ドキュメント鑑賞☆自然信仰を取り戻せ!

テレビでドキュメントを見るのが好き!
1回見ただけでは忘れてしまいそうなので、ここにメモします。
地球環境を改善し、自然に感謝する心を皆で共有してゆきたいです。
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神々の戦い トールキン『指環物語』

深い穴の淵で逡巡する1人の人物。
視線の先には燃え盛る溶岩。
フロド・パギンズ(Frodo Baggins)の長く険しい旅がついに終わりの時を迎えた。
彼の使命は邪悪な指環を作られた時と同じ火の中に投げ込み消滅させること。
『指環物語』は彼の旅を軸に展開する。
善対悪の古典的物語。
Corey Olsen(Washington College)「ホメロスのオヂュッセイアに継ぐ大掛かりな冒険小説『指環物語』は、1954年数々の伝承と実体験から誕生した。
生みの親は作家John Ronald Reuel Tolkien 。」
Michael Drout(Wheaton Coleege)「トールキンは母国のために神話を作りたいと思っていた。
ギリシャやローマといった地中海地域には神話があるのに、ヨーロッパ北西が舞台の本物のイギリス神話はない。
そこで彼はないなら作ってしまおうと考えた。」
神話を作るにあたって彼が参考にしたのは自身の経験と古典文学。
Troy Storfjell(Pacific Lutheran University)「色々な神話や中世の伝承を一旦バラバラにして新しく組みなおした。」
Scott A.Mellor(University of Wisconsin)「トールキンは物語の中にアングロサクソン人の神話や北欧神話などあらゆる要素を取り入れた。」

ペオウルフ、アーサー王、バイキングサガ、それらをモチーフに書かれたのだ『指環物語』。
まず影響を受けたのが物語の舞台。
北欧神話では世界は3つの層からなっている。
1番上のアスガルドは神々の住処、最下層はヘル、死者の住む地下世界。
その2つに挟まれた世界ミッドガルドに物語の登場人物達が住んでいる。
これがミドルアース(Middle-earth)、つまり中つ国の原点。
Drout「中つ国は北欧神話のミッドガルド(Midgard)、怖いものMiddangeardと同じ。
どちらの単語もその意味するところは天界と地下世界との間にある海に囲まれた場所。」
『指環物語』の主人公フロドは闇の指環を消滅させるため、中つ国を旅する。
物語の要となる指環の存在も古代の伝承に根ざしている。
物語の軸は中つ国で見つかった20個の不思議な指環、癒しの力を持つものや、寿命を延ばすもの。
だが他の全てを上回る指環があった。
その名は“1つの指環”。
Scott A.Leonard(Author,Myth & Knowing)「その指環をつけると透明人間になる。」
姿を消すことができる指環、後に重要な意味を持つことになる力にもルーツがある。
Dimitra Fimi(Cardiff University)「アーサー王の伝説に、次女ルーネテが騎士イーベインに姿を消す指環を渡すという話がある。」
はめた者が透明になる指輪、1000年以上の時を隔てた2つの物語の共通点。
だがフロドの指環はそれ以上の力があった。
はめた者を蝕むのだ。
1つの指環にはそれを作った王の悪の力が吹き込まれていた。
その王の名はサウロン。
Drout「1つの指環の中にはサイロンの持つよこしまな精神の一部が吹き込まれていて、その力が指環をつけた者を蝕み悪事を働くよう仕向ける。
また指環には中毒性があって長く持ているほど執着するようになる。」

悪の力が宿る指環は古い神話にも登場する。
北欧神話ボルスンガ・サガだ。
Fimi「北欧神話の多くはきちんとした家系図に基いて書かれていて、事実としての歴史的な要素と神話的な伝承がうまく組み合わされている。」
Mellor「ボルスンガ・サガはアイスランドの神話で1300年代、古代ゲルマン人の伝承をもとに書かれた。
登場人物はゲルマン人の英雄だが、モデルとなっているのは中世以前、西ローマ帝国末期に実在した人物達。
その英雄物語はゲルマン人の軍人達の間でとても尊ばれていた。
それをスカンジナビア人が神話に取り入れた。」
ボルスンガ・サガと指環物語にはいくつか類似点がある。
ボルスンガ・サガに登場するある王は巨万の富を生む金の指輪を持っていたが、王の息子が指環を欲するあまり大罪を犯す。
父を殺して指環を奪い、洞窟に身を隠したのだ。
すると悪の指環の力によって王子は醜い蛇に変った。
これと同じ教訓が指環物語にも描かれている。
John Davenport(Fordham University)「この王子は指環物語のゴクリとそっくり。
ゴクリはもともとホビット族で、スメアゴルという名前だった。
ある日釣に出かけた時、親友のデアゴルが川底に指環を見つけた。
スメアゴルはその金の指輪がどうしても欲しくなり、浴に駆られてデアゴルを殺してしまった。」
スメアゴルは奪った指環をもって洞窟に隠れた。
ボルスンガ・サガの王子と同じだ。
すると彼の姿は醜く哀れな生き物に変った。
以来ゴクリは死ぬまで指環は自分の物だ、誰にも渡さないという考えに捕らわれ続けた。
それから500年後、ゴクリは指環をなくしてしまった。
しばらくして指輪を手にしたのが善良なホビット族のフロド・バギンズ。
Drout「フロドという名前は古ノルド語で賢き者という意味。
その彼に指環が渡った。」

フロドの旅は小高い丘と緑の野原の広がるシャイア(Shire)から始まる。
そこは別名ホビット庄、ホビット族の国。
ホビットは小柄で身長は120cmほど。
足の裏の皮が厚く、毛に覆われているので靴は履かない。
冒険などしそうにもない保守的な種族。
ホビット庄ののどかな暮らしは作家トールキンが幼少時代をすごしたイギリス西部の田舎町を彷彿とさせる。
ある意味ホビットはトールキン自身といえるだろう。
シンプルでのんびりとした田舎の生活。
気取ったところのない古きよき平凡な生き方、そんな理想を形にしたのがホビット族。
世界を救うとはとても思えない小さなホビット族だが、フロド・バギンズは違っていた。
フロドはホビット族には珍しく博学で、他の種族のことにも関心があり、世情にも通じていた。
だからこそ彼は世界を救うためにすべてをなげうった。
フロドは叔父のビルボがゴクリの洞窟で見つけたThe One Ringを受け継いだ。
指環に秘められた恐るべき力を知った彼は、それを滅ぼす旅に出る。
だがやがて彼自身が魔力に引き込まれてゆく。
Fimi「物語の冒頭でフロドは指環をはめ、仲間を置いて逃げたいという衝動に駆られる。
なんとか踏みとどまったものの、誘惑は徐々に膨らむ。」

フロドの冒険を中心に描かれた指環物語。
実はこの物語は最終章にあたる。
始まりは別の小説だった。
1977年指環物語の初版から20年以上経て出版されたある未発表小説には、壮大な近代神話の全ての始まりが記されていた。
天地創造の物語だ。
その原泉は聖書。
緻密な仮想世界を作り上げたトールキンは、その行為を神話作り(Mythopoeia)と名付けた。
トールキンは指環物語に先立って天地創造のストーリーまで描き出していた。
彼の死後出版された作品『Silmarillion』の物語、中つ国はここから始まった。
Drout「指環物語の何千年も前の時代のことが全て記されている。
現行の厚みは60cm以上、中に書かれているのはエルフ語や英語の詩、歴史。」
神話世界を作るにあたり、トールキンは様々な文献を参考にした。
中でも特に影響を受けた書物が聖書。
彼は非常に熱心なカトリック教徒だった。
彼の母親はカトリックに改宗したことで家族から勘当されている。
トールキンはカトリックとして育てられ、母親が亡くなるとまだ幼かった彼は弟と共にカトリック司祭に引き取られた。
トールキンの物語における唯一の神イルーバタール。
神はアイヌアと呼ばれる美しい歌声を持つ精霊を作り、世界はアイヌアの歌から生まれたという。
精霊の奏でる壮大なシンフォニー、アイヌアの音楽が世界を形作る。
アイヌアが神の御座の前で歌うと世界の歴史が紡ぎだされ、イルーバタールがそれに実態を与える。
こうして誕生したのが中つ国、後の指環物語の舞台。

当初はただ密かに独自の神話の構想を練っていたトールキン、披露する相手も近しい有人に限るつもりだった。
だが1928年のある日、ふとしたひらめきをキッカケに、36歳の大学教授は近代神話の名手となった。
Drout「学生が出した白紙の答案に何気なく書いた。
地中の穴に1人のホビットが住んでいた・・・」
この1文から新しい世界が開ける。
Mellor「ホビットという単語がどこからきたのかははっきりしていないが、響きは習慣、習性という意味のHabitとよく似ている。
独自の習性を持ち、日々平凡に暮らす生き物ということを表しているのではないか。」
オリジナルの言語を作るのが子供の頃から好きだったトールキンにとって言葉遊びはお手の物。
そこから指環物語の中の様々な言語が生まれた。
特に注目すべきはエルフの言葉。
エルフはホビットとは別の種族。
彼らは不老不死の命を持つ、ほぼ完璧な存在で、まだ罪を犯す前の最初の人間アダムとイヴを連想させる。
エルフ族の言葉には何種類かの方言があり、中つ国の言語の中でもっとも発達している。
一部のエルフ語のモデルは実在の言語、フィンランド語。
Scott A.Leonard(Author,Myth & Knowing)「カンバラはフィンランドの一大民族叙事詩でその中にはドワーフクやエルフなどといった後のトールキンの著書に影響を与えたキャラクターがいくつかでてくる。」

エルフ以外の種族が話す言葉にも重要な意味がある。
例えばサウロンの話す暗黒語にはサウロンの精神や人格がにじみ出ている。
つまり言葉にはその種族の性質が表れる。
独自の言語を持つもう1つの種族ドワーフ(Dwarf)、地下に住み背が低く、がっしりした体を持つ。
ドワーフの使う文字の原型となたのは今も北欧に残るある碑文、古代の遺跡ルーン石碑。
Mellor「ルーン石碑にはたいてい先祖伝来の剣の持ち主や埋葬地の在り処など、何か重要な物事が記されていた。
ルーン文字の文章にはちょっとした謎々が仕込まれていることがあって、解読者は苦労した。」

トールキンは処女作にこの不思議なルーン文字を取り入れた。
指環物語の前進『ホビットの冒険』である。
フロド・バギンズの叔父ビルボ・バギンズが盗まれた宝を探す物語。
財宝の在り処を示す古代の地図、それは月の光に照らされると浮かび上がるルーン文字で書かれていた。
地図に導かれてビルボがやってきたのはスマウグ(Smaug)のねぐら。
中つ国でもっとも恐れられた竜。
この怪物が財宝を持っていた。
Drout「スマウグは黄金竜の生き残り。
この竜はドワーフの王国から宝を山のように集めていた。」
Fimi「竜は人間の欲を象徴している。
欲の塊であるスマウグという怪物は、財宝を集めて手元に置くことしか頭にない。」
ビルボは勇敢にも竜の巣に潜入。
宝の山から金の杯を盗む。
起こったスマウグは報復として近隣の村を襲った。

この物語はどこから生まれたのだろうか?
財宝の山を守る竜、実は同様のストーリーは過去にもあった。
Olsen「この物語はベオウルフの話とほぼ同じ。」
ベオウルフは歴史上もっとも有名な伝説の1つ。
トールキンはこよなく愛した物語。
主人公は祖国の王となったスカンジナビア人の戦士。
彼の遭遇した試練、それは火を吹く竜だった。
ベオウルフが王になる前から竜は長年宝を守っていた。
ある時1人の奴隷が巣へと続く秘密の通路を見つけ、竜が眠っているすきに宝の山から金の杯を盗む。
2つの物語が表すのは欲の怖さ。
どちらのストーリーも財宝を欲する心が恐ろしい結果を招くことになった。

ベオウルフをはじめとする多くの文献に影響を受けて描かれた指環物語。
だがどんな神話、伝承よりも濃い影を落としたのはトールキン自身の実体験だった。
恐怖、血と死が渦巻くセンチでおった心の傷。
第一次世界大戦での塹壕での経験。
1916年フランス、集中砲火を浴びる連合軍の塹壕。
地面を這って逃げるイギリス人兵士達。
虫のように腹ばいになり、少しずつ進む。
その中に24歳のトールキン少尉の姿があった。
Thomas Finan(Saint Louis University)「指環物語を読むとトールキンが戦争とは血なまぐさく、人間性を破壊するものだと考えていたことが分る。」
第一次世界大戦は考えられないほどの数の死者をだした大戦争として歴史に刻まれた戦い。
兵士達はぬかるみの中で互いに殺しあった。
フランス北部の塹壕戦はことの他おぞましいものだった。
Tracy-Anne Cooper(St John's University)「塹壕に溜まった水に足をいれているせいで、足の組織が壊死してしまったり、マスタードガスの攻撃を受けたり、トールキンはそんな光景を目の当たりにした。」
トールキン少尉が参戦したのはソンムの戦い。
こう着状態になり結果人類史上かつてない規模の損害を出した。
Leonard「トールキンハ1年ほど従軍した後、赤痢や発疹チフスのような症状のでる塹壕熱にかかって帰還する。
回復に時間がかかり、戦地へは戻らなかった。」

Storfjell「彼は戦争で体だけではなく心にも傷をおった。
その経験をもとにトールキンは指環を滅ぼすための旅でフロドが背負ったトラウマを描いている。
つまりそれと分らない程度にホビットに自分自身を投影している。」
指環物語の中でフロドは死者の沼地と呼ばれる沼を通りかかる。
そこは何千年も前に大きな戦争が起こった場所。
沼の中にはまだ死者達が横たわっていた。
水の中に見えた青白い顔が暗い水の奥深くにおぞましい顔、邪悪な顔、気高い顔、悲しげな顔、どれも汚れ、朽ちかけ、死んでいた。
戦争の恐ろしさが最初に描かれたのは指環物語の前、『ホビットの冒険』。
物語のクライマックスは竜の宝を巡る5つの軍の戦い。
主人公のビルボ・バギンズは戦場で多くの仲間が殺されてゆくのを見て、戦争というものの愚かさを知る。
ビルボと同じくトールキン自身も戦争中、目の前で仲間を失った。
フランスで共に戦った3人の仲間は皆無二の親友だった。
だが1916年11月までに2人が戦死した。
戦争の苦難と恐怖は物語の他のキャラクターからもうかがい知ることができる。
それは冷酷な悪役達。
トールキンの戦闘体験をもっとも顕著に表しているのは恐ろしく邪悪な生き物、オーク族

最終決戦の舞台は地獄のような暗黒の国モルドール(Mordor)
モルドールの中心にそびえたつ滅びの山の火山で、1つの指環が作られた。
主人公フロドは魔力に屈する前に指環を消滅させねばならない。
モルドールは聖書に着想を得ている。
Helga Luthers(University of Colorado)「聖書を見てみると地獄は火と硫黄が燃える永遠の苦しみの場所というように表現されている。
一方のモルドールも物語によれば暗黒の荒地。」
Drout「モルドールの風景に近いのは詩人ダンテの描写。
地獄には灼熱の平地や火の粉が降る砂漠があると書かれている。」

モルドールという名前の不吉な響きにも根拠がある。
Drout「モルドールは古英語のモーソーに音が似ているが、モーソーは英語でマーダラ、殺人者という意味。
同じく古ノルド語のモルスも殺人を意味する。」
物語ではモルドールに足を踏み入れたものは死んだも同然。
そこをうろついているのは残虐な種族の戦士達オーク。
Storfjell「オーク族は恐ろしい生き物で、腰の曲がった醜い容姿をしている。
元々エルフ族だったが、暗黒の力で捻じ曲げられ、悪の種族に変ってしまった。
オークは知能が高く、機械の扱いも得意で設け話や楽して利益を得ることばかり考えている種族。
つまりオークは資本主義者。
資本主義へのあからさまな揶揄ではないか。」

モルドールに生きる邪悪な種族、他のキャラクターと同様、彼らの起源も古代の伝承にあった。
Drout「ベオウルフの512行目に、全ての悪しき生き物は弟アベルを殺したカインの末裔だとある。
悪しき者とはエウトナス、ユルファー、オルクネアス、つまりエティン、エルフ、オークナスの3種。」
Finan「オークナスはベオウルフに登場する邪悪な存在で、実体のない一種の悪霊のようなものと考えられている。」
古代の文献から生まれたのは嫌われ者の悪役だけではない。
メインキャラクターの1人も誕生している。
魔法使いガンダルフ(Gandalf)、The One Ringを消滅させるために旅するフロドの導き手。
Mellor「ガンダルフの登場が、その後の魔法使いのイメージを変えた。
魔法とは半キリストの悪いものだと考えられていたが、彼は善人でいつも中つ国に住む者のためを思って行動する。

ガンダルフのモデルは北欧神話に見ることができる。
Storfjell「古ノルド語でガンダルフというと魔法を使うエルフという意味になる。
ガンダルフはエルフ族ではないが、偉大な力を持つ不思議な存在。」
北欧神話から受け継いだのは名前だけではない。
風貌の面でモデルとなったのは最強の神オーディン、古代スカンジナビアのあらゆるものをつかさどっていた。
学問、戦争、争いごと、死・・・・
だがガンダルフにもっとも影響を与えたのは放浪者としての一面。

Storfjell「オーディンは変装の達人で、何百もの名前や扮装を使い分けていた。
地上で旅する時は灰色の放浪者に扮する。
灰色のローブにツバの広い帽子、長い髭、ガンダルフと同じだ。」
ガンダルフも悪の力を倒すため、何年もの間密かに中つ国を放浪していた。
もう1人さらに有名な人物がガンダルフのもとになっているかもしれない。
Drout「モデルはキリストだという説もある。
自分を犠牲にして死んだ後、白い衣をまとってよみがえる。」
Cooper「フロドを守って戦ったガンダルフは比喩的な意味で1度死に、白のガンダルフとして復活する。
トールキンのカトリックとしてのルーツが垣間見える。」

指環物語に織り込まれた思想の全貌はクライマックスで明らかになる。
世界を救うカギはガンダルフではなく、ホビット族のフロド・バギンズの手にゆだねられた。
物語の山場に隠されたキリスト障害における重大な局面とは?
フロドは最期の誘惑に挑む。
モルドール、灼熱の地獄、そこに住むのはオーク、そして冥王サウロン。
中つ国を行く辛い道の果てに、ついにここまでたどり着いたフロド。
滅びの山を目指す旅は終わった。
だが本当の試練はここから。
The One Ringを滅ぼすには、山に登りきり、指環を火山の炎の中に投げ込まねばならない。
これは簡単なことではなかった。
Drout「指環の丸いという形には意味がある。
輪っかが人の心の善の部分を封じ込めてしまい、指環のこと以外考えられなくなる。」
滅びの山を登るフロド、指環が彼を惑わし、使命を忘れさせ、その力に屈するよう、ささやきかける。
誘惑との究極の戦いだ。
心の中で葛藤する光と闇、キリスト教徒としてのトールキンの世界観を表している。
Drout「物語に溢れているカトリックの思想の中でも彼が特に言いたかったのは主の祈りのラスト2行。
誘惑に陥らせず、悪からお救いくさい。」

フロドに迫る最後の誘惑は新約聖書の1節と思わせる。
Finan「荒野で40日間断食を行っていたイエスをサタンが誘惑する。
食欲、自己顕示欲、支配用に訴えかけてイエスをつろうとした。」
キリストはサタンの誘いを退けた。
だがフロドは誘惑に勝てなかった。
Drout「滅びの亀裂までたどり着き、指環を作ったのと同じ火が燃える火口の淵に立ったが、手に持った指輪を捨てることができない。
指環の魔力にとりつかれ、こう言った。
ここに来て捨てるはずだったが、捨てるのはやめた。
指環は僕のものだ、そして指にはめてしまった。」
指環の力で姿を消したフロドだが、傍で見ていた者がいる。
かつて数100年間指環の持ち主だった邪悪な生き物ゴクリ。
滅びの山までフロドをつけてきた。
狙いは指環を奪い返すこと。
今が絶好のチャンス、指をかみちぎった。

指環を奪ったゴクリは弾みで燃え盛る溶岩の中へ落ちてしまった。
こうしてゴクリと共に指環は消滅し、フロドは正気に戻った。
ゴクリは悪者だったがその悪い行為が中つ国を救った。
世界を救ったのは主人公ではなかった。
このエンディングはクリスチャンの思想にも、伝統的な神話の筋書きにも合わない。
フロドは失敗したものの、結果的には善は悪に打ち勝つというキリスト教の教えが裏付けられた。
だが勝利は犠牲を伴った。
指環の消滅後、ホビット庄へ戻ってきたフロド達。
彼らを待っていたのはぞっとするような光景だった。
Cooper「ホビット庄は工業化によってすっかり破壊されていた。
鋼鉄の機械があちこちを占拠し、人々は抑圧され、村は汚染されていた。」
容赦なく押し寄せる工業化の波。
トールキンがもっとも恐れていたこと。
彼の故郷イギリスの田舎町でも同様の変化がおきていた。
Olsen「トールキンは幼い頃から産業化が進むのは人間が堕落しつつある証拠だた考えて、強い不安を感じていた。
彼の考えによると、工業化を推し進めることと支配欲との間には密接な関係がある。
人を征服するのも、草木などの自然を破壊するのも、どちらも同じ支配欲の現われ。」
指環を滅ぼす旅から戻ったフロドは落ち着かない日々を送っていた。
悪夢にさいなまれ、以前のような生活を取り戻せない。
トールキン本人と同様、悲惨な体験が彼を別人に変えてしまった。
フロドが指環を巡る戦いから戻った時、トールキンが第一次世界大戦から帰還した時、無事を喜ぶ様子が全く見られない。
一旦指環を手にしてしまったフロドは以後ずっと不安感につきまとわれる。
フランスの戦地で数え切れないほどの死を目の当たりにしたトールキンも長くトラウマを抱えていたのだろう。

指環物語のラストシーン、悪との戦いで深く傷をおったフロドはホビット庄をあとにし、聖なる地での再出発を目指して旅立つ。
こうして壮大な近代神話は幕を閉じる。

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gladstone (2017/04/14 9:02 AM)
博学な知識と読み解きの深さに圧倒されました。この物語の大要の解釈は、貴方と同じで、その意味でもうれしいものがありましたが、貴方の詳細な解説には敬意を表したいと思います。素晴らしい方と出会えました。
poyo (2017/04/19 6:59 PM)
gladstoneさん、コメントありがとうございます。
この記事はテレビ番組をほぼまる写ししたものです。
私の知識ではありません。
ごめんなさい。
何年か前に観た番組なので、自分でもこれを読み直さねば、内容を忘れているくらいです・・・

ただ、興味を持ったことの番組なので、その点ではお話が合うかもしれないですね。









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