き、そして落胆した・・・どこで間違えたのか・・・
Clauserは実験を繰り返した。
数年で物理学者アラン・アスペがより精度の高い実験を行い、アインシュタインとボーアの論争の確信に迫った。

2つの粒子が瞬時に通信するには、光より速い信号が必要だが、アインシュタインは光より速く進むものはないと言った。
アスペはそこに焦点を当てた実験を行った。
光より速い信号がないなら、遠隔作用によるものとしか考えられない。
アスペの実験はついに議論を終結させた。
彼らの実験結果は世界を激しく揺さぶった。
量子力学の理論は正しく、エンタングルメントは実際に起こっていた。
そして粒子は空間でつながっていたのだ。
ペアの粒子の一方を観測すれば、遠くの離れたもう一方の粒子に瞬時に影響を及ぼす。
アインシュタインが否定した遠隔作用は実際に存在することが証明された。

絡み合った粒子の遠隔作用が実際に起こるのなら、これを私達の生活に有効活用することはできないのだろうか。
例えば空間を移動することなく人やものを、ある場所から別の場所へと瞬時に送るテレポーテーションなどどうだろう。
スタートレックで見たようなテレポーテーションができれば便利。
はたしてエンタグルメントでこれは可能になるのだろうか。

アフリカ沖カナリア諸島で、その実験が行われている。
Anton Zeilinger(University of Vienna)が取り組んでいるのは人間のテレポーテーションではない。
彼はここでエンタングルメントの仕組みを活用し、光子と呼ばれる光の粒子をテレポートさせる実験を行っている。
まずLa Palma島の実験室で絡み合った光子のペアを作り出す。
光子の1つはここに残し、もう1つを144km離れたTenerife島にレーザーで送る。
次にテレポートさせる予定の3つ目の光子を用意し、これを先ほどのLa Palma島の光子と合体させる。
そしてその合体したものの状態を測定する。

ここからが見もの、研究チームが測定した情報をTenerife島側へ知らせると、Tenerife島の光子は3つ目の光子のコピーへと生まれ変わる。
3つ目の光子は物理的に海を越えて移動したわけではないので、テレポートしたのと同じだと言ってさしつかえないだろう。
Zeilingerはこの方法で数千個にも及ぶ粒子のテレポーテーションに成功している。
私達の体も粒子でできていることを考えると、将来人間のテレポーテーションが可能になる日は来るのだろうか。

パリまでテレポートするとしよう。
理論上は実現不可能な話ではない。
ここに粒子のカプセルがある。
この中の粒子はパリの粒子と絡み合っている。
私が入るこのカプセルはスキャナーのような働きをする。
私の体を構成する数多くの粒子がここで読み取られる時、同時に隣のカプセルの中の粒子もスキャンされる。
すると2つの量子状態を比較したリストが作成される。

ここでエンタングルメントが効力を発揮する。
2つのカプセルの量子状態を調べ比較することで、パリの粒子と私を構成する粒子の相関関係が明らかになる。
オペレーターがそのリストをパリへ送る。
パリではそのデータを基に私を構成する粒子の1つ1つを再構成する。
すると新しい私が姿を現す。
粒子がニューヨークからパリまで旅をするわけではない。
ニューヨークで抽出した量子状態の情報を使い、パリですべての粒子を再び組み立てるのだ。
私の正確なレプリカが出来上がった。
その代り、私を構成する粒子を測定したことにより、ニューヨークにいたオリジナルの私は壊れてしまった。

人間がテレポートするのはまだ無理だが、ここで1つ疑問が生じる。
パリにいる私は本物なのか、ニューヨークの私とパリの私はまったく同じはず。
量子力学では、粒子そのものではなく、粒子が持つ情報が物質を構成していると考えるからだ。
その情報が伝達され、私が再び組み立てられたのだ。
Zeilinger「オリジナルかコピーかという問題は哲学的な領域に入る。
非常に難問。
私の考えでは、オリジナルと完全に同じ性質を持つもものはオリジナル、つまりこの場合もオリジナル。」
人間のテレポーテーションの実現性は未知数。
でも量子力学が持つ曖昧さはあらゆる分野で応用できる可能性を秘めている。

マサチューセッツ工科大学では、Seth Lloyd(MIT)が量子力学を活用する新たな道を開拓している。
Lloydが開発しているのは量子コンピューター、金と真鍮でできたこの装置の姿は一般的なコンピューターとは程遠いものだが、共通点はある。
全ての情報を、ビットと呼ばれる0と1の二進数で表す。
「まずコンピューターは情報を最小単位に分解し、それを超高速で処理している。」
しかし量子コンピューターが使用するビットは性質が異なる。
一般的なビットは常に0か1のどちらかを選択するが、量子ビットは柔軟、電子の回転する向きが観測するまで定まらない。
曖昧さを持つのと同様に、量子ビットも0と1の両方になりえる。
すると一度に大量の情報処理を行うことができる。
理論の上では量子の働きを持つ電子や原子なら、なんでも量子ビットとなりえる。
もしも量子コンピューターが実用化されれば、私達の情報処理能力が飛躍的に高まることは間違いないだろう。

量子コンピューターの凄さを簡単に説明しよう。
私は今迷路の中にいる。
できるだけ早く出口に辿りつこうとしても、選択肢があまりに多すぎる。
1つずつ試してみるしかない。
何度も行き止まりに突き当り、引き返し、道に迷う。
そしてやっと出口に辿りつく。
これが従来のコンピューターの処理方法。
高速でも1度に1つのタスクしかこなせない。
もし同時に全ての可能性を試すことができれば話は変わる。
これが量子コンピューターの仕事のやり方。
同時にあちこちに存在しうる粒子の性質を利用し、あらゆる可能性を同時に調べ、正解を瞬時に見つける事ができる。
この規模の迷路なら、選択肢が限られるため、従来のコンピューターでもすぐに処理できる。
しかし選択肢が数10億通りもあったらどうなるだろう。
気象の予測などはその1例。
量子コンピューターが完成すれば、竜巻なども予知できるかもしれない。
自然災害の余地を行うことなど今はコンピューターを使っても無理。
でも量子コンピューターがあれば夢ではない。
そしてその中枢部は1粒の砂より小さくなる。

量子力学を応用した技術の研究が未知なる可能性に向かって着実に進められている。
しかし量子力学の全貌が徐々に明らかになってきたとはいえ、謎は今なお残っている。
原子などの量子レベルで起きる不思議な現象は、どのような仕組みになっているのだろう。
そしてなぜミクロの世界では、曖昧な状態が当たり前に存在するのだろうか。
私達人間の体も原子でできているが、ミクロの物質のように曖昧な状態ではない。
存在する場所も、ここかそこ。
ボーアも物質のサイズが大きくなるとなぜ、曖昧さが影をひそめるのは説明したことはなかった。
量子力学の正当さが立証された今でも、科学者たちはこの問題に取り組んでいる。
ある科学者は解明されていない謎の作用があるのではないかと考える。
物質のサイズが大きくなると、ミクロの世界に存在する複数の可能性は、その謎の作用によって1つになってしまう。
1つを残し、後の可能性は全て消えるという。
すると結果は1つしか出てこない。
別の科学者はミクロの世界にある全ての可能性は消滅しないという。
そして別々のストーリーを展開させるという。
私達の世界と並行して存在する別の世界だ。
突拍子もない考えのように思えるが、私達の知らない所で宇宙は枝分かれし、全ての可能性の基づく新たな世界が生まれているのかもしれない。
まだ開拓されていない領域は果てしなく広がっている。
量子力学は難解だが、ミクロの世界とマクロの世界の間に境界などない。
ただその特異な性質が量子レベルの世界でより顕著に現れるだけ。
量子力学の法則が発見されたことで、驚きに満ちたこの宇宙について、より深く理解できるようになったことは間違いない。

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Ancient Aliens 古代の宇宙人 Aliens and the Creation of Man


南アフリカ、Malapa洞窟、2008年8月、古人類学者のリー・バーガーと9歳の息子マシューは、ここで200万年前の初期人類の化石化した骨を発見した。
骨は大人のメスと子供のオスのもので、親子だと思われた。
骨の大きさと形状からは、直立歩行したことや、現代人と同じ手をしていたことが分った。
今日までの数10年の間に、およそ20種以上の異なったタイプの古人類、つまり人の祖先が発見されている。
Dr.Ian Tattersall(Curator of Anthropology,American Museum of Natural History)「ホモサピエンスが登場する前、世界には何種類もの猿人や原人達が共存していたと考えられている。」

現在主流となっている学説は、人はおよそ600万年前の類人猿から自然淘汰を経て、現在の姿に進化したというもの。
この進化論は1959年にイギリスの人類学者チャールズ・ダーウィンが書いた『種の起源』によって広まった。
Tattersall「ダーウィンが説いた進化のメカニズムは、自然淘汰だった。
長い時間でみれば、より環境に適合するものが、よし子孫を残すという考え方だ。」
Fiorella Terenzi,Ph.D.(Astrophysist/Author)「ダーウィンの進化論では、突然変異などによって生物にもたらされる特殊な形質は利点であると考える。
突然変異は種の生き残りをかけた生存競争において有利に働くという。
つまり生物が生き残って次の世代にその性質を受け継がせることを可能にしているのは突然変異だとされている。」

長い時を経て、二足歩行をするようになり、空いた手で道具を作ったことが、知能発達を促したとダーウィンは推測した。
そして約20万年前にホモサピエンス、つまり現在の我々となる進化が始まったとされるが、この説に異論を唱える者も多い。
Nick Redferu(Author,The Real Men In Black)「イルカは車を作らないし、ゾウは家を建てない。
これはこういった動物が私達と同じ方法で進化をしてこなかったということ。
いったいなぜ、人間だけが特殊な進化を遂げたのだろうか。」

Craig Stanford,Ph.D.(Prof.of Anthropology And Biological Sciences,USC)「直立歩行し始めてからも、数百万年の間は道具は現れない。
この間、脳の容量は大きくならず、急速に発達し始めたのは、数10万年前から。
人の進化の歴史では、直立姿勢、道具の使用、脳の発達といった大躍進が、何100年かごとに起こっているが、それはダーウィンの時代には分らなかったこと。」
1967年イギリスの動物学者Desmond Morrisはその著書『The Naked Ape 裸の猿』の中で、ダーウィンの説に反論した。
そして人だけが他の種と違って唯一裸となった理由がまったく見当たらないと書いた。

Tattersall「もちろんホモサピエンスである私達には体毛は残っているが、大部分で著しく減少している。
体毛の現象はホモサピエンスが現れるずっと前から始まっていた。
アフリカで二足歩行を始めたばかりの人は、森林からサバンナへと住む場所を変えて、直射日光を多く受けるようになったため、その熱に適応するために変化が起こったのだろう。」
Stanford「ヨーロッパや北欧のような場所ではまた違った理由が考えられる。
保温のために服を着始めたことが原因だったのか、それとも別の要因があったのか、女性が体毛の濃い男性に魅力を感じず、交配の対象に選ばなくなったからなのか、答えは分らない。」
Giorgio A.Tsoukalos(Publisher,Legendary Times Magazine)「環境に適したものが生き残る、適者生存の考えを100%認めるとすれば、突然人が体毛をすべて失って裸になったと考えるのは非論理的。
自らの毛皮を脱ぎ捨て、寒さをしのぐために、別の動物の毛皮を着るようになったなど、愚の骨頂。
もし毛皮を着ていなかったら、人は凍えて死に耐えていただろう。
そう考えれば、人が進化して生き残るために体毛を手放したという考えは論理的には意味をなしていない。」

しかしダーウィンの自然淘汰説がホモサピエンスの出現を説明できないなら、何が考えられるだろうか。
古代宇宙飛行士説で言われるように、古生人類から現生人類への進化は別の世界の者によってもたらされたのだろうか。
ダーウィンの同僚だったアルフレッド・ラッセル・ウォレスは霊的進化という概念を考え出した。
ウォレスは人の持つ知的能力や思考能力は、進化の過程で枝分かれしてきたどんな生物とも質的に異なっていると考えていた。
そしてこの隔たりは自然淘汰による進化で埋められるものなどではないと考えた。
そうしてウォレスがたてた別の理論は現生人類が認知能力を持つようになったことから論証するもので、霊的な存在が進化を導いていると考えるものだった。

David Childress(Author,Technology of the Gods)「ウォレスは地球の全ての生物の背後に、目に見えない精霊が存在すると信じていた。
そしてこの精霊が地球の歴史に介入したことが3度あったと考えた。
1度目が無生物から生命が作り出された時、2度目は動物が何らかの意識を持つようになった時、そして3度目は人が突然今日の私達のような精神的な能力を持つようになった時。
進化はダーウィンが考えたように無作為に起こったものではなくて、想像をつかさどる知的な存在に促されたものだとこの説は説いている。」

古代宇宙飛行士説で言われるように、異星人による後押しがあったために、人類は急激な進化を遂げたのだとうか?
それを裏付ける証拠はあるのだろうか?
科学者の中には、人の脳の中にその証があると考える者もいる。
イリノイ州シカゴ、2004年12月、シカゴ大学ハワード・ヒューズ医学研究所の研究チームによって、人間の脳の発達は特別な出来事によってもたらされたものであるとする結果が発表された。
人の知能は進化だけによって発達したのではないという。
今からおよそ5万年前、古代の人類の遺伝子は、短期間の間に劇的な変化を経験したと言われている。
これらを脳のビッグバンと呼ぶ者もいる。

Philip Imbrogno(Astronomer/Author,Files from the Edge)「人類が現在持っているような知能を完全に獲得できたのは、ほんの最近のこと。
知能が向上したのではなく、脳内の情報が全く新しい方法で操作されたのだ。」
Redfern「類人猿からの進化の中間に存在すると言われる生物、ミッシングリンクを経て核を開発し、宇宙を旅する人が生まれた。」
人類の起源を振り返ると、5万年前に人は地球上のどの生物もなしえなかった進化を遂げて現在の私達、つまり人間となった。
何が知能の発達に拍車をかけたのだろうか。
多くの科学者が主張するように、自然淘汰が行われた進化の過程で、遺伝子の変異が起こったのだろうか、あるいは古代宇宙飛行士説で言われるように、異星人によって遺伝子組み換えが行われていたのだろうか。

Stanford「過去のどこかの時点で、人の祖先が突然持つようになった遺伝子が、身の回りにあるものを言葉に置き換えて表現する能力を与えたという説がある。
それでチンパンジーは言葉を簡単には習得できないのだそうだ。」
Tattersall「アフリカに現れたホモサピエンスは、象徴的な表現をするようになる。
祖先とは全く違う方法で頭の中での情報処理を行っていたのだ。
取り巻く世界を分解し、単純な記号に置き換えて新たな概念を生み出すために、それを組み合わせていたのだ。」

Erich Von Daniken(Author,Chariots of the Gods)「遠い昔に宇宙人はこの惑星にやってきた。
地球は生命にあふれていたが、その中でもっとも高度な生物が人間の祖先だった。
現代の遺伝学者のように宇宙人はそのDNAを取り出して、基本的な情報を書き換えた。
このようにして変化させられた1つの細胞は、同じ生物のメスの子宮に植えつけられる。
およそ9ヶ月後に、このメスが産み落とした子供は宇宙人によって人為的に突然変異をさせられているため、それまでの生物とは全く異なる種となっていただろう。」
Bill Birnes,J.D.,Ph.D.(Author,The Haunting of America)「宇宙人からアップデートされた人間の遺伝情報の中に、ソフトウェアのようなものが組み込まれていたとしたら、このソフトウェアのダウンロードが行われて、人科の生物の脳が2つに分断された結果、人は道具を作り始め、火を使い集団生活に移行したのかもしれない。
そうしてこの種が進化して我々人間が生まれたのだろう。」

異星人が我々の遠い祖先に遺伝学的な変化をもたらし、人を創造したのなら、人科に属する様々な種は、知的生命体を作りだそうとした実験の副産物だったのだろうか。
Coppens「これは最大の謎の1つ。
古代の記録には、社会実験に人間が組み込まれているとではなく、天より恩恵が与えられた、つまり知的能力が与えられたと記されているだけ。

だから私達が実験の一部であるとするなら、それは知力の実験かもしれない。
もしくはゲームか大規模な視聴者参加番組のようなもので、ひょっとすると5万年ほど昔から異星人は人類を観察し続けているのかもしれない。」

Tsoukalos「人のヌクレオチドという物質の中に見つかったホックスP2と呼ばれる遺伝子は、人間とその他の動物を完全に隔てていると言われている。
最近科学会で報告されたのだが、この遺伝子1つだけが言語をつかさどっているという。
動物の中から人が誕生する過程でこの遺伝子が、突然変異でできた証拠はどこにも見当たらない。
つまりこの遺伝子の起源はどこにもないのだ。
はるか遠い昔に地球外生命体が人類にこの遺伝子を与えた。
つまり人類の遺伝子に移植したとは考えられないだろうか。」

Linda Moulton Howe(Investigative Journalist,Earthfiles)「これは古代に多くの植民地をこの惑星に作った者たちと同じ地球外生命体が、より高度な意思疎通ができるような進化を人間に臨んだということだろうか。
我々は何者なのかを解明しようとする研究者や何千年も人のDNAを操作した異星人と人類との関係を、解き明かそうとする人々はこのことに薄々感づいているだろう。」
古代宇宙飛行士説で言われるように、人類が別の星に起源を持つ証が我々の遺伝子コードに刻まれているのだろうか。

旧約聖書の中の創世記には、神がエデンの園で最初の人間となる2人、アダムとイヴを創造し、“増える地に満ちよ”と告げたことが綴られている。
何世紀にもわたって科学者と神学者は人類創造の物語が単なる神話か、それとも史実なのかを討論してきた。
Jonathan Young,Ph.D.(Fpunding Curator,Joseph Campbell Archives)「ユダヤ教の教えでは、土の塵で作られた人形に、神が息を吹き込んで、人は生けるものになったとされる。
つまり神の息は魂が込められた神聖なもので、それが吹きこまれることで人間の体は活気を帯び、生命が躍動し始めるというわけだ。」
1987年、人の起源に関する学術的な見解は、さらに混迷を極める。
現代人の遺伝子を辿ると、アフリカにすんだ1人の女性に行きつくと分かったのだ。

「現在この説はかなり確固としたものになっている。
DNAの研究によってホモサピエンスは、アフリカの1つの地域に由来することが分った。
そして知的進化を十分に遂げた後で、ヨーロッパや東アジアといった旧大陸一帯へと拡散していった。」
Stanford「これはミトコンドリア・イヴ仮説と呼ばれるが、私達が皆同じ女性の子孫であるという意味ではない。
アフリカから移住した古代人の集団にいたある女性だけが、その遺伝子を全ての現代人に残したということだ。」
科学が裏付ける、人が誕生した瞬間と、創世記に記された人類創造の時、どちらも同じ時期を指しているのだろうか。

George Noory(Radio Host,Coast to Coast AM)「アダムとイヴの物語は神話ではなく、実話だろう。
2人はこの惑星に生きた最初の人間で、地上に人類を繁殖させる役割を果たした。
エデンの園は遺伝子操作された人間であるアダムとイヴがたまたま住む事になった地域ではなかったかと思う。
ここに越して落ち着いた2人は、子を産み、それが人類の繁栄の第1歩となったのだろう。」

旧約聖書にしるされたアダムとイヴが実在したなら、ヘビが善悪の知識の木から果実を採って食べるよう誘惑したことも事実なのだろうか。
この記述は現生人類が突然覚醒して知性を持つものとなった時を説明しようとしたのかもしれない。
Peter Fiebag(Author,Eternity Machine)「聖書には、この木になる実を食べると、神のようになると書かれている。
サターンは蛇の姿となってアダムとイヴを誘惑して、神と同じものになれると語られ約束する。
2人が得た知識とは何だったのだろうか。
人間らしさを備えると共に、後々は遺伝子操作を行う能力につながるものだったということではないだろうか。」

Childress「善悪の知識の木とは何のことだったのだろう?
これは人の体が持つらせん状のDNA塩基配列のことで、遺伝子が5万年前に宇宙人によって組み替えられた結果、現代の人類は特別な能力を得たのではないか、しかしなぜこれがタブーだったのだろう。
一部の異星人達が人類が神のようになることを望む一方で、この知識のすべてを与えるべきではないと考えた者達がいたのかもしれない。
これはギリシャの神プロメテウスの物語とよく似ていて、この神も同じように他の神の反対を聞き入れずに火を人間に与える。
しかしこの行いによってプロメテウスはまるで悪魔のような扱いを受けて地球から追放された。
人類が計り知れない知識を持つ手助けをしたからだ。」

Tsoukalos「悪魔という発想や概念が遠い昔に訪れた異星人を誤って解釈したことに基づいている。
古代宇宙飛行士説では、現在の私達が悪魔の概念を持つようになったのは、遠い昔に善と悪に分かれた異星人の派閥の間にいさかいが起こったことがキッカケとなっているかもしれないと考える。
反乱分子とみなされた者達は追放されて後に神から離反した堕天使として知られるようになるが、実際は違う。」
古代宇宙飛行士説で言われるように、宇宙人が人間に知性を与えたというなら、話す能力をも与えていたと考えられないだろうか。

Imbrogno「人の喉の構造は一番近いとされるチンパンジーとも非常に異なっているために、声を出して言葉を発することができる。
現代の科学者の目には話をして歌うように遺伝子設計されたかのようにみえると言われている。」
Redfern「高度な発達を遂げた言語は民族ごとに違う言葉や方言などの形で世界中に存在している。
そして物事を深く広く話し合うことができる能力が人を他の動物から隔てている。
誰が言語を発明したのか、どこから持ち込まれたものなのか、科学や歴史、考古学でさえも、この大きななぞに未だ答えを出せずにいる。
足元ではなく、天に目を向ければ、何かが分かるかもしれない。」

Philip Coppens(Author,The Ancient Alien Question)「神は自らの姿に似せて人を作ったと聖書にはあるが、人の肉体は何者かをかたどったものなのだろうか。
人はこの星の猿やそのほかの動物から進化して生まれたのか、それとも何者かによって作られたのか、神話はその答えを示している。」

Daniken「猿が人になったのではなく、何かがこの星で起こって、別世界の者達が介入した結果、私達が生まれたというのだ。
宇宙人は突然変異を誘発して人類に知性を与えると、その後地球を去ったのだと思う。
人間の中には自分らの祖先である猿に近いものを性交渉を持つ者が現れた。
この行為が神話学において原罪と呼ばれるもので、人々は再び神にすがった。
神は何が起きたかを知り、大洪水で人類を完全に滅ぼして再び実験をやり直すことに決めた。
これがノアの箱舟と呼ばれる神話となって文書につづられたのだ。」

Childress「この星を訪れた地球外生命体は、大型類人猿か初期の人科を使って後にネアンテールタール人となる私達をよく似たホモエレクトスを作ったようだ。
この原人をさらに進化させて、ホモサピエンスが生み出された時点で、旧世代の人科の生物は滅ぼされたのだろう。」
聖書に記されたアダムとイヴ、そしてノアの箱舟の物語は、地球外生命体が関わった出来事が書き起こされたものだったのだろうか。
人類最古とされる文明の中に、それを裏付ける考古学遺物や目撃証言を見つけることができるだろう。

イラク北部チグリス川の東岸沿い、Mosulの町の対岸にあたる場所に、古代都市Ninevehがある。
ここはメソポタミアのシュメール人がかつて住んだ町である。

1842年イギリスの考古学者オースティン・ヘンリー・レーヤードはここで楔形文字で碑文が刻まれた何千もの粘土板を収めたアッシュール・バニパル王の図書館の遺跡を発見した。

紀元前3000年ごろに粘土板に刻まれた文書は世界最古のものと考えられている。
粘土板には、神がアヌンナキと呼ばれていたことが記されていた。
Jason Martell(Author,Knowledge Apocalypse)「シュメールの粘土板には、生命の木と並んで神が彫られていて、アヌンナキの両面を見ることができる。

また空を飛ぶ力を示すシンボルである羽のついた円盤もある。
アヌンナキが身に着けている月や星など、様々な天体を象徴するネックレスや腕時計を見ても、6000年前に科学技術が存在したことは明らか。」
アヌンナキは身長2.5m近くある巨人で、故郷の星のために金を求めて地球に来たという。
「実際に金を採掘してみると、大変な重労働であったため、アヌンナキは代って作業を行う奴隷を作ることにした。
シュメールの創世神話には、これが大変な困難を伴ったと書かれているので、人類の進化の過程はアヌンナキが自らに似せて人を創造した家庭だったとも考えられる。」
Noory「シュメールの文書にはアヌンナキが人間を、つまりアダムとイヴを創造したことを伝えている。
そしてまったく同じあらすじが神の物語として聖書に綴られているのだ。」

Redfern「アヌンナキは教師のようにふるまっている。
シュメールの文明や神話の中には、天の者達が地上を訪れて人々に知識や先進的な概念を与えたという説話が散りばめられているが、これが単なる神話なのか疑ってみるべき。
地上に降りた何者かが人間に手を貸していたのかもしれない。」
世界各地に残る古代の年代記には、天界の者達が人を創造したことが綴られている。
学会は見向きもしないが、このように実在する記録が人類の進化に異星人が関わった証となるのではないか。

Tsoukalos「イスラム教のコーランにも、言葉はアラーつまり神によって人類に与えられたと書かれている。
マヤの神話が綴られたポポロブフにも同様の説話が見られるし、古代エジプトの文書にも全く同じことが記されている。どの古代文明の中にもこれとよく似た伝承が存在していて、言葉は神からの贈り物だったと一様に伝えている。
宇宙人が私達の進化に関係していたという概念を認める時がきたと考えるべきだろう。」

文字が使用される前の時代、古代人は岩に象形図形や記号を刻んでいた。
これは岩壁画と呼ばれ、最古のものは1万年から12000年前にさかのぼる。
アメリカ南西部に残る岩壁画は先住民ズニ族とホピ族の先史時代の祖先が天空の人々と接触したことを示すものだという。
ホピ族の人々が岩肌に遺した岩壁画には、頭上に光輪を掲げる天から降りてきた神の姿が描かれている。

ホピ族によれば、これはカチナと呼ばれる宇宙から来たものを意味するという。
カチナは神ではなく、空を飛ぶ乗り物で地球にやってきて他の星の知識を人々にもたらした。
良く似たものがヨーロッパのバルカモニカの岩にも見受けられるし、アジアにもブラジルにも同様の岩壁画が残されている。
天界から何者かが地上に訪れて、その者達が人類や文明に多大な影響を与えたことを伝える伝説は世界中に残されている。
しかも特定の時代に集中していて、どれも同じパターンで展開していることから考えても、古代に何者かが人と交流し、今日の私達となるよう操作した可能性は否定できない。

「あらゆる文明において人の存在は神の目を通して語られている。
この神を地球外生命体に置き換えて考えてみると、すべてのつじつまがあう。」
異星人が古代人と接触した証がゆるぎのないものであるなら、人類はこの星で生まれたのではなく、他の星からやってきたとも考えられないだろうか。

アラバマ州NASAマーシャル宇宙飛行センター、2011年3月、宇宙生物学者のリチャード・フーバーはここで驚くべき新発見をした。
我々の住む太陽系ができた頃と同じ40億年以上前の珍しい隕石の中に地球外の微生物の化石を発見したのだ。
生命は過酷な宇宙空間の移動に耐えられないと近年まで考えられていたが、フーバーの発見は生きたバクテリアが地球にたどり着き、ここに根付いた可能性をも示唆するものだった。

Fiorella Terenzi,Ph.D.(Astrophysicist/Author)「彗星の中に閉じ込められた微生物が惑星間や恒星間の移動に耐えて生き延びることは可能かもしれない。
微生物が彗星の中心部である岩石の中に閉じ込められていた場合には、周りの凍った物質が厚い保護膜のような役割を果たし、さらにその上には彗星の塵の層がとりまいている。
この塵も光線を効果的に遮ってくれるので、紫外線から微生物を守ってくれるだろう。
単細胞生物などの微生物やアミノ酸を広大な宇宙空間の中で移動させる場合、彗星は理想的な輸送装置となる。」

Redfern「隕石に付着した微生物が大気圏に突入して地上に衝突し、繁殖をはじめたのだ。」
地上の生命は宇宙からやってきた生物から始まったとするパンスペルミア説は論争の的となっている。
1953年に発見されたDNAの共同発見者であるイギリス人科学者のフランシス・クリックもこの説を強力に指示していた。
Peter Fiebag(Author,Eternity Machine)「DNAを二重らせん構造であることをつきとめたのがフランシス・クリック。
彼はこの構造が偶然ではなく、設計されてできたはずだと考えた。
その根拠の1つが、その生物のDNA螺旋もすべて同じ方向に渦を巻いていることだった。
もしDNAが地球で発生したなら、50%の割合で逆巻のものがあってもよいはずなのに存在しない。」

Noory「パレスペルミア説は宇宙の至る所に生命が存在すると説いている。
この説が正しいなら、彗星や隕石に乗ってやってくる生命は地球だけではなく、他の惑星にも住み着いているはずで、それも神の計画に含まれているはず。」
Birnes「これは他の惑星や別の世界に住む高等な生物が意図的に、また入念に仕組んだ植民地化活動だと思われる。
空とぶ円盤を都市の真ん中や砂漠に向かわせることなく惑星を手に入れる最良の策は、自分達のDNAを送り込み、同じ種を作り出してしまうこと。」

現在人間を生み出すのに必要となるのは我々のDNAのおよそ5%だけと言われている。
残りの解読不能な遺伝子コードはかつてジャンクDNAと呼ばれていた。
しかいこれほど多くのDNAが機能していないことなどありうるのだろうか。
いつの日か我々の遺伝子の大部分が解読される時が来たときには、人類の起源についてどんなことが明らかになるのだろうか。

Tsoukalos「人間の遺伝物質の95%が解読できないからといって、必ずしもその95%が必要のないものだと言い切れるものではない。
自然界に無駄なものなどない。
そしてDNAは素晴らしく優秀な記憶装置。
世界中のスーパーコンピューターを繋ぎ合わせたとしてもDNAが記録できる情報を収めきることはできない。
こういったことから考えても、地球外生命体が存在する究極の証は、墜落した宇宙船や文書の中ではなく、私達自身の遺伝子の中に見つかるのではないだろうか。」

Noory「何者かがこの宇宙や地球とその他の惑星や生命を作ったのだ。
このような視点から考えてみれば、地球外生命体と神とが同じものであった可能性は高い。
神の存在を否定しているのではない。
より高度な者が存在して、異星人を創造したのかもしれない。
しかし神と人間との間には、他の惑星から来た宇宙人が介在していると思われる。」

Daniken「宗教に関する知識の大部分が間違っているが、例外をあげるなら天地創造の全てに神が関わっているということだろう。
また広大な宇宙の中において、人間は非常にちっぽけな存在であるが、神は言い表すことができないほど巨大な存在であるということもおそらくは事実だろう。
宇宙人のことを考えるのなら、神の存在は無視できないどころか、ますます重要となる。」

人間は原始時代に溶けだした水に繁殖するバクテリアから進化したのだろうか。
もしくは古代宇宙飛行士説で言われるように、高次元のもにによって高い知能を持つよう設計されたのだろうか。
人を形作る核の部分に答えはあるのだろう。
それを得られたなら、人類が戻るべき場所を見つけることができるかもしれない。

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