ドキュメント鑑賞☆自然信仰を取り戻せ!

テレビでドキュメントを見るのが好き!
1回見ただけでは忘れてしまいそうなので、ここにメモします。
地球環境を改善し、自然に感謝する心を皆で共有してゆきたいです。
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Clash of the Dinosaurs☆Generations 恐竜のからだ繁殖の秘密

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恐竜、それは精巧に作られ、高度な適応を遂げたサバイバルマシーン。
1億6500万年に渡る新可児よって、今日の動物をはるかにしのぐ武器と防御力、そして鋭い感覚器官を手に入れた恐竜。
最先端のテクノロジーがその体の奥深く入り込み、より強くより賢くなっっていった恐竜の秘密を解き明かす。

地球上に生きた究極の生物恐竜、その繁栄は1億6500万年に及んだ。
成功のカギは体の外側の見事なデザインと内部の精密な設計。
その生理機能は自然淘汰と性淘汰をくぐり抜け、適応を遂げた。
1000万以上に渡る世代を通して改良を繰り返し、より優れた子孫を残した。
進化はある種を羽意させる一方で、別の種を絶滅させる。
危険な武器を持つ動物にとって戦いは命がけ。
勝利する者もあれば破れ去るものも。
敗者の遺伝子は途絶える運命にある。
交配は後世に重大な影響をもつ一大事。

オスが性的に成熟したことを示す印は様々。
若いアラサウロロフスのトサカは今や十分に発達した。
トリケラトプスの角は小さなコブからまっすぐ前に伸びた。
最終兵器へと成長した。
ティラノサウルスレックスは自分の縄張りを主張している。
オスはまもなく大人になり、自分の力をアピールするために戦うことになるだろう。
メスはもっとも強く適応力があり、賢いオスを新調に選ぶ。
さらに生殖行動で重要なのはタイミング。
卵は晩春か夏に産まれる。
1年で一番気温が高い夏に孵化するように。
繁殖にもっとも強い影響を与えるのが気候。
恐竜は季節の変化に反応して繁殖のときを知る。
繁殖期の数週間前になると恐竜の体内でホルモンの変化が起きる。
引き金は例えば昼間の長さなど、冬を過ぎると日照時間が長くなる。
すると目の後ろにあるセンサーが光の変化に反応し、重要な情報を脳に伝達する。
その信号が脳下垂体を刺激して生成刺激ホルモンを放出し、これが卵子や精子を作るよう体の準備を促す。
活発になったホルモンは恐竜の行動に劇的な変化をもたらす。
その行動はオスとメスとでは異なる。

メスにとっては子供を産むための体力を蓄える時期。
オスにとっては子作りを巡って他者に打ち勝つ方法を学ぶ時期。
警戒心が強くなり、視覚が鋭くなり、攻撃的になり戦いを好むようになる。
ホルモンが血液中に勢いよく流れ、肉食恐竜の研ぎ澄まされた武器はますます破壊力を増す。
ティーレックスのような肉食恐竜の死亡率は15〜18歳の間5倍に跳ね上がる。
この年頃のオスは、年長の経験豊かなオスに戦いを挑むからだ。
メスを奪い合う戦いでは、どちらかが死ぬこともある。
それぞれのテリトリーを越えて戦いが始まる。
メスに自分を印象付けるチャンスだ。
力差を競い最高の遺伝子を持つのは誰かを証明するのだ。

しかし対戦相手が死んでもすぐゴールには辿りつけない。
同じ種の中の保持行動で進化上有利なタイプな必ずしも相手に死をもたらすものである必要はない。
何らかの点で優れているということが明らかになれば、戦いに勝利する。
例えば健康状態がライバルより優れていて、精力的であることを誇示するということ。
体重6トンにもなる白亜紀のストリートファイター・トリケラトプス(Triceratops)、この史上最強の草食動物にとって、進化とはより強く、頑丈に、より狡猾になること。
これこそメスがオスに求める遺伝形質だった。
骨でできたトリケラトプスの襟飾りは、盤石の盾、強さと力の象徴だが、他にも役目があったと思われる。
襟飾りは捕食者に対する防御として、また種の特徴として発達したかもしれない。

しかし進化の過程で繁殖に有利なものとして利用されたとも考えられる。
トリケラトプスの襟飾りは、クジャクの羽と同じく生殖能力の誇示なのだろうか。
手がかりの1つは色の変化、襟飾りの骨には動脈と静脈が網の目に走っている。
ストレスを受けたり興奮したりすると、首の動脈が拡張し、血液が襟飾りに大量に流れ、色が赤く変化する。
これも求愛儀式の1つ、繁殖ができれば種の未来に強い影響を及ぼすことができる。
オス同士が出会えば長い戦いの始まり、鼻を鳴らし、地面を蹴立て、角で激しく突き合う。
1mを超える角、6トンの筋肉、硬い盾・・・
こんな相手をオスは、パートナーを得るため、危険を冒して戦う。
一方メスには次の世代を残すという命がけの仕事が待っている。
しくじれば、子供たちは恐ろしい世界に放り出される。
生き延びる望みのほとんどない恐ろしい世界に・・・

白亜紀、恐竜は生理学的にもっとも発達した生き物に進化した。
サウロポセイドンは18mもの背丈で周囲を見下ろす。
デイノニクスは飛び出しナイフのようなカギ爪で、巨大な獲物を倒す。
空飛ぶ爬虫類テサルコアトルスの大きさは、キリン程もある。
ティラノサウルスレックスは、史上最強の肉食動物。
こうした特徴は皆、何百万という世代にわたる進化と適応の成果。
進化とは残酷で無情なもの。
ことにオスにとっては自然淘汰と性淘汰によって、弱者は1頭また1頭と切り捨てられてゆく。
オスのほとんどは子孫を残すことはできなかっただろう。
次の世代に遺伝子を手渡すことができるものは、全体からみてほんのわずかだった。
進化は敗者には見向きもしない。
進化が起こるのは、最良の遺伝子が次世代に伝えられた時のみ。
それがジャングルの掟。

勝者へのご褒美、幸運なオスは大きな報酬を手にするかもしれないが、命を落とすものもいる。
若者が群を支配しようとすれば、悲惨な結末になるかもしれない。
一方メスにも大きな仕事がある。
前の世代より少しでも優れた世代を誕生させるための準備だ。
化石からは恐竜が非常に若い時から繁殖の準備をしていたことが分っている。
若い恐竜には、やるべき仕事がたくさんあった。
体を健康に保ち、よく食べ、十分な栄養を摂取するのだ。
未来の卵のために・・・

肉食であろうが草食であろうが、カロリー接種が重要。
よい母親になるために、メスは大量の栄養を必要とする。
カロリーの高い若葉や若い枝、肉食であればたくさんの肉を食べねばならない。
メスは大いに資源を蓄えねばならない。
大量のたんぱく質に脂質にカルシウム・・・
それらは全て体内に備蓄され、つがいになったらすぐに卵をうめるようにスタンバイしている。
メスのホルモンは肝臓を刺激して、卵巣に卵黄物質を送るよう命じる。
卵子が受精すると、卵黄は恐竜の胚が3ヶ月間成長するのに十分な栄養を供給する。
未来の母親は卵の殻のためのカルシウムも必要とする。
鳥やクロコダイルの卵を同じように炭酸カルシウムの堅い殻は成長する胚を守ってくれる。
Sauroposeidonサウロポセイドンのメス1頭が1シーズンに産む卵は300〜500個。

この時白亜紀の植物には乏しかったカルシウムとミネラルを大量に必要とする。
巨体のサウロポセイドンは、自分が生きるためだけでも膨大なカロリーの食料を必要とする。
その上さらにどうやって繁殖のための栄養を得たのだろうか?
春が訪れると植物の中のたんぱく質が豊富になり、消化もたやすくなる。
植物はカルシウムの含有量が少ないので、量をたくさん食べねばならない。
栄養価の高い草やつぼみ、若枝や若葉を選んで食べ、子供を産むためのミネラルや養分を摂取する。
サウロポセイドンの旺盛な食欲が、十分なカルシウムの摂取を可能にした。
カルシウムは少しずつ骨、特に髄様骨に蓄えられる。
髄様骨は特殊な骨で、排卵中のメスだけに見られる。
排卵中に作られる卵の殻の炭酸カルシウムのためにカルシウムを集めている。
髄様骨は足の骨の内部に並ぶ骨の層。
生体構造上の用途はなく、卵の殻を作るために必要なカルシウムやミネラルを蓄える移動式の貯蔵庫。

一旦髄様骨に蓄えられたカルシウムとミネラルは、容易に分解され、必要な場所に送られる。
サウロポセイドンの進化は他にも有利な点があった。
毎年膨大な量の卵が産まれ、その1つ1つに資源が蓄えられる。
交尾のあと、メスの体内では、卵が育ち始める。

卵はたんぱく質、脂質、カルシウムの宝庫。
カルシウムは最終的に、胚の骨と卵の殻になる。
サウロポセイドンは1シーズンに何百もの卵を産むが、多くは孵化する前に食べられてしまう。
孵化しても、ほとんどは飢えた肉食恐竜の餌食になる。
ティラノサウルスレックスは、全く違う進化を遂げた。
この肉食獣は、知恵と武器を持っていたのだ。
ハンターであり、血肉もあさった。
遺伝子を次世代に渡す準備ができたメスは、大きく力強い顎と鋼のように強い歯をもったオスを探し求める。
サウロポセイドンは草食、この巨大な生物が生存のためにとった戦略は何百という卵を産み、1頭か2頭を生き残らせるというもの。
その卵や胚を作るためには、膨大な草木を食べねばならない。
ティラノサウルスレックスは肉食、卵を産むためにはやはり養分、カルシウム、たんぱく質などが必要。

しかしメスは植物からカルシウムを摂るわけではない。
草食動物の骨からカルシウムを摂る。
ティラノサウルスレックスは獲物から多くを消化し、栄養を摂取した。
獲物の肉や骨髄から栄養分を取り込み、また骨からも栄養を摂った。
T-レックスがカルシウムを直接草食動物の骨から摂っていたという証拠がある。
化石化したT-レックスの糞が発見されている。
これは糞石、またはCoproliteと呼ばれている。
その中から、微細な粉状になった草食恐竜の骨が見つかっている。
肉や臓器や骨は噛み砕かれ、全て飲み込まれた。
それで骨は消化されずにT-レックスのお尻から出てきた。

メスのT-レックスはカルシウムを蓄えねばならない。
サウロポセイドンと同じくカルシウムは髄様骨の中に備蓄される。
繁殖を前に、メスは体力を維持しておかねばならない。
オスに比べてメスは繁殖の権利を得るチャンスが極端に少ないからだ。
メスは決まった数の卵子を持って生まれてくる。
オスは毎日何百万という精子を生み出す。
限られた数の欄市鹿持たないメスは、それらを育てるために多くの時間と体内に蓄えた資源を費やさなくてはならない。
オスとメスとの違いも進化の戦略のうちだった。
飛びぬけて大きくて堂々として、一番恐ろしい骨格はメス。
メスのT-レックスにとって強い子孫を残してくれそうなオス、その特徴を自分の子供に与えてほしいと思えるオスを見つけるのは容易なことではない。

T-レックスは単独で暮らし、広大なテリトリーを歩き廻るのは一握りの個体。
大きな動物ほど、その数は少なくなる。
テリトリーの広さと周りにいる個体の数を考えると、オスとメスが出会う確率は限りなく低い。
オス同士の戦いは滅多に起こらない。
オスのT-レックスにとって重要なのは自分のテリトリーから侵入者を追い払うこと。
そしてテリトリーに入ったメスを追いかける事。
オスは匂いで排卵中のメスの居場所を知る事が出来たのだろう。
おそらく2〜3km先にいても。

T-レックスは二足歩行の捕食者の中で最大、最強の部類に入る。
しかし生殖を望むオスは、その時がくるまでむやみにメスに近づいてはならない。
T-レックスの求愛行動はとても興味深いものだっただろう。
通りがかりのオスがメスに狙いを定め、わがものにしようとする。
するとメスはオスを観察し、そのオスの遺伝子と自分の遺伝子を掛け合わせて次の世代を作るべきかどうか品定めをする。

T-レックスは非常に頭のよい生き物だった。
求愛行動も厳格な一連のルールにのっとって行われたはず。
メスはオスが送ってくるサインを見分けねばならない。
そしてメスとオスは何日か何週間か見つめ合う。
オスのT-レックスがメスを手に入れるためには、さらに試練があった。
メスのT-レックスの体は10〜30%オスより大きかった。
つまりオスより強かったので、1対1ならメスの勝ち。

メスの気を引こうとするオスは、一か八かの危険を冒す。
メスが送ってくる合図を正確に読み取れるかどうかが成否を分ける。
恐竜は概してメスのほうが体格で勝っているが、T-レックスはそれが顕著。
ここまではうまくやってきたオスも、ご褒美を手にするためには最後の危険な懸けにでなければならない。
しかし結果的には幾多の危険を乗り越えた、もっとも強く、もっとも適応力のあるT-レックスが自分の遺伝子を持つ新しい世代を残す。
その世代は親よりも少しばかり賢く、強く、そしてタフになるかもしれない。

白亜紀の恐竜たちが行った求愛の儀式は危険で命にかかわるものだった。
もっとも強く、もっとも賢いオスだけが、競争に勝ち残って、その形質を子孫に伝える。
より長い角、より堅い襟飾り、より大きなカギ爪、より鋭敏な聴覚、視覚、嗅覚・・・
一方使い道のない形質の遺伝子は切り捨てられる。
化石からはたくさんの傷跡が見つかっている。
砕けた尾、粉々になったあばら骨や背骨、噛み跡がある頭骨・・・
恐竜は命がけで子孫を残していたのだ。
子孫を残したいオスは、メスが絶対にOKしてくれるという確信が必要だった。
メスの拒絶の仕方は壮絶で、惨劇を引き起こすほどの激しさだった。
進化がメスの手にゆだねられたのには理由がある。
子供が生まれる時、実際の仕事をするのはメスなので、どの形質を残し、どれを終りにするかを決定するのはメス。

今日の動物と同じく恐竜のオスは繁殖のチャンスをつかむために戦う。
メスが求めているのはライバルより強くてタフで賢いオス。
しかし時として進化は進む方向を変え、珍しい形質を残す。
パラサウロロフスの角はそれ自体武器として役には立たない。
中は空洞で壊れやすく、厚さもない。
ところがコミュニケーションの道具として目覚ましい防御の働きをする。
複雑なメッセージを発し、仲間に危険を知らせるのだ。
何世代も経るうち、このトサカは長くなり、より深い音を遠くまで響かせられるようになった。
高度に発達したコミュニケーションの道具は進化上の強みとなった。
そいて間もなくメスは素晴らしいトサカを持ったオスとだけツガイになろうとする。
オルガンのように管に息を吹き入れて音を出していた。
カモハシ竜はそれぞれの種が独自の形を持ち、独自の音をだしていた。
それにしても進化はどうやって何kmも先まで音を響かせるこの骨のトサカを作り上げたのだろう。
この遺伝形質は、過酷な世界でパラサウロロフスを生き延びさせてくれた。
と同時にパートナーを引きつけてもいたのだ。

健康なオスのトサカはメスを口説くときに大きな効力を発揮した。
後頭部または頭頂部から延びるトロンボーンのような構造が求愛行動では楽器になった。
繁殖シーズン中鳴り響き、たくさんのメスをひきつけようとしただろう。
メスもそれに泣き声で答える。
求愛というのは基本的にオスが嘘をつき、メスがそれを疑うということ。
だから疑い深いメスは自分とツガイになりたいなら、あれもやって、これもやってと散々要求する。
これが性淘汰、メスがオスの持っている遺伝形質の中で、子孫の生存の確率をあげるものを選択する。
こうした選択を幾千もの世代にわたって掛け合わせていったある時、突然デイノニクスのカギ爪は鋭くなり、威力を増し、トリケラトプスの角は長く、盾は頑丈になり、パラアスロロフスのトサカは発達してコミュニケーション能力がどんどん高まっていった。
進化はパラサウロロフスの鳴き声を改良するだけでなく、その鳴き声を聞き分け、理解する能力を高める遺伝子も選択する。
トサカの大きなオスほど、低い周波数で、遠くまで響く豊かな音を出すことができる。
低周波の鳴き声はメスにとっても大きな魅力だった。
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パラサウロロフスは時間をかけた遺伝子の改良によって低周波のを出す能力と、聞き分ける能力の両方を手にした。
それは低周波音と呼ばれる人間の耳には聞こえない音。
カモノハシ竜のそれぞれの種は独自の鳴き声を持っている。
5種類のカモハシ竜がひとところにいれば、繁殖シーズン中には5つのオーケストラ、5つの求愛の音色が聞こえただろう。
とても深い音色で、足元から響いてきた。
しかしパラサウロロフスは例外的な存在。
白亜紀の恐竜のメスは、より強く賢く、他のオスよりも殺傷能力が高い武器をもつオスを探していた。
しかし大人になるまで生き延びたT-レックスのオスはそれだけで優れた生殖能力を証明している。
まず間違いなく狩りの技術は優れていただろう。
子供のころは襲いかかってきたケツァルコアトルスをうまくかわしていたはず。
つまりよい遺伝子を持っていなければ、ここまで生き残れなかった。
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進化が関与するのは繁殖行動だけではない。
貴重な卵の孵化と子供の発達にも関わってくる。
白亜紀の世界、想像を絶する大きさの生物が地上を歩きまわり、風変わりなデザインの生き物が空を飛びまわっている。
しかしどんなに奇妙に見える恐竜も、みな卵から産まれ、精密に設計された殻だへと発育してゆく。
進化は史上稀にみる精巧な卵を作りだしたのだ。
進化は他にも目を配った。
恐竜の卵の殻は、オートバイ用のヘルメットのように強い。
衝撃にも耐える。
さらに中の卵白が衝撃を和らげる仕組み。
優れた構造の卵は、孵化した子の生存率を上げる。
卵に蓄えられた遺伝形質がそっくりそのまま子に渡され、子は成長するのだ。
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この小さな家の中で受精した1つの細胞が、急激に細胞分裂を起こす。
これら細胞は様々な形の組織になって骨や皮膚や神経や臓器を作る。
あるいは脳や感覚器官、そして成長する時に身を守るための武器にもなってゆく。
この胚の段階では、遺伝形質の10億分の1にしか影響を及ぼさない。
わずかな遺伝子の違いや変異が生き延びる子供とそうでない子供、他の恐竜に食べられたり踏みつぶされたり、餓死する子供を分ける。
恐竜が生きた時代、それは生物が多様性を極めた時代だった。
その多様性は進化が生存のためには1つではなく、多くの戦略を生み出すということを証明している。
しかしその戦略は、個々の命に対しては非情。
サウロポセイドンのメスは生涯に何1000という卵を産むが、その内大人になれるのはわずか。
子供のほとんどが肉食恐竜の餌食になるという事実は、さながら進化上の悪夢。
しかし実はその逆、3000頭の家の生き残った1頭は、兄弟たちが襲われている時、素早く逃げるための遺伝形質を持っているかもしれず、またより強く大きく、少しばかり敏捷な大人になる遺伝子の組み合わせを受け継いでいるかもしれない。
おそらく竜脚類は後ろ足で小さな穴を掘り、その上にしゃがんで卵を産み、土をかけ去っていったのだろう。
産んだ卵のことなどすぐに忘れて・・・
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サウロポセイドンの卵は数ヶ月放置される。
卵を温め守ってくれるのは、土を腐った植物だけ。
巣は殺戮の舞台となっただろう。
それにもかかわらず、サウロポセイドンは1500万年の長きにわたって栄えた。
まさに進化の台誠光。
しかし研究者はもっと成功できたはずだという。
脳を大きくするのだ。
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50トンの体重が数kg増えるだけだが違いは大きい。
賢くなれば子育てもできるし、繁殖に費やすエネルギーを自分gあもっと大きくなることに振り向けられる。
50トンの動物がさらに大きくなるなど不可能に思えるが、そんなことはない。
体重200トンの竜脚類を作るには、まず脳を3kg重くする。
これまで200トンに達した陸上生物はいないが、進化は恐竜を1億6500万年生きながらえさせた。
恐竜はすさまじい地質の変動も、気温の急上昇も生き延びた。
刻々移り変わる世界に見事に適応したのだ。
そして突如災害が起き、恐竜は地球上から姿を消した。
恐竜の姿は二度とふたたび見られないのだろうか?
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求愛から始まって、ツガイになり、子供が誕生して、その死をもって終わる恐竜のサイクルは、2億年近く続き、世代を重ねるごとに少しずつ改良され、発達していった。
恐竜は地球上の全大陸に生息域を広げ、あらゆる環境に適応していった。
しかし地球への隕石の衝突によって絶滅したと言われている。
恐竜が死に絶えて後は、巨大な生き物はもうどこにもいないように思える。
しかし本当にそうだろうか。
恐竜は今もいるかもしれない。
多分私達の身近に・・・
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ヒントはそこかしこにある。
サウロポセイドンは首を18mの高さにもたげることができた。
これはサウロポセイドンの首の骨の85%が空洞で、とても軽い殻。
T-レックスは体重7トン、シャチほどの大きさにまで成長したが、その骨はやはり空洞の多い蜂の巣状だった。

ヒントは他にもある。
デイノニクスやサウロポセイドンやT-レックスの胚のデザインは、私達が毎日目にする生き物にそっくり。
空を優雅に舞い、優れた適応を遂げ、地球上のどこにでも見られる鳥は、強大な恐竜の末裔に違いない。
鳥は恐竜のように世界中のあらゆる環境に適応している。

ダチョウは背丈2.7m、体重130kg以上、現代では最大の鳥だが、T-レックスや巨大なサウロポセイドンに比べると見劣りする。
しかし鳥が空を飛び、空中で機敏に動き、繁殖するための生物学的なデザインは恐竜と同じ。
かつて恐竜を巨大な体に成長させ、殺し屋だらけの世界を生き延びさせた遺伝形質、そして1億6500万年の進化により磨き上げられた遺伝形質は決して消え去ったわけではない。

恐竜に与えられていた武器は新しい機能となって現代の鳥の中に生きている。
恐竜は巨大化するために空洞の骨を利用した。
鳥は体重を軽くするために使う。
恐竜は長い首に空気を送るために気のうを使った。
鳥は長時間空中にとどまるために使う。

恐竜と鳥の主な違いはその大きさだけ。
実際地上の多くの恐竜は鳶のに必要な機能のほとんどを持っていた。
デイノニクスの腕と手は、鳥の翼のような働きをした。
どちらも腕と手の間に特殊な骨があり、手首を素早く前後に動かすことができる。
デイノニクスはこの素早い動きを利用して、カギ爪を獲物の肉に食い込ませた。
鳥にも同じ骨があり、そのおかげで翼は一定の早い速度で羽ばたくことができる。
デイノニクスは腕を折りたたむことができた。
鳥はこの折りたたみ機能のおかげで飛ぶことができる。
飛行中の鳥の翼の動きは、デイノニクスのカギ爪の生きた見本。

そして最後のヒントは鳥と恐竜とのつながりを明確に示している。
それは鳥の胸にある暢思骨、または鎖骨と呼ばれる骨。
今日の生物で暢思骨を持つのは鳥だけ。
しかしこの骨を持った肉食恐竜が見つかっている。
証拠から導き出される結論は1つ、強大なT-レックスも、知能犯のデイノニクスも、優雅なケツァルコアトルスもみな、とてつもなく大きな鳥の祖先だと考えられるのだ。

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生命の誕生 How Life Began

およそ40億年前、巨大な湿った岩の上で、不思議な現象が発生する。
生命のないものから生命を持つ生物が生まれた。
それ以来地球上でそれぞれ進化を遂げてきた。
しかし驚くほど複雑な生命というものは、どのように誕生したのだろう。
地球の生命誕生を紐解くパズルはまだ完成していない。
いろいろなピースが足りておらず、そう簡単に完成させることはできない。
しかしその難しい難題に、人類は長い間取り組んできた。
パズルに足りないのは、地質学、天文学、科学のピース。
歴史と精神性に関するピースもかけている。
ここでの課題はそれぞれのピースを手に入れて組み合わせ、生命誕生の全貌を明らかにすること。
生命の起源における疑問は今にはじまったことではなく、人類はずっとこのパズルに取り組んでいる。
現代の世界を調査しデータを集めながら生命誕生の謎を解き、その進化と発達を解明し、数10億年前の地球の姿を見出してきた。
これらの知識があれば、私達の起源の物語をつなぎ合わせることができるだろう。
宗教や精神性は昔から人間の存在について考えてきた。
今日この自己への探求心というものが、ある種の物質から生命を誕生させる方法に関しての仮説をたてるまでに至っている。
問題は何が、いつ、どこでということ。
数10億年前に生命はいわゆる原始スープの中で生まれたのだろうか。

Jeffrey Bada(Scripps Institute)「生命を作り出す化学実験の準備としては、まず水を用意して適切な水温と水圧、紫外線、日光などの条件を整える。」
しかし極端な温度と圧力に支配された真っ暗な海底の場合はどうだろう。
Dave Deamer(UC Sant Cruz)「光から遠く離れた海底熱水噴出孔で誕生したという説もある。」
さらに帯電している鉱物の表面においては?
Robert Hazen(Carnegie Institution)「生命の起源を探るうえで注目すべき好物は粘土鉱物。
粘土には触媒特性や組織的特性など、単純なものが複雑に進化する際、まさに必要なものが備わっている。」
生命の起源に関して仮説をぶつけあう科学者達ははたして見解の一致点を見出すことができるのだろうか。
一方で生命に不可欠な要素に関しては意見が合致している。
誕生のしかたに関わらず、すべての生き物は元素と呼ばれる基本要素から構成されている。
Michael Allen(UC Los Angeles)「元素とはつまり原子。
周りにあるものは皆原子からできている。
例えば岩や地球もそう、今私達が吸っている酸素もその1つ。
そして生命の基本要素でもある。」

全てのものが基本的要素で構成されているという考えは古く、少なくとも紀元前4世紀のギリシャの哲学者アリストテレスの頃からあったもの。
アリストテレスの時代のギリシャ人はこう主張していた。
四元素、つまり土、空気、火、水に加えて第5元素なるものが生命の純粋な本質を含んでいると。
第5元素は不変かつ高潔なものであり、地球上の元素とは異なるとされていた。
Fr.Michael Holleran(Writer Discover Magazine)「第5元素とは天体を作っているもので、物理レベルで宇宙を構成するもう1つの元素。」
第5元素は生命の創造に関係しているとアリストテレスは信じていた。
今日元素が宇宙の万物を構成しているころは知られており、生物に不可欠なものを含め、ほぼすべての元素が数10億年前に消滅してゆく星々の残骸の中で形成されたものである。
100あまりある元素のうち生物はそのごく一部しか使っていない。
J.William Schoph(UC Los Angeles)「生物はC、H、O、Nで構成されている。
炭素、水素、酸素、窒素それに硫黄とリンが少しずつとあとは微量な元素だが、基本はC、H、O、N。」
これら元素は工場に運ばれる原材料さながら。
この場合は生命を生産する工場だが・・・

Life.Inc.「倉庫から原材料の元素、炭素、水素、酸素、窒素を持って行く。
もう調合してもよい状態になっている。」
Eric.Chaisson(Tufts University)「それらは地球に存在する陸地、海、大気、生物を構成する元素。」
Life.Inc.「調合室、容器の中で元素同士がくっついて独自の化合物が出来上がる。
その元素たちが二酸化炭素やメタンのような低分子を作り出し、それらはみな水に溶ける性質を持つ。
水はH2O、水素と酸素の化合物。
炭素は結合に優れている。
だいたい何とでもくっつき、炭素同士ということもある。
この特徴は生物にとって重要。」
Andrew Knoll(Harvard University)「炭素がそういう特徴を持っているため、炭素系の分子の多様性はそのほかの元素からなる分子の多様性をはるかにしのぐものになっている。
炭素は他の元素とくっついて少なくとも1000万種類の有機化合物を作り出す。」

Life.Inc.「ホースからでてくるのは水素と炭素の単純化合物。
つまりみず。
あれは炭素を含んでいないから有機物じゃないけど、ここではすごく重要で、元素と化合物全体にかけてやる。
次はこのダイヤル、これは水が冷たい凝固点と高い沸点を持っていることを表している。
ようするに液体でいられる温度の範囲が広いということ。
水は有機物の結合を早めたり強めたりするのを助けるもってこいの物質。
ぶつかり合って新しく長い分子を作ってゆく。」
Scott Sandford(NASA Ames Research Center)「十分な素材がそろっていれば原始地球においても溜池や有機物を作り出せただろう。
そしてその有機物が化学反応を起こし始める。」

元素や化合物などの原材料を生物へと変化させる化学プロセスはエネルギーの登場によって加速してゆく。
しかしエネルギーは無生物からどのように生物の構造を作り上げ、そのエネルギー源とは地球上の何なのだろうか?
生命誕生の謎を解くために、まずは生物の基本的な構成要素、元素と化合物を確認した。
しかしそれは生物の基礎の化学的な起源でしかない。
元素と化合物はどのようにして生命体の1つ、細胞へと進化したのか?
Michael Allen(UC Los Angeles)「生物の基本単位は細胞。
由香氏は単なる酵素の袋と考えられていたが、近年の構造生物学の研究により、その中には非常に精巧で複雑な細胞小器官という西郷の生命維持を助ける小さな構造体があることが分かった。」
Holleran「いわばブロックやエンジンルームのような役目をしている細胞というものについてとりわけ興味深いのは、まさに生物そのものの縮図といえる点。」
有機化合物を細胞へと変化させるプロセスはかなり複雑で、その全貌は明らかにされていない。
生命誕生の謎のパズルはすでにたくさんのピースがはめ込まれているが、まだ多いな穴が残っている。
工場ではエネルギーを使って何か始めるようだが・・・
Life.Inc.「化学反応を促進するのはエネルギー。
工場では特別な原子力ランプを使っている。
地球の主要なエネルギー源の太陽光の模倣。」
Chaisson「発達、複雑化、すべての相互作用で重要なのはエネルギー。
化学全般や自然界全体に普遍的なものがあるとしたら、それはその内外を流れるエネルギー。」

Life.Inc.「製造室、有機化合物がすごくおもしろい変化をしている。
もんただの原料じゃない。
ちょっとしたものになった。
ではできたものを仕訳しよう。
糖質に炭水化物、分子結合でエネルギーを蓄えている。
切断してやると、そのエネルギーで使い残しを処理できる。(代謝)
生物にとって不可欠な3つのプロセスの1つ。」
Marcelo Gleiiser(Author:The Prophet & The Astronomer)「何かを体内に取り込むとき、それに反応しそこからエネルギーを取り出すための化学的手段ともいうべき体内機能を持ち合わせていなければならない。
例えばパンを食べると気分が落ち着きエネルギーがわいてくる。
なぜそんなふうになるのか。
体の中で様々な反応が起こってそうさせているからだ。
この代謝能力というやつは非常に重用。」

Life.Inc.「ネバネバしたやつは脂質、脂肪のような分子で細胞壁のような膜の形成に使われる。
境界線は生物を特徴づけるもう1つのカギ。」
Deamer「生物は細胞からなっている。
現在私の知る生物はみな膜で仕切られ細胞を持っていて、その膜は生物を作り上げる分子を取り囲んでいる。」
Life.Inc.「あとはコピー能力があれば完璧。
生物には重要。
コピーで作りの材料は少しややこしいが、この容器にいっぱい入っているのはアミノ酸。
お互いくっつきあって鎖のように長い分子、タンパク質を作ってゆく。」
Chris Wills(UC San Diego)「タンパク質とはいわば化学的に連結したアミノ酸の鎖のこと。
連結が非常にしっかりしているため、タンパク質は丈夫な化合物といえる。
タンパク質は糖質、リン酸、アデニン、ルアニン、チトシン、チミンから構成されている物質DNAによって合成される生物を生み出し、複製するための設計図。」
Hazen「生物を発生するもの、一連の化学的ステップによるものと捉えると、複雑さが増してくる。
まずは基本的な生体分子を準備せねばならない。
タンパク質を作るアミノ酸、炭水化物を作る糖質、細胞膜やその他の境界線の生成を助ける脂質分子、これらを作り出したら、次は組織化を行わねばならない。」
Gleiser「必要なのはこの3つ、細胞膜、そして代謝を促す科学的装置、最後に自分の複製を作り出す遺伝装置、これらがそろって生物となる。」

Life.Inc.「ここは実際に生命を作っている場所。
細胞膜と代謝機能と自己複製子がそろってある種の化学進化を経ると誕生する。」
Chaisson「生物か否かの境界線はあいまい。
化学進化の違いばあるはずだが。」
Gleiser「何より重要な課題は生命のないものが正確にはどのようにして生命を獲得したのか、生命の起源を解き明かすこと。
繁殖し周りの環境と作用しあい、敵と戦う、それが生物の活動だが、これは無生物から生物への大きな変化であり、大きななぞでもある。」
生物は宇宙の法則と元素のような原料物質が共に作り出したものだと化学者達は信じているがそれはどう可能なのか。
1つの手掛かりとして宇宙ではよくみられる驚くべき現象、創発がある。
これはどのようにして宇宙の塵やゴミから星、太陽系、銀河系が誕生したのか、さらにはどのようにして元素や化合物のような無秩序な原料物質から高度に組織化された構造体、惑星や太陽、おそらく生命までも誕生しえたのかを説明する要素。
Chaisson「創発とは単純に組み合わせたパーツが要素以上の姿になること。
パーツの集合体以上のものが現れて何かしら面白いものになる。」
創発はほとんどどこでも見られる現象。
それぞれに飛んでいたたくさんの鳥達が突然一斉に方向を変え、示し合せていたかのような正確さで一団となるのもその1つ。

そして夏の終わりの浜辺では、太陽と潮の満ち引きの働きで等間隔に筋ができている。
浜辺に寄せるさざ波が定規もなしに描いたもの。
これも創発、今は砂
を伴って地域レベルで発生しているが、分子レベルでも起こること。
これが生命誕生のプロセスに違いない。
Gleiser「創発の最たる例は意識ではないか。
脳の働きを考えてみよう。
脳にはおよそ100兆ものシナプスがあり、その1つだけを調べても知能のことも意識のこともわからない。
だが脳のMRI撮影を行うと、シナプスの集まりが電気信号を伝達しあっているのが見える。
その活動によって意識が生まれる。
これが創発現象。」

創発は魔術的な現象でも意識的な力でもなく、むしろ自然の法則とエネルギーの流れの結果といえる。
この宇宙で生物ほど複雑な創発の例はないだろう。
微生物が少しずつ生物へと変化していった数10億年の間、生物はとにかくエネルギーの正確な調合を求め続けてきた。
Gleiser「こういった複雑なものの創発がこの世界において不可欠。
水素原子から星が誕生し、その星から周期表にある元素が作られ、さらに星は爆発し、惑星を形成、惑星はエネルギーの相互作用。
生命誕生は必然だろう。」
Chaisson「いずれにせよこのエネルギーの流れから生命が出現したのは必然的、または非常に自然なこと。
全容はまだ不明だが、わかっているのは銀河系から始まって星、惑星、そして生命体と急激に重要度が上がったこと。
ある程度複雑なことを成し遂げ、その結果生命の誕生が必然に至ったあるポイントがあるのだろう。」

Life.Inc.「ついにラインの終点に到着。
自己複製物質、代謝エネルギー、半透性の細胞膜・・・
完成!細胞は生きている。
これで出荷できる。」
しかし最初の生命が降り立ったのはとんでもない世界。
それでも生命体はここで生き延びてゆくしかない。
次の課題はまだ若い惑星上で自分をどう維持してゆくかということ。
地球に生命が誕生したのはおよそ38億年前、小惑星や隕石が地球への衝突を繰り返し、地球の表面のほとんどが溶解していた。
後期重爆撃期という時代の直後だと科学者達は推定している。
大気に酸素のない時代が長く続く。

Peter Ward(Biologist)「地球の記録となるものはほぼ皆無。
40億年前に誕生したころの岩も残っていない。」
しかし現存している最古の岩岩が生物の痕跡を明らかにしており、生命が誕生したのは地球がそれらを養うこともできた地質時代であったと示している。
私達にしてみれば原始地球は暗く有毒でひどい場所かもしれないが、単細胞生物にとっては快適な我が家であったようだ。
ある意味その原始地球はカリフォルニアにあるヨセミテ国立公園の東シエラに位置するモノ湖によく似ている。
Ronald Oremland(US.Geological Survey)「海水に比べて塩分濃度が2.5倍も高く、環境的に厳しいところだといえる。
塩分は一般的は塩化ナトリウムよりはむしろ炭酸ナトリウムなどで、水はアルカリ性であり、有毒。
アルカリ溶液に近く遠くの生物にとって危険。
ここの水はヒ素やホウ素も多く含んでいるにも関わらず、生物が存在し育っている。」
たいていの生物は寄せ付けない奇妙で有害な環境のモノ湖。
ここには魚もカエルも存在しないがある種の極端な環境を好む極限環境生物が育っている。
ミギワバエ、ブラインシュリンプ、特定の微生物たちも、この火山湖に順応している。
Oremland「湖を覗くと泡が出ている。
これらはメタン、エタン、ブタンの爆発性混合物。
微生物は生きられるところに住み着く。
例えば好色光合成細菌、およそ50℃という暖かい水の中で繁殖している。」
モノ湖の温水の中は若い惑星において生物がどのように栄養補給を行ったかを探る手掛かり。
原始地球は生物にとって居心地のよい場所であったものの、単細胞生物は数えきれないほどの世代に渡り数10億年もかけて自分達の環境を変化させ、現在のような姿に変化させた。

しかし脳も感覚ももたない小さな生命体が、どのように、そしてなぜそんなことをしたのだろうか。
現在地球上にいるほとんどの生物にとって、原始地球の酸素のない過酷な環境が意味するのは、文字通り死であろう。
単細胞生物より複雑な生物が生きるためには環境の変化が必要だが、ではいったいどうすればよいのか、驚くべきことにそれを成し遂げるのは単細胞生物たち。
しばらく時間はかかったが・・・
地球の初期の生物は脳も手も目も持たない単細胞生物というとても単純な形態で生きていた。
もしも姿を見られたとしても、それとは気づかないかもしれない。
最初にこの地球上に住み着いた生物は、海や大気を介して世界中に散らばったのかもしれない。
そしてその小さな細胞たちは何10億年にもわたり自らのコピーを作り続け、初期の種の一部は今日まで存続してきた。
現存する古代生命体の1つが単細胞生物で、オーストラリアの沖合にある岩のようなコロニーで生きている。
オーストラリア、シャーク湾、ストロマトライトと呼ばれる非常に珍しい構造物があちこちに原生している。
Martin van Kranendonk(Geological Survey,Western Australia)「ストロマトライトはその表面にいる微生物が非常に薄い層を作ることによって形成される。
くる年もくる年も時間をかけて薄い層を重ねてゆく。
この周りにあるストロマトライトは数千年かかって出来上がったもの、地球最古のものとなると35億年も前にさかのぼる。
それもここ西オーストラリアで発見された。
ストロマトライトはまったく別の世界で形成された岩石の中にも残っている。
酸素がなく、太陽光は弱く地球の自転速度が速くて1日が短かった世界。」
太陽光が弱く酸素もない若い地球では、手に入るもので命をつなぐしかない。
Kranendonk「初期のストロマトライトを形成した微生物が使ったのは化学エネルギー、栄養は化学物質から得て、それを炭素や老廃物に変換し細胞壁まで作っていた。」
その化学エネルギーはどこからきたのか、原始地球で単細胞生物が代謝を行うための栄養源は何だったのか。
もしかするとその答えは人間を寄せ付けないようなところに隠れていて、そしてその場所は生命誕生の手掛かりも与えてくれるかもしれない。

ニューメキシコ、スパイダーケイブ、Carlsbad Caverns National Parkから西の砂漠にある計り知れないほど長く続く幅45cmほどの穴、じめじめした暗い場所。
Hazel Barton(Northern Kentucky University)「太陽光がなく、真っ暗闇だが、ここの生物たちは他とは異なる化学的性質を持つ古都で順応している。
おそらく光合成が発達し、大気が酸素を含む前の太古の性質。
探しにきたのは岩を食べる微生物、岩そのものにエネルギーがある。
彼らはいろんなメカニズムを持ち、岩から直接エネルギーを抜き出したり、または溶かした岩から栄養を採ったりする。
そうすることで岩の表面の化学構造を変化させている。」
その微生物シアノバクテリアは小さすぎて目に見えないほどだが、彼らが後に残してゆく廃棄物は、食事をしていたという紛れもない証拠。
このバクテリアは生物の順応性における1つの興味深い例といえる。
そしてさらにシアノバクテリアが地球上で最初に誕生した生物と共通点があるとしたらどうだろう。
Barton「原始地球では生物が進化を行う時、光合成という手段も酸素もなかった。
そこに生息する生物は他の方法をとらねばならなかった。
そこで利用したのが金属。
数10億年前のその痕跡が残っている。
彼らが必要とし、手に入れられた金属とは、ちょうど原始地球に存在した鉄だった。」
生物には発見したエネルギーを活用してゆく能力があるが、岩や力のない太陽からは単細胞生物たちがどうにか生物を維持するだけのエネルギーしか与えられなかった。

生命誕生から35億年、そのおよそ8割を締める長い期間、地球上には単細胞生物しか存在しなかった。
その単細胞生物たち、例えばアメーバは見事な機能を備えている。
食事をし、外的の侵入を防ぎ再生する。
細胞膜、つまり脂質がアメーバのいわゆる内臓を維持する役割をし、体からは仮足と呼ばれる突起をのばす。
食胞という特殊な液胞の中、食物を分解し分子に変える酵素がある。
その他の液胞は細胞壁の排出入を行っている。
ミトコンドリア、アメーバが取り込んだ食物から化学エネルギーを生み出し、細胞の発育やライフサイクルにも影響する。
細胞核はDNAといった遺伝物質を含んでおり、アメーバはその体を分裂させて2つの娘細胞になる。
これはDNAを利用してオリジナルと同性質を持つコピーを2ち7つ作り出すという極めてシンプルな増殖方法。

肉眼では見えない微生物の広大な世界への扉を開けたのはAntoni van Leeuwenhoek、1632年に生まれた彼は強い好奇心を科学へと向け、ガラス玉を磨いて凸レンズを作り、200倍率というこれまでにない見事な顕微鏡を完成させる。
Leeuwenhoekが作った顕微鏡は黄銅板にあけた穴にレンズを1枚はめただけの簡単なものだった。
基本的には度の強い拡大鏡。
黄銅板の裏にはレンズにピッタリあたる突起がついており、それをネジで調節してピントを合わせるようになっている。
この顕微鏡は何を見るにも直射日光の中で目にあてて使わねばならないものだったが、制作した甲斐はあった。
Leeuwenhoekは単細胞生物バクテリアの観察記録を最初に残した人物となる。
初期の単細胞生物の大部分がその体内で行っている代謝とは光合成と呼ばれる科学プロセスによるもので、今日ほとんどの植物が行っている作用。
光合成の副産物としてでてくるのが酸素。
原始地球で単細胞生物による光合成が可能になったのは太陽の熱放出が大きくなったから。
地球の到達する太陽のエネルギーの量が最高で3割も増加した。
何10億という単細胞生物が酸素をはき出すことで、ほとんど酸素のなかった地球が酸素を豊富に含む大気を形成できた。

地球上の生物たちはまだ多細胞生物が現れていないうちから彼らを向かい入れられる状態を整えつつ、周りの環境を変化させていった。
しかし生物は単細胞から多細胞へ、酸素を放出する側から吸う側へ、どう進化を遂げたのか、それはたくさんのミスによって引き起こされたコピーエラー、突然変異だ。
もしも単細胞生物がミスをしなかったら、生命誕生の謎のパズルを解く動物、人間は地球上に現れなかったかもしれない。
形になってきた生命誕生の謎のパズル、すべてのセクションもでそろった。
生物を誕生させる要素、生物を特徴づける作用、生物を構成する基本単位、細胞、そして環境の変化・・・
単細胞生物は長い時間をかけ、どうやって酸素豊富な環境を生み出したのか。
これらのピースははめ込まれた。
次の課題は単細胞生物から複雑な多細胞生物、つまり酸素呼吸する動物への進化を解明すること。
複製のために単細胞生物が利用するのがDNA、細胞を作るための設計図。
細胞核にあるDNAは鎖をほどくとそれぞれが新しいパートナーと結合し、細胞は分裂して母細胞があった場所に2つの等しい娘細胞を作る。
しかしコピーは常にまったく同じとは限らない。
わずかな変化が見られることもある。
そしてその変化は有効でもある。
変化は生物に特定の生息場所における生存の優位性を与えることができる。
変わり続ける地球には、熱帯、寒帯、湿地帯、乾燥帯、様々な場所があり、変化は長い時間をかけて多種多様な単細胞生物を生み出してきた。

Gleiser「生命が誕生したのがおよそ35億年前、そしてアメーバが登場するまで、そこから15億年もかかり、5億年ほど前からもっと高度な生物が現れ始めた。
単純な原子細胞の生物が多細胞生物に進化し、地球をにぎわすようになるまで、とてつもなく長い年月がかかっている。」
その賑わいはより優れた繁殖方法が用いられるようになったためである。
変化を約束し、各世代が最終的には変種となることを確かにする方法。
変化をもたらすそれとは、ようするにセックスである。(生殖行動)
分裂に比べ、はるかに進歩といえる。
生殖行動は変化をもたらし、その環境に最適な特性を備えた変種が自然選択というプロセスの中で進化してゆく。
およそ5億年前、酸素呼吸する生物達が活動を開始し、地球上では盛んにコピーが行われる。
カンブリア爆発と呼ばれる元璋だ。
生物たちは多細胞生物へと進化し、そして変化は自由になった。

カナディアンロッキーの標高2400m地点、カンブリア爆発の時が分かるという。
2億5000万年前、この痩せた山腹は潮だまりだった。
Ken Williford(Geologist)「Walcott採掘場、Yoho国立公園の中にある。
露出しているのはバージェス頁岩というもので、生物の非常に柔らかい組織の化石まで含む重要な地層。
カンブリア爆発を記録している。
その時地球上で起こった動物の出現について、それから登場した動物のグループすべてについて、例えばクラゲのような軟体動物はめったに保存されない。
特殊な状況下でないとありえないことだが、その状況をここで確認できる。
ペイトイアは小さな円形で、ある種のクラゲのように見える。
後のアノマロカリスの体全体の化石が発見されると、実はペイトイアはアノマロカリスの口の部分であることが判明した。
アノマロカリスの化石は最長1.2〜1.5mほどあり、カンブリア紀中期の巨大な捕食者であったことをうかがわせる。
バージェス頁岩に存在するこの恐ろしい姿の生物は、それまで30億年ほど地球を占領してきた単細胞生物とは似ても似つかなない。
私達は有性生殖と自然選択の賜物である。
この生命誕生の説明は聖書にあるエデンの園の創造物語とはまるで異なるように思えるが、その2つに対立はないと宗教指導者たちはいう。
Rev.John Polkinghorne(Physicist)「創世記第1章は神による6日間の仕事の詳細を語っていないいが、神の意思なくして何も存在しないと説いており、神が〜あれ、〜せよと8回も言われたとある。
宗教は科学の代わりにはなれなくとも、科学が人間を誕生させたことへの理解を深めるもの。」

カンブリア爆発の後、生物は様々に枝分かれした。
複雑な変化を繰り返し、そして現れては消えていった。
昆虫、爬虫類、両生類、奇妙なもの、ありふれたもの、さらに恐竜が現れ滅びる。
マンモスもしかり・・・
そしてほぼすべての生物が消えた。
環境の変化の犠牲となったのだ。
最適な場所で暮らせるのは他の生物に優先権を奪われるか、そこがなくなるまで。
これが有性生殖、自然選択、そして進化の結果である。
このプロセスの定義づけで記憶されている科学者といえばチャールズ・ダーウィン。
1859年彼は急進的な進化の概念をつづった著書『種の起源』を出版する。
ダーウィンが説明しているのは生物がどのように変化し、進化するのか。
彼は生殖によって引き起こされ、何世代にも受け継がれてゆく変異や変化といった概念の枠組みを作り上げる。
Janet Brouwne(Harvard University)「遺伝学が発展したのは1900年頃から後、当時ダーウィンは自分の仮説が完璧でないことを最初から心得ていた。
なぜどのうに変異が起こるのかうまく説明できなかった。
彼にできたのはまずへにの発生を主張し、それからそのリストを作り自分が発見した変異のすべてを人々に伝えることであり、仕組みについては語れなかった。」
ダーウィンは種の起源において生命の誕生の問題はほとんど扱っていないが、その真意を理解する熱心な読者もいる。
James Strick(Science Historian & Author)「原題の内容はこういうこと。
時代をさかのぼるほど、共通する祖先の数はどんどん絞られてゆく。
そして最終的に一番古い時代まで戻るとたった1つ、またはごく一握りの生物が存在していて、地球上の生物はみなその子孫なのだと。」
生命誕生の謎のパズルにおいて失われた重要なピース、それはなぜここにいるのかという科学では解けない精神的な問題ではなく、実験によって解明できるいかにここに至ったのかという問題の答え。
無生物を生物へと変化させた特別なメカニズムとは何なのか問いかけができるようになったのは何かの生物が人間へと進化し、なぜと思うようになってからである。
生物がこれまで解けなかったパズルを人間が脳を使って完成させるのだ。
人間は地球における生命誕生の謎のパズルを完成に近づけている。
しかし詳細や明確な答えをもつピースは欠けているまま。
物語は科学的なものから生物学的なものにどのように変わったのか、今は仮説しかない。

Life.Inc.「研究開発を行うセクションR&D、生命を生み出す的確な環境に関するいろんな学説を研究する。
生命は海底から?地下から?それとも宇宙からやってきた?
あらゆる説を調べてゆく。
だがどの説が正しいにせよ、生命の活動はうまく軌道にのった。」
ある意味で地球は生物たちに占領されているようなもの。
森、これまで成長した木々の中で最長を誇るものは105m以上も天高く伸び、陸地や海を舞う鳥達にその手を触れようとしているかのよう。
海、生命を育む生物の宝庫、水中で漂う何兆もの小さなオキアミに始まり、体長30mを超す生物、巨大なシロナガスクジラまでもが共に暮らす。
そして陸地も生き物であふれている。
珍しいゾウ、敏捷なトカゲ、臆病なオジロジカ、脆弱な蛾、さらに私達人間がいる。
その数はおよそ70億にのぼる。
隠れているもの、腸に入り込んでいるもの、この惑星には苦境を乗り越え繁栄しようとする生物のための住処がたくさんある。
地球は間違いなく生命の地、生命誕生の謎が解き明かされないうちから人間は世界の働きを理解せねばならなかった。

生命についての仮説をたてた最初の哲学者の1人は紀元前4世紀に元素に関する初期の概念を発表したアリストテレス
Strick「アリストテレスは植物と動物の間に非常に分かちがたいつながりがあることを理解していた。
それはどちらも各機関の働きが全生態系における存続と繁殖を目的とする組織化された統一体とみなすことができるという点にある。
アリストテレスにとってこれが生物と無生物の間の明らかな違いだった。
無生物は古い方法でいい加減に作られたものに見えていたようだ。」
アリストテレスが信じていたのは自然発生
天体を構成する元素エーテルから届く太陽の熱によって無生物から自然に生物が誕生するという説。
例えばネズミや穀物から生まれるといった具合に。

Strick「彼いわく熱は地球上の物質以外で作られている。
そのほかの天体から供給されるものでなければならなかった。」
アリストテレスの唱えた自然発生説は驚くほど長い間支持され続けることになる。
Antoni van leeuwenhoekが新たな顕微鏡を発明し、17世紀後半になるまで深く疑問に思う者はいなかった。
Strick「1668年にイタリアの自然哲学者Francesco Rediがウジは腐った肉から自然発生するものではないことを実証する有名な実験を行った。
彼はハンターや食肉業者から腐ったりウジがわいたりしないように夏場は肉を布でおおっているという話を耳にする。
そこで様々な肉をそれぞれ瓶の中にいれ、その口をモスリンという布でおおい、放置してみた。
すると瓶の口にかぶせた布の上にハエがとまって卵を産み付け、やがてそこからウジが発生したが、思った通り中の肉には変化がなかった。」

それでも依然として自然発生説は18世紀まで根強く続いてゆく。
1713年にイギリスに生まれたカトリック教会の司祭John Needhamもこの説の支持者の「1人。
Gleiser「彼はまず死んだ者の肉の破片や枯れた植物などの有機物を集めてガラス瓶の中に入れ、その口にロウか何かを使って栓をし、そして煮沸するという実験を行った。
煮沸によって生物は死滅するはずだったのに、この中ではまだ増殖が確認できる。
つまり煮沸では自然発生説を否定できないというのが彼の結論だった。」
ところが実はガラス瓶の栓がしっかりしておらず、煮沸の後中身が空気に触れていたのだ。
そのせいでまた生物が繁殖したのだ。
ニーダムと彼のよき師であるComte de Buffonは生物はいわゆる生命の原子で構成されていると信じていた。
それは生物が死ぬとき、体から抜け出てひと塊になり、別の新たな生物を作り出すということ。
Strick「2人は死んだ動物の体が分解されてゆく時の分子の働きを調べてたくさんの観察結果を発表した。
その中で有機分子が解き放たれた分解場所に集まり、一塊となってもとの生物とまったく同じものが誕生するのを見たと述べた。
そして自由に旅立っていったと・・・」

1729年イタリア生まれのLazzaro Spallanzani、博物学に長け、偶然にも同じ聖職者の彼は、Needhamの生命の原子を自分の宗教的信仰に合致しないと批判を展開する。
Strick「彼もガラスのフラスコでNeedhamと似たような実験を行った。
この時は蓋をするためのコルク栓ではなく、粘着性のあるものを選んだ。
フラスコの先端、口の部分を火で溶かして閉じた。
そして密閉状態になった中身を煮沸した。
彼は中身が濁ってくるかどうか確かめるために何日間も待った。
濁りは微生物の増殖を意味する。」
結果液体は透明なままだったが、Needhamは密封されたフラスコでは生物に必要な生命の原子が遮断されてしまうからだと反論、論議は平行線をたどるが結局自然発生説は科学的証拠の積み重ねによって19世紀に否定されることとなる。

1862年フランスの科学者Louis PasteurがSpallazaniとNeedhamの論議に立ち戻り、より綿密な実験によって自然発生説の誤りを証明した。
Strick「PasteurはNeedhamの古い主張をきっぱりと退けるために空気がちゃんと液体部分に触れられるような方法を探った。
しかし空気中にはバクテリアが漂っていて、それらは遮断せねばならない。
フラスコ内で繁殖を起こしてしまうからだ。
Pasteurが使ったのは3組のフラスコ。
1つはしっかり密封したもの、もう1つは口は開いたままだが首が細く複雑によがったもの。
最後は口をあけたままのもの。
変化はほんの数日で分かれた。
最初の2つの液体はきれいなまま、2つめにもバクテリアは発生しなかった。
長く曲がった首がその侵入を防いだのだ。

これらの実験でPasteurは自然発生説に終止符をうつ。
Harold Morowitz(George Mason University)「この実験には後日談がある。
Pasteurが生物は自然には生まれないことを人々に納得させると、その後30〜40年間誰も生命の起源について考えなくなった。
実験の説得力が強すぎて生物は生物から生まれるという話はいったん影をひそめてしまった。」
自然発生でないなら生命はどのように誕生するのか、どのように科学から生物学へと変わったのか。
少なくとも1度は無生物が命ある生物へと変貌したのは疑いない。
事実であるが果たして自然発生説以外のその方法とは?

19世紀に入り科学と生物学の分野が進歩すると、自然発生説の地位は揺らいでゆく。
そこで登場するのがイギリスの自然科学者Charles Robert Darwinが密かに提唱した別の概念。
Browne「科学分野で親しくしていた友人のジョセフ・フッカーにあてた晩年の手紙の中でDarwinは生物を誕生させる条件についての推測を述べている。
生物を最初に創造するための条件は現在すべて手に入ると言われているが、もしもまず考えられないとしても、ある暖かい池のようなものがあったらどうだろう。
それは一種のアンモニア、リン酸塩、光、熱、電機などを含んでいて、より複雑な変化に耐えられる化合物を科学的に作り出すことができるのだ。」
Dawinが示唆したのは化学も生物学も小さなスケールまで突き詰めてゆけば同じ自然科学、同じ道であるということ。
そしてその道は生命の起源につながっている。
しかし起源とは何なのか、彼には答えられなかった。

Dawinの小さな暖かい池は20世紀になり、原始スープと名を変える。
原始地球の生命のるつぼだ。
原始スープの概念を科学的に擁護するにはまず中に入れる材料は簡単に手に入るのか、どんな条件で煮込めばよいのかを明らかにする必要がある。
ソ連の科学者Alexander Oparinは原子の環境下によいて無機物質から有機物質ができ、それがさらに発展して原始地球での生命誕生につながったという仮説を打ち立てる。
しかしどんな状態が奇跡のような出来事を引き起こしたのだろう。
当時手に入れられた情報に基づいて、Oparinは原始地球の大気には酸素がなく、他のものが大半を占めていたと推測する。
メタン、アンモニア、水素、そして水、さらには太陽からの紫外線が有機物にエネルギーを与え、それが科学的に生命へ進化したのだという考え。

イギリスの生化学者J.B.S.Holdenも本質的に同様のシナリオを提案。
Strick「OparinもHoldenも生成された有機化合物は、海に蓄積されたと結論付けている。
彼らの言うところでは、その結果海が有機的で濃厚なスープのようなものになった。
彼らは言った、統計学上まったく想像もできないが、挑むのは地球の何10億年という歴史なのだと。」
しかし科学者達ははるか大昔に起こった現象を実験室においうて検証、または再現できるだろうと小さな期待を偉大している。
ノーベル賞の受賞者Harold Ureyの指導のもと、Stanley Millerはある装置を考案、OparinとHoldenの主張を検証しようと決意し、古代の地球の大気、あるいはそれを再現したものを使って実験を行う。

Jefferey Bada(Scripps Instittute)「その装置は地球の状態をシミュレーションするための特別な構造で海を想定して中に水を入れたガラスのフラスコと大気を想定したもう1つのフラスコがセットされている。
電極がいれてあり、火花放電が行える仕組みになっている。
冷却器は大気中に生じたものを凝縮して管に流し、もとの海の中に戻す。
つまり流れは循環する。」
40億年前の地球と似た環境下で有機物が生成されるか確かめるのが目的だったが成し遂げられるかは疑問だった。
地球が長い年月をさいてきた仕事を6ヶ月で達成しようとは無謀にも思える。
Bada「装置をセットするMillerに言われた。
重要ポイントの1つは装置から完全に酸素が抜けているか確認することだと。
酸素と水素にスパークで火がつけば爆発する。
準備ができると大学院生の仲間は部屋を出て行ったそうだ。」
部屋は吹き飛んだりせず、スイッチを入れると電極は静かに発火し始め装置は快調であったがこれで何が証明されたのだろうか?
Bada「1日ほどたって最初に気付いたのは水が茶色っぽくなり始めていることだった。
そこでさらに5日ほど放電を続けると、水はどんどん濃い茶色へと変わっていった。
中で何が起きたのだと考え、5日間でもう十分と考え装置を止め、分析を開始した。
最初に発見した結果の1つはグリシンやアラニンをはじめとする何種類かのアミノ酸が生成されていること。
この装置でこれらの化合物を簡単に合成できることに驚いた。」
地球上の生物の構成要素であり、生成には何100万年とかかり、非常に特殊な条件が必要であると考えられていた有機化合物、Millerはそれを初回の実験で1週間もかけずに作ってしまった。

1953年Millerがサイエンス誌でこの実験に関する論文を発表すると、ニューヨークタイムズも生命とガラスの地球というタイトルで記事を書く。
生命の起源に関する近代の研究は1952年のMillerの実験を受けて開始されるが善し悪しが分かれるところ。
歓迎すべきは生命誕生についての知識の隙間を埋めようというMillerの研究に触発され、たくさんの科学者が誕生したこと。
国中、そして世界中の研究室で作業は続けられている。
忌むべきはMillerの実験が理不尽な期待を生んだこと。
Robert Hazen(Carnegie Institute)「成功したUrey-Millerの実験は他のたくさんの人々に生命を作り出すのは簡単だと思わせてしまった。
アミノ酸も糖質も脂質も生み出せる。
後はそれらを混ぜ合わせて細胞の出来上がりだと。
そんな単純ではない。」
地球の大気はアンモニアやメタンというMillerの実験に重要物質をほとんど含んでいなかったことが1960年代に入る前に示され、彼の前提とは異なることが明らかに。
科学者達は生命誕生に関するその他の理論を探求するようになる。
彼らは競い合いあまねく地球を掘り返してゆく。
海中や地下深くを・・・
地球上でどのように生命が誕生したのか、その答えを求めるレースが始まる。

生命の基本要素となるものはもちかしたら別の環境下や原始スープ以外のところで生まれたのではないだろうか?
答えの1つは文字通り空から降ってきた。
Gleiser「1969年オーストラリアのビクトリア州にあるマーチンソンというところに隕石が落下したが、その隕石の中には多くの有機化合物が含まれていることが分かった。
たくさんの人々が調べに行って実際炭素などの元素を見つけた。
他により複雑な物質であるアミノ酸も検出した。
この隕石からはいろいろなことが見えてきたが、中でも驚いたことはある可能性。
それは複雑な分子は宇宙空間で合成できるかもしれないということ。」
生命の起源の研究者達にとってマーチソン隕石は金にも匹敵する。
Dave Deamer(UC Santa Cruz)「分析を行うと様々な種類のアミノ酸を含むことが分かり、アミノ酸は私達の生活圏外でも確かに合成されるということの裏付けとなった。」
驚くべきことにマーチソン隕石から検出されたアミノ酸のいくつかは1952年にMillerが生成したのと同じ種類であったがそれだけではない。
Deamer「こういう実験を行った。
まずマーチソン隕石からほんの少し何グラムかサンプルを採取して有機溶剤と一緒にすり鉢で細かく砕く。
この溶剤は私達が脂質と呼ぶような分子を抽出してくれる。一種の脂肪分子。
または油性分子。
顕微鏡で観察すると抽出した油性分子とそれを取り囲む水の間で分離が起こっているのが見られる。」
脂質が水の中で自然に細胞のような構造を築いてゆく。
太陽系より古い隕石の中で発見された生命の重要な特性の1つである。
地球上の生命の基本要素は地球が誕生するずっと以前より存在したのだとマーチソン隕石は語っている。

1970年代に入ると天文学者は特別な望遠鏡で暗黒星雲の中に他の有機化合物を発見する。
Gleiser「だからこの地球上で何かに放電するというようなUrey-Miller方式のアプローチは必要ない。
仕事をしたのは紫外線、エネルギーを供給して単純な物質がより複雑なアミノ酸へと変換する反応を引き起こしたといえる。
その重要な意味とは地球上で生命を生み出したアミノ酸が実は宇宙で作られたものかもしれないことを示している。
つまり地球上の生命は地球そのものが生んだのではないのかもしれない。」
この発見はパンスペルミアと呼ばれる仮説を後押しするものとなる。
生命あるいは生命の主要な構成要素は宇宙のどこか、例えば別の惑星で発生したのだとする説。
そしておそらく彗星や隕石に乗って地球に運ばれてきたとしているが、知能の高い異星人によるものだとする過激な見解もある。
何らかの形で宇宙から来た生命が地球に住み着いた可能性は理論上もっともらしいが生命誕生の謎を解く助けにはならない。

パンスペルミアは抜きにして有機化合物が宇宙から飛んできたのだとしたら、地球の生命発祥に関する有益な情報が地球の至る所にあるのでは?
Hazen「生命の起源については大きく2通りのアプローチで足りない知識を埋めてゆく。
1つはボトムアップ、それは地球科学的に単純はものを考察して科学的により複雑なものにしようとする、実験室で使われている方式。
そして別のグループが採用している方式はトップダウン、現代の地質環境や生物環境を調査して現存するもっとも単純で原始的な生物を探す。」
新たな発見や概念が現れてもなおMillerは自身が提示したアミノ酸生成の方式を盛り込まない生命の起源についての見解を認めようとはしなかった。
同僚のJefferey Badaらと共に実験の修正を行ってからは特にだ。
Bada「Millerが健在だったころ、私達は天然ガスの混合物を使って実験をやり直し、きちんとした結果を出すことにした。
実際に行ってみるとそこには確かに検出が可能なレベルのアミノ酸が生成された。
自然の大気においても一定の確率以上でアミノ酸を作り出せることが分かった。」
Miller達は原始スープが地球上の生命誕生へのもっともシンプルで論議的な道筋であることを証明したと考えている。
Hazen「生命の起源の分野には様々な派閥やあらゆる見解があり、それぞれが立場を競い合っている状態だが、異なる真実がたくさん存在することもありえる。
しかしMillerは他の説にも耳をやりはするものの、違う、正しいのは私だから、その見解は間違っていると言ってしまう。」
Bada「あらゆる反応をメモし、紙の上で解き、机上の科学と呼んでいた。
自然のシステムの中で起こったこととは関連性がないが、物事をそうやって理解した。」
2007年にこの世を去るまで、Stanley Millerは純粋に原始スープ説を信じ続けていた。
しかし生命誕生に関してはそのほかの説が有力となっている。
地球上の生命には奇妙で驚くべき起源があるという説が・・・

Hazen「地球上で生命の誕生が可能だった場所はたくさんあると思う。」
お伽噺の虫のような姿をしたポリプやプランクトンは地上の1000倍という水圧の海底3000mを超す場所で日光も酸素もなしに生活する極限環境を好む生物。
そばでは火山硫黄が噴出し、水温は常に70℃にもなるが、ここは生き物があふれている。
海底の噴出孔付近に見られる高温高圧の環境下でMillerが生成したものに似たアミノ酸は作られるのだろうか。
Hazen「カプセルの中には非常に単純な有機化合物と鉱物粉末、二酸化炭素のようなものをほんの少しと水または単純な分子といった原始地球にあった物質を入れる。
カプセルは溶接で作る。
一方の端を閉じ逆さにして中身を入れたら反対も閉じて完成。
出来上がったものは深海の噴出孔付近の高温高圧環境を再現する装置の中へ。
原理上は圧力鍋の働きと同じ、圧力鍋の場合はおそらく大気圧の2.5倍が限度だが、この装置を使えば4000倍の圧力が加えられる。
そしてカプセルを装置にかけること数時間。
一連の実験の結果単純な分子キルビン酸ができた。
その少量を加熱、圧搾すると黄褐色で油性のドロドロしたものになる。
そしてそれをディーマーの実験と同じく水に入れると膜を作る。」
しかし言うまでもなくMillerの同僚をうならせるまでには至らない。
Bada「高温すぎる。
熱水噴出孔付近の水を調べたところ、有機化合物は含まれていなかった。
検出されたとしたら、サンプルの中に二次的に溶け込んだ海水の汚染物質のせいだろう。」

研究されている生命の起源についての可能性は他にもある。
例えば粘土、生命を作り出す際の触媒だったのか、つまり粘土が化学物質から生命誕生への進化を促進したのか。
Hazen「年度は表面が電荷していてその微粒子が有機分子を引き付ける。
例えば原始スープからそれらを吸い上げて凝縮し、表面に付着させる。
凝縮されたために分子はスープの中にいる時よりもはるかに効率よく反応を起こせる。」
James Ferris(Rensselaer Polytechnic Institute)「地球上で化学反応の触媒が可能な物質といえば、たいてい単純な鉱物、または金属鉄といったもの。
研究の結果特定の粘土鉱物モンモリドナイトがRNAを形成する際に触媒となることを発見した。」
RNA(リボ核酸)はDNAのシンプルなバ−ジョンのようなもので、原始生命体によいてコピーマシーンの役割を担ってきた。
Hazen「Ferrisは遺伝の分子RNAを構成している個々の成分を集めて粘土と一緒にしてやると粘土が自然にそれらをRNAやDNAのような情報が組み合わさった長い鎖状の遺伝情報を伝達する物質に合成するということを行ってみせた。」
RNAワールド仮説は原子のアミノ酸仮説からは大幅な飛躍となるが、これがFerrisと彼のチームがニューヨークのレンセラー工科大学で取り組んでいる研究。
Ferris「Millerの実験で生成されていたのは単純なアミノ酸でそれが重合体、ようするにアミノ酸ポリマーに発展することはなかった。
私がずっとやってきているのはRNAの合成過程における次の段階を調べること。」

しかしFerrisたちが単純なアミノ酸を無視して複製する分子の研究に取り組むのならば、それすらも飛ばして細胞の膜、代謝、複製に焦点をあてればよいのではないだろうか。
つまり研究室において実際の生物の創造を行うということ。
それを試みている科学者達もいる。
彼らは人工生命の誕生を目前にしているのだ。
もしそうならば地球の生命誕生に関してそれは何を教えてくれるのだろう。
アリストテレスの時代からほぼ3000年、生命の定義づけには難題が残っている。
例えば雪のかけら、水の結晶形だが、それぞれの形は突如として現れる自然界でもっとも美しい複雑性を体現するものの1つ。
ところで雪の結晶や結晶形をしたものは生きているのか。
Peter Ward(Biologist)「初期の生命の定義には結晶にあてはまるものもある。
結晶は周囲から構成要素を経てある意味代謝をし、化学反応によってエネルギーを使い自分の体をどんどん大きくしてゆく。
つまり複製だが進化もしている。
彼らの移動と同じくらいかすかな状態の変化だが、おそらく小さくなったり大きくなったりしている。
結晶では代謝、複製、進化の3つが見られる。」
Neil de Grasse Tyson(American Museum of Natural History)「生命の定義の中には結晶が満たしているものもある。
星は代謝を行い、誕生し、生涯を全うしてまた再生するのに生物とは言わない。
重要なのは研究室で振るビーカーから何かが這い出てくること。
それがゴール、たどり着くまで定義は気にしない。」

研究室では今にも人工生命が誕生しようとしているようだ。
ハーバード大学のJack Szostak(Harvard University)を含む世界の6つの研究チームが元気な赤ちゃんの生みの親となる日もきっと近いだろう。
Szostak「私の研究室では主に科学から生物への推移を理解しようとしている。
20年前これは今日までに統制できるといってしまったが、もう20年かからないことを願う。」
生命を作り出すSzostakの試みは地球が選らんfだプロセスと同じく細胞から始まる。
Szostak「これは原始細胞と呼んだりしている。
主要構成要素を2つ備えていて、1つめは細胞膜の境界構造、もう1つは一種の遺伝物質、そしてここでどうすればそれらを分裂、成長させられるのかが分かれば細胞についての非常にシンプルな理論を組み立てられる。」
Raphel Bruckner(Graduate Student)「使うのはマイクロ流体工学という技術。
高圧下で異なる流体をマイクロチャンネルに送り込んでやると、それらが面白い構造に再結合する。
見た目でいうと細胞のようなものを真似た感じの構造。
ここに3種類の流体を用意した。
それぞれがポンプにつながっていてすべての流体はこの管を通り、装置に流れ込む。
ここに見えているのは水、油、水、これが再結合して二重エマルションの液滴と呼ばれるものを生成した。
装置からでてきた液滴は集めておいてさらなる実験に利用する。
コントロールされていることを除けば蛇口から漏れる水滴のようだ。」
Hazen「Szostakの研究室には基本構成要素がそろっており、細胞膜形成の方法も明らかにしているわけなので、自己複製するRNA分子の生成まであと1歩だろう。
もしそれでコピーを作り複製を行う細胞の中にでもいれれば、本質的に実物とそっくりなものが出来上がってくる。
現実に存在するもっとも単純な細胞の複雑さと同じではないが、それでも自己複製が可能な科学システムであり、淘汰圧を受けてもなお進化し続けてゆくのかもしれない。
その場合生命の定義にあてはまる。」

Szostakの研究がうまくいけば、画期的な科学の出来事だが、それは生命誕生の謎に答えをくれるのだろうか。
生命誕生の謎の根本にあるのは生物であれ、無生物であれ、宇宙のすべてを作り上げたものと生命の構成要素は同じだということ。
星屑から細胞、そして探求心をそなえた人間まで。
科学者達には大昔に誕生した生命が、たくさんある中からどの道筋を選択したのか議論するという課題が残されいている。
しかし進んだ方向もどんな手段を利用したのかも根本的な問題にはすでに答えが出されている。
生命の誕生についての科学がたくさんの人々に与えたのは畏怖の念と科学の力では生命の謎を解き明かせないのだという驚きである。
生命は想像もできないような過酷な自然環境のもとに作られ、それは大きなかけだったのかもしれない。
だがそれは実行された。
少なくとも1度は・・・
私達がその証拠である。
物理学と科学の法則の輝かしい証。
そちえ私達の知識の及ばない大きな力の証。
無生物が生命を持ち、呼吸し、思考する生物へと進化する能力をはるかにしのぐ存在が地球にはあるのだ。

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Dam Beavers


木の伐採、測量、ダム作り、ビーバーはこれらの仕事を1日でこなす。
彼らは肉体と優れた技術を駆使して新しい生態系を作り上げることができる。
ビーバーの池は多くの動物達を引き寄せ、彼らに様々な恩恵を与えてくれる。
繁殖の相手を探して家族を築く者、狩りをする者、生き残るための戦いをする者、ここで彼らが生きてゆけるのは、ビーバーの働きのおかげ。
ダム作りはビーバーの仕事の一部。
彼らは敢然と的に立ち向かい、未知の領域を切り開く。
そして自然の驚異と戦う。
全ては自分達の楽園を築くため。
ワイオミング州ロッキー山脈の谷間を流れる川に、春が訪れようとしている。
その大きな川の脇に小さな池がある。
この池の女王が自分の縄張りを見に来た。
それはメスのビーバーだが、この場所では他のどんな動物よりも重要な存在。
このオアシスは隅から隅に至るまで、このメスのビーバーが作り上げたもの。
そしてこの谷に暮らす動物のほとんどは、彼女の仕事から様々な恩恵を受けてる。
しかし彼女は1人の力でこれだけの大仕事をこなしたわけではない。
パートナーのオスも彼女の仕事を手伝った。
ビーバーのつがいは一生を共に過ごす。
彼らは5年前、森の中を流れている小さな川にやってきた。
そして湿地へと変えていった。

まずはダムを作った。
全てのビーバーがダムを作るわけではないが、流れが速い川を池に変えるにはダムが必要。
ダムが完成したら、水路を作る。
これで食料には困らない。
そして複数の部屋を持つ巣を作る。
これがビローポンドのビーバーの生活の中心。
ビーバーの家族は多くの時間を巣の中で過ごし、幼い子供は巣の外へでない。
前の年の春に生まれた2匹の子供は、まだ両親から食料を与えられている。
彼らの1年前に生まれた2歳のオスは、親の仕事を手伝えるまでに成長している。
しかしビーバーは毎年張るに子供を産むので、もうすぐ母親が次の子供を産んだら、彼は巣を離れなければならない。

北アメリカ最大のげっ歯類ビーバーは、体重25kgにまで成長する。
オスもメスも子供も大人も外見は同じだが、他の動物とは明らかに違う。
姿はウッドチャックに似ているが、後ろ足にはアヒルのような水かきがある。
アライグマに似た5本の指がある。
尻尾はカモノハシに似ているが、成長するにつれ、毛はなくなる。
そしてもっとも重要なのがウサギのような頑丈な歯。
ビーバーはこれらの道具を巧みに使い、新しい生態系を作り上げる。
そして他の動物達にも恩恵をもたらす。
春の訪れが近づくと、ビローポンドに動物達が集まり始める。
彼らは毎年春をこのビーバーが作った池で過ごす。

メキシコから渡ってきたカナダヅルアメリカガランチョウがいる。
カナダガンホオジロガモの移動距離はそれほど遠くはないだろう。
ここには彼らに必要な穏やかな水があり、安全な巣作りができる。

冬の間乾いた枝ばかり食べていたメスのムースも春になればヤナギの芽を食べられるようになる。
長く厳しい冬を乗り越えた捕食動物達も、春の訪れと共に池の周りに姿を見せ始める。
ハイイログマの親子は6ヶ月間冬眠していた。
冬眠から目覚めて空腹。
ハイイログマは雑食で、手に入るものはなんでも食べる。
彼らはビーバーを狙おうとしているのかもしれない。
ビローポンドの一家はすぐに水の中に逃げた。
しかしビーバー達にとってこの時期最大の脅威は自然がもたらす変化。
気温の上昇は時として急激な変化をもたらす。
6ヶ月間大地を覆った氷が急速に溶けてゆく。
数週間で景色は一変。
ビローポンドに注いでいる小さな川は、急流へと様変わりした。
激しい流れでビーバーのダムが崩壊する。
母親の何週間にも及ぶ苦労が水の泡。
幼いビーバーはまだ水の流れに逆らって泳げるほど強くない。
生後1ヶ月の子供は巣から離れた場所にいた。
水に流されてしまうと、巣に戻れなくなるかもしれない。
幸い母親が助けにきた。

水の流れが落ち着くと、父親が巣のダメージを確かめにきた。
彼らの巣は流されていた。
誰かが池を元通りにしなければ、多くの動物達が住む場所を失うことになる。
それはビーバーの得意とする仕事。
静かに流れる水の音が、ビーバーの本能を突き動かす。
ビーバー達は毎年春の修理の仕事を始める。
最初は材料集め。
母親のビーバーが門歯で木をかじり、材木を集めてゆく。
ビーバーの歯は常に成長し続けるので、放っておけば頭より大きくなってしまう。
しかし頻繁に木をかじれば、歯は自然と磨り減る。
このビーバー一家の仕事の分担ははっきりしている。
母親は木の枝を刺して父親は川底のコケや水草を集めてきて、ダムの穴をふさぐ。
1週間とたたずに治水工事は完了。
生後2年のオスも両親の仕事を手伝う。
これも将来のための勉強の1つ。

母親の出産の時がきた。
生後2年のオスは巣を離れて自分の力で生きてゆかなければならない。
自分の住処とパートナーを見つける旅が始まる。
若いビーバーにとっては命がけの過酷な旅。
母親は巣をひとりじめにして、乾いた草の上に横たわる。
出産が始まると、すぐ最初の子供がでてきた。
ビーバーは1度に3〜4匹の子供を産む。
今回は3匹、すぐに乳を飲み始める。
体重は500gほどだが、見た目は親と変わらない。
生まれる時には目が開いており、毛がはえて鋭い歯も生え揃っている。
そのため生後わずか2週間で固いものを食べられる。
春の訪れと共に谷の景色は一変する。
ビーバーが作った池は他の動物にも様々な恵みを与えてくれる。
そこには食料になる植物が豊富にあり、子供を産んで育てるには最適。
母親と生後2週間のムースが池のほとりにやってきた。
子供が生まれて初めてヤナギの芽を食べる。
ナキハクチョウには静かな水と巣作りする場所が必要。
ビーバーの池は彼らにとって、まさに理想的な環境なので、毎年春戻ってくる。
ハクチョウのヒナ達は飛べないが、水をかくことはできるので、池の中央にいれば安全。

子供達を連れた母親キツネにとっては、この池は獲物を狩る場所。
子供達は母親を見て狩りの技術を学ぶが、まだ遊びに夢中になることもある。
夜になると池のほとりにはコーラスガエルの声が響き渡る。
2.5cmほどの小さなカエルだが、その声は遠くまで聞こえる。
それはオスがメスを誘うためにだす鳴き声で、メスも鳴き声で答える。
そしてメスが卵を産み、オスが上に乗って精子をかける。
そして卵が受精するかどうかを運命に託す。

ビローポンドの1.5kmほど北では、1ヶ月前巣を離れた2歳のビーバーが行き場所を探していた。
彼は生涯を共に過ごすパートナーとなるメスを求めてある池に入る。
しかし池のそこら中に他のビーバーが自分の縄張りを主張する臭いがあるので、他の縄張りを探すしかない。
彼には自分の縄張りとなる池も、安全な巣もないので、全く危険のない動物にないしても過剰な警戒心を抱いてしまうが、周りを警戒するのは間違っていなかった。
向こう岸に空腹のハイイログマがいた。
母親に追い払われてしまった若いオス。
まだ自分の縄張りはなく、食料も自分の力で手に入れなければならない。
若いクマとビーバーが共に最初の試練の時を迎えていた。
しかし両者が出会えばビーバーは食べられてしまう。
その前に逃げるのが賢明。

ビローポンドでは子供達が始めて池を泳いだ。
自分達の池でも危険は潜んでいる。
ビーバーの池に集まる様々な動物の中には捕食動物もいる。
カナダカワウソは主にマスやザリガニを食べるが、無防備なビーバーの子供がいれば捕まえて食べることもある。
しかし自分よりも大きい母親のビーバーにわざわざ戦いを挑む気はない。

母親がそばにいても子供が危険な目にあうこともある。
母親のムースと子供がビローポンドを離れ、小さな湖の岸辺にやってきた。
ここには敵から身を隠す場所がない。
危険なのは捕食動物だけではない。
繁殖期を迎えるオスのバイソンは、非常に攻撃的になる場合がある。
母親が体重1トンのバイソンを威嚇するが、バイソンを怒らせてしまうだけ。
ムースの子供には状況が理解できない。
自分の力で子供を助けられない母親は、怒ったバイソンの気を散らそうとする。
ようやくバイソンが離れていった。
母親は子供が立ち上がるまで1時間以上寄り添った。
怪我はしてもどうにか歩けるようだ。

ビローポンドを旅立った若いオスのビーバーは、まだ自分の縄張りを築くことができない。
安住の地を見つけるまで、彼の旅は終わらない。
この5週間いくつもの川を行き来した。
今いる場所は生まれた池から3kmしか離れていないが、ビーバーには大変な旅。
そして彼はついに理想の場所を見つけた。
空気中には他のビーバーが縄張りを主張する臭いが漂っている。
しかしそれは良い兆しだった。
上流に向かって泳いでた彼は、他のビーバーと遭遇する。
それは遠くの池に住む家族と別れて数日前にここに来たメスだった。
若いオスのビーバーがメスに出会い、周りに他のオスはいない。
この2匹のビーバーが互いに惹かれあうのは自然な成り行き。
ビーバーは一生を同じパートナーと暮らす。
若いカップルは恋いに夢中。
互いに身づくろいをして、ずっと離れない。
しかし彼らにはやるべき仕事がある。
ここで暮らしてゆくにはまずダムを作らなければならない。

何もない所にダムを作るには、設計、伐採、大工仕事、そして石を自由に扱う技術が必要になる。
まずは低木の枝を切って、浅瀬の底に沈める。
そして流されないように上に石を積み上げる。
さらに小石や木の枝を積む。
そして泥を押し込み隙間をふさぐ。
ダムは複数の層でできている。
川底には小枝、その上には石、そして太い枝を三角形に積み上げる。
水位が上がったときにはさらに枝や石を足してダムの幅を広げて、より高くする。
完成には1ヶ月かかる
若いカップルは満足できるダムを作り終えた。
川の水はダムの隙間を流れてゆく。
ビーバーのダムは流れを遅くするのが目的であり、ダムの下流の流れは以前と変わりない。
彼らのダムは長さ12mだが、ビーバーが作ったダムの最長記録は1200m。
ダムが出来上がると、そこはビーバーの池へと様変わりしてゆく。
ダムで川の流れが遮られると、水が陸に溢れ出す。

たった1つのダムで景色は一変する。
ヤナギの森には新たな植物が生え、様々な動物達が引き寄せられるように新しい湿地に集まってくる。
まだ自分達の巣を作っていない若いカップルは、岸に掘った穴を巣の変わりにして暮らしている。
しかしビーバーが安全に暮らすためには、ダムを築き池を作ることが重要。
メスのオオカミが岸辺に残るビーバーの臭いを嗅ぎ取った。
しかしビーバーがそこにいるかは分からない。
若いメスのビーバーはオオカミと同じくらい鋭い嗅覚で危険が迫っていることを察知した。
彼女が尻尾で水面を叩いて警告すると、パートナーのオスも危険を察知して素早く水の中へ逃げ込む。
その音でオオカミも自分の存在に気づかれたことを知って諦めて去っていった。
若いビーバーのカップルは、無事に頑丈なダムを築き、安全に暮らせる池を築くことができた。
しかし短い夏が終わる前にやるべき仕事がたくさんある。

ロッキー山脈の7月、ビローポンドのビーバーにとっては快適な季節。
急いでやらねばならない工事は特にないが、親には仕事がある。
子供達は1ヶ月に1kgほど体重を増やすために、たくさん食べなければならない。
食料の調達は親の役目。
ビーバーの好物であるハンの木、ハコヤナギ、ポプラ、ヤナギの枝を集めて池に浮かべて、食べごろの枝を子供達が待つ巣に運ぶ。
その頃巣の中の子供達はどちらが大きな枝を食べるかで喧嘩していた。
親のビーバーにも食べる時間は必要。
彼らは小さな枝と葉も食べるが、一番の好物は樹液を含んだ軟らかい樹皮。
前足で起用に枝を回転させながら、鋭い歯で美味しい皮の部分だけをかじりとる。
ビーバーは小さな体にも関わらず、1日に1kgの木をたいらげる。
それは強い歯と消化器官のおかげ。
ビーバーの胃の中には特殊な分泌腺があり、そこから分泌される酵素が繊維の多い食物を効率的に分解してくれる。
そして胃の酵素で分解できなかった分は腸の中の大量のバクテリアによって分解される。
この時期は食料に困ることはないが、問題は水。
夏の後半になると、小さな川は頻繁に干上がり、流れ込む水が減ったビーバーの池は浅瀬が泥に変わってしまう。

泥の中にいる虫を捕って食べるトラフサンショウウオにとっては都合のよい状況。
しかしこの時期に生まれたサンショウウオやオタマジャクシの中には泥の上で身動きできなくなってしまうものがいる。
さらにトンボの幼虫やゲンゴロウに食べられてしまうものもいる。

ビーバーの池の周りを囲む湿地にはヤナギが生い茂り、緑の厚い壁を作り出している。
そこは1年中ムースが好む場所。
あの母親と子供が再び姿を現した。
バイソンに襲われた子供は無事。
健康であれば1日に1kg以上体重が増えてゆく。
ヤナギの枝には小さな動物達の活発な姿がある。
アカエリシルスイキツツキ、木の皮をはがして樹液を吸おうとしている。
ついでに捕まえた虫も樹液をつけて一緒に味わう。
このキツツキもビーバーのような貢献をしている。
彼らが食事をした後は、他の動物が樹液にありつける。

すぐに現れたのはキタヒメハチドリ
このハチドリは1秒間に50回羽ばたきしている。
しかしそのためには15分に1度燃料を補給しなければならない。
自分の食事だけでなく、子供達にも食料を与えなければならない。
そのため池の近くに巣を作っている。

身近で安全に食料を手に入れられることは、鳥にとってもムースにとってもビーバーにとっても重要なこと。
しかしビーバーの場合は事情が複雑。
彼らは水の中にいれば安全だが、食料やダムの材料は陸上にある。
池の近くの木は何年も前に切り倒してしまったので、木は池から離れたところにしか残っていない。
しかし陸の上を歩くのは危険。
彼らは問題を解決するために、大規模な工事を行った。
木を池に近づけられないならば、自分達が木に近づくしかない。
その解決策は水路。
まずは水辺の草を取り除いて地面に溝を作る。
その溝を深く掘れば、水が流れ込む。
母親と父親が池の底の泥をさらい、水路の両道に盛って土手を作る。
やがて池から様々な方向に延びる水路のネトワークが出来上がる。
森の中を流れる230mの水路は、そこに長い間ビーバーが暮らしているという証拠。
この水路はビーバーの逃げ道にもなる。
地面を引きずって枝を運ぶよりも、水路に浮かべて運ぶほうが楽なので、食料を溜めなければならない時期には、この水路がより重要になる。

その時期はまもなく、確実にやってくる。
日は短くなり、風の中に少しずつ冷たさが感じられるようになってきた。
他の動物達も変化を感じている。
キタヒメハチドリの幼いメスが、本能に突き動かされたかのように飛ぼうとしている。
しかし体を少し浮かせるのがやっと。
近くにいたオスが寄ってきた。
メスは交尾をするには若すぎるが、オスは執拗、どうにかしてメスの気を引こうとする。
しかし母親が巣に戻り、すぐにオスを追い払った。
翌朝彼女は巣を離れ、池の近くにとまっていた。
飛ぶことを覚えた彼女は、母親のもとを離れて冬を過ごすためにメキシコへ渡る。

数日後、最初の霜がおりた。
新しい巣を作った若いカップルは、元気にしていた。
すでに夏は終わり、彼らは冬を乗り切るための食料を蓄えなければならない。
しかし食料を集める前に、厳しい冬を安全に暮らすことができるしっかりした巣を作る必要がある。
ロッキー山脈から冷たい風が吹き降りて、木々の葉が赤く染まる。
若いビーバーのカップルも自然の変化を感じ取り、もう残された時間が少ないことを理解した。
巣を完成させなければ、冬を乗り越えられないので、材木集めに精を出す。
オスのビーバーは太さ15cmのハコヤナギの木を1時間もかけずにかじり切ることができる。
しかしこれは危険な仕事。
時には別のビーバーが倒れた木の下敷きになることもあるので、メスはパートナーが木を倒すまで離れた場所で待っている。
ビーバーは夜活動することが多いので、暗くなった後でも仕事を続けることは苦にならない。
何度かかじるたびに、木がきしむ音に耳を傾けている。
逃げるタイミングを計るためだ。
ここでメスも加わり倒れた木をかじって、運びやすい長さにする。
次に邪魔な枝を切り落とし、巣を作る場所に運ぶ。
夜が明けても巣作りは続く。
ねぐらにしていた土手の穴の上に、木の枝を積み上げてゆく。
そして土を掘り、邪魔な木を取り除いて穴を大きくする。
そして泥で隙間を塞いで冷たい空気が中に入らないようにする。
若いカップルは、およそ1週間かけて高さ1m以上、壁の厚さ50cm以上の立派な巣を作り上げた。
入り口は水面下にあり、入ったところに食事をしたり、体を乾かすための部屋がある。
その上はリビングルームで、天井には熱を外に逃がすための穴がある。
いずれはもっと大きくなるかもしれないが、今はこれで十分。

厳しい冬を乗り越えるための準備をしなければならないのはビーバーだけではない。
カナダヅルは虫や種を食べてテキサスやメキシコへ渡るための体力をつける。
この時期に繁殖活動をする動物もいる。
ビローポンドの下流にムースが姿を現した。
大きなオス、この辺りにメスが頻繁に現れることを知っていて、鳴き声で自分の存在をアピールしている。
ヘラジカに比べれば、ムースの鳴き声は静かなもの。
ヘラジカの声はビーバーの池の周囲に響き渡る。
それはオスがメスを誘う声。
他のオスにとっては警告であり、時には戦いの引き金にもなる。
勝利したものは、メスを何頭も自分のものにできるが、敗者は1年間待たねばならない。

成熟したビーバーにとって秋は収穫の季節。
何度も冬を過ごしたビローポンドの親は、食料を溜めることの大切さを知っている。
母親が良い木を見つけた。
美味しそうな枝をかじって切り、池の中の食料貯蔵所へ運ぶ。
そこは池の深い場所で、冬の冷たい水が枝を凍らせずに保存してくれる。
運んできた枝を池の底に押し込む。
これで新鮮なまま保存できる。
彼らが蓄えた枝の総量は1トンを超える。
ビーバーは仕事の途中、頻繁に体の手入れをする。
特にこの時期は身づくろいが欠かせない。
体が冷えるのを防ぐためだ。
ビーバーの尻尾の付け根にある分泌腺からは、水をはじく性質の油が分泌されている。
これを全身の毛に丹念に塗りつけることで、皮膚が水に濡れてからだが冷えるのを防ぐことができる。
若いカップルはまだ自分達だけで冬を越したことがない。
冬が来る前に食料を蓄えなくてはいけないことは知っているが、まだ経験不足。
彼らが池に蓄えることができた食料は明らかに不足している。
ロッキー山脈の厳しい冬は、すぐそこに近づいていた。
冬がきて雪が降ると、谷は6ヶ月間雪に覆われる。
ビローポンドも大部分が凍った。
しかしビーバーの巣の中は快適。
厚い壁が巣の中に冷気が入るのを防ぎ、体の脂肪が体温を一定に保ってくれる。
彼らは多くの時間を寝て過ごす。

外の世界では強風が雪を高く吹き上げ、気温は時として-40℃になることもある。
多くの動物はひたすら耐える。
バイソンは頭を使って雪を掘り、地面の草を食べる。
ムースは乾いた木の枝を食べて飢えをしのぐ。
ヘラジカは足で雪を掘って食べられる草を探す。

上流の新しい池で過ごしているビーバーの若いカップルも、冬の厳しさに直面していた。
雪の中に穴があるのは誰かが外下出てきた証拠。
それは空腹に負けて厳しい寒さの中で食料を探そうとする若いオス。
ビーバーが必死に働いて冬に備えるのはこうなりたくないから。
ビーバーの体は雪の上を歩くのにはむいていないが、彼は小さな若木を見つけた。
これで1日分の食料になる。
しかし春は遠い先、寒さが厳しさを増し、雪が深くなる中で、オスは日ごとにより遠くまで食べられる木を探しに行かなければならない。
マツの枝を採るために、秋に倒したハコヤナギの幹に登る。
この凍った幹を登れば、食べられる枝がある。
ビーバーは決して木登りは得意ではないが、生きるためにはなんとしても登るしかない。
3m登って落ちてしまった。
しかし彼はくじけなかった。
1日の食料は数本の枝だけで、体の脂肪も減っているが、若いカップルは生き延びている。
ようやく太陽の光が少しずつ、寒さを和らげるようになった。
まだ雪は残るが、もっとも厳しい時期は終わった。
下流のビローポンドのビーバー達も、春の訪れを喜んでいた。
彼らは今年も巣を補強して、再び子供を産むだろう。
他の動物達も池に戻ってくる。
しかし様々な動物達に恵みをもたらしてきたビローポンドも、ビーバーが長く暮らしたために木が減っている。
近い将来には彼らがビローポンドを捨て、別の場所へ移る時が来るかもしれない。
しかしその時には森はよみがえり、生態系の新たなサイクルが始まる。
上流の新しい池では初めての試練を乗り越えた若いカップルが、氷がなくなった池を泳いでいた。
3月の朝、絆を確かめ合う彼らは、自分達の子供を作る準備ができている。
前の年の経験から多くを学んだ彼らは、様々な動物達に恵みをもたらす豊かな生態系を作り上げてゆくことだろう。

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Kings of Camouflage コウイカ



Dr.Mark Norman「初めてコウイカを見た時は驚いた。
海草の茂みから覗く目にも見えるし、宇宙船のようにも見える。
海中でこんなに奇妙な生物は他にいない。」
海洋生物学者Norman博士はオーストラリアにあるVictoria博物館の館長。
Norman「コウイカに魅かれるのは、他に類のない生物だから。
海に潜って観察していると、惹きこまれずにいられない。」
Norman博士はコウイカ研究の第1人者。
研究を始めて20年だが、100種存在すると言われるコウイカ類の半分しか見ていない。
コウイカは世界の海に生息し、名前の由来はそのユニークな体質にある。
Norman「コウイカは筋肉の内部に石灰質の甲を持つ。
この甲にある空気の層が、水中に浮くことを可能にする。」
イカの甲はビーチで見られ、鳥のエサとしても有名。
コウイカは背骨のない軟体動物、タコやスルメイカと同様、頭足類の仲間。
コウイカは変装の達人。



皮膚の色素胞を操って、体の色や形を変え、海草や岩と同化する。
Norman「コウイカは色や形を変えられるよう、皮膚を進化させた。
もっと驚いたのは、隠れ蓑として進化させた色素胞をさらに進化させ、他の使い道を考え出したコウイカがいること。」
一体何に利用したのだろうか?


熱帯地方には、珍しい生物が生息する。
インドネシアにNorman博士とダイビングインストラクターのドナルドが、コウイカ科の一種、コブシメ(Giant cuttlefish)を探しにきた。
印象的な光を放つコブシメ探しにこの先数週間を費やす。
地元に住むドナルドが、コブシメが好む場所を発見。
コブシメとの初対面。
Norman「10〜15分くらい経つと、コブシメにかなり近づけるようになり、こちらが観察しているのと同じくらい向うもこっちを見ていた。
しばらく観察し続けると、僕らに慣れて、獲物の捕獲にお供できるようになった。」
常に空腹で獲物を探している。
珊瑚の模様に同化して獲物に近づくのはテクニックの1つ。
これが失敗すると、コブシメは魅惑的なライトショーを展開する。
この技を狩に使うのはコウイカ類でもコブシメだけ。



このショーを何度も見たNorman博士は、実験を決意した。
Norman「獲物捕獲方法を知るために、僕らの好きなタイミングで行動させる。
生きた獲物やオトリを与え、あの行動に出たら、何に反応したのか分析する。
どういう時に一番反応するかも見る。」
テスト1:コブシメ大好物の小さなカニは、難なく受け入れられるが、あまり光は放たない。
テスト2:少し大きめのオモチャのロブスターをオトリにする。
ロブスターが動いているうちは魅力に感じたようだが、動きが止まると食欲は失せた様子。
Norman博士が再度オトリを動かすと、コブシメは即座に光を放ち始めた。
しかしロブスターの動きが止まるとやめてしまう。
テスト3:動くオトリを与えるが、他のオトリを求めて去ってしまった。



コウイカは獲物を生きたまま食べる。
もしかしたらこのライトショーを展開するかどうかは、獲物のサイズによるのではないだろうか?
Norman「どうやら獲物が小さい時や、すでにお腹がいっぱいの時は光らないようだ。
でもオトリの獲物が大きい時は、見事なショーを繰り広げる。
たぶん獲物を驚かせて、その場から動けないようにするためだ。
後はコウイカの好きなように捕えるだけ。
カニの場合は大きくて危険な爪を避けるために後ろから捕獲した。」
腕を失いたくなければ、獲物を正しく捕えることが大事。



テスト3に戻ろう。
Norman「ガラス容器に入った獲物を差し出すと、面白いことが分かる。
容器を動かしていると獲物の視点でコブシメを見ることができる。
まるで獲物に催眠術をかけているようだ。
コブシメは興奮して近寄ってきた。
獲物を捕えようとするが、周りの水が硬くて近寄れないから混乱している。」
コウイカは空腹に耐えかね向ってくるが、長くは続かない。
Norman「コウイカは頭が良い。
何回かつけば、カニを捕えられないと分かる。
時間の無駄だと冷静に判断しているようだ。」
コウイカと人間の共通点は知力。
無脊椎動物の中で、体に対する脳の割合が一番高い。


コウイカの知能の高さを研究するのはテキサス州、Southwestern大学の比較心理学者Dr.Jesse Purdy。
Purdy「動物を研究することで、人間をより理解できる。」
コウカの脳が人間の脳の進化について解明してくれるかもしれない。
そもそも知能とは何だろう?
Purdy「知能とは学習能力のことで、体験を通して行動を半永久的に変化させること。」
コブシメはガラスの中のカニに夢中だったが、すぐに興味を失った。
学習能力には3段階ある。
Purdy「動物はまず生物学的に意味のない刺激があることを学ぶ。
危害は及ぼさないが、獲物はもらえないなど、これらの刺激は無視される。
第2に古典的条件付(Operant conditioning)を学ぶ。
ここでは動物が2つの刺激を結びつける。
1つの刺激がもう1つを予測させる。
オモチャの魚トロイで行う実験は、それをテストするもの。
コウイカがこのオモチャを食べ物と結びつけることができるかどうか。」
コウイカはこのオモチャがただの標識で、食べ物という重要な信号を送るためだけに存在すると分かるだろうか?



Purdy「オモチャの魚を水槽に入れ、少ししたら本物の魚を入れる。
動物の知能はめまぐるしく働く。」
別のコウイカを試すと、トロイを水槽に入れても攻撃しない。
トロイが魚を予測させないため興味を失ったのだ。
度重なる実験の結果、魚を与えられたほうはトロイを攻撃し、与えられなかったほうは攻撃をやめた。
Purdy「2組で違った結果がでた。
この違いが学習。
第3に動物が学ぶべきことは、何かを得るために反応すること。

道具的条件付け(Instrumental conditioning)。」
これには新しい行動の習得と長期的記憶力が必要。
自動販売機のボタンを押すように、自動給仕機を叩いて食べ物にありつけるだろうか?
むやみに叩くのではなく、魚が落ちるのを期待して叩かないとダメ。
コウイカは簡単に3段階をクリアした。
Purdy「コウイカは高い知能を持つと確信した。
ここからどうするか、刺激に対する慣れ、古典的条件付けや道具的条件付けを実験してきたが、これが我々が期待した能力の全て。
この生物の知能を理解したとは思わない。」
知能は生物が生息する環境と密接につながっている。
コウイカがいかに賢いかを知るヒントは、自然の中に隠されている。
生涯に1度の大イベントを行う場所。
5月下旬、南オーストラリアに冬が訪れた。
海面温度はいくらか下がり、スペンサー湾の外れは静まり返っている。
陸上では冬眠の季節。
しかし海中は違う。
世界最大のコウイカ、オーストラリアコウイカの繁殖期。


オーストラリコウイカは、一夜のうちに集合する。
大きなオスはにらみ合い、体の模様で威嚇する。
小さなメスは無関心。
ライバルはシマウマのようなストライプを体に浮かべる。
相手の体力か自信が衰えるのを待つ。
オーストラリアコウイカは、毎年繁殖のためにこの海岸に大集合する。
ここでしか見られない光景。
オスはメスを引き付けるために、産卵に適した岩を巡り、縄張り争いをする。
オスの体と岩が大きければ大きいほどライバルは増え、それぞれメスに近づくチャンスを狙う。
戦いはエスカレートし、つかみ合いとなる。
墨を吐くのは致命的な怪我を防ぐ最後の手段。


しかし戦いに敗れた小さなオスにもチャンスはある。
まさに裏技だ。
なんと女装するのだ。
体を縮めてメス特有のマダラ模様を浮かべると、メスになりきり闘争心むき出しの大きなオスの横を通り過ぎ、下にいる本物のメスに近づく。
別の大きなオスが現れ、大きなオス同士の戦いが始まると、小さなオスは他のオスに気付かれぬままメスと交接し始める。
メスを手に入れるには、腕力と知力が必要。
しかし誘惑するのは少し虫が良すぎる。
女装は失敗し、オス本来のエゴをむき出しにする。


この悪賢い戦法に比べ、通常の交接はとてもわかりやすい。
カップルはまず重なる。
メスの口の下にはオスの精子を保管する小さな袋があり、交接が始まると、オスは精子をその袋の中に入れる。
数週間に渡り、たくさんのオスがこのメスと交接する。
どのオスもメスが卵を受精する前の最後のパートナーとなることを望んでいるが、タイミングを見計らうのは至難の業。
産卵の時期がくると、メスは卵を1つずつ取り出して、精子の塊の上を通し、ひと舐めすると、岩などの裏側に貼り付ける。
20分間隔で産卵し、数週間で数1000個の卵を産む。
繁殖期が終りに近づくと、Norman博士は岩という岩の裏側に、ギッシリ詰まった無数の卵を発見する。
冬が終わる4ヶ月後には孵化する。
子供は自力で成長する。
交接で体力を消耗した親は、やがて死を迎える。
短命(1年半〜2年)でありながら、高い知能を持つとは驚きだ。


知能とは新しい物事を理解する力。
Pennsylvania州Millersville大学では、海洋生物学者Dr.Jean Geary Boalがコウイカの複雑な習性を研究している。
Boal博士は18年間に渡り、コウイカとその仲間のタコを研究してきた。
Boal「タコは実験装置を壊すのが大好き。
実験の結果は不安定で、ある日はすごく賢かったのに、5日後には何も知らないようにふるまう。
コウイカを研究し始めて、すごくやりやすいのが分かった。
とても分かりやすいし熱心。
それに体に対する脳の比率はタコより大きい。」
コウイカは賢さで言えばタコに並ぶが、コウイカには起伏の激しい性質があるため、本能を引き出せるよう気を配る。
実験1:コウイカは閉じ込められるのを嫌い、常に逃げ道を探す。
鍵がかかっていないドアを見つけられるだろうか?
名前を付けられた13杯のコウイカを、1日3回数ヶ月に渡り実験する。
スピードがあがれば迷路の構造を学んだ証拠。


Boal「この迷路は最初に通路があり、ここで少し気を落ち着かせることができる。
ドアが開くと通路の先には大きな空間があり、右と左にドアがある。
片方のドアは開いているが、もう片方には透明のドアがついている。
とちらに進むか覚える。
左に行くことをまなんだら、右に行くことを学び、それができたら左と続けていると、どんどん早くなってゆく。
方向を変えるという概念を学ぶと、実験は大きくレベルアップする。
今行っているのは条件性弁別学習というもの。
2つの異なる迷路を覚えさせた後、その2つが混ざった迷路でテストして、2つの迷路を同時に思い出せるか見る。
コウイカはこれができるという確たる証拠がある。
問題解決的な学習は、1〜8のレベルで評価され、人間は8、無脊椎動物はだいたい4くらい、頭足動物レベル5をクリアしたのは今回初めて。
無脊椎動物では稀なこと。」
さらに私達の神経は、物理的にコウイカと同じように働く。
短命だが脳は複雑。
コウイカの脳を研究すれば、私達の脳がどのように成長し、退化するのかが分かるかもしれない。
アルツハイマーのような年齢に関わる病の治療法が見つかる可能性がある。


注目すべきは脳だけではない。
熱帯地方では、Norman博士がDonaldの助けを借りて、恐ろしいコウイカを追っている。
生息する場所も陰気。
Norman「この生物は砂地や泥地に生息する。
重苦しく、暗い雰囲気で暗い平地がおぞましく、ずっと続いている。
ここにいる動物は、有毒なトゲを持っているか、死んだ海草のフリをしている。
捕食動物に抑圧されているみたいだ。」
ここで目立つべきか、環境に溶け込むかは、捕獲する側か、される側かで決まる。
例えば物真似上手のゼブラオクトパス(Mimic Octopus)。


注目すべきはコウイカ類のミナミハナイカ
このコウイカは泳がず這っている。
普段は這っているが、泳ぐこともできる。
しかしイカの甲が極端に縮小してしまったため、長時間は無理。
Norman「とても穏やかな性質で、少し泳いでは海底に戻って這う。
そして変装してすぐに泥の中に食べられるものがないか探し始める。」
他のコウイカ類のように、大きくなるために食べ続ける。
しかし小さな獲物を捕らえるには、良い目と忍耐力が必要。
トゲのある変装で追いかけ、獲物めがけてビリヤードプレーヤーのように触腕を伸ばす。
食うか食われるか、生物は絶えず狙われている。


視野がよい平野地では、隠れ場所も少なく、日が高いうちに出歩くのは危険。
のろまで小さな動物は特に不利。
獲物を探す捕食動物の脅威から逃れるために、ミナミハナイカが本領を発揮する。
ハナイカという名にピッタリは目を見張るショーを展開する。
Norman「動物が近づくと、腕を振り上げ光を発しながら、鮮やかな色を見せびらかす。
おそらく毒があると周りに伝えている。
他の生物を真似して有毒のフリをしているのか、本当に有毒だから自信があるかのどちらか。」
本当に有毒なのだろうか?
ココナッツの殻の内側にかなり成長した卵を発見した。
母親が近くにいる証拠だ。
砂地で産卵に安全な場所を探すのは難しく、古い殻は格好の産卵スポット。
オーストラリアコウイカに比べ、ミナミハナイカの産卵は静か。
体力を振り絞り、100個近くの卵を産み終わると、すぐに絶命する。
Norman「もしミナミハナイカが有毒なら、世界初の有毒のコウイカ類。
進化の仮説もかなり変るだろう。
どこに毒があるのか、非常に興味深い。
噛まれると毒がまわるのか、体全体が有毒なのか、それとも有毒な墨を吐くのか。」
オーストラリアの施設にミナミハナイカを連れて帰る。


冬の嵐が去り、放置されたオーストラリアコウイカの産卵場所に春がやってきた。
親は3ヶ月以上前に絶命したが、次の世代が誕生しようとしている。
岩の壁に守られ、卵はピンの先ほどの胎児に成長。
卵黄から栄養を吸収し、8本の腕、赤い目、一番の特徴であるイカの甲が形作られる。
孵化直前の1ヶ月のうちに、胎児の目は発達し、反対向きに吊るされながらも動き始める。
卵の軟らかい殻は2倍に伸び、体の後部から特殊な酸を出し、殻に穴を開ける。
人間の爪ほどの大きさしかない。
オーストラリアコウイカの赤ちゃんは、大人のミニチュアのように吸盤や墨を具えている。
どのくらいが生き残るかは分かっていない。
数日後には小さなエビを捕獲し始め、完璧な体作りに励む。
しかしヒレをもつ生物が食べようと狙っている。


コウイカは体の色を周りに同化させて身を守る。
隠れ蓑がはがされると、墨を吐いて逃げる他ない。
コウイカはイルカの大好物。
まるごとではなく、軟らかい腕と頭のみを食べる。
コウイカの残骸は他の生物のエサとなる。
コウイカを食べるのは動物だけではない。
シーフード好きの人間が、一番の捕食者。
イカやタコは世界中で食され、大規模な漁が行われている。
捕獲量は毎年300万トンを超え、総額60億ドルにのぼる。
我々の貪欲さには、コウカの隠れ蓑も通用しない。


オーストラリア、Queensland州の分子生物科学研究施設では、Norman博士がミナミハナイカの毒性について調査している。
Norman「頭足類で毒性のあるものは非常に珍しい。
タコやイカ、コウイカ類の生物は、世界にたくさん生息するが、猛毒を持つと分かっているのはヒョーモンダコとタテジマミミイカだけ。
ミナミハナイカが有毒生物の真似をしているだけなのか、本当に毒性があるのかを調べるのはすごく重要。」
毒は皮膚から臓器までどこにあってもおかしくない。
噛んで毒を出すとすれば、唾液に毒があると分かるが、墨の中に混ざっている可能性もある。
全ての細胞組織を確認する必要がある。
細胞組織を科学的に分析し、毒の痕跡を調べる。
Nornan「結果ミナミハナイカは有毒だと分かった。
人間を噛んで死なせたことのあるヒョーモンダコと同じレベルの毒だ。
ミナミハナイカは筋肉に毒がある。
頭足類で肉体に毒がある生物が初めて報告されることになる。
毒の成分は未知のもの。
これは人間のあらゆる病状に新しい発見をもたらすカギとなるかもしれない。」


魚介毒はバイオ研究の最先端で、世界中の製薬会社が注目している。
研究を重ねれば、この貴重な毒は、癌や関節炎を治療する強力な薬に生まれ変わるかもしれない。
Norman「この毒がミナミハナイカの奇妙な行動の基盤だったことが分かった。
元々泳いだり体を隠したりすることに必死だった生物が、見つかりやすくなっていまい、泳ぐのをやめて這うことにしたのだろう。
進化への新しい1歩を踏み出したのだ。」
進化は変化を表す。
数100万年後には、ミナミハナイカは8本の足でビーチを行進し、コブシメは敵や獲物を催眠術にかけているかもしれない。
オーストラリアコウイカはライバルに勝つために、さらに大胆な方法を考えるかもしれない。
コウイカは本当に賢い生物なのだ。
Boal「コウイカが何故大きな脳を持ち、問題を解決したり学習したりできるまでに進化したのか分かれば、私達が進化した理由も分かるかもしれない。
頭は何故目の間にあるのか、過去に何があって、今の私達があるのか・・・」
エイリアンのように見えるが、コウイカは私達よりも長く生き延びてきた。
この事実をどう思いますか?

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Space Crab カブトガニ



宇宙、人類にとって最後の開拓エリア。
人類が天使や神々が住む天空に進出してから、天空は包んでいた秘密のヴェールをはがし始めた。
現在宇宙への最大の関心事は、宇宙に生命体はあるのか、それとも生命を持つのは我々だけなのか、ということ。
地球から近い惑星に生命体がいないことは調査で判明した。
しかしごく原始的な生命体は見つかる可能性はある。
それを説くのは地球最古の生命形体を持つある生物かもしれない。
NASAフロリダ州ケネディ宇宙センター、打ち上げが悪天候のため延期になり、緊張した空気が張り詰めていた。
研究者や技術者は、ミッションSTS116をこれ以上遅らせたくない。
機内に積むペイロードは、これまでのシャトルにはなかったもの。
簡素な装置に見えるが、掌サイズの超ミニ研究室で、Locad-PTSと呼ばれる。
これはバクテリアなどの生命体を検出する機能を持っている。
地球は生命の活動で溢れているように見える。
一方宇宙で目に見える生命体は宇宙飛行士だけ。
しかしミクロの生命体は存在の可能性がある。
それをこの装置が解き明かす。
微生物を検出する。


ところが地球外の微生物は、人体への影響が懸念される。
地球に持ち込まないための防止策を講じる必要がある。
この検出器の感度は、これまでのテクノロジーをしのぐ。
それを可能にしたのはある生物の体内だけにある物質。
その生物は地球上で最も不思議だとされるカブトガニ。
一見すると鎧に覆われた箱に尻尾がはえているようだが、このシンプルな格好は見た目以上に重要な意味を持っている。


名前に“カニ”とつくが実際は甲殻類ではなく、節足動物の一種。
なのでカニよりもクモやサソリに近いと言える。
そして古代からいき続けている種類で、恐竜が生まれるはるか以前、4億年前の化石も発見されている。
今日でも北米大西洋のMaine州からGulf of Mexico(メキシコ湾)にかけてとYucatan Peninsula、そしてアジア各地に生息している。


特にある島の一帯は、カブトガニの理想的な環境だが、それは皮肉な出来事がもたらしたもの。
その島は中国本土に程近い台湾の島、金門島(Kinmen)
中国内戦の激戦地だった。
1958年44日間に渡り、50万発の砲弾が打ち込まれた。
1k崚たり3000発という着弾密度を記録した。


こうした政治的背景により、10年ほど前までこの島には軍事基地が置かれていた。
これにより開発を免れ、植林もされ、国立公園に指定された。
こうした結果、カブトガニ(鱟)が安心して産卵できる理想郷となった。


Dr.Chang-po Chen(Research Fellow Research Center for Biodiversity,Academia Sinica)は、カブトガニの専門家で、この場所の重要性を説く。
Chen「内戦の時に埋められた地雷原の撤去作業が行われている。
地雷原があるおかげでここの環境が保護された。
これは全くもって皮肉なこと。
戦争はばかげた行為だが、もし戦争がなかったら、ここは全く異なった環境になっていたはず。」
この一帯が保護されているといっても、島全体の個体数は減少している。
理由は魚の乱獲と環境破壊。


金門島で大人のカブトガニを見ることはごく稀。
彼らは海の底深くに住むからだ。
その生態についてはほとんど解明されていない。
明らかなことは、産卵場所が浅瀬でそこにも滅多に現れないということ。
そのため養殖計画が実行中で、その指揮をとっているのがChen博士。
博士はカブトガニの足跡を追っている。
カブトガニの繁殖はとてもデリケートで、産卵に最適な条件がそろった場所が不可欠。
満潮時の海面の高さに好んで産卵する。
砂が粗く、そして潮が引くと卵に豊富に酸素が行き渡るからだ。
Chen博士は研究室でこの環境を再現する。
地元の漁師が成長したカブトガニを金門水産試験所に運ぶ。
ここで養殖が行われている。
今日は養殖にむいた個体を選び出す。
メスがもつ卵が受精の時期に達しているかが重要。
この卵と精子のドナーを選ぶことは、その個体に死という究極の犠牲を強いる。


カブトガニはしばしば生きている化石と称される。
恐竜が地上を支配していた時代の姿をほとんど今にとどめている。
無脊椎動物であるカブトガニは、体内に骨格も持っていない。
その代り体を硬い甲羅で覆っている。
ヘルメットのような形の硬い甲羅は、襲ってくる敵や危険から身を守っている。
甲羅の中には6対の足と、1つの口、そして呼吸と泳ぐためのエラがある。
甲羅は大きく3つの部分で構成されている。
頭部と胸部が一緒になった頭胸部、腹部、尾部。
頭胸部は腸管、神経器官、循環器官で構成されている。


オスメスの区別は頭胸部を見る。
一般的にオスよりメスのほうが大きいとされる。
腹部にある筋肉を使ってエラと尾を動かしている。
尾は武器と思われがちだが、レーダーのようなセンサーの役目と、体を裏返すのに使われる。
硬い甲羅に覆われているが、脱皮の期間は危険にさらされる。
新しい甲羅が柔らかいうちは、外敵にも傷にも弱い。
尾が柔らかいと、陸で裏返しになればひっくり返せずに乾いて死んでしまう。


カブトガニが4億年も行き続けてこられたのは、硬い甲羅に守られてきたからだけではない。
生まれながらにシンプルかつ効果的な免疫システムを持っているからだ。
このおかげで危険なバクテリアから守られており、このシステムは人類の命を救うのにも役立っている。
人は一生のうち1度は注射のお世話になる。
けれども注射針の殺菌処理に不備があれば、バクテリアが血液に混ざってしまい、命に関わる危険もある。
そこでカブトガニから採取した成分を使い、医療器具にバクテリアがいないかどうか調べている。
そして今度は宇宙での微生物検出に役立つ。


微生物検出の用途が発見される前、カブトガニはアジアでは人々の生活と密着していた。
金門島では文化、芸術、日常生活で不可欠な存在。
カブトガニの甲羅にトラの顔を描いたものは、悪霊を追い払うとされる。
伝統的に金門島では、玄関の扉の上にこのトラの面をかけ、悪霊が入ってこないようにする。
近年は廃れてきれいるが、それでも島に残っている風習。


カブトガニの数を増やすには、地元民の意識改革と協力が必要だとChen博士は考えている。
そしてそれは急を要する。
ここ数年金門島では産卵するカブトガニの数が激減している。
一番の願いは卵を保護すること。
そこでChen博士は捕獲繁殖プログラムをたて、地元民と研究者との連係プレーを実現させた。
同僚のヨン・シェンチェが金門島から本土一帯の漁師とのパイプ役となり、漁でカブトガニがあがれば、駆けつける。
金門水産試験所では、卵の孵化を成功させるために、カブトガニが選ばれる。
自然界では1匹のメスが2000にも及ぶ数の卵を産むが、生存率は極めて低く、大人に成長できるのはわずか10000個に1〜2個程度。
その多くは鳥のエサになってしまう。
しかし人工授精なら、ほとんどの卵が大人に育つ。
研究者は人工授精に適した大きさの卵を抱えたメスを選ぶ。
そして注意深く取り出し、水槽に落としてゆく。
次にオスの精液を採取する。
受精の工程は1時間ほどで終わる。
精液が丁寧に注がれる一方で、潮の満ち干を模してカゴが揺すられる。
こうすることで精液が卵の下にも行き渡る。
何1000もの受精卵が孵化用の水槽に移される。
ここで注意するのはカビの発生。
一度発生すれば、全体に広がって受精卵が絶滅してしまう。
そこでセンターの研究者達は、自然の環境に似せるようにしている。
海岸の砂地に生みつけられた受精卵は、潮が満ちることで乾燥から逃れ、潮が引けば酸素がたっぷり与えられる。
卵が孵る60日間、人工孵化ではこれを手で行わなければならない。


自然界での産卵場所は、金門島では貴重となってしまったが、サウスカロライナの入り江では、カブトガニが集団で産卵するので観察できる。
満月から新月辺りの年にわずか数日しかない夜の満潮時、カブトガニは深さ20〜30mの住処を離れ、集団でこの浅瀬にやってくる。
場所を心得ているのはメスのようだ。
オスは特殊な形のハサミを選んだメスの甲羅にフックし、そのまま引っ張られる格好で入り江に到着する。
導く代わりにオスが他のメスに気があっても、自分の卵にだけ受精してもらう。
メスは1度に4000近い卵を産む。
オスはそれに十分な数の精子をかけてゆく。
任務を終えた大人達は、子孫達を残して海のそこに戻ってゆく。


渡り鳥がカブトガニの卵を探し回っている。
ここの野生動物にとっては生きるために必要な食料となっている。
それでも卵の数が多ければ、食べられずに生き残る数も増える。


卵は自然環境に大きく影響を受ける。
日に2度、潮が満ちてくるたび、卵は塩水をかぶり、温度が下がる。
そして同じく日に2度、潮が引けば日光が砂で乾燥させ、温度も上がり、水分が蒸発するため塩分も濃くなる。
この過酷な環境に、孵化の最中の小さな卵がどう対処しているかは不明だが、粗い砂が空気を通し、照りつける太陽の熱を和らげていることが、助けになっていると考えられている。
外敵が多いこの環境では、カブトガニの受精卵は時間を無駄にできない。
すぐに成長を始める。
理想的環境なら、受精卵は数日で体を作り始め、大人に似た形になる。
成長の速度は衰えず、1週間も経たないうちに1度ならず2度も脱皮する。
そして4度目の脱皮が済むと、卵の殻から出てくる。
孵化したばかりの赤ちゃんは、1週間ほどで泳ぎを覚える。
時より砂に潜り、敵から身を隠す。
夜になると姿を現し、エサを探す。


成長を続け、殻がきつくなると脱皮する。
十分な大きさになると、深い海の底へと旅立ってゆく。
カブトガニは寿命が長く、条件がそろえば20年以上生きる。
しだいに成長はゆっくりになり、10年かけ18回の脱皮を経て、大人のサイズになる。
大人に成長できた者のうち、深い海の底にたどり着け、さらに生殖器が十分に発達した者だけが、海岸に戻って次の世代を誕生させる。


こうして繁殖のために波打際に来た彼らを邪魔する者がいる。
Jerry Gold達漁師がカブトガニを捕獲し、NASAのために一働きしてもらう。
次のミッションで使う生物検知器には、カブトガニが必要になる。
ただし必要なのは血液だけ。
それは何故?
私達の周りはバクテリアで溢れている。
大気中、水の中、どこにでもいる。
この小さな有機体がいるので、地球に生命が存在する。
人類を含めすべての動植物が生きていられるのは、太古から生き続けるバクテリアのおかげ。
とりわけ腸の中にいるバクテリアは消化に欠かせない。
しかし悪いバクテリアが血液の流れに入り込んでしまったら危険。
ある種のバクテリアは死ぬ際に毒素を生成するからだ。
毒素が血管の中を流れると、発熱やショック状態を引き起こし、死に至ることもある。
カブトガニの血液には、バクテリアの毒素から身を守るシステムがある。
カブトガニが怪我を負うと、血液細胞がその箇所に作用し、ネバネバした塊を作って侵入したバクテリアを閉じ込める。
このシステムによってバクテリアによる感染を防ぐ。
Dr.Norman R.Wainwright(Director.Research and Development Charles River Laboratories)は、カブトガニのバクテリア防御作用を10年研究している。
South Carolina州CharlestonのCharles River社の研究所では、LALが製造されている。
これはカブトガニの血液から作られ、人間に投与する薬品や医療器具にいるごく微量なバクテリアの毒素も検地できる。
そして今これを地球外生物の発見に役立てようとしている。
Wainwright「カブトガニの免疫システムの優れている点は、シンプルかつ反応が早く、バクテリアの種類に限定しないところ。
バクテリアが侵入すると、血液細胞が酵素カスケードを含む粒の塊を放出。
こうして血液が固まってバクテリアを包む。」
カブトガニにとっては不幸なことに、彼らの血液成分は、今のところ化学合成できない。
そのためJerry達が商業目的でカブトガニを捕獲している。


捕獲したカブトガニはCharles River社の研究所に運ばれ、目を見張る光景が繰り広げられる。
専用のシステムでカブトガニの心臓からじかに血液が採取できるようになっている。
事業部長John Dubczak(Director of Operations.Endosafe Products & Services Charles River Laboratories)は、細心の注意を払って採取するよう監視している。
Dubczak「カブトガニが到着して真っ先にすることは、きれいに洗うこと。
体についたフジツボなどをこすり落とし、飲料水ですすぐ。
それから刺激の少ない溶液に浸して洗浄する。」
カブトガニは注意深くラックに固定される。
Dubczak「甲羅の間が蝶番のようになっていて、折りたたむような格好になると、節間膜と呼ばれる膜が露出する。」


この膜にすばやく長い針を差し込むと、すぐに血液が出てくる。
哺乳類の血液には、鉄分が含まれているため、赤い色だが、カブトガニの血液には銅が含まれているため空気に触れた瞬間、酸化して青くなる。
採取する量は全血液の25%と決められている。
この量なら命に係わらない。
もっと多くても平気だが、仮に彼らが自発的に協力してくれていても、それは避ける。
採取での死亡率は3%ほどで、協力を終えたカブトガニは速やかに元の場所に帰される。
失った血液は1週間ほどで回復し、血液細胞の数も2ヶ月で元の数値に戻る。


Dubczak「カブトガニの血液細胞は、遊走細胞と呼ばれる微動性のアメーバ状細胞の1種類だけ。
採取した血液から、遠心分離機を使い、真っ先に遊走細胞を分離する。
この血液中にある遊走細胞が、侵入したバクテリアを検出し、破壊する。
ボトルの中の98%の青く見える部分が細胞質。
それは使わないので廃棄し、底に見える部分、遊走細胞だけを取り出す。」
洗浄液を混ぜて攪拌された後、遊走細胞だけが取り出される。
こうしてできた製品は、会社に大きな利益をもたらし、1リットル足らずで15000ドルの価値を生む。
カブトガニの血液は、LALと呼ばれる検査薬になり、バクテリアが死んで分解される時にでる、内毒素検出に世界中で用いられている。
人に悪影響を及ぼす毒が、薬や医療器具に混ざっていないかどうかの検出に役立っている。
これは重要な意味を持ち、アメリカ食品医薬品局や、他の世界の保険機関でも、血管に直接接触するものに関しては、菌が出す耐熱性の毒素を完全に取り除く必要があるとしている。
これらの対象となるのは注射器だけではなく、点滴のバッグなども含まれる。
LALは世界規模で、推定年間5000万ドルの市場を持ち、それをカブトガニがもたらしている。
さらにこの活用範囲は広がると予想される。
海の底で暮らす彼らが宇宙計画にも貢献するのだ。


細胞生物学者であるDr.Norman R.Wainwrightは、カブトガニの青い血液をNASAと共同研究している。
スペースシャトルのミッションとして、小型の研究室を開発中で、NASAはこれをLocad-PTSと呼んでいる。
採取されたカブトガニの血液から、バクテリアを検地する成分を取り出し、親指サイズのカートリッジに入れる。
これがシンプルで小型の検知器にセットされると、研究室にある大掛かりな感知器と同じ働きをする。
カートリッジには乾燥した状態で、バクテリア検知成分が入ってい手、サンプルから水分が加えられると活性化する。
微量でもバクテリアがいれば、色が変る。
装置内部のセンサーで、この色の変化を見分け、数値化する。


スペースシャトル内は狭く、閉ざされた空間。
宇宙飛行士達はここで生活する。
それでいて水も酸素も含めて必要なものは全て積み込まなくてはならない。
リサイクルできるものは何度でもリサイクルする。
この過酷な環境でもミッションはまさにチャレンジ。
Wainwright「スペースシャトルに積み込む荷物は、物理的制限がある。
そのため制限は必ずクリアし、かつ船内で結果がでるようにしなければならない。
通常の培養方法では、微生物の検出に3日かかるところ、この検出器ならわずか5〜15分で結果が判明するので、実に効率的。」


NASAの壮大な計画では、火星への有人探査に超小型の研究室を用い、生命体の存在を確認する。
その生命体は極めて原始的で、バクテリアのレベルだと予想される。
その際にはLocad-PTSが活躍する。
その場で生命体の存在を判別することで、地球に未知なる生命体の恐怖を持ち込まないようにする。
火星探査は片道6ヶ月はかかる。
途中で宇宙飛行士が原因不明の発熱を起こしても、船内では原因がつかめない。
しかし超小型の研究室があれば、発病の手掛かりがつかめる。
そこでWainwright博士率いるチームは、NASAと協力し国際宇宙ステーションでの史上初の導入を目指す。
それには事前のテストに合格しなければならない。
研究チームは、飛行機に乗り込み、高度およそ10000mの宇宙空間に近い、ほとんど重力がない環境で超小型の研究室をテストする。
無重力状態でうまくサンプルの液体を扱えなかったり、サンプルに泡が混じってしまえば、テストは不合格となる。
特別に訓練されたパイロットが、機体を高度およそ10000mまで上昇させる。
そこを頂点として降下してゆくと、およそ30秒間ほぼ無重力状態となり、機内の全てのものは重力から開放される。
30秒経つと、パイロットは再び機体を上昇させる。
この状態では通常の1.8倍の重さがかかる。
この操縦を何度も繰り返し、テストされる。
放物線飛行は、宇宙空間に出ないでも無重力状態を作り出す唯一の方法。
30秒間の繰り返しで、Locad-PTSや他の装置を十分にテストできる。


こうして無重力テストをパスし、スペースシャトルの搭載に一歩近づいた。
2006年12月、STS−116のミッションを担ったスペースシャトルに、Locad-PASが積み込まれた。
国際宇宙ステーションへ、初フライト。
ここでLocad-PTSが実際にテストされ、従来のシャーレを用いた培養法と比較される。
結果が早くでることには確信を持っているWainwright博士だが、無重力状態での実用はどうだろうか?
国際宇宙ステーションでは、実験スケジュールは厳密に決められている。
地上の博士達は、Locad-PTSの順番がくるまでの数週間、じっと待つ他ない。


宇宙での実験が成功すれば、カブトガニの血液の需要はさらに高まってゆく。
そうなれば、漁師や養殖施設は安定供給を迫られる。
その一方で、カブトガニの生息数が減少しているとの報告もある。
アジアではカブトガニが乱獲されている。
主に食用とエサ用に捕られている。
台湾には1600km以上に渡り、海岸線が広がっている。
海に囲まれた生活では、様々な海産物を食す。
台湾の夜の市場では、カブトガニが地元の珍味として好まれている。
身の部分が少ないので、他の食材と混ぜて調理される。
大きなカブトガニがさばかれ、温かいお粥や卵とじにされる。
さらにはこの青い血液を酒で割って飲むと、体に良いと信じられている。
カブトガニは生命力が強く、エサを食べずに1年間過ごせ、過酷な環境でも生き延びている。
それでもその数は激減している。


Chen博士のチームは金門島で、人工孵化と放流のプログラムを実行している。
人工授精した後、60日で孵化した幼生達は、肉眼で確認できる大きさにまで成長する。
研究者は4度めの脱皮まで注意深く観察を続け、人工的な環境が理想的に保たれているか確認している。
自然界では、孵化する数が少ないのに対し、人工的な環境では、大半が生存できる。
Chen博士のチームは受精卵と砂を水面に浮かせることで、水分を保ち、かつ酸素を十分に与え、自然界の砂浜の環境を再現している。
初めて挑戦して以来、Chen博士達は何世代ものカブトガニを誕生させ、その数は750000匹を超える。
カブトガニの子供を海に放流する日、市民にも協力してもらった。


赤ちゃんカブトガニは通常、生まれて最初の夏を、波打際で過ごす。
それから沖に出て海の底へと向かう。
一方このプログラムでカブトガニの数が増えても、カブトガニの血液の需要が予想される。
さらにはこのまま乱獲を放置すれば、博士達の努力は無意味になってしまう。
台湾の別の島では、カブトガニの養殖が着々と進んでいる。
これにより、種を絶やすことはなくなるだろうか?
そして宇宙での生命体検知の助けになれるだろうか?
カブトガニは4億年に渡って生息してきた。
一方人類は数10万人の歴史に過ぎない。
ポンフー(澎湖)列島は人気の観光スポットで、金門島のように環境が保護されていない。
海岸は開発され、カブトガニの産卵場所はほぼ消えてしまった。
ポンフー水産試験所には、偶然漁師の網にかかったカブトガニが運ばれてくる。
体を測定し、体にタブを打ち、データベースに登録する。
ポンフー列島には産卵する自然環境がないため、養殖するしかない。
しかし大人のカブトガニは海の底で暮らすため、何をエサにするかなど、詳しい生態はつかめていない。
Ting-shin Huang(Associate Research Penghu Fisheries Research Institute)「そこで大人のカブトガニが育つ過程を詳しく調べるために、野生の大人のカブトガニを捕獲し、育てている。
試した結果、今は魚介やタコ、二枚貝、エビなどを与えている。
新鮮なゴカイを捕まえて栄養補給でメニューに加えることもある。
養殖を始めてほぼ3年経つが、脱皮に関しては毎年苦労がたえない。
脱皮の期間は死亡率が高いことが観察の結果で分かったからだ。
そこで安全に脱皮させる方法を研究している。
キチンとした栄養がある食物を与えれば、この問題はクリアできるのではないかと思っている。
カブトガニの血液は、LAL試薬で人類の役に立っている。
そのためにも彼らを絶滅させてはならない。
ここではそれが差し迫った課題。」
これまでのところ、ポンフー列島での養殖は、世界で最も進んだものとなっている。
この施設で231日行き続け、3度の脱皮に成功している。
このことは、カブトガニの養殖にとって大きな前進。
人が作った環境で、メスが卵を持ち、産卵し、オスが精液をかけ、脱皮することを実証したことは、カブトガニの供給問題を解決し、人類との共存を導いてくれるだろう。


一方Wainwright博士率いるチームは、国際宇宙ステーションのLocad-PTSのミッションに成功した。
そのデモユニットで、ステーション内の測定エリアがクリーンであり、さらにユニットのメンテナンスを支障なく行えることを実証した。
Locad-PTSは宇宙開発に不可欠なものになりそうだが、まだ改善の余地はある。
宇宙の長旅では、微生物の発見だけではなく、診断機能も必要。
さらに研究者達はLocad-PTSに新たな機能を加え、スペースシャトルに載せる研究をしている。
Dr.Lisa Monaco(LOCAD Scientist NASA)「採集帝に目指すところは、他の惑星での生命体調査のサポート。
より多くの分析機能をもたせ、惑星探査ロボットローバーに搭載し、火星表面の調査をさせたい。
ケミカル、バイオの両面からアプローチして、生命体の存在、あるいは生命体がいる可能性がある環境を見つけたい。」

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What Animals Think 動物の驚きの知性
動物が相手を殺す目的は1つ。生存だ。
攻撃は本能的な行いで、計画性はないと考えられている。
ではなぜチンパンジー達は仲間を襲うのだろうか?
自己防衛でも捕食でもない。
ならばこれは本能ではなく計画的な集団暴行なのだろうか?


動物の暴力性はなくならない。
ただし恐ろしい捕食者でさえ、自制心を備えている。
動物も様々なことを考えているのだろうか?
野生動物の脳は謎に満ちている。
しかし徐々に解明されてきている。
定説が覆る日も近いかもしれない。

動物の行動は予測不能。
飼育員でも油断はできない。
体重9トンのシャチは300kgを超すアシカをも仕留める。
シャチが暴れだしたら、飼育員はひとたまりもない。
ある水族館で、飼育員の女性が水中でシャチに襲われた。
彼女は急いで水から出るが、シャチは放さない。
足は今にも食いちぎられそうだった。
スタッフがシャチの口をこじ開け、彼女は脱出。
奇跡的にも軽症を負っただけで、無事生還した。
しかしこのシャチの攻撃は本気には見えない。
Jarod Miller(Zoologist)「簡単に殺せたのに殺さなかった。
きっと何か考えたからだ。」
動物も思考するのだろうか?
Diana Reiss(Hunter College & The National Aquarium)「大半の動物は思考している。
問題はその内容。」
動物に人間並みの想像力や思考力はないだろう。
しかし過小評価されていると多くの専門家が指摘する。
各専門家が動物の思考について様々な角度から実験を行い、重要な特性を発見した。
選択する力、自己意識、道具の使用、だまし、集団攻撃、そして言語。
言語は人と動物を隔てる重要な特徴だと考えられている。
大半の動物は生まれ持った声しか出せない。
しかしクジラなど一部の動物は、生まれた後に鳴き声を習得する。
Miller「クジラも人間と同じで幼児期に音を聞いて学ぶ。
でないと特定の音は出せない。」
これは発生学習と呼ばれる。
John Ford(Canadian Dept.of Fisherles and Oceans)「発声学習によって高度な会話が可能になる。
目的ごとに別の泣き声を出せるようになるからだ。」
シャチが会話をする一番の目的はパートナー探しだろう。
Ford「近親交配を防ぐために、交尾相手を方言で選んでいるのかもしれない。
オスは別の群れで鳴き方の違うメスを探すのだろう。」
それを可能にしているのは巨大な脳内の小さな細胞だと言われている。


シャチの脳は約5500グラム。
人の4倍ほどの重さ。
ニューロンの数は平均2000億。
人の2倍。
人の脳には高性能プロセッサーが組み込まれている。
紡錘細胞だ。
脳の指示役、他の細胞より速く情報を送信する。
Miller「超高速で情報を伝達し、普通の細胞とは、高速インターネットと糸電話ほど違う。」
紡錘細胞が使われる分野は言語や直感、また愛情や苦しみなどにも関係する。
2006年この紡錘細胞がシャチの脳からも見つかった。
シャチも恋したり、罪に悩んだりするのだろうか?
紡錘細胞があれば、高度な思考ができるが、シャチにおいてはどう働くか分かっていない。


サルは人間に近い生き物。
ただし生まれ持った声しか出せず、発声学習はできない。
しかし生物学者が大発見をした。
サルは言語の前段階であるシンボルが分かるかもしれない。
写真を使って実験する。
人間の赤ん坊も2歳までは写真と実物の区別がつかないことが分かっている。
実験が行われたのはプエルトリコ沖のCayo Santiago島。
この島の霊長類研究所では、約1000匹のアカゲザルが放し飼いにされている。
このサルの脳は人間より小さいものの、構造はかなり似ている。
アカゲザルの脳は100グラム以下、人の15分の1の重さ。
しかしDNAの93%は人と同じ。
サルに2つの空バケツを見せる実験を行った。
両方とも写真付き。
1回目はリンゴとペンチの写真を貼った。
9割以上のサルはリンゴの方を選んだ。
Marc Hauser(Harvard University)「大半の彼は写真に触れない。
写真に写った靴を取ろうとする人間の幼児と違い、覗くだけ。
写真から中身を想像している。」
2回目も中身は空で、写真をリンゴ1個半のものとリンゴ半分のものに変えた。
リンゴ1個半の方を選んだ。
3回目はバケツにリンゴ1個半の写真と、8分の1個の実物を付けた。
サルが実物を選んだ場合、写真はシンボルに過ぎないと理解していると言える。
Hauser「実物を選択した。
写真と実物との区別がつくのだ。」
サルの脳にはシンボルを理解する領域があるのだろうか?
ならば言語の習得も可能なのでは?
Hauser「実験からサルは思考していると言える。
まだ不確かなものだが、言語構築の材料になりえる。」


脳は体の中で最も複雑な器官。
大量の情報を瞬時に処理する。
また感情や記憶を統制する。
複雑な問題に即応できるようになっている。
一瞬の遅れが生死を分けるからだ。
ミツバチの脳はペン先程度、1ミリグラム。
ニューロンの数は約85万。
人の10分の1以下だが、ミツバチは人間以外で食料源の方角や距離、質を伝え合う唯一の生き物。
ハチが仲間から教わった餌場に行くのは本能だと思われてきた。
船に花粉を積み、ミツバチに探させる実験が行われた。
船は最初川岸に止め、徐々に湖の中央へ動かした。
ミツバチを巣に戻し、仲間を呼びに行かせた。
もし本能なら行ったはずだが拒んだ。
ハチは地図を描く能力があり、その情報の中から選択を行っているのだろうか?
まさに思考だ。
小さな虫の脳で、選択が可能ならば、大きな犬の場合、決断も可能なのでは?


進化生物学者Marc Bekoff(Animal Behaviorist)は、犬は頭で考えながら遊んでいると言う。
遊びは創造力を刺激する。
体重10kgの犬の脳は約70グラム。
人の20分の1の重さ。
ニューロンの数は1億6000万。
一方人は1000億。
犬は遊びの中で態度を微調整する。
それが思考の証だとBekoffは主張する。
彼がこの説の根拠に挙げるのが、プレイバウという行動。
前後の足をかがめて尻を上げ、尻尾を振って時々吠える。
これは遊びを誘う行動。
その後楽しい遊びが始まる。
ただし乱暴な行動も中には見られる。
噛み付いて頭を左右に振るような行動だ。
ヒートアップしすぎると、再びプレイバウが登場。
Bekoff「今度は遊びの誘いではなく、謝罪の意味で行う。」
これが犬の道徳心を示す根拠の1つだと彼は主張する。
Bekoff「強く噛むのは悪いことだと知っている。
遊びに誘った犬を襲うのはいけないことだと。
そしていけないと思ったら遊びを止める。」


違う意見もある。
心理学者のClive Wynne(Author,Do Animals Think?)は、オオカミの方が賢いと主張する。
根拠の1つは脳の大きさ。
Wynne「大きい成犬の脳のサイズは大人のオオカミの脳の3分の1以下。」
自然は厳しい。
その点犬はお気楽だ。
しかし一部の専門家は犬の理解力を誉める際、次のような言葉を使う。
“動物の中で犬だけが人間の合図を理解して、その方向へ進む。”
そこでWynneは、インディアナ州のウルフパークへ行き、オオカミも合図を理解できるか試した。
犬は期待通り合格。
オオカミも合格。
パークのオオカミは人間に育てられたため、ペットのように人間に従う習慣が身についた、とWynneは説明する。
Wynneは実験後、犬の行動は頭で考えた結果ではなく、条件反射だと結論付けた。
だがそれだけだろうか?
Bekoff「考える能力は人間特有のものと言われるが、恐らく祖先の動物から受け継いだ能力。
だから動物にも感情や考える能力がきっとあるはず。」
ミツバチや犬は考えて行動しているのかもしれない。
では人間特有とされる自意識はあるのだろうか?
現在実験によって動物の自意識が解明されつつある。


海には様々な生物がいる。
その中で最も賢いとされるイルカの動きを観察する。
バンドウイルカの脳は1500〜1600グラム。
人の脳より少し重め。
イルカの脳は音に特化している。
反協定位や会話で音を使うからだ。
心理学者Diana Reiss(Hunter College & The National Aquarium)は、イルカを研究して30年。
動物における自意識の有無を調べている。
これまで鏡を使った実験を行ってきた。
イルカは鏡の前にすぐに寄ってくる。
長年自意識は人間特有のものだと思われてきた。
1970年Gallupが行ったテストの結果、チンパンジーに自意識があるとの結論が出た。
Reissはイルカの反応を見ながらチンパンジーの時と同じ手順で実験を進めた。
するとイルカは自己を認識するだけでなく、人間やチンパンジーと同じ3段階の反応を見せた。
第1段階のイルカの反応、自分が映っているとは思っていない。
Reiss「これは仲間を見た時にとる行動。」
第2段階では随伴性を確かめている。
体を前後左右に動かし、鏡の像が同じに動くか確認している。
Reiss「情報収集のための重要な行動。
鏡に映った像の動きが自分の動きと一緒か試している。」
第3段階では、体の部位を鏡で点検している。
ここでReissはイルカに印をつけた。
Reiss「自分では見えない部分に印を付け、鏡の前に行くとすぐに印の付いた部分を鏡の方向に向けた。
これは鏡の特性を理解して使っていると言える。」
国立水族館のイルカは、自己を認識しているようだ。
これは動物の思考を示す新たな証拠。
自意識を持つ動物は続々と分かってきている。
Reissは他の動物学者と協力し、ゾウの自意識も確認した。
2008年カササギにも同様の能力があると分かった。
しかしこの実験は多くの疑問も生んだ。
Reiss「チンパンジーは認識できて、何故サルにはできないの?
イルカはできるのに、アシカは?
今度実験と共に、神経解剖学の研究を進めていく必要がある。」


イルカは自己を認識するだけでなく、優れた能力を持っている。
その能力は人間特有のものと思われてきた。
道具の作成だ。
この発見から動物の心が見えてくるかもしれない。
人間は様々な道具を発明することで力を得た。
道具を使用するには発想力と判断力が必要。
これは人間にしかできないと思われてきた。
しかし1960年、人類学者グドールが、小枝で虫を捕るチンパンジーを発見した。
意外な動物が道具を非常に上手く使う。
カレドニアカラスだ。
このカラスの脳の重さはわずか7グラムだが、体重に対する脳の割合は2.5%で、人とほぼ同じ。
チンパンジーと同じくらい上手く道具を使う。
しかしこの鳥だけが何故特別なのかはまだ分かっていない。
親指も腕もない鳥が、道具を使うのは驚くべきことだ。
このカラスはチンパンジーのように枝や葉で虫を釣り上げる。
さらに驚くことに、このカラスは工作する。
適当な枝を選び、葉を落として虫を釣る。
さらに枝を持ち歩いたり、効率のよい道具を選んだり、利き腕のようにくちばしの片側で枝をくわえたりもする。


イルカは遊び道具を作る。
気泡で美しい銀の輪を作る。
大きな輪の中に小さな輪を作り、その中をくぐり抜ける。


道具を使うには思考力が必要。
もちろん人間の創造力は別格。
Hauser「15万年以上前、今の人類が登場して以来、脳は劇的に進化した。
そのおかげで数々の道具が生み出されてきた。
21世紀の最新テクノロジーは、技術の蓄積によるもの。
鉛筆、コンピューター、その次と、全てはつながっている。」
数字も発明品だが、使うのは人間だけだろうか?
Miller「動物も計算する。
天敵の数やライバルの数を数えているはず。
それが生死を分けるから。」
ヨウムのアレックスは言葉を理解する上に、計算もできたと心理学者のIrene Pepperberg(Brandels University)は言う。
アレックスは数字の概念を理解した。
彼女がアレックスの計算能力に気付いたのは、他のヨウムの訓練中だった。
Pepperberg「音が鳴る回数をグリフィンに聞いた。
2回鳴らしても答えないので、もう1度出題した。
するとアレックスが“4”と答えた。
もう1度出題したら、アレックスが“6”と答えた。
それで気付いた。アレックスは私が何度も音を鳴らすのを聞いて、足し算したのだとね。
それで足し算の実験を始めた。」
足し算の実験は大成功したが、2007年アレックスは不整脈でこの世を去った。
彼女は2羽のヨウムで再び実験を始め、まずまずの成果をあげている。
アレックスの言語や計算の能力を引き出せたことに、彼女は満足しているようだ。


数字や道具を使う動物を目にした人は、その能力に対する評価を改めるだろう。
また動物は同情もするという。
一方である研究者が実験で証明したのは、同情とは全く逆の“だまし”の能力。
ニューヨーク取引証券所、ここは人類の最も洗練された活動を象徴する場所。
それは経済。
心理学者Laurie Santos(Yale University)は、お金を扱えるのは人間だけか疑問に思っている。
Santos「お金を使って物を手に入れるのは人間だけだが、商取引の起源は謎。」
霊長類の毛づくろいも、一種の取引と言える。
Santosは詳しく調べることにした。
Santos「サルに貨幣を与えたら、人間のように使えるか実験してみた。」
サル用のコインを鋳造、これでエサが手に入ることを教えた。
次は半値で取引をもちかけた。
コイン1枚で2つもらえる。
実験は大成功。
Santos「リンゴを安売りしている時に、いるもよりリンゴを多めに購入した。」
市場経済の基となる発想は、大昔のサルから受け継いだのかもしれない。
他にもサルの思考から、人間の能力の秘密が垣間見れる。
だましの能力。
だましを行うには、高度な思考能力が必要。
例えば他者の心の内を読み取る能力。
Santos「それができなければ、だませない。
相手が何を見ていて、何をしようとしているのか知る必要がある。」
この能力を“心の論理”と呼ぶ。
これは高度な思考で、証明するのは極めて困難。
Santos「動物が目に見えるものだけでなく、見えないものについても考えられるかを調べる。」
彼女は同僚と一緒にサルが人間のように他者をだませるか実験した。
Santos「ある時サルの盗みの上手さに気付いた。」
まず2人がサルにブドウを見せて板に固定、1歩離れて板を置き、1人が後ろを向く。
サルは背を向けた男性のブドウを選んで盗むだろうか?
初回から背を向けた人のブドウを狙った。
どちらが背を向けても結果は同じだった。
この能力は野生では武器になる。
Santos「縦社会のサルの群れにいると考えてみよう。
上位のサルの監視をくぐってエサやメスに近づくには、相手の心を読む力が必要。」
このだましの能力が生と死を分ける。
動物達にとって欠かせない思考なのだ。


しかし動物の思考力が生む行動には、衝撃的なものもある。
集団暴力だ。
動物の思考が生む行動の大半が建設的なもの。
しかし人間の高度な思考は暴力を生んだ。
自然界でも同様。
チンパンジーは集団で仲間を襲うことがある。
問題は考えた上で組織的に行っているのか。
David P.Watts(Yale University)「退くか攻撃するかの決定には意思が働いているだろう。
ただし組織的な意思なのか、個々の意思なのかは分からない。」
人類学者のWattsはウガンダのキバレ国立公園で13年間霊長類を観察し続けてきた。
150頭以上から成る大集団を観察している。
チンパンジーの脳の重さは約420グラム。
人の新生児より少し重め。
DNAの96%近くが人間と同じだが、脳は人と大きく異なる。
チンパンジーの複雑な社会は高度な思考をうかがわせる。
群れは1頭のオスが率いる。
オスは地位向上のため、群れの他のオスと頻繁に同盟を組む。
多くの動物と同様に、縄張り意識が強く、オスは熱心にパトロールを行う。
普段は騒々しいオスも、パトロール中は静か。
列を組んで進み、たまに止まって静かに座り、耳を澄ませる。
他の群れの気配を察知すると、興奮するが、騒がない。
チンパンジーはよそ者には非常に攻撃的だが、同じ群れの大人を襲うことは稀で、撮影に成功したのは1件だけ。
Wattsが撮影したその映像は、大きな問題を提起した。
彼が悲鳴を聞き、駆けつけると、オス達が仲間のグラペリに暴行を働いていた。
生々しい映像。
Watts「数頭がグラペリを押え、残りの押すが噛んだり蹴ったりしていた。」
暴行は一旦やみ、グラペリは解放されたかに見えた。
Watts「1頭のオスがグラペリの腕をつかんで逃がすそぶりを見せた。
しかし引き戻して噛み付くと、また暴行が始まった。」
暴行は数分ほど続き、グラペリは樹上に逃げた。
すると傍観していたヘアが驚くべき行動に出た。
Watts「ヘアは隣の木に登って、グラペリのそばに留まった。
また暴行していた数頭のオスがグラペリを追って木に登ると、ヘアが守った。」
2頭は盟友ではないが、ヘアは高位のオス。
これは縦社会では重要。
Watts「ヘアは集団暴行を好ましく思わなかったのだろう。
介入しようとして断念したのかもしれない。
あまりにも危険すぎてね。」
30分経過後、グラペリは木から降り、足を引きずりながら群れを離れた。
Watts「ヘアはそばにいた。
グラペリのことを気にかけているようだった。
グラペリに同情していたのだと思う。」
グラペリは3日後、死体で発見された。
暴行が計画的か否かはWattsにも分からないが、原因は思い当たるようだ。
Watts「グラペリには問題と思われる態度がいくつかあった。
野心とライバルに対する闘争心、協調性の欠如などだ。
そのせいで群れから排除されたのだろう。」
集団暴行は近縁である人間にもよく見られる。
ヘアの行動からは、深い情と、仲間を客観視する能力がうかがえる。
Watts「ヘアには状況を敏感に読み取る力があるのだと思う。
“これは起こってはならないことだ。繰り返してはならない。”と思ったのだろう。」
この事例から、チンパンジーは集団暴行を働く能力と、仲間に同情し、かばう能力を併せ持っていると考えられる。


動物の思考の研究は始まったばかり。
様々な手法で動物の脳を探り、思考に関する有力な情報も見つかっている。
動物の思考に対する研究者の関心や熱意は衰えない。
動物の思考を知れば、世界の新たな扉が開ける。
その扉の先で目にするものとは?
それは想像以上に豊かな心を持つ動物の姿なのかもしれない。
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Super Pigs
 豚は記憶力に優れていて、鋭い嗅覚を持っている。
人間が豚を育てるのは食べるためだが、台湾では赤や緑に光る豚が、医学に大きな進歩をもたらそうとしている。
これらの豚は現代のSuper Pigs。
この豚達は、若く美しくあいたいという人間の欲望も満たしてくれる。
台湾の人々には、今も昔も変わらず豚は重要な食料。
彼らにとっては豚の耳や足までほとんどすべての部分がご馳走になる。
この国では大きな豚を所有することが、富と幸運の象徴と考えられ、豚をペットとして飼っている人達もいる。
台湾は、中国の南東部の沖にある小さな島で、人口は約2300万人。
この国には全部で約720万匹の豚がいる。
つまり人間3人に対して豚が1匹いる。
台湾中央部の台中では、豚を飼うことが流行っており、愛好家の親睦会には台湾全土から多くの愛好家とペットの豚が集まる。
生後2週間の子豚から、2歳の豚までいるが、どの豚も可愛がられている。
ミニチュアピッグはおとなしく、人になつきやすい性格。
賢い豚なので、簡単に芸を覚えることもできる。


台湾動物科学研究所で豚を育てるリー、25年以上も様々な豚の世話をし続けてきた彼は、豚を扱う名人と呼ばれている。
リー「この豚は情緒不安定。一緒に遊んでやれば落ち着く。
豚は1人きりにされることに慣れていない。
この豚は特に周りに仲間がいなくて寂しがっている。
リーの豚を育てる技術は、広く評判になっている。
彼の仕事は種豚を生産して値段の高い豚に育てること。
台湾の養豚家は、子豚の中から優秀なオスを選び、種豚にするために丹念に育てる。
そして高く評価された種豚は、高値で競り落とされる。
リー「種豚として高く評価されるためには、体の線が美しくなければならない。
それに加え、体が大きく筋肉が盛り上がっていることも重要。」
リーの養豚場に、台湾各地の17ヶ所の養豚場から、124匹の子豚が運ばれてきた。
自分の養豚場を、“豚の学校”と呼んでいるリーは、この子豚達を毎日世話して、優秀な種豚に育て上げる。
子豚達の競争の日々が始まる。
子豚達は健康でなければならないので、新しく来た子豚全てにワクチンを注射する。
リー「子豚達がここに来てから最初の1週間はとても大事。
最初の1週間は子豚達がちゃんとエサを食べているかチェックして、新しい環境に順応しているか注意しなければならない。」
新しく来た子豚達は、40日間特別な飼育室で育てられ、健康な体であれば次の段階へ進む。


台湾では子豚を使った医学の研究が行われている。
Wu Shinn-Chih博士は国立台湾大学の医療研究チームのリーダー。
ウー博士の研究チームは豚を使った実験を行い、幹細胞の研究をしている。
博士のチームは12年間豚の研究をしてきた。
そして2005年、体が緑色に光る豚の繁殖に成功し、幹細胞の研究に大きな貢献を果たした。
ウー「この研究を始めたのは、ある日再生医療の研究者達に言われたことがキッカケだった。
彼らは動物の体内でマーカーの役目をするレポート細胞があれば、幹細胞の研究に役立つと言った。
つまり幹細胞にレポート細胞の遺伝子を組み込むことができれば、その幹細胞が動物の体内で成長したものか、それとも人間が入れた細胞から成長したものかを判別できる。」
再生医療は細胞治療とも呼ばれ、機能が低下したりダメージを受けた細胞に代わる新しい細胞を作ることで、病気や怪我を治療する考え方。
そして新しい細胞を確認するために、動物を使った実験が行われてきた。
それは動物に光るたんぱく質を入れてマーカーにする方法。
特定の細胞が光れば、その細胞の移り変わりを目で見ることができる。
このような光を発するたんぱく質は、結晶クラゲ(Aequorea victoria)と呼ばれるクラゲなど、いくつかの動物から取ることができる。
ウー博士の研究チームは2003年、ネズミの胎児の細胞に緑色に光るたんぱく質をミクロ注入することに成功した。
やがて生まれたネズミは全身が緑色の光を発していた。
その後は豚を使って細胞を緑色に光らせる実験が進められた。
緑色に光る豚を大量に生産できれば、将来の実験のために使う緑色に光る細胞が大量に作れる。


しかし何故豚?
豚と人間は、解剖学的な類似点が多い生物であり、例えば豚の組織や器官は人間のものとほぼ同じ用にできている。
さらに豚は世界中で食用として殺されており、実験に対する反対の声も少ないので研究者にとって理想的。
2005年1月、ウー博士の実験はついに成功。
研究チームは全部で339個の受精卵に光る遺伝子を注入し、代理母となるメスの子宮に入れた結果、遺伝子導入に成功した3匹の豚が生まれた。
敵から身を守るために光を発する動物はいるが、この豚達は人間が幹細胞を研究するために光を発する。


リーの養豚場では、多くの中から選ばれた子豚達が順調に育っている。
子豚達が来て40日経ったが、リーは時には徹夜して未来のチャンピオンを世話している。
リーの豚に対する愛着は、並外れている。
家庭でも夫婦の会話の中心は豚。
豚は洞察力が優れた衛生的な動物で、本来であれば自分の周りで排泄することはない。
鋭い方向感覚を持ち、遠く離れた場所からも、元の場所へ帰れる。
性格は友好的で人間に忠実であり、犬よりも賢い動物であると考えられている。
豚は記憶力と嗅覚も優れている。
子豚が母親の乳を飲む時は、それぞれが吸う乳首が決まっていて間違うことはない。
仲間はずれにされ、乳を飲めない子豚もいる。
そこには子豚の社会があり、生きるための競争がすでに始まっているのだ。


リーに40日間育てられた子豚の中で、健康状態のよいものは、次の段階へ進む。
ここまで142匹の内の2匹が病気で死に、3匹は体重が基準値の40kgまで達しなかった。
それ以外の健康な子豚は、無事第1段階をパスした。
次の段階へ進む前に1匹ずつ慎重に確認しながらタグを付ける。
第2段階では子豚達は別の建物に移され、1匹1匹が別の囲いの中で6ヶ月間育てられる。
リーは引き続き全ての豚の食生活や健康状態に目を光らせる。
リー「食肉として売るために豚を育てるのと、優秀な種豚にするために育てるのでは、大きな違いがある。
種豚は優秀な遺伝子と肉体的特長を次の世代に伝えなければならない。
種豚にとってはそれが何よりも大事な仕事。」
優秀な種豚になるには、満たさなければならない基準がある。
中でも重要なのは食べるエサの量と体重の増加。
最終的な目標体重は110kg。
体重が少ない豚と病気の豚は要注意。
弱っている豚は栄養物を与えて食欲を促進させる。
下痢を起こして痩せた豚には薬を注射する。
健康を取り戻せば他の豚達に追いつくことができる。
この豚達が立派な種豚に成長してせりに出されるのは6ヶ月後。
その日はリーにとって最も楽しみな日。


国立台湾大学では、バイオテクノロジーの研究の第1人者であるウー博士が豚に食べさせる野菜を選んでいる。
その野菜を食べさせるのは、博士の研究チームが遺伝子を導入して作り出した体が緑色に光る豚。
体の一部が光る豚を作った研究者は過去にもいたが、全身が光る豚を作ったのはウー博士が初めて。
これらの豚は幹細胞の研究に役立てられる。
ウー博士「幹細胞には大きな可能性が秘められている。
この分野の研究が進めば、将来的には様々な形の再生医療が可能になるだろう。
例えば髪の毛を再生したり、病気になった心臓の組織や核膜など、様々な組織を再生できる可能性がある。
さらに美容や整形外科の分野でも、再生医療の技術が導入されるだろう。」
幹細胞は全ての細胞の源。
胎児になる前の人間は幹細胞であり、それが神経細胞や赤血球細胞などに分化し、やがて心臓や肝臓、脳を形成する。
人間の組織や機関は病気や加齢によって衰えるが、その中には幹細胞によって再生できるものもある。
つまり幹細胞を成長させ、骨や筋肉や内臓の細胞に分化させることで、多くの病気を治すことができる。
現在世界中で再生医療の研究が進められており、近い将来多くの人達が、より健康で長い人生を送れるかもしれない。


全身が緑色に光る豚を作り出したウー博士の研究チームは、今度は赤く光る豚を作ろうとしている。
その目的は細胞の種類を見分けること。
人体を再生する幹細胞には、いくつか種類がある。
研究者や医者が2つの色を使えれば、違う種類の幹細胞を見分けやすくなる。
緑色に光るタンパク質はクラゲから取ったが、赤く光るタンパク質は赤珊瑚から取った。
このプロジェクトのために卵子を提供するのは、台北郊外の養豚場の3匹のメス。
発情周期が一致しているメスに受胎させ、子供が生まれるタイミングを合わせる。
赤い色を発するタンパク質を確実に細胞に注入するためには、受精後12〜16時間しか経過していない、生殖核と呼ばれる状態の受精卵を取り出さなければならない。
生殖核とは受精の過程にある精子や卵子の核のこと。
精子は卵子に入っているが、まだ融合していない。
3匹のメスは人工授精によって無事妊娠した。
このメス達の卵子を摘出するために、研究チームが道具と薬剤を持って朝早く出発する。
豚をしっかり手術台に拘束する。
人間の手術と同様衛生面にも気を配らなければならない。
ドナーの豚は毛を剃られ、体を消毒される。
手術の間は全身麻酔にかけられる。
卵子は摘出後、赤く光るタンパク質を注入され、代理出産する2匹のメスの子宮に移される。
長い子宮が出てきたが、卵子を取り出そうとすると、予想外のものが見つかった。
ウー博士「排卵している。
いくつかはもう赤くなっている。」
原因は周期の計算間違い。
すでに卵子は生殖核の段階を過ぎており、細胞が分化していた。
わずか数時間の違いで、手術成功の確率は大幅に減ってしまった。
しかし手術は続けられた。
ウー博士が慎重にタンパク質を注入する。
7時間に及ぶ手術と注入が終わり、代理出産するメスの1匹には27個、もう1匹には42個の受精卵が移植された。
60日後、1匹のメスの妊娠が確認された。
ウー博士の長年にわたる研究が報われて、幹細胞による再生医療の可能性が大きく開けるかどうかは代理母達にかかっている。
母親の陣痛が始まるのは早くても114日後。


リーの養豚場では、種豚になるべく育てられた子豚達が生後6ヶ月にまで成長。
どの豚も体が大きくなり、性的にも成熟している。
種豚の競りでは、体つきが重要。
脂肪の少ない豚が高く評価されるため、背中の脂肪を測る。
精子の数と性欲も重要。
種豚が寄ってくると、メスは耳をたてて動かなくなる。
種豚は口から大量のヨダレをたれ流す。
リーは全ての豚の性的能力と、精子の健康状態をテストする必要がある。
この段階でよい結果を出せない豚は、競りに出す前にふるい落とされてしまう。
セックスドールを使って、種豚としての能力をテストする。
豚用のセックスドールには、メスの膣の粘液が塗られている。
種豚はすでにやる気十分。
リー「前儀をしている。
匂いを嗅いで上にのった。
オス豚のペニスは太く、長さも十分。
最初に分泌液が出て、精液が出る。
良い種豚になるためには立派な体格と体の線の美しさだけでなく、健康な精子を持っていなければならない。
精液の色と純度、精子の数と形…」
台湾の豚の競りでバイヤーに高く評価されるのは、胸の幅が大きくて、胴体が長く、頭が小さい豚。
さらに足が太くてお尻がたくましいことと、睾丸が大きいことも評価のポイント。
胴が長く胸の大きい豚からは、良い肉が取れる。
力強い足はその豚が健康である証。
そして大きなお尻と睾丸は、性的能力の高さを示す。
太りすぎた豚は、競りに出す前に減量させる。


最高の種豚として認められるには、体の美しさのほかに重要な要素がある。
リー「競りにかけられる種豚は、集まったバイヤーの前で男らしさと強さをアピールしなければならない。
口からたくさんの泡を出して、後ろから風を受けているように勢いよく歩く豚は、バイヤーに気に入ってもらえる。」
およそ1ヵ月後には種豚の競りが始まる。
しかし上級のバイヤーが集まる競りに出されるのは、厳しい競争を最後まで勝ち残った豚だけ。


リーのように美しい豚を育てる人がいる一方で、豚の力で外見を美しくしようとする人間がいる。
多くの人はシミやシワのない肌や、整った口や鼻を望むが、どれだけ努力しても年をとることは避けられない。
年をとると皮膚のコラーゲンは減少する。
肉体をつなぎとめる糊とも言われるコラーゲンがなくなると、私達の体はバラバラになってしまう。
研究者は加齢の影響を抑える方法を模索してきた。
そして豚のコラーゲンに、肌を若く保つ効果があると分かった。
台北の300南あるSun Max Bio Technology社の研究所では、豚の皮膚を主成分にした化粧品を作っている。
豚のコラーゲンには、人間の皮膚の細胞を再生して、弾力をよみがえらせる効果があると言われている。
このコラーゲンの価格は1kgで120万ドル。
豚の皮膚に高い価値がつくのは、若さを求める人達がいるから。
この効果な豚を育てているのは、台湾東部の花蓮にある無菌の養豚場。
ここには豚達が日向ぼっこをするプールもある。
養豚場はあらゆる病原菌を排除する造りになっており、人工の川も流れている。
中に入る人間はシャワーを浴びて、防護服を着なければならない。
豚達を外部の病原菌から守るためだ。
そのおかげで病気になる豚はマレ。
それでも豚達の生きられる時間が長くない。
最後はどの豚も堵殺場に運ばれてゆく。
Sun Max Bio Technology社の技術者達が、殺して処理されてからももない豚の皮膚から毛と脂肪を取り除いてゆく。
20cm四方の豚の皮膚から採れる680mgのコラーゲンには、最高9000ドルの価値がある。
このコラーゲンを注入すれば、顔のシワは消える。
唇のハリも戻る。
鼻も高くなる。
豚のコラーゲンのおかげで、美しさを取り戻すことができる。


ウー博士の研究チームは、赤く光る豚を作ろうとしている。
2006年から取り組んできたプロジェクト。
この日は実験の結果が出る日。
114日待ち続け、ついに代理出産するメスの陣痛が始まった。
急いで養豚場へ向かう。
代理母になるメスは苦しんでいた。
2時間後、見かねた職員が手を差し伸べる。
無事生まれたのは2匹だけ、標準より小さな子豚。
実験の結果を確かめる。
生まれた2匹を普通の子豚と一緒にして、紫外線をあてると違いが浮き彫りになる。
ウー博士「赤いフィルターを使って紫外線を当てる。
3匹のうち2匹は私達が遺伝子を導入した受精卵から生まれた子豚で、もう1匹は普通に生まれた子豚。
この子豚は体の一部と皮膚の一部が赤く光って見える。
しかしボンヤリと赤く光って見えるだけで、はっきりと赤く光っているわけではない。
面白いことに、このように紫外線を当ててみると、豚の体に付いている母乳もボンヤリと赤く光って見える。」
さらに細胞レベルでも結果を確かめる必要があるため、子豚の耳から組織を採取して、大学の研究所でDNA検査にかけた。
DNA検査の結果はウー博士が心配していた通りだった。
受精卵に赤く光る遺伝子を注入するのが遅すぎたため、重要なタイミングを逃していた。
その結果赤く光る遺伝子の導入を確認できない。
今回の実験は失敗だが、科学を追及する長い道のりの中の小さなつまづきに過ぎない。
ウー博士はこれからも、豚を赤く光らせる研究を続ける。
そして再び実験する機会が訪れるのを待つ。


リーが種豚の競りに出す豚を決定する時が来た。
競りに出す前に、点数をつけられる。
8ヶ月に及んだ育成期間を終え、172匹のうち56匹が競りに出すための基準に合格した。
ここまで厳しい競争を勝ち抜いてきた豚達が、ハレの舞台でその美しさを疲労する。
どの豚が王者になれるだろうか?
合格しなかった豚は食肉用に売られる。
リーが準備をしていると、バイヤー達が豚を見に集まってきた。
最も点数の高い豚は、最後に競りにかけることになっている。
最もランクの低い豚がステージに出され、点数が告げられる。
1度に上げられる金額は16ドル以上。
匿名性と公平性を守るためにバイヤーは座席についたボタンを押す。
落札者は最後まで分からない。
バイヤーが重視するのは飼料効率。
優秀な遺伝子を持つ種豚が欲しければ、父親と母親を確認して生まれた時の大きさもチェックする。
あくまでも見た目にこだわるバイヤーは、背中のラインや歩き方に注目する。
リーは最終価格を少しでも吊り上げるために、その豚の強調できる点数を繰り返す。
匂いを嗅ぐのに夢中になってしまう豚や、付添い人を追い掛け回す豚もいる。
価格が上がるにつれ、場内の興奮も高まる。
ついにチャンピオンが決まった。
アメリカドルで7000ドルの最高値をつけた豚が今回の種豚の競りのチャンピオン。
最高記録の23000ドルには遠く及ばないが、リーは満足している。


ウー博士、最初の実験に失敗してから6ヵ月後、新しい子豚が生まれた。
そのうちの2匹には、赤いタンパク質の導入が確認された。
しかし体が赤く光るのは1匹の豚だけで、光るのは主にヒヅメの部分。
それでも顕微鏡で見た血液サンプルでは確かに赤く光っている。
世界で初めての赤く光る豚。
再生医療の未来は豚に託されている。
忙しい競りのシーズンが終わり、リーは一番の趣味である豚の写真を撮って楽しんでいた。
彼は豚の美しさや一瞬の表情を写真におさめることで、豚への愛情を形に残したいと考えている。
豚の魅力を伝えようとする彼の写真を見れば、私達のイメージとは異なる豚の姿が見えてくる。
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鳩 Brilliant Beasts☆Pigeon Genius


チーターをしのぐ速さ、ゴリラを上回る筋肉、ホホジロザメに勝る俊敏性…
空から舞い降りエサをあさる集団、鳩。
脅威の進化を遂げた鳩は、並外れた感覚を持つ空の王者。
鳩は学習と記憶の天才、時には変身も…
伝説の勇者であり、優れた方向感覚を持つ。
呼び名は“空のネズミ”“ドブの鷲”“側溝のハヤブサ”など、その数は知れない。


日に16000回エサをついばむ鳩。
年間にする糞の量は1羽当り10kg。
車や銅像をはじめ、糞の被害は広がるばかり。
迷惑な鳥だがご存知だろうか?
鳩はとても優れた生き物なのだ。
その証拠に各都市で繁栄している。


鳩の方向感覚は抜群で、どんなに遠くからでも巣に戻ってくる。
脅威の能力の研究は始まったばかり。
しかし鳩は遠い昔から人間にとって身近な存在だった。
古代文明では崇拝の対象。
シュメール人にとっては神の使者。
ローマ・ギリシャ人には多産の象徴。
聖書の中でも鳩は祝福される存在。


人間が最初に食用として飼った鳥は鳩だった。


またその帰巣本能は通信手段に革命をもたらした。
鳩は古代エジプト時代の戦争に利用され、歴史を変えてきた。
今その子孫達が街にあふれている。


鳩の能力は研究者の注目を集めている。
優れた方向感覚、柔軟な適応能力、完璧に近い飛行能力。
ロンドンの獣医学校では鳩の飛行能力を研究中。
特殊カメラで翼の動きを撮影した。
高低差のある2点間を鳩に行き来させる。
日常での急な動きを再現させるためだ。
鳩は最も難しいとされる垂直飛行の達人。
この能力は祖先のカワラバトが敵の少ない絶壁で暮らすために会得したもの。
空中でホバリングする技も大都市では欠かせない。
高い飛行能力の秘密は力強い翼にあった。
飛行機は強固な翼とエンジンで空を飛ぶ。
一方鳩が飛ぶ原動力は驚くべきものだった。
鳩の羽を支える骨は丈夫でしなやかなだけでなく、上腕や前腕、手首から指先まで人間にそっくり。
この腕がパワーの源だった。
アッシャーウッド博士「鳩は翼を高く振り上げ一気に振り下ろして飛び立つ。」
離陸には飛行中に比べ多くの力が必要。
そのため力強く羽ばたいて空気を押し下げる。
また1枚1枚の羽を閉じて空気の漏れを防ぐ。
翼同士が触れるほど、大きく羽ばたく。
スローモーション映像からは、さらなる秘密も見えてきた。
鳩が翼を振り上げる度に驚くべきことが起きていた。
「振り上げた翼の先端の羽を見ると、1枚1枚ねじれている。」
それぞれの羽が一時的に小さな翼となり、飛び立つ際の浮力と推進力を生んでいたのだ。


これで飛行の謎がとけてきたが、欠かせない要素がまだある。
骨だ。
鳩の骨は中が空洞になっており、飛ぶ際の曲げやねじれにも耐えられる。
空洞でなければ折れてしまう。
鳩はまるで空飛ぶフェラーリ。
頑丈なボディに強力なエンジンを搭載し、一瞬で時速50km/hまで加速して遠くへ飛んでいける。


空から降りてきたのは優秀なレース鳩・515号。
鳩レースは古くから続く伝統の競技。
飼い主でありトレーナーのジョン・シリア、今日は515号に32kmの距離を飛ばせて大事なレースへ向け訓練を行う予定。
訓練で飛ぶ距離は徐々に長くなる。
32kmの次は64km、最後は80km。
鳩は恐るべき速さで戻ってくる。
515号は平均時速80km/hで飛び、20分で戻ってきた。
しかしレース本番の距離は320km。
万全の体調で臨まなければならない。
時速80km/hを維持するのに羽ばたく回数は最高36000回、心拍数は毎分100から700に上昇する。
そしてその状態をキープする。
人間には真似できない。
桁外れの筋力とスタミナが必要だからだ。
これで力強い翼と空洞の骨に筋力とスタミナが揃った。
飛行に欠かさない要素があと1つある。
鳩は非常に筋肉質の体をしている。
筋肉が体重にしめる割合は3割強。
他の鳥の多くは2割程度。
人間に例えると筋肉だけで27kgもある体なのだ。
筋肉は飛ぶ際に普段の10倍酸素を必要とする。
そのためレース鳩も公園の鳩もすべて呼吸器系に珍しい特徴がある。
哺乳類の場合、新鮮な酸素を取り込んでも肺で二酸化炭素が混じる。
一方鳩などの鳥の体には取り込んだ酸素だけを溜め込む特別な袋がある。
酸素の通り道は一方通行のため、二酸化炭素は混じらない。
つまり鳩は人間に比べ、効率的に酸素を吸収できる。
強い筋肉を活発に使うための驚くべき機能。


訓練中のレース鳩、小屋に戻る時間。
鳩は1度つがいになると、通常は死ぬまで相手を変えない。
小屋には515号を含む25組のつがいがいる。
つがいは1度巣を決めたら約15年の生涯を同じ場所で過ごす。
街で暮らす鳩も同じ。
一生同じ相手と連れ添う。


鳩にはまだ秘密がある。
鳩は飛ぶことだけではなく、変身も得意。
様々な環境に適応し、姿を変えている。
色も形も多様。
人間はその能力を利用して、奇妙な鳩を生み出した。
全世界に生息する鳩の仲間は300種を超える。
森の環境に適応した鳩もいる。
草原や砂漠、都市にも生息する鳩は、環境に適応するのが得意。
数世代で姿も変えられる。
人間はこの鳩の能力を極限まで引き出した。


風変わりな羽、見たこともない色、これらは鳩愛好家が作り出したショーに出すための鳩なのだ。
祖先のカワラバトとは似ても似つかない。
Aust' Saddleback Tumbler、Fantail, red…


オーストラリア最大の会場には、品種改良された様々な鳩が並ぶ。
鳩の遺伝を研究する獣医師Colin Walker「鳩の遺伝子の可能性は昔から知られていた。
つまり突然変異によって様々な姿や形になる性質。」

↑クリック The racing lofts of Dr Colin Walker

完了した様々な色、冠毛、くちばし、羽の生えた脚、膨れた体、どれもおよそ鳩には見えない。
500年かけて改良されたJacobin、頭にとても大きな冠毛がついていて、冠毛をかき分けないと顔が出てこない。
名前の由来は“フードをかぶる僧”。


Bokhara Trumpeter、脚に平皿のような羽がある。
2000年の歴史を持つScandaroon、長く尖った珍しいくちばし。


改良はみために留まらない。
メディナは気象の荒い品種として有名。
まるで番犬のように侵入者を攻撃する。
ドイツ産のFrillback、フサフサの毛で覆われ、独特の容姿。
ツルツルで水を弾く羽と違い、カールしている。
青や赤の色もでる。
中東産のOriental Frill、小さいくちばしが特徴。


品種改良が鳩の行動にまで及ぶ場合がある。
Birmingham Roller、見かけは普通だが、長年の改良のせいで奇妙な飛び方をする。
集団で宙返りするのだ。
1秒間で13回転するものもいる。
そして2〜20mの範囲を急降下する。
まるでアクロバットショー。
彼らは空中で停止し、体を反り、羽をたたみ、体操選手のように宙返りする。
明らかに不自然、野生ではとても生きてゆけない。


ヒナにエサをやれないほどの短いくちばし、水を弾かず体温を保てない羽毛、敵の目につきやすく木に衝突する奇妙な飛び方。
これまで鳩は様々な姿や形に品種改良されてきたが、その奇妙な容姿はあくまで仮の姿。
その証拠に、異なる品種を数世代かけ合せると本来の姿に戻る。




そんな彼らが一様に獲得した脅威の能力がある。
飛行能力と共に備わる鋭い感覚だ。
鳩は目と耳で状況を見極め、危険を察知する。
人間と同じように両目を使って物の形や距離を判断する。
ただし鳩の目はほぼ真後ろまで見渡せるため、視野は340度もある。
そのため鳩はエサを探しながら鷹などの上空の敵を察知できる。
これは鳩にとって大きな強み。
鳩の目にはさらなる秘密がある。
鳩は曇りの日でも太陽からの紫外線を感知できる。
それで飛ぶ方向が決められる。
また鳩は聴覚も非常に優れている。
鳩は人間より200倍低い音を感じる。
嵐の予兆や遠方の地震が聞こえるのかもしれない。
鳩は優れた目や耳、そして強い羽や筋肉を駆使して空の王者に君臨している。
あらゆる環境に適応し、南極を除く全大陸で繁栄を極めている。
彼らにとって大切なのは、優れた能力を次世代に受け継ぐこと。
子育てこそ鳩が真価を発揮する時。
あらゆる鳩に共通する長所がある。
理想の親であることだ。
つがいは助け合って常にヒナを見守り、一生離れない。
始まりはキスから、メスがオスにくちばしを入れて結婚が成立する。


オスが枝などを集め、メスが巣を作る。
母鳥と卵が入るサイズだ。
巣が出来ると次は交尾。
メスの気を惹くため、ダンスを踊るオスもいる。
メスは知らんぷり、しかしじきにオスを受け入れる。
それから10日後、卵を産む。
数は決まって2個。
最低でも1羽は生き残り、無理なく育てられる数。
卵は16〜18日ほどで孵る。
生まれたばかりのヒナは目は見えないが食欲は旺盛。
ここから驚きの子育てが始まる。
両親がヒナに与えるのは栄養価の高いミルク。
そのためヒナの体重は2日で倍増する。
そのミルクは“そのう”という食道の袋で作られる。
ミルクはソノウの内壁についた栄養分がはがれたもの。
牛や人間の乳よりもタンパク質や脂肪分が豊富で、ヒナの免疫力を高める。
はとの爆発的は成長力は他の追随を許さない。
ヒナは毎日体重と同じ量のミルクを摂り、2週間で親鳥の半分に成長する。
25日後にはほぼ一人前になり、エサも食べ始める。
完全に成長したヒナ達は、35日ほどで巣立ちを迎える。
親鳥はヒナが巣立つとすぐに次の卵を産む。
鳩は他の多くの鳥と違い、特定の繁殖期がない。
街ではエサや住処に困らないからだ。
彼らはエサを豊富に手に入れ、1年中繁殖する。
1年に6〜9回卵を産む場合もある。
たった1組のつがいが、1年後には50羽に増えている可能性もある。


つがいの絆はレースでも重要。
絆を利用することで、鳩のスピードが上がるからだ。
シリアはレース1週間前、515号の相手を引き離した。
“やもめシステム”と呼ばれる方法で、鳩が相手を強く思うよう仕向ける。
515号は他のメスを一切寄せ付けない。
レース前日2羽は再会、気分も盛り上がっているようだ。
シリアは今度は515号を取り出した。
515号は妻と我が家に思いを募らせ急いで戻ってくるだろう。
ついにレース当日、まず受付に向かう。
ライバルは100羽以上。
鳩に足輪をつける。
足輪にはエントリーシートと同じ番号が刻まれている。
鳩が戻ったら足輪を外し、時刻を印字する。
鳩はここからスタート地点までトラックで運ばれる。
8時間後のレースに備え、鳩は休息する。
320km離れたウェストヴァージニア州、鳩が才能を発揮する時が来た。
未知の土地から飛び立ち、強い本能に導かれて巣を目指す。


鳩には帰巣本能がある。
何1000kmも離れた場所からも巣に戻ってくる本能。
鳩だけではない。
ウミガメは生まれた浜に戻ってくる。
鮭は生まれた川で命がけで遡上する。
しかし地球のどこからでも戻ってくる鳩の本能は並外れて優れている。
古代の人は確実に届けたいものがあると鳩に託した。
戦時には伝書鳩は早く確実で、敵の目もくらました。


伝書鳩の到達率は95%を誇り、戦場では無線より確実だった。
第一次世界大戦中には、銃弾で脚を失った伝書鳩がいた。
それでも任務を果たしたその鳩は、勇気を称えられ30羽の仲間と共に表彰された。
伝書鳩の強みはスピード。
距離が80kmの場合、人間なら5時間以上かかり、馬なら2時間かかる。
でも鳩は1時間かからない。



レースが始まった。
鳩は上空を旋回して方向を確認し、初めての土地を勢いよく飛んでゆく。
鳩の方向感覚の謎は今も解明されていない。
しかしその謎に挑戦し、鳩の能力を調べる専門家がいる。
都会のビルの合間を縫い、広大な野原を飛び回る鳩。
彼らは毎日エサを探しては巣に戻る。
鳩の方向感覚は動物の中でも抜群。
専門家によれば鳩は太陽を頼りに方角を探る。
景色や臭いも重要な道標。
さらには地球の磁場を利用するとも言われている。
しかしどの要素が最も重要なのだろうか?
オックスフォード大学の研究者Gilford博士によると、鳩には正確な体内時計があり、太陽の位置から方角を割り出せる。
体内時計をずらして実証する。
Gilford「太陽の光を遮断した小屋に鳩を入れ、人口の光を当てて時差を作った。
実際は昼だが中の鳩にとっては朝の8時。」
鳩の体内時計は4時間ずれている。
太陽の位置は鳩の予想と違うだろう。
これからこの鳩を16km離れた地点で放す。
これまで何度も来たことのある場所。
Gilford「今は昼の2時頃だが、鳩には朝の10時。
巣の方向は前方だが、鳩が予想通り方角を間違えれば右手に行くだろう。
GPSを使って帰路を追跡してみる。
鳩はまず上空を旋回する。
知っている場所でも位置を確かめて、それから進む方向を決めて飛び去ってゆく。」
鳩が飛んでいった方角は間違っていた。
通常なら10分の道のりだが、今回は2倍の時間がかかった。
GPSのデータを回収する。
通常ルートと今回のルートを比較すると、今回はかなり遠回りをしていた。
博士の考えを裏付ける証拠といえる。
Gilford「時差の影響がでたのは太陽をコンパス代わりに使っているからだ。」


しかし道に迷うと鳩は別の能力を使って方向を修正した。
目の中の優秀な追跡装置が働いたのだ。
鳩の能力について研究しているGibson博士。
ポイントは“行間を読む”だという。
Gibson「人間が物体を認識する時には境界線を見る傾向がある。
物体の縁の部分だ。」
つまり物体を輪郭で認識する。
Gibson「鳩も同様、物体の輪郭を見て認識する傾向がある。」
訓練した鳩で実験する。
画面に樽形の図形が出たときは緑に触れるとエサが出てくる。
楔形の図形の時は赤。
鳩は何を見て識別しているのだろうか?
答は輪郭だ。
図形が一部かけても正解する。
しかし輪郭がないと正解できない。
これで鳩が輪郭で景色を識別すると分かったが、鳩は輪郭だけで見ているわけではなく、細部も識別していると博士は言う。
Gibson「単純な物体の認識方法は分かったが、人間の顔など複雑なものはどうだろう。」
そこで同じ輪郭で少し違う顔を鳩に見せて実験した。
男性の時は緑、女性の時は赤が正解。
識別のポイントを探るために、顔をぼかしてみる。
その結果、鳩は口と目だけの顔を見て識別に成功した。


その頃515号の目は本領を発揮していた。
輪郭と細部を頼りに目印となる野原や道路、建物を確認。
ライバルと先を争い巣を目指していた。
そこにはパートナーが待っているからだ。
鳩は太陽をコンパスに使い、様々な景色や目標を確認しながら飛んでいる。
しかし膨大な情報を管理するには、優れた記憶力が必要。
Tufts Universityでは鳩の記録の研究が行われている。
8年前から実験に参加する特別な鳩もいる。
ライナスは1000種類の画像を記憶している天才。
実験用のブース、鳩はタッチ画面をつついて意思を伝える。
エサ箱が2つ用意されている。
各写真は一方とリンクしている。
写真とエサ箱の対応関係を覚えればエサが食べられる。
そしてライナスが覚えたのは1000種類を上回る対応関係。
鳩は認識力も記憶力も抜群、親指ほどの脳で脅威の能力を発揮している。


一方イギリスのGilford博士、彼も鳩は優れた記憶力と認識力により、巣までの地図を作ると考えている。
Gilford「鳩は目印の点を線でつないでいる。」
GPS装置をつけた鳩で実験する。
彼の説が正しければ、鳩は常に同じルートをたどるはず。
鳩が巣へ向かって飛び立った。
GPSで追跡する。
その結果飛行ルートはほぼまっすぐだった。
過去の飛行ルートと比較すると、初期の飛行ルートは統一されていなかった。
ところが途中から線が重なってくる。
第1の目印は線路だった。
線路に沿って飛び、林を1つ越えると第2の目印が見えてくる。
次に道路に沿って飛び、それを目印にして巣まで戻ってくる。
こうして鳩は記憶していた“いつもの道”をたどり、自分の巣へ戻ってきた。
鳩は様々な景色を識別し、それを記憶して巣までも道を決めていた。
鳩は優れた感覚と脳で、巣の周辺地図を頭にいれて近隣のどこからでも馴染みの道に戻れるのだ。
しかし遠隔地からでも巣に戻れるのはナゼだろう。
景色の記憶や太陽だけでは対処できない。


オクラホマ州で殿堂入りしたレース鳩は、1日に965kmの距離を飛ぶ速さとスタミナがある。
彼らも一心に巣を目指したのだろう。
鳩は抜群の認識力と記憶力でゴールを目指す。
家族の待つ我が家だ。
しかし遠方の見知らぬ土地から戻れるのはナゼだろう?
イタリアの研究者は鳩が方向探知に使うのは臭いだという。
周囲の臭いで位置や方角を認識するという説だ。
鳩は生まれたときから嗅覚が優れている。
小さくても優秀な鼻。
まさに道を嗅ぎ分けるのだろうか。
鳩は故郷の臭いを記憶するという。
海や森や街の臭いだ。
彼らは臭いの強弱を感じ、遠い目的地へもたどり着けるというのだ。


一方別の意見もある。
ドイツの研究者によれば、鳩は地球の磁場を利用して巣に戻ってくるという。
動物の帰巣本能については最近発見があった。
動物が移動に磁場を使うという説は専門家の間では有力だが、方法は謎だった。
それが最近の研究で分かってきた。
電子顕微鏡の拡大写真、鳩のくちばしにある神経の末端には、磁場にとても敏感な磁鉄鉱の結晶があった。
その結晶はくちばしの両側の3ヶ所にある。
それぞれ軸の向きが異なるので、磁場からの情報を立体的に感じ取れる。
つまり鳩自身が高性能な追跡装置なのだ。
この説によれば、鳩は磁場の強弱を感じ取り、位置や方向を探知することができる。
ウミガメや鮭にも同様の磁性体があるのかもしれない。
この研究結果により、鳩の方向感覚の謎は解けたかに思えた。
しかし反論もある。
イタリアの博士は臭いの重視説を主張している。
実験も行った。
まず鳩を3群に分ける。
第1群は嗅覚がなく、第2群は磁場を感じない、第3群は正常な鳩。
いずれの鳩もこの日初めて外に出る。
鳩は半数ずつ2ヶ所から放した。
距離は共に65km。
戻った鳩は全体の7割弱、多くは正常な第3群と磁場を感じない第2群だった。
嗅覚のない鳩は迷ってしまった。
では今度こそ謎は解けたのだろうか?
話はそう単純ではなく、論争は今も続いている。


515号は自分の体の仕組みに興味はない。
ただ持てる能力を発揮するのみ。
周囲の風景や臭い、音や磁場の情報を分析。
有力な情報を手掛りに全力で飛んでいる。
515号の願いはただ1つ。
パートナーの下へ戻ること。
1秒に60回上下するレース鳩の翼、1分間に700回鼓動する心臓、大量の酸素を取り込む肺。
515号の優れた身体能力と帰巣本能は、飼い主に勝利をもたらすはず。
空から急降下してきた515号。
レースが終わるのはタイマーに足輪を入れて記録を確定した時。
記録は3時間46分。
515号は期待通り2位となり、全国大会の出場資格を獲得した。


ビルから舞い降り街を飛び回る。
あらゆる場所に迷惑な落し物。
街は鳩だらけ。
でも仕方ない、彼らに悪気はないのだ。
飛行の名人、子育てのプロ、ルート検索の達人。
今度鳩に出会ったら見方を変えてみよう。
鳩が街にあふれているのは抜群の能力を持つからなのだ。
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マンモスの大地 Woolly Mammoths

かつてシベリアは命溢れる大地だった。
しかし王として君臨したマンモスは絶滅してしまった。
氷の下に眠るマンモスを人類が現代に呼び覚ます。
化学と最先端の技術で時空を越え、マンモスの大地を冒険してみよう。


2万年以上前の氷河期、マンモスのJarkovは死を迎えた。
死因は分かっていない。
他の大型哺乳類も多くが死に絶えた。
絶滅の原因の真相を求め、発掘が続けられている。


シベリア北部Taimyr 半島。
1999年マンモスの死骸を発見したとの報告を受け、北極を何度も探検した探険家Bernard Buigueはヘリコプターを飛ばし、駆けつけた。
マンモスの牙を発見したドルガン(Dolgan)族の一家に会うために・・・
牙が発見された場所に行き、その地中をレーダーで探ると、有機物の反応が・・・
マンモスの体毛が出た。

永久凍土の塊ごと、Jarkovを運び出すのは至難の業。


ヘリコプターで持ち上げるのは無理だと諦めかけたその時、巨大な塊が浮いた。
マンモスは空を飛び、新しい住処へ運ばれた。


Khatangaは北極圏でも北に位置する。
大型トラックで氷の塊ごとJarkovを運ぶ。
夏前に冷凍保管場所へ入れなければ、腐敗してしまう。
搬入作業は困難を極めた。
冷戦時に作られた地下通路の一部は、今では住民がトナカイの肉や魚の冷蔵所として使っている。
マンモスはこの地下通路に保管されることに決まった。
鋼鉄のワイヤーで35m運ぶのに1日半かかった。


マンモス研究家Dick Molが凍土の塊を区分けする。
古生物学者Larry Agenbroadは昨年の発掘にも参加した。
彼らがサンプルを集め、各地の専門化が分析する世界規模のプロジェクト。
掘り出してから10ヶ月間、Jarkovは放置された。
厳しい冬に突入したからだ。

冬が終わり、調査がはじまる。
アメリカ自然史博物館から助っ人が到着した。
古代の小動物専門のClare Flemingと、脊椎動物を研究する動物学者Ross MacPhee。
シベリアで発掘されたマンモスは、200年で11体のみ。
Dickは1mほどの体毛の下から漂う臭いから、その下に肉が残されていると考えている。
マンモスが眠る凍土は、まさに情報の宝庫。
泥に閉じ込められた細菌や植物、虫、藻の類、胞子など、多くの手掛かりが隠されている。
Jarkovが生きていた20380年前の環境を、それらから推測することができる。

まずDickと発掘チームのリーダーBernardが凍土の塊を20に分けていく。
遺跡の発掘と同じく、何がどこから出てきたのか記録する必要があるからだ。
昨年の発掘の成功から。今回もヘアドライヤーが用いられた。
凍ったままの状態にしておけば中の情報も損なわれずに保たれるが、ゆっくり凍土を溶かす。
表層部からだけでも多くが分かる。
体毛からは栄養状態が、花粉や虫からは氷河期の気候や植生が分かる。
また疫病が絶滅の原因かも調べられる。
服や骨から採れたDNAで、将来クローンが作られるかもしれない。
牙には木の年輪のように、生前の情報が刻まれている。
頭蓋骨に傷があるものの、顎と臼歯は完全に残っていた。
牙からJarkovはオスの成獣だと判明した。
DickとLarryは臼歯から、47歳と推測した。
年齢はアフリカゾウと比較することで分かる。
その生態については謎のまま。

シベリアの大地は生き物にとっては過酷だが、長年の調査がマンモスの存在を裏付ける。
氷河期末期の様子を再現。
20300年前、Taimyr 半島でマンモスのJarkovは生を受けた。
マンモスは群を作り、草を求めて移動した。
寒冷な気候にも関わらず、群れが暮らせるだけの大草原が広がっていた。
半島はシベリアの北端にあり、その大きさはカリフォルニア州の倍ほど。
半島の凍った泥土の中には、実に何1000体ものマンモスが眠っていると推測される。
マンモスの牙は、ドルガン族の貴重な収入源。
生活必需品と交換して暮らしている。
マンモスの発掘にも彼らは欠かせない存在。
氷河期のマンモスの生態や当時の環境を知るには、1体では足りない。
もっと多くのマンモスを発掘する必要がある。
Bernardは物々交換で、更新性の化石を手に入れ、Khatangaに展示するつもりだ。


シベリアの短い夏の間、骨や牙、死骸を探すのを生業とするマンモスハンターの出番。
動物学者アレクソン・ティカノフが今年も参加。
1988年有名なマンモス・マーシャを発見した人物。
研究者にとってJarkovは天からの贈り物。

DickとLarryは慣れない手つきでJarkovの牙を分析用に切り取る。
「こんなに美しい牙は見たことがない。
それなのに傷つけなければならない。
この牙を残したマンモスのことを思うと悲しくなる。」
牙の状態を分析することで、晩年の暮らしが見えてくる。
しかし死亡原因を解明するには、もっと多くの情報が必要。

今から5000万年前のアフリカ大陸。
恐竜絶滅から1000万年後、この熱帯の大陸でマンモスとゾウの祖先が生まれた。
長い鼻を持つ長鼻目の誕生だ。
最古の長鼻目メリテリウムMoeritheriumは、体も小型で鼻も牙もわずかに長い程度だった。


マンモスの祖先はアフリカで、何100万年もかけて進化し、牙や鼻の形も変化していった。
環境に適応するために、4000万年前始めて立派な牙と鼻を持つディノテリウムDeinotheriumが現れた。


鼻は化石にはならないが、頭蓋骨の穴から長い鼻があったと分かる。
しかし多くの種は絶滅した。
その淘汰の中で、牙はさらに実用的に、かつ優雅に進化し、マンモスとゾウが生まれた。
アフリカゾウは熱を逃すため、耳が大きく発達していったが、ヨーロッパやアジアへ渡ったゾウはその土地で独自の進化を遂げた。
インドに渡った種は、熱を逃す必要がないため、耳も大きくない。


さらに寒冷な北の地へ向うゾウもいた。
今から250万年前、メリディオナリスゾウMammuthus meridionalisが、ヨーロッパに辿り着いた。


メリディオナリスゾウはさらに地続きだったベーリング海峡から北米に・・・
コロンビアゾウMammuthus columbiへ進化した。


そして75万年前、寒冷化の波が世界を襲った。
ゾウの体毛はより長く、表皮は厚くなっていった。
特に厳しい自然の中で、耳は小さく体毛が長くなった種がマンモスなのだ。
マンモスはゾウのいないシベリアへと渡り、大草原の生活に適応した。
ベーリング海峡を渡り、マンモスが北米に到着したのは、わずか10万年前。
コロンビアゾウがメキシコへと南下していく一方、マンモスは北アメリカに留まった。
しかし北半球でかっ歩していたマンモスは、突然地球上から姿を消した。
Jarkovは当時を物語る貴重な手掛かり。


Khatangaの町に短い夏が訪れた。
このわずかな期間、1日中暖かな陽光が降り注ぎ、町には活気が溢れる。
発掘には最適な時期。
Bernardは昨年の発掘メンバーを呼び集め、マンモスと同じ時代に生きた動物の化石を探しに出た。
目的地は半島中央部、湖の北端にあるCape Sablera。
10万〜1万年前の更新世に生息した動物を探す。


氷河期の時代から生き延びている動物もいる。
2万年前からトナカイreindeerたちはマンモスの大地に生きている。


3000年前にいったんは絶滅したジャコウウシmusk-oxも復活を果たした。
ホッキョクギツネarctic foxは多く見られる。


このように順応した種や絶滅した種から、氷河期の世界を知るのが狙い。
Sablera岬を拠点として、Bernardのチームはヘリコプターやボート、あるいは徒歩で、半島中を調査した。

Dickとチームの編成をしているフランス人クリスチャンは、マンモスと同時代に生まれた巨大な哺乳類、ケサイが一番の狙い。
発掘チームは自然に精通した男達から成っている。
各チーム2名で、11チームが半島を横断するように配置される。
最先端の技術も大きな武器。
その1つGPSにより、各チームは現在地を、本部はチームの位置を把握できる。
化石が見つかることの多い水辺に集中してチームを送る。
発見次第本部へ連絡が入り、BernardとDickが急行する。
Sablera岬の南端、ロシア人のチームが川岸の泥土の中を調査。
10〜15日間、くまなく一帯を探す。
崩れかかった川岸は、絶好の発掘ポイントなので、重点的に探す。
ツンドラ地帯の自然は、凍った泥のわずかな土壌に支えられている。
夏にできるクレバスの割目には、哺乳動物の骨や皮、肉が姿をのぞかせている可能性がある。
臭気を放つ胴穴を発見した。
ドライヤーを使ってJarkovの周りの凍土を溶かしていた時と同じ臭いだが、中には何もなかった。

マンモスの発掘では、通常水流で凍土を洗い流す。
かつてマンモスの赤ちゃんが発掘された時も、この方法だった。
しかし花粉や虫など、当時の環境を知る手掛かりも一緒に流されてしまう。
そこで今回はヘアドライヤーを使い、時間をかけて情報を1つも損なわないよう、慎重に解凍する。


DickとLarryがJarkovの周りの凍土をドライヤーを使って慎重に溶かしていると、茎の部分は残っていないが草が出てきた。
体毛が姿を現し、下に肉が残っているのでは、と期待が高まる。


体毛についた花粉も宝の1つ。
詳しく分析するために、体毛はオランダへ送られた。
体毛に付着した花粉から、Jarkovが育った環境を推測できる。
古植物学者Bossがマンモスの体毛から花粉を取り出す。
体毛を洗浄した水を遠心分離機にかけ、濃縮する。
顕微鏡にかけると驚くべき世界が広がっていた。
古代の草や花粉、コケなどがはっきりと見えた。
この小さなサンプルから、更新世の風景を描き出すことができる。
ヨモギ属の植物の花粉も見つかった。
ヨモギはツンドラには生えないので、Jarkovの時代、シベリアは草原だったことが分かった。
更新世末期の気候は寒冷ながら草が生えるには十分だった。
成長が速く栄養に飛んだ草や低木、花などが育っていた。
マンモスには十分なエサがあった。
しかし気候は激変し、豊かな草原は、痩せた土壌のツンドラへと変わった。
暮らせるのはトナカイくらいだった。

ドルガン族は少数ながらも、400年近くツンドラに生きている。
暮らしぶりは質素そのもの。
彼らは湖で漁をして暮らしているが、水が冷たすぎ泳げず、落ちれば溺れてしまう。
ドルガン族は、週に何回かトナカイの遊牧のために移動する。
夏でも冬でも狩や漁をしながら半島を渡り歩くので、この地に彼らが知らない場所などない。


家屋もソリに載ったままなので、そのまますぐに移動できる。
遊牧の途中、化石が見つかることもある。
Jarkovも1997年、彼らに発見された。
今は何かが見つかれば、即座にBuigueに知らされるようになっている。
絶滅の危機に瀕しているゾウの牙と違い、マンモスの牙は売買できるが、ドルガン族は見つけた骨や牙、死骸を他の人に売らず、Buigueに提供している。
多くの牙が集まれば、それだけ研究は進む。
Dickが計測し、様々な専門家のもとへ送られる。


折れた牙が見つかった。
折れてからもマンモスが使い続けたので磨耗している。
肩までの高さ2m、体重5トン、強大な力の持ち主だった。
まだ若いマンモスが、老いたボスに戦いを挑む。
現在のゾウと同じように、マンモスも力を示すために頻繁に争ったのだろう。
特に繁殖期になると、オスの戦いは命を落すほど激しいものになる。
ボスも力の限りを尽くすが、若いオスに立ち向かえる力はない。
新しいボスが敗者を追い出す。
世代交代の時がやって来たのだ。


あと何週間で、再び雪が降り始め、発掘不可能になる。
作業を急がねばならない。
Larryは原始人がマンモスに影響を及ぼしたと考え調査にやって来た。
Clareは更新世の小動物から、Jarkovの暮らしぶりが分かると考える。
アメリカ自然史博物館の学芸員Rossは、マンモスの絶滅の原因を、疫病に求めている。
あるいは全く別の原因が見つかるかもしれない。


朝食をとりながら、今回湖畔で行う調査の計画を練る。
現地の人の情報によると、有望なポイントがいくつもあるらしい。
アヒラという湖で、マンモスの毛が釣上げられたのだ。
今回の発掘はマンモスに限らず、更新世の動物全てが対象。
絶滅の理由を、様々な角度から探る。
冒険の常として、はじめの一歩が大変、湖の泥土に足をとられて容易に歩けない。
単独で行動するドウクツライオンと違い、群で行動する野生のウマなどは、比較的に容易に見つかる。
ユーラシアにもウマがいたと言われているが、絶滅した理由は謎。
マンモスと同時期、更新世に生きたウマのヒヅメが見つかった。
マンモスの土地を駆けたウマは、プシバルスキーウマPrzewalski's horseiに近い種だったかもしれない。
3000年前に絶滅したのは、気候の急激な変化が原因なのだろうか?
化石から答が見つかるかもしれない。


今日シベリアに生息するジャコウウシは、1970年代半ばにカナダやアラスカから再導入されたもの。
原因は分かっていないが、Taimyrのジャコウウシは、約3000年前に絶滅した。
マンモス、氷河期のウマ、トナカイ、ジャコウウシの化石が見つかった。
ホッキョクギツネなどの小型の動物は、環境に素早く順応し、現在まで生き残った。
当時の環境を知る大切な手掛かり。
ネズミなどが動物相の大半を占めた。
その化石からは当時の気候や植生を知ることができる。
更新世から今に残る種も、絶滅した種もある。
Clareはレミングの歯を探している。
体毛は既に採取してある。
最近のものもあるが更新世のものも見つけた。
下顎の骨、マンモスの牙のように磨り減っている。
上腕骨はすごくねじ曲がっている。


様々な種類の化石がそろった。
動物達が何を食べ、どこに住んでいたかを調べれば、マンモスの時代からのシベリアの変化の様子が分かる。
それぞれが仮説を立て、検討しあう。
皆が出した意見を聞いてまとめるのがLarryの役目。
調査隊が戻ってきた。
ケサイwoolly rhinoceros (Coelodonta antiquitatis)を探しに出たチームは十分な成果が上げられなかった。
通訳のウラジミールと共にまた捜査にでる。
ケサイはほとんど見つかっていない。
Taimyrでも数体出土したのみ。
ケサイは単独で暮らし、繁殖率も低かった。
オオツノシカやケサイも更新世に生息した。
限られた草しか食べない習性から、ケサイはマンモスより早く絶滅したと考えられている。
帰りのヘリコプターが来た。
成果が得られないまま、冬が近付く。


現在のアフリカのように、マンモスの大地にもドウクツライオンなど肉食獣がいた。
マンモスに立ち向かう力はなく、もっぱら死肉をあさってしたと考えられる。
少数ながら化石が発見され、存在が確認された。


2週間経ってもケサイは見つからないが、全体で見れば驚くほどの成果が上がっている。
しかし1つのチームが無線もGPSも故障するという不運に見舞われた。
徒歩で戻させるわけにもいかずヘリコプターを借りることにした。
ヘリコプターは町に3機しかなく、ロシア製の年代物で、維持するのも一苦労。
ロシアチームは3頭のオス、2頭のメスのマンモスの牙をはじめ、ウマの頭蓋骨など、大量に発見していた。
数多くのチームを送る方法が功を奏したようだ。
通訳のウラジミール親子が満面の笑みを浮かべてBuigueを待っていた。
10体を超すマンモスの牙、さらに頭蓋骨を見つけていた。
頭蓋骨から少し離れて下顎の骨もあった。
同じ個体のものだ。

損傷しているところもあるが、多くのことが判明する。
まず最初に歯を見るのは年齢が分かるから。
次に牙に取り掛かる。
特にマンモスの個性が現せる根元の部分を注意して見る。
その個体が牙をどのように使ったかで、根元に差がでる。
牙が2本とも手に入れば、磨り減り具合から右利きか左利きか分かる。
さらに牙の大きさや形から、そのマンモスの全体の大きさも割り出し可能。
もし化石の数が少なければ、上腕骨がない限り高さは分からない。
多くのサンプルを集めることで、比較できるデータが集まり、大きさなども割出せる。


しかし化石からは生態まで知ることはできない。
交尾などはゾウを参考に推測する。
戦いに勝利したオスがメスに迫る。
Jarkovが宿った瞬間だ。
メスのマンモスは妊娠すると他のメスを寄せ付けない。
夏のシベリア。
メスだけの群が豊かな草原を目指し旅している。
出産が近付くと、群の絆はより強いものになる。
群は血縁で成り立っている。
Jarkovの誕生。
氷河期末期、Taimyr 半島は豊かな草原が広がっていた。
Jarkovも母親に守られ、すくすく育ったことだろう。


さらなる化石を携え、チームが続々と帰還。
ウマの化石に歯の跡が残っている。
歯形を残した動物は何か?
太古の肉食獣か、腐食動物が残したものか?
更新世の時代、トナカイやジャコウウシの子供は、ドウクツライオンなどネコ科の肉食獣の格好の獲物だった。
強大なマンモスにとっては、さしたる脅威ではないが、群を離れた子供はひ弱な存在。
現在のゾウがそうするようにJarkovも群の中心に置かれ、しっかり守られた。

人類の痕跡が見つかった。
湖畔を調べていたチームが石器を発見したのだ。
石器の年代はいつか?
半島に人類が現れたのは、早くても6020年前のはず。
マンモスの時代、半島に人類がいたかどうかは不明。
しかし人類はマンモスを絶滅させたと言う専門家もいる。
絶滅の原因として3つの説が有力視されている。
気候の変化、疫病、そして原始人による乱獲だ。
絶滅の原因を原始人に求める場合、人に狩られた痕跡があるマンモスの化石が必要。
もしこの説が正しいとすると、なぜ絶滅するほど狩をしたのだろうか?
気候変化説についても、常に気候が変わり続ける中で、なぜ1万年前になって突如絶滅したのか謎。
本当の原因は全く別にあるのだろうか?


原始人とマンモスの関わりを示す遺跡は、中央ウクライナで見つかっている。
約20年前、マンモスの骨と牙でできた小屋が、Kievから110卞遒波見された。
1970年代半ばから古生物学者達が地下3mに眠る骨の小屋を発掘している。
これまで4つが発見され、同じ村のものである可能性もある。


発掘の責任者コニエッツ博士は、マンモス狩の証拠だと言う。
「当時の人類にとって、マンモスは一番の獲物だった。
長く厳しい冬をしのぐための重要な食料源だった。
また脂肪の源でもあった。
シベリアでは十分な脂肪の摂取が不可欠。
脂肪はエネルギー。
女性はマンモスの毛を使って衣類を編んでいたと思われる。
種々の針も見つかった。
衣服を作る技術はかなり高度だった。
マンモスの牙も珍重された。
家具や住居を飾る装飾品などが牙から作られていた。」


骨の小屋は15000〜19000年前のもの。
牙の1つには村の風景が刻まれていた。
原始人はテント小屋に住んでいたのに、なぜ骨の小屋を建てたのだろうか?


もっと捕えやすい獲物もいたが、マンモスを1頭仕留めれば、村が数ヶ月しのげる肉が手に入る。
巨大な獲物を狩るには、集団の力が必要。
偵察に出て、オオツノシカの通り道に当ることもあっただろう。
その角は3mもある。

狩の夜、厳しい自然に鍛えられ、皆が熟練したハンターだったはず。
今や狩が成功すれば、食料、家の材料、そして燃料など必需品が手に入る。
当時の信仰は不明だが、コニエッツ博士は、骨の小屋は宗教的なものだと言う。
マンモスを崇めるために骨の小屋が建てられたと考えている。
槍は尖っているが、マンモスの厚い皮膚を貫くのは無理だったはず。
力で勝てる相手ではなく、緻密な戦略を練ってマンモスに立ち向かっていった。
当時の狩は、群から離れた1頭を、土手などへ追い詰め、転落されたと推測される。
ほとんどの場合、マンモスは逃げずに立ち向かったはず。
転落すると。その脚は自らの体重で折れてしまう。
しかしウクライナのマンモスの絶滅は自然が原因だろう。
原始人が絶滅させたと考えるには証拠が足りない。


より有力な説として、気候の急激な変化が挙げられる。
最後の氷河期は10万年前に始まった。
更新世末期、ユーラシアと北米地域は一面氷に覆われた。
まだマンモスが生きていた1万年前、地球の気温が上がった。
溶けた氷で海面は90m上昇し、シベリアは水浸しになった。
さらに草原地帯も森林へ姿を変えた。
マンモスの生息地は激減した。
森林が拡大する一方で、陸地が減少。
マンモスの行き場はなくなり、飢えていくだけ。
植生も変わった。
速すぎる変化にマンモスは適応できなかった。
Dickはこの気候の変化こそ、絶滅の主たる原因だと考えている。
Ross「しかしいくつかの疑問が残る。
現在、地球の気候の状況は、25万年前までは分かっている。
気候は常に変化していた。
マンモスはそれに順応してきたのに、なぜ特定の時期に絶滅したのか説明できていない。
全ての可能性を考慮しながら、絶滅の原因を探っていくべきだ。」
疫病が絶滅の原因だとする証拠はまだ1つもないが、Rossは疫病説を唱えている。
化石からサンプルを採取し、病原菌を探す。
Ross「人対が媒介し、突然流行した疫病が原因で、氷河期の動物が絶滅したと思う。
人類自ら感染していたか、あるいは家畜が感染していたのだろう。
寄生虫などが潜り込んでいたのかもしれない。
現代においても、外から持ち込まれた病原体が宿主と違う種に感染し、その種が存続の危機に陥った例がある。」
氷河期の動物が大量絶滅した原因はナゾのままだが、Jarkovが答を出すかもしれない。

10月の初めには、Khatangaは雪に覆われてしまう。
気温は-25℃まで下がり、夜の冷え込みも厳しさを増す。
Bernardは発掘を終え、Jarkovの調査をするために、地下通路に戻ってきた。
発掘で得られた情報のもと、調査も進展するはずだったが・・・
地下通路を誰かが魚の保存場所にしていた。
「Jarkovの所まで行くのには問題ないが、魚に付いた菌がマンモスに感染していないか心配だ。
書面で断固、抗議するつもりだ。」
魚を踏んでJarkovの所へ。
Dickは魚さえ撤去すれば問題ない、と平然としている。
地下通路の中は凍えるように寒く、マンモスの保存には適しても、作業数人間は大変。
8本のドライヤーを使い、2人は一心にJarkovの周りの凍土を溶かしてゆく。
少しずつ溶かしながら、Dickが詳細な記録をとる。
中から何が出てくるのか・・・
天井が溶け出していないか気を配る。
作業のスピードを上げたくても、危険過ぎて無理。
秋には地下通路の様子も一変、マンモスの牙の巨大な貯蔵場所となっていた。
牙が100本並んだ。


ミシガン州大学の古生物学者Daniel Fisherは、マンモスの牙を20年間研究し続けている。
Daniel「マンモスが絶滅した時期の少し前に生きていたのだから、分析が楽しみだ。
牙の根元の部分からは、晩年の生態が分かる。
先端からは、死ぬ間際の、下の部分からは、死の10年前の様子が分かる。」
牙から、Jarkovの健康状態は好かったものの、晩冬、早春に死んだことが判明した。
わずか47歳だった。
平均寿命より12年早く死んだものと思われる。

マンモスの体毛についていた花粉を分析していたアムステルダムの古植物学者Bossは、独自の見解を持ち出した。
「ヨモギなどの花を見つけたが、まだ閉じたままだった。
正確には花とは違うが、花粉が中に残っていた。
何か異変が起こったのだろう。」
夏が来る前に、ヨモギが生を終えた証拠だ。
Bossは泥流がJarkovやヨモギを飲み込んだと考えている。
氷河期末期、Taimyr 半島の気候は激変し、それに伴い大雨が降り、泥流が発生した。
泥土が酸素を締め出し、Jarkovは腐敗を免れた。
やがて冬が来て、泥土は凍り、死骸は2万年以上も腐らず保存されることになった。
どのようにJarkovは死を迎えたのだろう?

10月、北極圏だけに見られる“3つの太陽”が町を照らす。
もうすぐ吹雪になり、研究もできなくなる。
再開できるのは早くても来年。
夏の発掘で大きな成果を得た喜びも過ぎ去り、BernardはJarkovの解凍を急がねば、という思いでいっぱい。
まだ表皮すら表に出ていない。
Bernard「作業を急ぎたい気持ちと、慎重にやらねばならないという気持ち、2つの相反する気持ちの間で板挟みだ。」
焦りだけがつのっていたその時、表面から10cmの所に、白い骨がのぞいた。
仲間の科学者が到着する頃には、肋骨だとはっきり分かるほどに。
この発見で勇気付けられ作業にも一層熱が入る。
さらに骨、体毛、そして軟組織まで出てきた。
「今では皆が固い絆で結ばれている。
こういう調査には信頼関係が大切だ。」
筋肉と思われる組織の発見に皆が注目。
20トン以上の巨大な塊から完全体が出てくると期待したが、少しがっかりだが、肋骨や筋繊維が見つかったので、貴重な発見に変わりはない。
1万年前を知る手掛かりだ。


さらに気温が下がり、川も凍りついた。
タイムリミットが刻一刻迫る。
限られた時間の中、男達はさらなる発見を求め、作業に励む。
解凍した凍土は、ビニール袋に順に詰められてゆく。
その1袋1袋に氷河期を知る情報が入っている。
凍土の中にはまだ化石が残っているが、今の段階で椎骨が4本に肋骨が2本出土した。
Jarkovはどれだけ残っているのだろう?
位置が動いてしまった骨もあり、作業には慎重さが求められる。
全部を解凍し終わるには、何年もかかるはず。


ツンドラでは発掘調査が終盤に差し掛かっていた。
ジャコウウシ、古代のウマ、マンモス・・・
発掘された氷河期の化石がずらりと並んでいる。
絶滅の原因を探るため、年代を特定する。
Rossは放射性炭素による年代測定を行うことにした。
その動物が死んだ年を正確に割出せる。
「絶滅の年を測定するには、できるだけ多くの化石を調べなければならない。
前例のないデータが出れば、新発見の可能性がある。
その数値が出た種類の動物を重点的に調べてゆくことになる。」
Rossは50種類もの動物の化石の、それぞれを年代測定する予定。
完新世になってからも生きていたマンモスが見つかれば、世紀の大発見。
「特に3000〜5000年前のマンモスを探している。
人類と同時期に生きた証拠になるから。」
しかし結果はシベリアで今までに出た年代と同じものだった。
一番年代の新しいマンモスの化石で1万年前。
人類と結び付けるには古すぎる。
シベリアでなら完新世の化石が見つかる、と科学者は信じている。
マンモスの絶滅が最も遅かった地域だからだ。
他にもジャコウウシは3000年前まで生息していた。
一度は絶滅したが、再導入により復活した。
マンモスもいつか蘇るかもしれない。
「これからの課題はマンモスのDNA研究だ。
分析すれば、遺伝子情報が手に入り、生物学の見地からマンモスを理解できる。」
さらに保存状態のよいDNAが見つかれば、マンモスが現代に復活する日も近いのかも・・・


ニューオリンズでは絶滅危惧種を救う試みが行われている。
Dr. Betsy Dresserはクローン技術の専門家。
将来マンモスのクローンも可能だと博士は言う。
Dresser「自然の摂理で絶滅した動物を、クローン技術で蘇らせてよいのか、とよく聞かれるが、人類が地球を支配するようになってから、絶滅の速度が速くなりすぎている。
何か手を打たないと、このままでは自然は滅んでしまう。」


ここは“冷凍動物園”。
保存されているのは、絶滅危惧種の生殖細胞(卵子、精子)。
こうして保存するのは、技術が進歩し、クローンが可能になった時のため。
Dresser「しかるべき材料が揃えば、是非マンモスのクローンを誕生させたい。
そのためにはマンモスの遺伝子が必要となる。
しかも損傷を受けていないもので、細胞の生殖を促せるものでないとならない。
それがあれば胚を作り出せるはず。」
クローンを誕生させるには、まず非常に細い注射針を使い卵子の核を除去、移植のためのスペースを作る。
次に耳など任意の箇所から皮膚のサンプルを採取する。
サンプルに含まれる何千もの細胞の中には、それぞれ核がある。
その細胞を卵子に移植する。
マンモスの無傷のDNAが見つかることはまずないだろう。
寒冷生物学者は、細胞を冷凍する時、様々な事柄に気を配る。
冷凍すると、細胞に含まれる水分も凍り、その結晶が細胞を傷つけてしまう。
適切に冷凍されなければ、細胞もDNAも損傷してしまう。

Ross「動物が死ぬと、そのDNA分子はすぐにバラバラになってしまう。
食い止めるのはほぼ無理。
1度壊れてしまうと、なす術はない。
しかしそれは今現在の話で、損傷を受けた遺伝子を復元する技術の研究は始まっている。」
Dresser「100年前の夢物語が今では現実のものになっている。
マンモスが蘇っても不思議ではない。」

ツンドラでは次のシーズンの発掘計画が練られていた。
Khatangaで4〜5年前マンモスの牙と頭が見つかった場所は、気象条件が悪く、まだ掘り出せていない。
Jarkovの調査を通じて、凍ったまま掘り出すべきだと分かった。
この手法は今後の発掘や研究に役立つだろう。
Bernard「凍てつくツンドラで、太古の世界に思いをはせることが、私の楽しみだ。」
Khatangaでの研究は、春になるまで一時中断。


今回の発見の中で、マンモスを知る最も有力な手掛かりは、体毛の中に潜んでいた花粉。
解凍は20cm下まで進んだ。
そこで回収された凍土は研究所で分析される。
花粉に加え、何本かの肋骨や椎骨、筋肉らしき繊維、植物の破片も見つかった。
それらの分析の結果も待たれる。


Jarkovの死を再現。
死が訪れる前、Jarkovは仲間と共にエサを求めて南へと旅していた。
水辺まで来たとき、彼の身に何かが起きた。
うっかり足を滑らせたのか、それとも古傷が原因なのか。
仲間が気付いた時には手遅れだった。
なす術もなく死を見守るだけ。
仲間は立ち去り、Jarkovは氷の墓で永遠の眠りについた。
Jarkovの生徒氏を探る冒険はまだまだ続く。
マンモスの絶滅は大いなるナゾ。
その答はマンモスの大地に眠っている。

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Triumph of Life Brain Power










生存競争の中で、強い者は生き残り、弱い者は脱落者となる。
過酷な戦いは何世代も繰り返されてきた。
しかしこの競争で勝ち抜くために、動物はある武器を磨いてきた。それは知能。
隠れた戦場で情報は処理される。
秒単位の分析が勝敗を決する。
体力の差を知能で補う。
そこでは知能の有る者が勝者となる。

●東アフリカ チンパンジーは主に果物を食べるが、肉食動物という別の面をもつ。
しかし長年果物を食べてきたので狩は苦手。
狩に向いている体格や敏しょう性を備えていない。
彼らが狙うコロブスは警戒心が強く、木の上を素早く動ける。
しかし勝ち残るのは、敏速さではなく、知恵のある者。
チンパンジーは静かに獲物を物色し追い詰める。
狙い目はたくさんいる子供。


重要なのは戦略。
叫び声がコロブス(サル)を混乱に陥れる。
混乱したサルは木から下りてくる。
それが狙い。
あるサルは上にいるサルを狙うと見せかけ急に下に向きを変え、別のサルを捕らえた。
頭脳を使うことで、動きの遅い点を補った。
チンパンジーの捕食術は、その気になれば狩の成功率がライオンの2倍。
知能は彼らの隠れた武器。なぜ他の動物にも発達しないのか。


動物の持つ知能は実に様々。その理由は経済性。
脳を形成する神経細胞は、膨大なエネルギーを消費する。
発育のためだけでなく、維持にもエネルギーが必要。
いつでも行動を起こせるよう、安静時も働き続ける。
不眠で働く脳は、筋肉よりエネルギーを消費する。
食料の限られた過酷な環境では、最低限の脳しか必要ない。

脳を一切もたない生物も多く存在する。
●クラゲは毎朝太陽が昇ると水面に上昇してきてプランクトンに接触する。
クラゲが傘を広げたりすぼめたりする動作は、神経網が送出する電気パルスによって引き起こされる。
最小限の情報で、クラゲは餌を探せる。


5億年前、ある決定的進化により新たな武器をもった捕食者が登場した。
●脳を持つ扁形動物。
神経細胞の数はわずか数100個だったが、小さくとも敏感な機関が森の中で機能する。
日光や暖かさ、温度や重力などに反応し、獲物が残した痕跡をかぎつける。
獲物に近付くと、体内から消化液を分泌し、ミミズなどを溶かしてゆっくり死なせる。
この原始的な方法は、何百万年もかけて進化してゆく。


●オーストラリア内陸部 ハチが泥で巣を作っている。
巣穴は地中に掘る。入口は綿密な計画に沿って作る。
管が背丈ほどになると、一定の角度に曲げ、管の先を広げていく。
管の先に作られたのは正確に測られた大きな皿。
皿の大きさと感触は、巣穴を守るのに非常に重要。
内側は滑らかに磨かれている。
他のハチの巣に産卵する習性をもつセイボウは滑って入れない。
巣の主は大きいのでよじ登って入れる。
巧妙な巣を作るが知能はない。
理解しないままただ作業をこなしているだけだ。
些細なことで計画は台無しになる。
カンガルーが飛んできて・・土がかかってしまった・・
ハチは問題が起きたことを理解できず、すぐに同じ作業に戻る。
ハチはプログラムを正確に実行したが、適応力に欠けるため、致命的な失敗を犯す。
十分な大きさの皿が作れず・・敵が侵入する。

固定的なプログラムはよく見られる。
大量の問題を処理するのには最も効率がよい。
●子供を大切にするガチョウ。
卵が巣から転がり出たらすぐに気付き、適切に対処する。
利口に見えるが実は何も考えず動いているだけ。
似たような物体は全て卵とみなし抱え込む。
色は白でなくても、形も気にしない。(ビリヤードの玉、電球、四角い箱でさえ・・・)

●ダチョウの場合は識別能力の向上は死活問題。
ダチョウのメスは巣を共有する。
卵をまとめることで敵から守りやすくなる。
卵が増えすぎると新たなメスは追い払われる。
数が多すぎる時は、自分の卵を優先する。
卵の殻の表面の穴が卵ごとに異なるので区別でき、自分の卵を中心に据え、余分な卵を取り除く。

込み入った世界では強引な手段も必要。
競争に勝つためには順応性も必要。
学習能力は生き残るための究極の武器。
●働き蜂は死ぬ2週間前にすでに役目を終え、初めて外界に旅立つ。
食料の採取という一見単純な使命。
ミツバチの脳は年とともに大きくなり、複雑な仕事をこなせるように脳細胞が16万個も増加する。
太陽の位置を細かく読み取り、時の経過を知ることができる。
そして蜜の分泌期と時間を関連付ける。
新人のハチは間違いを犯すが、試行錯誤はつきもので、遅かれ早かれ習得する。
蜜を探り当てるとハチの脳が花の香りと時間を結びつける。
香りと時間が一致した時が蜜の分泌タイム。
太陽の位置で特定される時間は一日中脳に伝達される。
花の香りを嗅いだ時、脳はその時間を記録し、アラームを設定する。
こうして翌日、同時刻になるとハチは同じ花に訪れる。
こうして花の種類に応じて時間の情報を増やしていけば、太陽の位置を確認するだけで、どの花に行くべきかわかる。


より複雑な思考を求められる環境もある。
●アフリカゾウはその寿命の7年間を水不足の危機に直面して過す。
水場が干上がるたびに、水を求めて見知らぬ土地へ移動する。
発達した嗅覚で、わずかな水の気配を、地表や風から感じ取る。
問題は水場が風下にある場合。
このような事態の時、ゾウの群は最年長のメスの記憶に頼る。
水場を知る唯一のゾウ。
その秘密は約5kgの脳の“海馬”。
海馬は空間情報を蓄積し、一生をかけて認知地図を作る。
まず記憶をたどり、頭の中で道順を確認する。
長年訪れていない地も覚えている。
どんなに広大な土地でも、頭の中の地図に従って旅をする。
しかし他にも対処すべき問題がある。
変わり続ける環境への対応だ。

知能の高い生物は、密接に結びつき集団での生活を送っている。
●アフリカのカラハリ砂漠 ミーアキャットは体の大きさに不釣合いな大きさの脳を持つ。
子供は大人の行動を見て生きる術を学ぶ。
ミーアキャットは短期間で多くのことを学ぶ。
一度サソリを捕らえると、同じ方法を次にも生かす。
社会的動物の知能が高いのは、他者から学ぶだけでなく、共存の術を学ぶ必要があるから。
個々の違いを理解し、社会意識は生まれる。
社会に調和が生まれると、種全体の生存に役立つ。


集団生活をしていれば、自然と助け合う。
しかしよそ者がいる集団では、より打算的な態度も必要。
●吸血コウモリは、麻酔作用のある唾液で獲物を麻痺させ、鋭利な歯で皮膚を裂く。
獲物は気付かないので、吸血は簡単。
コウモリは胃を広げ、大量の血を収める。
2日分の量を蓄えることができる。
しかし危険も多いやり方。
獲物を見つけられないと、すぐに飢えに襲われる。
2日間、食にありつけないと生命の危機にさらされる。
そこで頼りになるのが余分な血を蓄えた仲間。
瀕死のコウモリが食料を請う。
拒否されると、協調関係にある仲間を探さねばならない。
過去に助けた仲間を記憶しておく必要がある。
ついに貸しがある相手を見つけ、飢えたコウモリは相手の口に舌をいれ、蓄えた血をもらう。
この時の恩を両者が同じように記憶する。


●スリランカの森に住むマカクサルにとって、“連帯”は重要な要素。
調和を重んじるため、和を乱すものは排除される。
サルが顔に負った傷は激しい内輪もめの結果。
何か起きた時、頼れるのは友。
仲間がいなければ耐えられない社会。
サルは競争心も持っている。
腕力だけでなく、知能の争いでもある。
生活を共にする上で勝利への衝動と調和をはかりに掛ける。
協調性がサルを結びつける。


衝突を避けるために、他のサルは別の作戦を生み出した。
●エチオピア高知に住むゲラダヒヒの群はリーダー格のオスが率いる複数の集団からなる。
オスは数頭のメスと子供を守る。
貴重な草地をめぐり、複数の集団が争うこともある。
限られた餌と場所をかけ、時に緊張状態に陥る。
叫び声が飛び交う一触即発状態は、なぜか緩和される。
争っているようだったが、調和がもたらされた。
これは恐らく特異な才能によるのだろう。
この叫び声はサルにしては異様。
この超えは絶えず続き、大勢での会話のよう。
奇妙なざわめきは不思議と緊張状態を和らげ、群に落ち着きをもたらす。


海の生物は6000万年もの間、機能を発達させてきた。
●イルカの社会にも友情と協調が存在する。
人間と同様バンドウイルカも他人の観点から物を判断できる、という事実が科学的に指摘されている。
他者の視点に立つことで、新たな可能性が広がる。
他のイルカの行動や考えを予測しやすくなる。
例えば安心を求める子供の気持ちもくみ取るだろうし、他者の欲求なども理解できる。
想像の飛躍は複雑な能力だが、イルカには必須の能力。


イルカ以外でこの能力を発達させた類人猿は他者の気持ちを想像する。
ライバルの動きを予測することで、明らかに有利に物事を進められる。
しかし他者を予測するには、自分の考えを理解す必要がある。
ある程度の自我が求められる。

●チンパンジーにとって“毛づくろい”は大切。
この触合い行動は生涯の友情を深め、一時期の同盟を固める。
チンパンジーにとって肉は単なる食料以上。
将来に備えたり、同盟を結ぶ時に贈り物として使う。
このような手段は人間も頻繁に使う。
サルの世界でも頂点に立つには腕力以上のものが要求される。
物を言うのは政治力。
仲間同士では戦わないが、外部の侵入者が相手の時は異なる。
集団間の争いは知能の発達を大いに助けた。


人類も進化の過程で敵の集団と戦ってきた。
武器の発明は我々を大きく変えた。
人類間の衝突は危険度を増す。
大集団で生きていける者が勝者となった。
大人数を結びつけるには、技術が求められる。
人間は毛づくろいより効率のよい方法を編み出した。
それは会話。
人間は会話を通じて社会的つながりを構築する。
雑談も無駄ではない。
求愛という究極の闘いにおける重要なツール。
私達は知能で異性にアピールする。
人間は知力を活用し、会話に知性を盛り込む。
これは生存よりも性衝動に関連している。
脳はその大きさも能力も、持主の動物に応じて全く異なる。
どの動物も最新の生存機能を備えており、生き延びるために隠れた武器を駆使している。
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