2017.11.05 Sunday
スポンサーサイト
一定期間更新がないため広告を表示しています
| スポンサードリンク | - | - | - | - | |
|
|
LINKS
私
カスタム検索
RECOMMEND
PROFILE
|
2014.01.19 Sunday 00:00
ヒッグス粒子
40年にわたる研究の末、宇宙の謎を解く手がかりがついに発見された。
捉えがたく強力なパワーを秘めたヒッグス粒子、それは宇宙におけるすべての存在を作りだした神の粒子なのだろうか? 空間、時間、生命体の誕生、宇宙の謎を解くカギは、ワームホールにある。 私たちはどうやって宇宙に生まれたのだろう? 宇宙はエネルギーの爆発によって始まったという。 そのエネルギーが物質へと姿を変え、天体や私たちの体を形作る素材となった。 宇宙は一瞬で燃え尽きることなく百何十億年も生き続けている。 物理学者たちは以前から、宇宙全体に見えない力の場が広がり、それがエネルギーを物質に変えると予測していた。 そしてついにその力が実在することを証明した。 そこから発生したのが神の粒子と呼ばれるヒッグス粒子、これで宇宙創成の謎がついに解けるのだろうか? もしも神の粒子がなければ、宇宙は一瞬で消え去っていただろうと考えられている。 ダン・フーパーとパトリック・フォックスは、フェルミ国立加速器研究所の理論物理学者。 高速粒子衝突実験で、ヒッグス粒子が見つかるのをずっと待っていた。 エアホッケー台が宇宙だと考えてみよう。 物理学の世界ではビッグバンで生まれたのは、質量のないエネルギーだけの粒子だったと言われている。 初期の宇宙ではすべての粒子が質量を持たず、光の速さで飛び交っていた。 でもそんな状態は長く続かなかった。 ほんの一瞬で何かが変わった。 まるで誰かがレバーを引いたように、大部分の粒子が急に動きを止めた。 ビッグバンの直後に宇宙が冷えはじめヒッグス場が働きだしたと言われている。 影響を得たものは質量のある粒子に、受けなかったものは、質量のないエネルギーだけの粒子になった。 粒子と粒子をぶつけてミクロの世界を探ろうとしてきた研究者たちは、粒子に2つのタイプがあることを知った。 質量を持っていて物質を運ぶフェルミ粒子と、質量を持たずに力を運ぶボーズ粒子だ。 ヒッグス粒子がなければ、どちらも質量を持たなかったはず。 フーパー「ヒッグス場がなければ、みんな力を運ぶ粒子になっただろう。 光子のように質量を持たず光の速さで飛ぶ粒子だ。 質量がないということは、宇宙に原子も、科学現象も生まれないということ。」 宇宙に人類のような複雑な構造体が生れたことも、ヒッグス粒子のおかげ。 でもどうしてヒッグス場が働きだしたのだろう。 フーパーやフォックスなどの物理学者は、ビッグバンの衝撃によってヒッグス場が働きだしたと考えている。 エネルギーの塊を物体のある宇宙に変えた力は、自然に働きだしたと言われている。 でも中にはこれを創造主の計らいとみなす人もいる。 ヒッグス場をより深く知れば、こうした謎が解けるかもしれない。 研究者たちはヒッグス場に働きかけてヒッグス粒子を取り出し、それを調べようとしている。 そのために史上最強の実験マシーン、LHCと呼ばれる大型ハドロン衝突型加速器が建設された。 リンドン・エバンスは、この40年間ジュネーブにあるCERNで、粒子加速器の建設に携わってきた。 作った機械は今も全て現役で、段階的な作業を担っている。 粒子は古い加速器を通って、徐々に加速される。 できる限りのエネルギーを詰め込んだ状態で、1周27kmのLHCに送り込まれる。 「CERNに来たのは1969年、最初に担当したのはディオプラズマトロンイオンゲンとう陽子を発生させる装置。 線形加速器とブースターで加速された陽子は、私が70年代に手掛けたスーパー陽子シンクロトロンを通ってLHCに送られる。」 粒子加速器はここ数十年で進歩した。 より多くのエネルギーで粒子を衝突させて、より高い質量を持った新しい粒子を作れるようになった。 以前は2つの陽子をぶつけて2倍の質量を持った粒子を作るのが精いっぱいだった。 でもヒッグス粒子の質量は、少なくとも陽子の100倍、物理の法則では陽子に高い運動エネルギーを与えると、ぶつけたときの質量よりもはるかの重い粒子が誕生すると予測することができる。 「あの有名なE=mc2という方程式の通りだ。 私たちは高いエネルギーを重い物質に変えているのだ。」 ヒッグス粒子のような質量の高い粒子を作るには、従来よりもはるかに高性能の加速器が必要。 エヴァンスたちは、テクノロジーの限界に挑んだ。 「粒子は周回ごとにエネルギーを高める。 そして最終的にはフルパワーに至る。」 必要なパワーは手に入ったが、力だけでヒッグス粒子の研究はできない。 乾草山から針を探すような仕事が待っている。 ここでの乾草は何兆個もの素粒子。 姿が見えず声が聞こえなくとも、神はいつもそばにいる。 宗教の敬虔な信者はそう考える。 ヒッグス粒子もまた、きわめて捉えがたい存在。 粒子は1兆×10億分の1秒間ほどこの世に現れ、かすかな手がかりを残して消えてしまう。 決して目に見えない粒子をどうやって探すのだろうか? 物理学者ジョー・インカンデラの両親は、息子を硝子作家にしたいと願っていた。 「大好きなガラス作家の1人が科学者だったので私も大学に行って科学を学ぶことにした。 そこで物理の授業を履修したとき衝撃を受けた。」 インカンデラは、LHCにおける主要な実験のリーダー。 世界中から来た物理学者と共に1つの謎を探求している。 全ての存在がなぜ存在するのかを突き止めようとしているのだ。 LHCでの実験がその問いに答えてくれる。 LHCでの衝突実験は、ビッグバン直後のエネルギー状態を再現する。 研究者はそこからヒッグス場が働きだした瞬間についての情報を得ようとしている。 ヒッグス場の力は宇宙に広がり、すべての物質が作り出された。 その力を運ぶのがヒッグス粒子、これを検知する唯一の方法はヒッグス場にエネルギーの乱れを作ること。 「ヒッグス粒子はある意味宇宙の状態や粒子の姿の現し方などを決定づけている存在。 LHCなどの加速器を使って高エネルギーの陽子と陽子をぶつければ、ヒッグス粒子を飛び出させることができる。」 LHCで衝突する陽子の中に、クオークやグルーオンと呼ばれる粒子がつまっている。 衝突すると数千個の新しい粒子が飛び出すのだ。 そのあとを調べるのは、ガラスの破片をふるいにかけるようなもの。 骨の折れる作業だ。 「エネルギーや粒子やその破片が散らばっている中から特定のパターンを探す。 ヒッグス粒子の崩壊パターンには非常に厳密な条件がある。」 神の粒子はそう簡単に捕まらない。 見つかる前に消えてしまうのだ。 「一瞬で崩壊するため粒子の測定はできない。 崩壊によって生まれたものから推測するのだ。」 ヒッグス粒子を検出するには、陽子が衝突した後を調べて、元の粒子を推し量るしかない。 床に散らばったガラスの破片をすべて分析し、軌道を計算すれば、衝突の状況を再構成できるのと同じこと。 「衝突の大部分は凡庸なパターンを描くので、それらは分析の対象から外される。 つまり圧倒的多数が排除されるのだ。」 彼らが調べたいのは、陽子と陽子の中身が直線状に並んだケース。 陽子の中のクオークが相手のクオークと正面衝突すると、ほぼすべてのエネルギーが1カ所に集中する。 この強い衝撃によって、ヒッグス場からヒッグス粒子が飛び出す。 でもこうした衝突はめったに起きない。 LHCが稼働してから、陽子をぶつけた回数は、およそ1000兆回。 1000兆の砂粒は、競泳用プール1つ分、そのうちヒッグス粒子が発生しうる衝突は数百回、砂粒に例えれば指先に乗るくらいの量。 気の遠くなるような仕事だが、インカンデラの数千人の物理学者たちはこれをやりとげてしまった。 2012年7月4日、インカンデラは研究チームのもたらした画期的な成果を発表する。 予測されたヒッグス粒子と同じ質量125〜126ギガ電子ボルト付近に粒子を検出したという。 アインシュタインによるE=mc2という方程式以来の大発見と言われている。 存在の謎を解くカギとなる粒子が見つかった。 宇宙を完璧に理解できる日も近いのだろうか。 ダン・フーパーはそう簡単ではないという。 ヒッグス粒子は全部で5種類あるかもしれないのだ。 ヒッグス粒子は宇宙にある物質の期限を解き明かすカギになると考えられている。 しかし近年宇宙の大部分はダークマターという見えない粒子でできていることが分かった。 宇宙におけるダークマターの量は普通の物質の5倍、ヒッグス粒子の存在を予測する今の理論では、ダークマターの存在を説明できない。 何かを見落としているのだろうか。 半世紀にわたる研究の結果素粒子物理学の標準のモデルと言われる1つの理論が構築された。 物質を構成する素粒子は12種類、クオークとレプトンからなるフェルミ粒子。 一方電気や磁気などの力を媒介するのはボーズ粒子のうち4種類。 そしてもう1つの特別なボーズ粒子がヒッグス粒子。 しかしこのモデルではダークマターの説明ができない。 他にも重大な不備があるのだ。 フーパー「標準モデルが抱える大きな課題の1つは階層性問題。 ヒッグス粒子の質量は126ギガ電子ボルト前後と言われる。 でも標準モデルをそのまま当てはめた場合、質量はもっと大きくなるはず。 でも何かの理由で軽くなってしまった。」 ヒッグス粒子の問題は、重さ。 ヒッグス粒子はほかの粒子に質量を与えると相手からも質量を受け取る。 それを計算するとヒッグス粒子の質量は本来の数10億倍になると考えられる。 標準モデルを成立させるには、計算上の矛盾をごまかす必要がある。 フーパーはヒッグス粒子やダークマターの問題を解決する方法があるという。 それは標準モデルに修正を加えた超対称性理論。 超対称性理論では、宇宙の粒子はまだ半分しか見つかっていないと考える。 それぞれにパートナーの超対称性粒子があるはずで、そのうちの1つがダークマターだという。 「超対称性粒子の中で、最も軽いものがダークマターの最有力候補だと言われている。 この粒子は初期の宇宙で大量に作られ、大部分が破壊された。 でもわずかに残った粒子がダークマターになったと考えらえる。」 超対称性理論が証明されれば、ヒッグス粒子の質量問題も解決するという。 「この理論が正しければ、ヒッグス粒子は電子から質量を渡されても、そのパートナーであるセレクトロンに質量を取られてしまう。 結果的に粒子の質量が増えることはない。」 標準モデルで解決できなかったヒッグス粒子の軽さも、ダークマターの正体も、これで説明がつく。 しかし1つだけ問題が・・・超対称性理論が正しければ、ヒッグス粒子は前部で5種類あるはず。 ヒッグス粒子は宇宙全体の物質に質量を与えた。 ヒッグス粒子だけの手柄ではないとしたらどうだろう。 神の粒子以外に立役者はいたのかもしれない。 ジョン・エルスはCERNの理論物理学者、彼のアイディアはしばしば実験によって間違いだと証明される。 でもそれでいいとエルスはいう。 アルバート・デルックは実験物理学者、アイディアの間違いを証明するため、実験を続けてきた。 デルクとエルスの2人はヒッグス粒子の探索に初期のころから携わっている。 そもそもヒッグス粒子はある謎の手掛かりと考えられていた。 極端に重たいW粒子とZ粒子の謎だ。 他のボーズ粒子にそんな質量はない。 物理学者たちはボーズ粒子の中で、W粒子とZ粒子だけが目に見えない力を持つヒッグス場と反応し、質量を得たのだと考えた。 その後標準モデルによってヒッグス場には宇宙全体に質量をもたらすという大きな役割が与えられた。 デルクたちは、たった1種類の粒子がすべてに質量を与えたとは限らないと考えている。 「標準モデルをふまえた数多くの理論が、ヒッグス粒子には複数の種類があると予測している。」 2人は標準モデルに修正を加えながら、新たな理論を構築することを目指している。 ヒッグス粒子の正体について、斬新な予測をたてようとしているのだ。 予測される粒子のバリエーションは、アイスクリームの種類にも例えられる。 LHCが見つけたのはお馴染みのバニラ味、思った通りの味がする。 でもチョコチップミントのように刺激的な味が見つかれば、もっとスリリングな展開がまっているだろう。 2種類のヒッグス粒子がそれぞれ違う仕事をしている可能性もある。 「W粒子やZ粒子にかかわるヒッグス粒子と物質を運ぶ粒子にかかわるヒッグス粒子が、役割分担しているのかもしれない。」 例えば、エリスが力を運ぶZ粒子で、デルックが物資を運ぶクオークだとしよう。 エルスは無類のコーヒー好きで、デルックはチョコレートマニア、カフェが1つのヒッグス場、チョコレート店がもう1つのヒッグス場と考える。 エリスはカフェの前で速度を落とし、質量を得るだろう。 「私という粒子はそこを通り過ぎて、もう1つのヒッグス場に反応する。 このチョコレート店で質量を得るのだ。」 標準モデルは2つのヒッグス場を想定しない。 だからこそ2人はこのアイディアを押すのだ。 複数のヒッグス粒子が発見されるとしたら、それは標準モデルを超える物理の証明になる。 今まで観測された崩壊パターンに見られるいくつかの異常は、ヒッグス粒子に別の種類があることの兆しかもしれない。 観測データの分析はまだ終わっていないのだ。 古代ギリシャに生きたデモクリトスという哲学者は、物質を構成する最も小さいブロックのことを原子と名付けた。 2000年も生き続けたこの概念は、核の時代を向かえて新たな事実に直面する。 最小単位と思われてきた原子はクオークや電子などの粒子からできていたのだ。 もしヒッグス粒子を構成する部品があるとしたら、それらによって物質がなぜどうように現れたのかを突き止められるかもしれない。 フランチェスコ・サニーノは、オーデンセにある南デンマーク大学の理論物理学者。 オーデンセは創造の翼を羽ばたかせるにはぴったりの場所。 有名な童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンもこの町で生まれた。 私たちが思い描く宇宙の基本的な構成要素は、この街並みのように完璧とは言えない。 標準モデルはヒッグス粒子を素粒子とみなしているが、サニーノはその先を見ている。 ヒッグス粒子の中身を探ろうとしているのだ。 「標準モデルでは、ヒッグス粒子を分割することはできない。 この壁は白く見えるが、実際は3色の光を同時にあてて、白く見せているだけ。 このように手をかざすと、3種類の色が分かれて見える。 緑と赤と青で白を作っている。」 白い光のようにヒッグス粒子も別の粒子からできているのではないかとサニーノは考える。 全ての物質の根源ではないということだ。 ヒッグス粒子の成り立ちに関する仮説は、研究者の間でテクニカラー理論と呼ばれている。 サニーノはヒッグス粒子を新しい視点から見ている。 例えばこれらのブロックが通常のクオークで、白いボードがクオークをつなげるグルーオンだとしよう。 陽子を作るにはクオークが3つ、テクニカラー理論によるとヒッグス粒子の構造も同じ。 ただしテクニクオークと呼ばれる特別なクオークが使われる。 「テクニクオークは特殊な力で互いを結び付けている。 そのエネルギーがヒッグス粒子に質量を与えているのだ。」 通常のクオークは組み合わせによって別の粒子を作る。 ある組み合わせでは陽子に、またある組み合わせでは中性子になる。 テクニクオークも同じ、ある組み合わせではヒッグス粒子になり、また別の組み合わせでは研究者たちが探し回っているダークマターの粒子になる。 標準モデルがダークマターの存在を説明できないのは、ダークマターがヒッグス粒子の別の姿だからなのかもしれない。 これらの粒子は特別な力で結び付けられているのだ。 テクニクオークは様々な組み合わせによって新しい粒子を作る。 2015年にエネルギーを引き上げて実験を再開するLHCでこうした粒子が見つかるかもしれない。 サニーノはヒッグス粒子の解析に期待している。 十分なパワーがあれば粒子を分解できるかもしれないからだ。 夜空の高みから私たちを見下ろしている月は、不思議な力で浮かんでいるように見える。 重力のせいだと分かっていても神秘的。 もし重力や神の粒子よりもはるかに謎めいた力がこの宇宙に広がるすべての物質を支えているのだとしたらどうだろう? ハーバード大学のハワード・ジョージャイは、人生の大部分を素粒子物理学に捧げてきた。 でも近年キャリアを変更し、今は非粒子物理学者。 標準モデルから新しい理論を構築しようと方程式を構築していたジョージャイは、不可解な計算結果に気づいた。 物理学の数式では、光子のように質量のない粒子は負の整数で表される。 ジョージャイの計算でも負の数が現れた。 でもそれは分数だったのだ。 「質量のなり粒子が2と1/2個現れるという計算結果になった。」 1/2という数字に異変を感じたジョージャイはそれらを非粒子と名付けた。 計算を続け、非粒子をより深く知ったジョージャイは、分数が現れた理由に気づいた。 そこにはフラクタル次元がかかわっていた。 「樹木は1次元ではない。成長しながら枝分かれして、それがまた枝分かれして、それがまた枝分かれする。 同じことが無限に繰り返される。 これがフラクタル。」 非粒子は木の枝と似たようなもの、細部を見ても全体を見ても同じパターンが現れる。 でも普通の粒子は木の葉のようなもの、近づけばそれだけ大きく見える。 この宇宙で質量を持つ粒子はすべてヒッグス粒子のおかげで存在していると言われる。 でも本当は既存の物理法則が通用しない非粒子の世界に影響を受けているのかもしれない。 つまりこの宇宙で質量を持ったすべての粒子は木の葉のようなもので、それを支える目に見えない非粒子の枝は、隠れた土台の役割を果たしていると考えられるのだ。 今のところLHCに非粒子の気配はないようだが、ジョージャイは、非粒子物理学を諦めていない。 ヒッグス粒子は神の粒子なのだろうか?それとも何か大きな秘密があるのだろうか。 私たちの存在は謎に満ちている。 科学者たちは今も発見されたヒッグス粒子の正体を探るために研究を進めている。 |
SPONSORED LINKS
CATEGORIES
ARCHIVES
SELECTED ENTRIES
RECENT COMMENTS
RECENT TRACKBACK
MOBILE
OTHERS
|
(C) 2024 ブログ JUGEM Some Rights Reserved. |